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[E3 2013]「METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN」の小島秀夫監督にインタビュー。MGSVは「もう一度世界に勝つ」という思いを込めたタイトル
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印刷2013/06/18 11:28

インタビュー

[E3 2013]「METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN」の小島秀夫監督にインタビュー。MGSVは「もう一度世界に勝つ」という思いを込めたタイトル

コナミデジタルエンタテインメント 執行役員(EVP)小島プロダクション監督
小島秀夫氏
画像集#035のサムネイル/[E3 2013]「METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN」の小島秀夫監督にインタビュー。MGSVは「もう一度世界に勝つ」という思いを込めたタイトル
 E3 2013のタイミングに合わせて最新トレイラーが公開され,対応プラットフォームがPS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360になることが発表された,KONAMIの「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」(以下,MGSV)。
 時間経過や天候変化の概念を取り入れたオープンワールドで,自由度の高いリアルな潜入をコンセプトにした本作は,独自開発のゲームエンジン「FOX ENGINE」を採用し,実写映像さながらの「フォトリアル」な映像・世界観を実現している。

 そんな本作を手がけるのは,METAL GEARシリーズの生みの親である小島秀夫監督だ。今回は,E3 2013の会場で小島監督の合同インタビューが実施されたので,その模様をお伝えしよう。
 多くのメタルギアファンが期待しているオンライン要素についても,小島氏が言及しているので,ぜひ読み進めてほしい。

「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」公式サイト

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──本日はよろしくお願いします。まず,Xbox E3 2013 Media BriefingやE3 2013会場で公開された最新トレイラーは,アメリカではどのような反響だったのかを教えてください。

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小島氏:
 いい反応をいただいたと思っていましたが,Ubisoftの「The Division」を見て,もっと頑張らないといけないと感じましたね。
 E3では,ずっと世界の強豪達と戦っているわけですが,一時期は勝っていたのに,「MGS3」あたりから負けているなと感じていました。ですので,MGSVには「もう一回世界で勝つ」という思いを込めています。MGSVのVは,VictoryのVなんです。

──MGSVのテーマは「人種」や「復讐」とのことですが,この2つのキーワードについて,もう少し掘り下げた話を聞かせてもらえますか?

小島氏:
 それを発売前に詳しく言うのもどうかな(笑)。
 まあ,反戦反核ということでシリーズを25年間作ってきましたが,伝えられなかったことがたくさんあるんです。「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER」では「Peace」,抑止力を描いた若い人向けの作品にしました。自分たちを守るために核を選択する,というところで終わるんです。
 その先にあるものが何かと考えたときに,あらゆる紛争の根っこには「民族」がありますし,民族同士で報復に報復を重ねるという現状があって,そこは避けて通れないと思ったんです。
 いつかやらなくてはいけないと思ったところに,新しいハードが出る時期が来て,そろそろそういうテーマもやりましょうということですね。私も,残りの人生が短くなってきましたから(笑)。

──MGSVで,舞台を1984年のアフガニスタンに設定した理由を教えてください。

小島氏:
 実はMGS3の頃から,この時代の物語をいつか作ろうと狙っていました。1984年はジョージ・オーウェルの小説のタイトルにもなっているので,MGSVには,オーウェル的なテーマも入れているんですよ。
 また,MGS3が1964年,PEACE WALKERが1974年ときて,MGSVで1984年と,10年刻みになるというのもあります。今の10代の人達にとって,1984年はまだ生まれていない時代ですけど,すごく昔でもないですよね。そのあたりを狙ったというのもあります。
 あと,舞台はアフガニスタン以外にもあるので,期待してください。

画像集#004のサムネイル/[E3 2013]「METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN」の小島秀夫監督にインタビュー。MGSVは「もう一度世界に勝つ」という思いを込めたタイトル

──今回,オープンワールドのゲームになりますが,そうなるとステルスアクションがどうなるのか,想像しづらいところがあります。その部分を,少し詳しく聞かせてもらえますか?

小島氏:
 本当の潜入というのは,まずブリーフィングがあって,例えば「救出すべき人質がいる施設にどんな移動手段を使うのか」「潜入する時間はいつか」「誰とどんな装備で臨むのか」ということを,自分で決めなくちゃいけないですよね。

──確かにそのとおりです。

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小島氏:
 MGSVの潜入は本当にリアルなので,あまりゲームのルールを押しつけていません。目的地まで,車で行っても歩いて行ってもいいんです。夜に行けば歩哨は少ないですが,ライトをつければ簡単に見つかります。昼に行けば,もちろん大量の歩哨がいます。
 そういった,実際のケースを想定したときの考えがそのまま適用できるんです。言ってみれば,「リアル潜入シミュレーター」ですね。
 演出的には,ゲームデザイナーがひいたレールをすべてのプレイヤーが通って,「ここを通ったら爆発」「ここに来たら崩落」という,お化け屋敷みたいなものも面白いんですが,本来ゲームというのは,そうじゃないと思っています。
 時間や天候が変化して,「100万人のプレイヤーがいたら100万通りの遊び方になる」ということをやってみたかったんです。

──そうなると,新しいステルスアクションもいろいろと出てきそうですね。

小島氏:
 今回のムービーに,トラックの荷台に隠れるシーンがありましたよね。リニアで直線的なゲームだったら,あそこでカットシーンになって特定の場所で止まったりするんでしょうけど,MGSVでは,いつ止めてもいいんです。
 ムービーでは羊の群れが出てきて止まりましたが,実際は全部自分で決めなくちゃいけないから,プレイしてみるとしんどいですよ(笑)。敵がいないところでは,タバコを吸っていてもいいんですけどね。

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──天候がリアルタイムで変わることで,ゲームにどのような影響が出るのでしょうか。

小島氏:
 現実世界で考えられるものと,同じことが起こります。何かが燃えているときに雨が降れば火が消えて,砂嵐がくれば視界が悪くなる,という感じです。

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──オープンワールドでフォトリアルが実現できるのも,FOX ENGINEあってこそということでしょうか。

小島氏:
 オープンワールドで作るのが,エンジンにとって一番厳しい部分なんです。オープンワールドでありながら,グラフィックスのクオリティを維持するのが課題ですね。リニアなゲームならもっとグラフィックスの質を上げて作れますが,それはKONAMIのほかのチームに任せています。

──オープンワールドという舞台で,ストーリーがどう展開するのかも気になります。

小島氏:
 今までのMGSを映画だとすると,今回はテレビシリーズみたいなイメージです。1話1話がミッションになっていて,そのなかには,例えばオセロットのような脇役にスポットをあてたような話もあります。ある話で残された謎が,別の話で分かってきたりするという感じで,作るのは大変ですね。

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──MGSVの想定プレイ時間はどれいくらいになるのでしょうか。

小島氏:
 オープンワールドなので,その世界にいるだけという楽しみ方もできますから,それこそ数百時間というくらい遊べます。ちょっと心配なのは,少し遊んで別のゲームに移るという楽しみ方をしている人に受け入れられるか,というところですね。

──E3 2013のタイミングで,PS3とXbox 360に加え,PlayStation 4とXbox OneでもMGSVがリリースされることが発表されました。どういった理由から,MGSVを複数プラットフォームで同時開発しているのでしょうか。

小島氏:
 昔とは違いますから,うちだけじゃなく,みなさんそうだと思います。うちでもPCで開発していて,ほかのプラットフォームでもすぐに動かせるようになっています。

──今回のE3では,PS4とXbox Oneのスペック詳細が明らかになりましたが,小島さんはどのような印象を持ちましたか?

小島氏:
 違いも少なくなっていますし,実は以前ほど気にはしていないんです。強いて言えば,PlayStation 4は安かったなと(笑)。でもカメラは付けてほしかったかな。

──カメラを使った遊びも考えていたんですか?

小島氏:
 スマートフォンやタブレットにもカメラ機能は付いていますから,それが普通になっていくと思いますよ。

──そういえば,小島さんがパーソナリティをつとめているWebラジオの「ヒデラジ」では,スマートフォンやタブレット端末でもプレイできると話していましたよね。どんなことができるのか教えてもらえますか?

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小島氏:
 だいたい想像が付くでしょ?(笑) 
 PEACE WALKERから始まったアイデアが,階段を一段一段上ってきていて,MGSVではいろいろなことができるようになります。今回のウリは,グラフィックスよりもむしろこっちなんですよ。

──オンライン要素もあるそうですが。

小島氏:
 はい,作っていますよ。今回は,対戦とか協力以外の広がりを持たせたいと思っています。Twitterでは「METAL GEAR ONLINE」はないのか,ってツイートが多いようですけど(笑)。
 オープンワールドですから,「ある地点から別の地点まで,移動するのにかかった時間を競う」といったものでもいいんです。みんながSNSでつながっているから,報告し合ってもいい。参加できない人もタブレットでその様子を見て楽しめる,という感じですね。

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──「ヒデラジ」には,クワイエット役のStefanie Joosten(ステファニー・ヨーステン)さんが出演していましたよね。クワイエットは,MGSVでどのような立ち位置のキャラクターなのでしょうか。

小島氏:
 今作では,クワイエットがメインヒロイン的な存在になります。敵か味方かはまだ言えませんが。なので,キャストは慎重に探しました。
 ステファニーさんには,顔や体の3Dキャプチャーやモーション,声に表情と,クワイエットに関するすべてを演じてもらっています。クワイエットはしゃべれないキャラクターですが,それでも「うっ」とか「あっ」とか発声はするんです。また,ステファニーさんは銃を持ったことがなかったので,そのトレーニングもしてもらいました。

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──3Dキャプチャしたものでキャラクターを作るという,今までとは違う手法を取り入れたのはなぜですか?

小島氏:
 今作のコンセプトに,「フォトリアル」というものがあるんです。ゲーム画面を縮小したときに,まるで写真のように見える,というイメージですね。そのため,キャラクターはもちろん,背景にある石まで3Dキャプチャをして作っています。
 通常は,3Dキャプチャしたあとに“整える”作業が入るのですが,そうするとどうしても“作ったもの”に見えてしまうので,素材を生かす方向に決めました。
 ただ,以前からいるスネークやヒューイといったキャラクターは,モデルそのままではないですね。

──モーションキャプチャの収録は,どのように進めているのでしょうか。

小島氏:
 映画と同じようにまず本読みをして,リハーサルで演技を固めて,それから本番という感じですね。私は,できるだけ立ち会うようにしていますが,どうしてもできないときは,リハーサルの段階で完全にするという感じです。音声収録にも立ち会いますよ。

――音声で言うと,日本語版では日本人声優の声が入るんですよね。セリフ一つをとっても尺が違ってくると思いますが,そのあたりはどのようにして差を埋めるのでしょうか?

小島氏:
 声の収録は,ちょっとやり方を変えているんですよ。
 今までは,何も素材がない状態で演技してもらって,それにキャラクターのモーションに合わせていくという方法でしたが,今回は映画のアフレコと同じやり方ですね。スネークなら,キーファー・サザーランドさんの演技に合わせて,声を当ててもらうという形になります。

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――ちなみに,小島さんはどのような基準で声優のキャスティングを決めているんですか?

小島氏:
 キャラクターのイメージもありますし,うまいへたもあります。単純にその声優さんが好きというのもありますね(笑)。
 ただ,そうやっていったん候補を決めてからが大変なんです。同じ声質の方が複数いると混乱するので,それを避けなくてはいけない。必要以上に仲が良い人達だと,敵対するキャラクター同士にするのはちょっと考えてしまいます。
 キャスティングですべてが決まるといってもいいですね。

――なるほど。

小島氏:
 現場の雰囲気というのも考慮しています。
 とくに,それほど演技の引き出しが多くない人の場合,ほかのキャストとの関係で生まれる“化学変化”が大事です。ほどよい緊張感を出してくれそうな人を入れることもありますし。
 こちらとしては,その人が今まで見つけていなかった引き出しを開けるという楽しみもありますね。「引き出しが開かなくて変なところから出たー」って,たまに失敗もしますけど(笑)。
 あと,雰囲気が一気に華やかになるので,女性陣は欠かせないです(笑)。

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──ムービーの挿入歌には,ドナ・バークさんが起用されていますが,METAL GEAR SOLID PEACE WALKERに続いて,彼女を起用した理由を教えてください。

小島氏:
 PEACE WALKERで彼女に歌ってもらって,ファンの皆さんにも喜んでもらえたのですが,その後,コンサートであらためて聴いたときに泣いてしまいまして(笑),今回もお願いしようと決めました。3年くらい前ですね。
 今回の曲はドナさんの声域に合うよう,1年半くらいかけて作りました。歌詞は今のところ少ししか流れていませんが,全体を聴くと,もう少し意味が分かると思います。

──そのほか,MGSVではサウンド面で何か新しい技術を投入しているのでしょうか。

小島氏:
 サウンド面にはもちろん気を使っていますが,優先度は以前ほどではありません。マルチデバイスで楽しむわけですから,ちゃんとした機器がセッティングされた環境で遊ぶ,というケースは少なくなると思います。

──ちょっと話は逸れますが,小島さんが右腕に付けている時計って,E3 2013で公開されたムービーに出てきたものと似ている気がするのですが,何か関係あるんですか?

小島氏:
 気付きました? って,わざとらしいですよね(笑)。
 実はこれ,大学生時代に買ったものなのですが,1980年代に流行った「デジボーグ」という時計なんですよ。「007 オクトパシー」とコラボもしていましたね。
 MGSVの舞台は,さきほど話に出たように1984年ですが,あの当時のアナログとデジタルの中間のようなテイストが欲しくて,セイコーさんにコラボをお願いしました。
 MGSVのスネークも身につけていますが,そちらは新川に少しデザインをいじってもらっています。

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──以前小島さんはTwitterで,日本国内でハイエンド機向けのタイトル制作を推進するのは,孤立無援で四面楚歌の状態だ,というつぶやきをしていましたよね。でも,E3に来ると同じような戦いを続けている仲間が世界中にいることを知ると。

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小島氏:
 ここにいるメディアの皆さんは違うかもしれませんが,今,一般メディアが報道するゲームはソーシャルですよね。大作はまず評価されない。でもE3に来ると,さまざまなクリエイターの評価を聞き,お互いに頑張りましょう,という気持ちになります。
 ゲームというのは,テクノロジーに依存したものなんですよね。ゲームのカテゴリーにはテクノロジーの縦と,ソーシャル的な横の広がりがあると思っているのですが,テクノロジーの階段を上がっていくのをやめてしまったら,この先はないと思っています。
 ただ,MGSVも最終的には“次世代ソーシャル”とも言うべき存在になっていくと思うので,別にソーシャルを否定しているわけではありません。

──ちなみに海外では,MGSシリーズのどのようなところが高く評価されているのでしょうか。

小島氏:
 物語そのものより,ゲームを通して何らかのテーマを表現しているところはときどき褒められますね。少し前に,イギリスの方から「小島さんのゲームはオペラだ」って言われたんですが,それはちょっと意味が分からなかったな(笑)。
 それと,海外メディアの方からは,「最近ハードは進化しているけど,ゲーム自体は進化していないのでは」という意見をよく聞きますね。そういう意味では,MGSVで一歩踏み込んでみようと思っています。

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──それでは最後に,MGSVの発売を期待して待っているゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

小島氏:
 MGS4の完成披露イベントのときも,孤立しているということを話しました。今回はそのときよりも厳しい状況ですが,みなさんの応援があれば……。孤立しながら世界の中で戦っているので,応援してね! ソーシャルもいいよ!(笑)。

──MGSVの完成を心待ちにしています。本日はありがとうございました。

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