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[SPIEL’15]日本生まれの「街コロ」が入賞を果たしたドイツゲーム賞授賞式&プレスカンファレンスレポート
拡大しつづけるボードゲームの祭典「SPIEL」
ドイツでもゲーム全体に占めるコンピュータゲームの割合は大きなものだが,ボードゲームやカードゲームの人気は,これまでにないほど高まっているという。
これを反映するかのように,SPIEL’15では会場となるMESSE ESSENのホールをさらに1つ拡張し,床面積は昨年の5万8000平方メートルから6万3000平方メートルに増加。参加者はのべ16万人が予想されており,出展910社のうち,その58%がドイツ国外(合計41か国)からとなっている。
来場者の多くは,コンピュータゲームでは得られない,“1つのテーブルを囲んでゲームを楽しむ”という社交性,社会性を好むプレイヤー達であり,そういうボードゲームやカードゲームの愛好家達が,世界中から集まっているというのが氏の見立てである。
実際に「なぜSPIELに参加するのか」という質問をFacebookで投げかけてみたところ,「まったく知らない人と一緒にゲームを楽しみ,新たな友人ができ,そして自分が知らなかった素晴らしいゲームを手にして帰る」ことを重視する回答がいくつも見られたとのこと。またドイツの市場においては,6〜13才の子供達が最も好きな遊びとしてボードゲームやカードゲームが挙がるほど,広く浸透した遊びとなっている。
ドイツゲームからユーロゲームへ,そして世界へ
いまやドイツは,世界最大のボードゲーム生産国であり,ボードゲームの人気はドイツを中心として世界中に広がっている。15年ほど前に英語圏で生まれた「ドイツゲーム(German Game)」という言葉はすでに元の意味を離れ,ひとつのジャンルを示す言葉として流通している。「勝つためには運だけでなく,戦略眼も必要となる」ボードゲームであるドイツゲームは,どんどんプレイヤーを増やし,急激に市場を拡大して,今ではヨーロッパ中のデベロッパがドイツゲームを作るようになった。そのため,ドイツゲームという言葉は「ユーロゲーム(Euro Game)」という言葉に置き換えられつつあるとのことである。
この拡大傾向は今なお続いており,南米やアフリカといった一部の地域を除き,全世界にボードゲームが広がりつつある。もちろん日本も例外ではなく,日本の新聞でSPIELが取り上げられたケースが紹介された。
このほか,プレスカンファレンスでは「カタンの開拓者たち」で有名なKlaus Teuber氏と,その息子であるBenjamin Teuber氏によるトークセッションも行われた。Klaus氏とBenjamin氏(つまりTeuber一家)による新作「TUMULT ROYAL」が紹介されたほか,またカタン20週年を記念して行われる「1000人カタン」の概要などが語られた。
ドイツゲーム賞2015 授賞式
続いて,同日夜に開催されたドイツゲーム賞の授賞式を紹介しよう。
こちらはディナーパーティとの併催となっており,受賞者である開発者や出版社スタッフも,しばしばアルコールが入った状態で登壇するという,これまたプレスカンファレンスに負けず劣らずのフランクなイベントである。なにしろ「挨拶が長過ぎる,みんな食事をしたがってるじゃないか」というMetzler氏のツッコミによってディナーパーティが開始となるほどで,実にゆるい進行である。
ドイツゲーム賞の結果は,先に掲載した記事でお伝えしたとおりだが,8位に入賞した「街コロ」は,デザイナーの菅沼正夫氏が残念ながらエッセンに来られなかったために,ヤポンブランドの健部伸明氏が代理で登壇する形となった。
8位に入った「街コロ」は,健部伸明氏(左)が代理で表彰状を受け取った |
3位「COLT EXPRESS」のデザイナー,Christophe Raimbault氏 |
2位「Orleans」のデザイナー(中央),Reiner Stockhausen氏 |
大賞「The Voyages of Marco Polo」のデザイナー,Daniele Tascini氏(右)とSimone Luciani氏(左) |
ちなみにドイツゲーム賞の授賞式では,毎年1位〜3位の作品の化粧箱が壇上に飾られるのだが,年々この箱が巨大化しているのが面白い。1位のタイトルが2位や3位の箱に負けるわけにいかないのか,パブリッシャが特注の巨大箱を用意して受賞式に臨むのが恒例になっている。
今年の大賞受賞作である「The Voyages of Marco Polo」も,本来は3位の「Colt Express」より小さい箱であるはずが,これを予想していたパブリッシャのHans im Gluckが超巨大箱(もちろん中身は入っていない)を表彰式に持ち込み,結果写真のようなバランスに落ち着いた。
最初はこのサイズの箱が飾られたのだが…… |
超巨大箱が登場 |
このことは,ボードゲームの普及と継続的な発展において何が重視されており,ドイツにおいてボードゲームに何が期待されているかということを考えるにあたって,非常に重要なポイントであるように思える。
子供向けゲームについては,日本のボードゲーム界もそろそろ考えていかねばならないはずだ。日本ならではの,日本社会の現実にフィットした形での「子供用ボードゲーム」のあり方は,いまいちど真剣に模索されるべきだろう。実際,かつては日本にも,子供を主なプレイヤーとしてデザインされ,たくさんのプレイヤーを獲得したボードゲームは存在したのだから。
ヤポンブランド 健部伸明氏ショートインタビュー
最後に,授賞式に登壇したヤポンブランドの健部伸明氏に,受賞式の感想と今年のSPIELについて話を聞いてみたので,その模様をお届けしよう。
4Gamer:
授賞式,お疲れ様でした。登壇した感想はいかがですか。
まずは菅原さん,おめでとうございますと言いたいです。僕はただの代理だから,緊張とかぜんぜんなかったですよ。楽しいだけで(笑)。
4Gamer:
健部さんは,日本のゲームを海外に紹介するヤポンブランドの代表を務めてらっしゃしますが,ズバリ今年の目標というとなんになるでしょうか。
健部氏:
とくに今年の目標というわけではないですが,より多くのゲームを多くのメーカーに紹介できればと思っています。あとは毎年この場に来て,そしてこの授賞式の壇上に日本人が上がれるようにする。それに尽きると思います。
4Gamer:
昨年の「ラブレター」に続いて今年は「街コロ」と,日本人デザイナーの作品が2年連続で入賞するという快挙ですね。
健部氏:
ええ。これはとくに強く言いたいのですが,昨年そして今年の結果を見ても明らかなように,日本人がこれらの賞を獲得することは十分にあり得ることだと思っています。僕らはそのためのサポートを惜しみませんので,自分のゲームで世界に挑みたい人は,ぜひ声をかけてくれると嬉しいです。
4Gamer:
ちなみに,今年のSPIELで注目している新作はありますか。
健部氏:
まだ全部は見ていないですけど,Eagle-Gryphon Gamesの「Floating Market」は面白そうですね。水上マーケット(船の上で販売が行われる市場)を扱ったゲームですが,「流動性相場」との間でダブルミーニングになっているのが良い。それからPlaid Hat Gamesが出してる「Tail Feather」にも注目しています。ネズミが鳥の上に乗って飛ぶゲームなんですが,フィギュアのできがすごく良くて。
4Gamer:
おお,それは面白そうですね。チェックしてみます。本日はありがとうございました。
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