インタビュー
ついに実装されたカジノや新大陸,そしてディレクター交代にまつわる話など。「ドラゴンクエストX」はバージョン2でどう変わるのか? 運営開発インタビュー
新職業の「まもの使い」の方向性
4Gamer:
あと,バージョン2で新たなに追加された要素としては,新職業の「まもの使い」があります。
りっきー:
「まもの使い」は,今回,堀井さんに一番時間を割いてもらった部分です。
4Gamer:
堀井さんとはどんなお話を?
「ドラゴンクエスト」シリーズには,「まもの使い」にもいくつかの形があるじゃないですか。例えば,「ドラゴンクエストV」みたいな形だったり,あるいは「ドラゴンクエストモンスターズ」みたいに,仲間にしたモンスターを配合させていくようなものもだったり。なので,「今回はどうしましょうか?」というのを素直に堀井さんに聞いていたんです。
4Gamer:
堀井さんの見解はどういうものだったんですか?
りっきー:
堀井さんは「どれでも仲間に出来ると,それはモンスターズになっちゃうから,そうじゃない形がいいと思う」っておっしゃってました。確かにそうだなって僕も思ったので,本作では,仲間に出来るモンスターを絞って,一匹を深く育てられる,愛情をもって育てるって方向でデザインしました。
4Gamer:
現状,プレイヤーさんに一番人気のモンスターはどれになるんですか?
齊藤氏:
一番人気はやっぱりスライムですね。2位は,並み居るモンスターを押しのけて,なんとバトルレックスなんですが。
4Gamer:
カジノコインを5000枚集めないともらえない(※)のに,それは凄いですね。やっぱり強いからですか?
※バトルレックスを仲間にするために必要な「バトルレックスの書」がカジノコイン5000枚と交換可能。実際に仲間にするには,「バトルレックスの書」を読んだうえで,さらにバトルレックスをスカウトする必要がある
肉弾戦系のキャラクターとしては確かに一番強いくらいかも。同じ肉弾系だと,プリズニャンとかもかなり強いんですが,あれは打たれ弱いのが弱点ですし。
齊藤氏:
私は,バトルレックスを連れてる人は“オールドファン”だと思ってるんですけどね(笑)
りっきー:
そうですね。テリーになりたいみたいな。
4Gamer:
ははは。
齊藤氏:
実際,「ドランゴ」っていう名前のバトルレックスを相当見ましたよ(笑)
4Gamer:
そういえば,「まもの使い」になるための職業クエストって,これまでの新職業と比べても結構簡単ですよね。これはどういう意図だったんですか?
りっきー:
それはバージョン2.0から始められた方や,しばらく離れていた方がすくに転職できるようにと考えてです。「まもの使い」が追加されたから買ったって方が,なかなかそれを体験できないというのも違うと思いましたし。だから最初は,100種類のモンスターを討伐するって達成条件だったんですけど,時間を計算してみて「これはちょっと辛いな」と思ったので,30種類まで下げました。
齊藤氏:
30種類討伐であれば,バージョン2から「ドラゴンクエストX」を始めた方でも,ちょっと頑張ればすぐに達成できますからね。
りっきー:
あと堀井さんに多く相談したって意味では,まだ詳しくは話せないけど,新職業がそうですね。
4Gamer:
バージョン2.1で実装されるという職業ですよね。それって完全な新職業なんですか?
齊藤氏:
そうですね。ドラゴンクエストとしても完全な新職業になります。
りっきー:
堀井さんから「これでいこうか」って言われたとき,僕は「それはありなのか!」って思いましたからね(笑)
齊藤氏:
でも,“ドラクエっぽい”んだよねぇ(笑)
りっきー:
そうそう。他のゲームでも聞いたことがないような名前なんだけど,なぜか違和感はない。ほんと不思議ですよねぇ。
4Gamer:
うーん,とても気になります……(笑)
「ずっと遊ばなくていい」を踏まえたバージョン2への取り組み
4Gamer:
しかし,元々「ドラゴンクエストX」って,オンラインゲームなのに「ずっと遊ばなくていいですよ」って話をされていたじゃないですか。その意味でも,バージョン2の発売では「また戻ってくる」って部分をかなり意識されていたと思うのですが,離れていたプレイヤーさんに向けて意識的に実装した機能や修正にはどういうものがあるんですか?
齊藤氏:
「クエストの紹介機能」とかはそうだよね?
りっきー:
そうですね。今回から,町などに入ると自動的にクエストが紹介されるって機能を追加したんですが,それはゲームからしばらく離れていて配信クエストとかが追えてないっていうプレイヤーさんや,新しく始めるプレイヤーさんを意識したものです。さらに,バージョン2からはクエストをクリアすると経験値も結構入るようになっているので,クエストをこなしていくだけでも,レンダーシアに渡れるくらいのレベルには届くと思います。
齊藤氏:
細かいところは,他にもいろいろ直したんですよね。ドレスアップとか。
りっきー:
ああ,そうですね。ドレスアップは,レベル制限を外したのと,チームクエストの数値もだいぶ下げたのと,素材拾いがそのマップ内に限定されていたのを大陸単位にしたりだとか,結構手を入れました。
4Gamer:
へえ。ちなみにバージョン2では,開発側的に「ここを見てほしい!」みたいな部分ってどのあたりになるんですか?
やっぱり頑張って作ったって意味だと,レンダーシアのコンテンツですね。メインストーリーもかなり面白いと思いますし。
齊藤氏:
とくに今回は「人間の物語」ですからね。実際,私自身もプレイしていて「面白いじゃん!」って思える内容になっていると思います。開発中は堀井さんともいろいろ議論して,セリフ一つ一つに対して「こうしよう」とか,「お客さんの導線はこうすべきなんじゃないか」みたいなやりとりをやりました。
4Gamer:
お客さんの導線って,どういうものを指しているんですか。
齊藤氏:
細かいところで言えば,セリフを聞き直した時に「次はここに行きなさい」って言うであるとか,そういう部分ですね。あとは,例えばイベントとかで条件を達成すると暗転して,プレイヤーが自動で移動する(歩いて戻らなくてよい)点とかも,今回こだわった部分ですね。
4Gamer:
イベントで場所を移動させるのは,オンラインゲームでは珍しいのでは。
齊藤氏:
そうですね。正直,オンラインゲーム的にはあまりやりたくないことなんですけど,堀井さんは「その目的を達成した後は,誰もがそこへ戻るんだから,そこはもうワープさせていいんじゃないか」と,そういう話をされていて。実装すべきかどうかずっと悩んでいたんですけど,開発の最後の最後で盛り込みました。
りっきー:
あとは,本来は拠点じゃない場所に神官を配置したのも,堀井さんのアイデアですよね。
4Gamer:
あー,あれは便利ですよね。
りっきー:
お客さんとしてはこうあった方が嬉しいんじゃないか,みたいな堀井さんの指摘はほんとに的確ですねぇ。
4Gamer:
お話を聞いていると,割と堀井さんがズバっと決めてる部分も多いですよね。
齊藤氏:
そうですね。たぶん,皆さんが想像するよりずっと多いと思います。
僕には“オーラ”がない
4Gamer:
そろそろお話をまとめていきたいんですが,改めて齊藤さんから見て,りっきーさんってどういうディレクターなんですか?
齊藤氏:
そうですねぇ……。藤澤はひたすら頑固一徹ってタイプの職人(ディレクター)さんだったんですけど,りっきーは,筋は通ってるんだけど,もうちょっと「協力してやりましょう」みたいなイメージですね。どっちが良いってことではなくて,どちらもモノ作りには必要なことなんですけど。
りっきー:
僕は藤澤と違って,“ずっとドラゴンクエストを作ってきた人間”ではないので,「ドラクエとしてどうあるべきか」みたいな部分は,周りのスタッフにかなり相談するようにはしています。それこそ,堀井さんには本当にいろいろ相談させていただいていて。そのうえで,「じゃあ,こういう方向に行くべきじゃないか」という判断をする感じですね,僕は。
先ほどの話とも被るんですけど,藤澤が作った土台にクリームを塗っていきましょう。さらにイチゴを乗っけてくれ――みたいなことが,今のりっきーの役割だとは思うんですよ。
そもそも「ドラゴンクエストX」のコンセプトって,ドラゴンクエストが好きな人が集まれる遊園地を作るってものなんですが,バージョン1の間にいろんなアトラクションが増えてきて,バージョン2ではさらにそれが増えて,遊びが多様化してきた。
お客さんが目指すべきところがいい意味でばらけてきたなかで,何からデコレーション(開発)していくのかっていうのには,やっぱりバージョン1とは違う能力だったり,感性が求められると思っています。
4Gamer:
それには,りっきーさんが最適だと。
齊藤氏:
はい。もちろん,藤澤は藤澤で,揺るがない信念で開発の優先順位付けをしてきたわけですが,りっきーの「いろんな意見を聞きながらまとめ上げる」力っていうものが,これからの「ドラゴンクエストX」の発展に寄与すると信じています。
りっきー:
藤澤さんは,ホント揺るがなかったですよね。そこは見ててほんと「すげえな」って思いました。
4Gamer:
それはなんか,プレイヤーとしても感じていました。
りっきー:
その意味でいうと,僕が藤澤と違う,あるいは僕に足りない部分って,やっぱり「オーラがない」ことだと思うんですよ。
齊藤氏:
そんなことないでしょ(笑)
りっきー:
いやぁ,藤澤の前の吉田(※)も,やっぱり凄いオーラがあって。だから開発のみんなも付いていくし,プレイヤーさんへの説得力もあるんだろうと思うんです。でも,僕にはそれがないんで。
※吉田直樹(よしだなおき):「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」のプロデューサー兼ディレクター。元々はドラゴンクエストシリーズの開発に携わっており,ファイナルファンタジーXIVの開発に参加する前には,「ドラゴンクエストX」のチーフプランナーだった
齊藤氏:
でもさ。藤澤だって,だんだんとオーラが出てきたんだと思うよ。だから,バージョン2が終わる頃には,きっと,りっきーだってもの凄いオーラを纏うように……。
りっきー:
威圧感,でますかね。
齊藤氏:
それこそ,スーパーサイヤ人並みになるかと!
でも僕,最初に叩かれたのは「しゃべりが下手」って部分ですからね。そこは僕の職業的に仕方がないんだけど……とか思いつつ(笑)。でも,やっぱりお客さんにはそういうものも求められるんだなぁと思って,Amazonで話し方がうまくなる本とかを買ったりしてるんですけど。
一同:
(爆笑)
4Gamer:
いやでも,大変ですよねぇ。
齊藤氏:
今度生放送とかに出るときは,一杯あおってから出て行けばいいんじゃないの?(笑)
りっきー:
いやいや。それはたぶん,ヤバイ方向に行きますから(笑)
齊藤氏:
まあでも,お客さんの期待値って意味では,藤澤がいい感じに上げてくれましたからね。それに対して応えていく難しさっていうのは,りっきーの仕事につきまとう課題になるでしょう。
4Gamer:
ちなみに,バージョン2への移行率ってどのくらいなんですか?
齊藤氏:
いわゆる拡張版の一般的な移行率ってあるじゃないですか。現状は,すでにその数値を超えていますね。このまま推移して年末年始を迎えれば,新規の方も含めて,更に良い結果になる手応えを感じています。ただ,購入はしたけど,あえてバージョンアップしないでログインしている人達も結構いるようなので,もう少し時間が経たないと正確な数値は見えて来ないかもしれません。
りっきー:
バージョン2の発売の直前には,滑り込みでラスボス討伐みたいな人が結構多かったんですよね。
齊藤氏:
ガマンしてたんだっていうね(笑)。
りっきー:
大切にとっておくという方がいらっしゃるというのは,あまり想定してなかったですね(笑)。ルーラストーンとかもらえるんだから,クリアできる人はクリアしちゃった方がいいと思ったりするんですけど……。
4Gamer:
まぁ,いろいろなタイプのプレイヤーさんがいるのも,「ドラゴンクエストX」の魅力だとは思いますけどね。では最後に,今後の抱負というか,バージョン2を進めていくにあたっての意気込みをお願いします!
そうですね。確か,以前のインタビューで「4Gamerの読者の方にとって,ドラゴンクエストXは物足りなく感じるかも」みたいな話をした記憶があるんですけど,まずは「今は,コアな人でもかなり楽しめますよ」というのをお伝えしたいですね。いろいろな遊び方ができるようになって,ハードに遊ぶ方でも楽しめるゲームになってきたと思います。だから,今は「初心者向けのMMORPGなんでしょう?」と思っている方にこそ,ぜひ遊んでみて頂きたいですね。
4Gamer:
システム自体も,以前から比べると相当洗練されていますよね。
齊藤氏:
はい。だから,昔遊んでたけど合わなくて止めてしまった――みたいな方にも,ぜひ戻ってみてほしいです。
りっきー:
僕としては,まずバージョン2.0がおかげさまでご好評をいただいていますので,今後もプレイヤーの皆さんの期待に応えていくことが僕の使命だと思っています。そこはしっかり頑張っていきたいですね。
あとは,今後追加されていく新要素――例えば,「料理」とか「釣り」とか,とくに釣りとかってドラゴンクエストとしても初めての要素だと思うんですけど,触ったときに「あ,これはドラクエだわ!」って思えるものに仕上げていきたいです。
4Gamer:
MMORPGとしての発展を願いつつも,やっぱり“ドラクエらしさ”は失ってほしくないですからね。
りっきー:
逆にお聞きしたいんですが,4Gamerさんから見て「ドラゴンクエストX」ってどう映っているんですか?
4Gamer:
いや,そこは以前インタビューをさせて頂いた頃から一貫していて。なんというか,既存のオンラインゲームでは絶対にやらない判断をたくさんやっている作品だと思っています。それも難しい方向へ,あえて理想を追い求めて舵を切っているというか……。
齊藤氏:
そうですねぇ。
4Gamer:
それに「ドラゴンクエストX」は,いろんな意味で「人にオススメできるオンラインゲーム」なんですよね。MMORPGの面白さを味わえながらも,遊び過ぎにならない配慮があったり,初心者が遊びやすい工夫が随所にあったり。だから,休みを機に一人でも多くの人にぜひ遊んでみてほしいなと。今後の展開にも期待しております。
りっきー:
ありがとうございます。頑張ります!
4Gamer:
というわけで……今日はありがとうございました!
齊藤氏&りっきー:
ありがとうございました。
――12月10日収録
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