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“マナ”の溜まっている場所でゲームを作り続けたい――「Crimson Dragon」の二木幸生氏が,スマホ向け新作「街コロ」で目指すものとは
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印刷2014/03/29 00:00

インタビュー

“マナ”の溜まっている場所でゲームを作り続けたい――「Crimson Dragon」の二木幸生氏が,スマホ向け新作「街コロ」で目指すものとは

“マナ”の溜まっている場所でゲームを作り続けたい


4Gamer:
 ここからはちょっと視点を変えて,二木さんとグランディングが,目指す方向性なんかについてお聞きできればと思います。まず「街コロ」なんですが,iOS版の“次”なども考えていらっしゃるのでしょうか。

画像集#018のサムネイル/“マナ”の溜まっている場所でゲームを作り続けたい――「Crimson Dragon」の二木幸生氏が,スマホ向け新作「街コロ」で目指すものとは
二木氏:
 現時点で言えることでは,アナログゲーム版「街コロ」が,アナログゲームの世界展開を手がけるヤポンブランドさんの手で,世界13か国でのリリースされることになっています。とくにアナログゲームの本場であるヨーロッパでどんな受け止められ方をするか,結構楽しみなんですよ。

4Gamer:
 アナログゲーム版「街コロ」は,現在「街コロ」と拡張版である「街コロプラス」が出ていますよね。さらなる拡張版とかの可能性はないのでしょうか。

二木氏:
 一応予定はありますので,ご期待いただければと。
 それからiOS版「街コロ」については,配信後も定期的なアップデートを予定していて,建物の種類が増えていくのはもちろんのこと,季節のイベントやストーリーイベントなんかも考えています。あとはiOS版から販売サイトに飛んで,アナログゲーム版が購入できるようにもしたいですね。

4Gamer:
 iOS版でもっと対人戦が遊びたくなった人は,そこでアナログゲーム版を買ってほしいと。

二木氏:
 ええ。最初の大きなアップデートで実装できればと思っています。

4Gamer:
 では,少し気が早いかもしれませんが,「街コロ」以外のタイトルについてはいかがでしょうか。

二木氏:
 メインのプラットフォームは,しばらくの間はスマートフォンになるんじゃないかと思っています。その中で,できればコアゲーマー向けのタイトルを作ってみたいですね。常に持ち歩いていること,常にネットワークにつながっていることで,初めてできるようになる遊びがたくさんありますし,グラフィックスの表現力もどんどん上がってきている。これから1〜2年の間に,Xbox 360と同等か,それ以上のグラフィックスを実現できるはずです。

4Gamer:
 コアゲーマー向けのスマートフォンタイトルですか。確かに海外では,そういった流れが顕著なように感じます。でも日本国内だと,スマートフォン用ゲームというと,どうしてもカジュアルなものを連想してしまう気がします。

二木氏:
 確かにこれまでは,コアゲーマーはコンシューマゲーム機や,あるいはPCに集中していたかもしれません。でもコアゲーマーだって,スマートフォンを持っていないわけではないですよね。

4Gamer:
 それは確かに。

二木氏:
 だから,彼らに響くゲームをちゃんと作っていけば,必ず振り向いてくれると思っています。それに,例えば「パズル&ドラゴンズ」なんて,実はかなりコアなゲームじゃないですか。

4Gamer:
 真面目に攻略しようとすると,ものすごく頭を使うゲームですね。

二木氏:
 パズル自体が難しめのルールですし,育成要素だってかなり複雑です。そのうえで,ダンジョンの特性に合わせてパーティを編成しなくてはならない。コンシューマゲームと比べても,かなりマニアックでゲーマー向けの遊びだと思います。僕としては,あんなに難しいゲームに,2000万人ものプレイヤーがいるという現実が,まず信じられない。

4Gamer:
 アナログでも,最近は人狼ゲームがはやったりしていますが,あれだって,実はかなりストレスフルなゲームですよね。

二木氏:
 遊ぶ側に技術力と空想力を要求しますから。その例でいうなら,「モンスターハンター」シリーズだってそうです。あれだけシビアなアクションゲームを,何百万ものプレイヤーが遊んでいる。一口にカジュアルゲーマーといっても,日本のそれは,実はものすごく訓練されている人達なんですよ。

4Gamer:
 難しいゲームであることと,そのゲームが受け入れられるかどうかには,あまり強い相関性はないかも? そう考えると,今後はスマートフォンでもコア向けゲームが成立する余地は十分にあるわけですね。

二木氏:
 むしろ,レッドオーシャン(※競争の激しい既存市場のこと)になりつつあると思ってます。最近は同業者と話すと,スマートフォンでゲームを作りたいという話に必ずなりますし,実際毎週のように新タイトルが出てきている。だから,後発のうちとしては大変なんですけど,作る側としてはすごく面白い。“できること”と,それにかかるコストのバランスが丁度良いのも魅力ですね。

4Gamer:
 とはいえ,これまで二木さんが作ってきたタイトルの正統な続編を望む人も少なくないのでは,と思うのですが……。

二木氏:
 「ファントムダスト」は,今まで作ったゲームの中で,僕自身一番思い入れのあるタイトルなので,続きはなんらかの形で必ず作りたいと思ってますよ。

4Gamer:
 おお。思い入れというと,どんな部分にですか?

二木氏:
 いやあ。だってもう,あれはシステム自体が「俺の考えた最強のゲーム」ですから(笑)。

(一同笑)

二木氏:
 アナログゲームの話は,さっきも少ししましたが,実はあの当時「マジック:ザ・ギャザリング」(以下,MtG)にめちゃくちゃハマってまして。頻繁に箱買いしてたので……たぶん車が買えるぐらいは,つぎ込んでるハズです。で,「ファントムダスト」は,MtGの面白さをアクションゲームに持っていこう,という発想から作ったゲームなんです。

ファントムダスト
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4Gamer:
 分かる気がします。今見ても,もの凄く斬新なゲームですよね。2004年の作品とは思えないぐらいに。

二木氏:
 自分でもそう思ってます(笑)。
 さらに言えば,「パンツァードラグーン」は,“シューティングゲームを作る”という命題がまず先にあって,それを元に生まれたタイトルです。でも「ファントムダスト」は,ずっと温めていた「俺,こういうゲームが作りてえ!」があって,それを実現したタイトルですからね。

4Gamer:
 ああ,それは思い入れの総量が違いますね。

二木氏:
 そうそう。グラフィックスの表現にもかなりこだわっていて,当時のXboxのゲームでノーマルマッピングを使っていたのは,「ファントムダスト」と「HALO 2」ぐらいだったんじゃないかな。

4Gamer:
 となると,今の技術で作られた「ファントムダスト」が見てみたくなりますね。

二木氏:
 それはもう,むしろ僕が見てみたい(笑)。「ファントムダスト」のIPはMicrosoftが持っているので,Microsoft次第なんです。ただ,海外で色々と言われてるところを見ると……何かあってもおかしくないかも?

4Gamer:
 何かあることに期待させていただきます(笑)。
 では,そろそろお時間のようですので,次を最後の質問にしたいと思います。これまでコンシューマゲームの世界で活躍されてきた二木さんが,スマートフォンに舞台を移そうとしている,その理由はなんでしょうか。これまでのお話で,もうだいぶ答えは見えてきた気はするのですが,改めてまとめていただければと。

二木氏:
 ……僕が子供の頃のゲームって,なんというかワクワク感があったんですよね。お店で買ってから,家に帰り着くまでの間に,箱を開けて説明書を読み始めてしまうみたいな。あのなんだか分からない魔法の力――MtGで言えば“マナ”が溜まっている場所で,僕はゲームが作りたいんです。

4Gamer:
 マナが溜まっている場所。それが,今はスマートフォンだと。

二木氏:
 ええ。まあ最近は円熟してきていて,魔法の力もだいぶ欠けてきたとは思いますが。でも新しい機種が出るたび,どんな機能があるんだろう,どんなゲームが遊べるんだろうって,ワクワクするんです。そういう“魔法のかかりやすい場所”に,自分を置いておきたい。

画像集#012のサムネイル/“マナ”の溜まっている場所でゲームを作り続けたい――「Crimson Dragon」の二木幸生氏が,スマホ向け新作「街コロ」で目指すものとは

4Gamer:
 分かる気がします。

二木氏:
 「Crimson Dragon」だって,それは一緒なんです。あれはKinectという新しい魔法を前提に企画したものですし。新しい技術を活かしたゲームを作るのって,物凄く楽しいんですよ。

4Gamer:
 新しい技術によって生まれたゲームは,いつの時代もワクワクしますね。

二木氏:
 最近なら「Oculus Rift」とか「Google Glass」とか,新しいデバイスがどんどん出てきてるじゃないですか。そういった新しいものに,すぐ首を突っ込めるようにしておきたい。僕も40を過ぎて大分経つので,あと何本ゲームを作れるのか,分からないですから(笑)。

4Gamer:
 グランディングのゲームがダウンロード販売を中心にしているのも,そういうところに理由があったりするのでしょうか。

二木氏:
 そうですね。小粒だけど今まで見たことのないようなタイトルをたくさん作っていきたい。そもそも大作を志向するのであれば,Microsoftを辞めたりしません(笑)。それに,僕がこんな事言っていいのかどうか分かりませんが……PlayStation 4とかXbox Oneよりも,Oculus VRの「Rift」の登場のほうが,ずっとインパクトが大きくないですか? さっさと世に出しちゃえばいいと思うんですけどね。

4Gamer:
 二木さんの作った仮想現実対応ゲーム,想像するだけでプレイしたくなります。では,締めとして4Gamer読者に向けてメッセージをお願いできますでしょうか。

二木氏:
 あともう少しで,iOS版「街コロ」を皆さんに遊んでいただくことができます。一見するとカジュアルなゲームに見えるかもしれませんが,世界観は相当変ですし,やり込むほどにハマれるように作ったつもりです。そういうところはこれまでどおり,自分の味が出せたんじゃないかと思っているので,ぜひお手にとっていただければと。そしてこれからも,新しい魔法を開発していきますので,期待していてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました!

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「街コロ」公式サイト

グランディング公式サイト

 
 
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