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NVIDIA,ノートPC向けのGeForce 800Mシリーズを正式発表。ゲームプレイ時のバッテリー駆動時間を延ばす「Battery Boost」がキモ
ラインナップは下記のとおり。NVIDIAは1月の時点でFermiアーキテクチャベースの「GeForce 820M」を製品リストに追加済みだが(関連記事),それ以外の製品はKeplerおよびMaxwellアーキテクチャベースとなっている。
●発表されたノートPC向け新型GPU
- GeForce GTX 880M(28nm,CUDA Core 1536基,Kepler)
- GeForce GTX 870M(28nm,CUDA Core 1344基,Kepler)
- GeForce GTX 860M(28nm,CUDA Core 1152基,Kepler)
- GeForce GTX 860M(28nm,CUDA Core 640基,Maxwell)
- GeForce GTX 850M(28nm,CUDA Core 640基,Maxwell)
- GeForce 840M(28nm,CUDA Core数未公開,Maxwell)
- GeForce 830M(28nm,CUDA Core数未公開,Maxwell)
- GeForce 820M(28nm,CUDA Core数未公開,Fermi)
「なぜ7製品のはずなのに8つ並んでるの?」「なんでGeForce GTX 860Mが2つあるの?」という疑問はもっともだが,順に説明していこう。
Keplerアーキテクチャ採用のGeForce GTX 860MはCUDA Core数が1152基で,演算ユニット数が6基,テクスチャユニット数は96基。Maxwellアーキテクチャ採用のGeForce GTX 860MはCUDA Core数が640基で,演算ユニット数は5基,テクスチャユニット数が40基と,そもそもGPUの規模がまったく異なる。一方,GPUコアのベースクロックは前者が797MHz,後者が1029MHzと,後者のほうが約30%程度高かったりする。第1世代MaxwellではCUDA Coreあたりの性能がKepler比で約30%高いとされていることまで踏まえると,総合的には似たような性能レンジ,そして消費電力になるということなのかもしれない。
ただ,ここまでスペックが異なると,2種類のGeForce GTX 860Mがまったく同じ特性になるというのは考えづらい。具体的な違いを推測するのは難しいものの,ゲームタイトルによって得手不得手が出てくる可能性はあるはずで,ここは混乱を招く原因となりそうだ。OEMとなるPCメーカーがGPUのスペックを書いてくれないと,面倒なことになりそうである。
以上4製品(というか5製品)の主なスペックは表1にまとめたので,参考にしてほしい。
続いてはエントリー&ローエンド市場向けとなるGeForce 800Mシリーズだが,実のところ,こちらは上位2モデルがMaxwellアーキテクチャを採用し,最下位モデルがFermiアーキテクチャベースであることを除くと,スペックらしいスペックがほとんど公開されていない(表2)。
ゲームプレイ時のバッテリー駆動時間を延ばす
Battery Boostとは何か
氏によれば,GeForce GTX 800Mシリーズの登場に合わせて,下記のとおり3つの新要素がノートPCにもたらされるという。
- Battery Boost
- ShadowPlay
- GameStream
Battery Boostは,バッテリー駆動時にゲームのフレームレート上限を設け,さらにゲームのグラフィックス品質設定も下げることで,GPU負荷を下げ,いきおい,ゲームプレイ時のバッテリー駆動時間を延長するものだ。Choi氏は,「バッテリー駆動時のゲームプレイ時間が短くなること。これがノートPCに残された課題だ」として,その課題に向けた解決策なのだと説明していた。
Kepler世代のGPUで,「Frame Rate Target」が用意されたのを憶えている読者もいるだろう(関連記事)。当時はデスクトップGPUの低消費電力化機能という位置づけで,サードパーティ製のオーバークロックツールから利用するような格好になっていたが,Battery Boostでは,それをノートPCにインストールした「GeForce Experience」(以下,GFE)側で設定可能にし,同時にGFEからACアダプター駆動時とバッテリー駆動時とで異なるグラフィックス品質設定を保持し,切り替えられるようになっている。
Frame Rate Targetとグラフィックス品質設定の最適化という合わせ技によって「バッテリー運用時間を最大2倍にできる」(Choi氏)ところが,Battery Boostの本質だ。
ちなみに,Choi氏によれば,Battery BoostにおけるFrame Rate Targetは,従来のデスクトップPC向けFrame Rate Targetとは異なり,内部的にGPUの動作クロックや動作電圧を変えるという,高度な処理を行っているそうだ。そのため,ノートPCにおけるFrame Rate Targetを利用できるのは,GTX 800Mシリーズのみになるとのことだった。
気になる設定のイメージは,下に示したスクリーンショットを見ると分かりやすい。まず,「Preferences」タブに用意されたBattery Boostタブからターゲットとなるフレームレートを選択する。続けて,ゲームタイトルごとにAC駆動時用とバッテリー駆動時用で異なる解像度設定と画質設定が行われるという流れだ。
なお,上に示したスクリーンショットからある程度想像できると思うが,Frame Rate Targetは,あくまでもバッテリー駆動時のみに有効となる。ACアダプターを差せば自動的に無効化されるので,「バッテリー駆動時にはいちいちGFEを開いて有効化する。次にACアダプター駆動するときはチェックを外す」といった作業は無用となる。
一方,GFEから設定するというその仕様上,ACアダプター駆動時とバッテリー駆動時のグラフィックス品質設定は,「ゲーム中にACアダプターを抜き差しすると自動的に変わる」ようにはなっていない。ゲームを“バッテリー駆動時用グラフィックス品質設定”で実行したい場合は,ACケーブルを抜いてから,ゲームを起動する必要しなければならないのだ。GFEの設定は,あくまでもゲーム側の設定ファイルを上書きするものなので,動的に切り替えることはできないのである。
なお,現時点だと,Frame Rate Targetはすべてのゲームタイトルに対して共通して適用される。Choi氏は「近い将来,ゲームタイトルごとのFrame Rate Targetもサポートする予定だ」と述べていたので,今後のアップデートで状況は変わりそうだが,現時点ではゲームごとにフレームレートの上限を変える機能は用意されていない。
国内でも利用できるので(関連記事),すでに使い始めている読者もいると思うが,ShadowPlayは,Kepler&Maxwell世代のGPUに統合されたビデオエンコーダ「NVENC」を用いた,リアルタイムのビデオキャプチャ&配信機能だ。プレイ内容を過去に遡って録画できるのが大きな特徴だが,それが,今回のGeForce GTX 800Mシリーズと,Kepler世代のGPUを採用したGeForce GTX 700Mシリーズ,あるいは「GeForce GTX 680M」「GeForce GTX 675MX」「GeForce GTX 670MX」搭載のノートPCで利用可能になるのだ。
GeForce GTX 800Mシリーズ搭載のノートPCは,ALIENWAREやASUSTeK Computer,GIGA-BYTE TECHNOLOGY,Lenovo,MSI,Razerなどから登場する見込み。国内展開しているメーカーが多いので,国内でも選択肢はそこそこ用意されるのではなかろうか。
NVIDIAのGeForce製品情報ページ
- 関連タイトル:
GeForce 800M
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