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「Mantle」で「Civilization:Beyond Earth」はどれだけ速くなるのか? ベンチマークとムービーでその挙動を確認してみた
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印刷2014/11/29 00:00

テストレポート

「Mantle」で「Civilization:Beyond Earth」はどれだけ速くなるのか? ベンチマークとムービーでその挙動を確認してみた

画像集#002のサムネイル/「Mantle」で「Civilization:Beyond Earth」はどれだけ速くなるのか? ベンチマークとムービーでその挙動を確認してみた
 ターン制ストラテジーの代名詞として君臨するCivilizationシリーズの最新作,「Sid Meier's Civilization: Beyond Earth」(PC / Mac,以下 Beyond Earth)が発売されて1か月ほどが経過した。惑星開拓を繰り返し繰り返し試みている読者も多いと思われるが,ここで思い出してほしいのは,PC版Beyond EarthがAMD独自のグラフィックスAPI「Mantle」に対応する点だ。

 2014年11月時点における最速のGPUが「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)であることは論を俟たないと思うが,Beyond EarthをMantleモードで動作させると,Radeon R9 200シリーズの最上位モデルたる「Radeon R9 290X」(以下,R9 290X)はGTX 980よりも高い性能を発揮できると,AMD主張は主張している(関連記事)。

 では,実際のところ,Beyond EarthにおけるMantleの実装はどのようなものになっていて,MantleモードではDirectX 11モードと比べて何が変わるのか。本稿では,AMDによる推奨ドライバを用いつつ,そのあたりを確認してみたい。


R9 290Xのほか,上位&下位モデルでもテストを実施

EQAAや「Beyond EarthにおけるCF」の効果も検証


 Beyond Earthがどんなゲームかという話は徳岡正肇氏によるレビュー記事を参照してもらうとして,本稿ではさっそくテスト環境の話に入ろう。

R9 290Xリファレンスカード
画像集#003のサムネイル/「Mantle」で「Civilization:Beyond Earth」はどれだけ速くなるのか? ベンチマークとムービーでその挙動を確認してみた
 冒頭で紹介したとおり,AMDの主張は「Mantleの利用により,R9 290XはGTX 980以上の性能を発揮できる」というものだ。なので当然のことながら,両GPUは直接比較することになる。R9 290Xリファレンスカードには,「Uber」と「Quiet」という2つの動作モードがあるが,今回はより高い性能を望めるUberモードを用いることにした。
 また,今回はそれに加えて,デュアルGPUカード「Radeon R9 295X2」(以下,R9 295X2)と,「Graphics Core Next 1.1」準拠の「Tonga」コアを搭載する最新GPU「Radeon R9 285」(以下,R9 285),そして,エントリークラスのGPUを代表して「Radeon R7 250XE」(以下,R7 250XE)でも,その挙動をチェックしてみたいと思う。

E9 295X2リファレンスカード
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 R9 295X2を用いるのは,DirectX 11版Beyond Earthが,「Alternate Frame Rendering」(以下,AFR)を用いて性能向上を図っているのに対し,Mantle版では,「Split Frame Rendering」(以下,SFR)が自動的に選択されるようになっているためだ。
 以下,2基のGPUによる2-way構成を前提に話をするが,マルチGPU構成を描画の高速化に利用するCrossFire(やNVIDIAのSLI)の場合,あるフレームを1基めのGPUが描画中であっても,次のフレームの描画準備ができたら,2基めのGPUが描画処理に取りかかるAFRを利用が主流となっている。ベストケースでは2基のGPUが完全に並列動作するため,最も高い性能を期待できる……というのは,体験的に知っている人も多いだろう。

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 しかし,ターン制ストラテジーであるBeyond Earthの場合,一般的な最新世代の3Dゲームタイトルと比べて相対的にCPU負荷が高く,GPU負荷は低い。こういうケースでAFRを採用した場合,セカンダリGPUは空転してしまう可能性があり,しかもAMDによれば,「そんな状況下で時折発生する“GPUヘビー”な状況においては,その仕様上,処理のキュー(queue,列)は2フレーム分となるため,フレームレートが60fpsだとして,最悪の場合,マウス操作に対して120msもの表示遅延が発生することになる」という。
 それに対し,1つのフレームを上下もしくは左右分割して,2基のGPUがそれぞれの描画を分担するSFRであれば,キューは1フレーム分となるため,「操作が画面上で反映されるまでの待ち時間」はワーストケースにおいてAFR比で半分となる。「CPU負荷が相対的に高いBeyond Earthにおいては,単純にフレームレートが上がることよりも,操作への反応がよくなることのほうが重要である。だからこそ,デベロッパであるFiraxis Gamesは,Mantleの採用にあたり,マルチGPU動作においてSFRを採用したのだ」(AMD)。

 要するにR9 295X2は,このあたりの事実関係を確認するために用意したというわけである。

 一方,R9 285とR7 250XEを選択した理由はシンプル。前者は,「Beyond Earthが最新世代のGPUコアに対してもMantleの最適化を行っているのかどうか」,後者は「もともと『CPU性能がGPUのそれと比して相対的に低い環境において,CPUの負荷を下げるための技術』であるMantleモードにおける挙動はどうなっているのか」を確認するためのものとなる。

R9 285のテストにあたっては,MSI製のクロックアップモデルとなる「R9 285 GAMING 2G」(左)と,玄人指向製R7 250XEカード「RD-R7-250XE-LE1GB/D5/1ST」とまったく同じ仕様の製品(右)を用いた。R9 285 GAMING 2Gは,テストにあたって,MSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.0.0)を用い,クロックをリファレンス相当にまで下げている
画像集#005のサムネイル/「Mantle」で「Civilization:Beyond Earth」はどれだけ速くなるのか? ベンチマークとムービーでその挙動を確認してみた 画像集#006のサムネイル/「Mantle」で「Civilization:Beyond Earth」はどれだけ速くなるのか? ベンチマークとムービーでその挙動を確認してみた

 テストに用いたRadeon用グラフィックスドライバは,Mantle版Beyond Earthへの対応が明言されている「Catalyst 14.9.2 Beta」となる。WHQL(Windows Hardware Quality Labs,ウィクル)通過版(=公式版)ドライバ以外のCatalystは,新しくリリースされたバージョンが過去のリリース内容をすべて含んでいる保証がないため,今回,14.9.2βよりも新しいCatalyst 14.11.x Betaシリーズの利用は意図的に避けた次第だ。
 対するGTX 980では,Beyond Earthへの最適化が謳われたグラフィックスドライバ「GeForce 344.48 Driver」を用いる。GeForce Driverの場合,より数字の新しいドライバは過去のアップデート内容を含んでいるため,「GeForce 340.75 Driver」を用いるのが筋なのだが,これはテストスケジュールの都合によるものなのでご了承を。

 そのほかのテスト環境はにまとめたとおり。CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト時の状況によって挙動が変わる可能性を排除すべく,UEFI(≒BIOS)から無効化している。

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Beyond Earthの内部ベンチマークツールを利用

MantleモードではAAの処理が変わることに注意


 肝心のテスト方法だが,Beyond Earthには標準でベンチマークモードが用意されており,SteamのライブラリからBeyond Earthを選択して右クリックし,「プロパティ」→「一般」→「起動設定」から起動オプション「-benchmark lategameview」を付けて実行すれば,自動的にベンチマークモードが立ち上がる仕掛けになっているので,これを使いたい。

起動オプションを登録しているところ
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起動オプション。上を選ぶとDirectX 11版,下でMantle版が起動する
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 SteamのライブラリからBeyond Earthを起動するときは,Mantleモードで起動するかを選択できる。なので流れとしては,「起動オプションを付けて実行のうえ,DirectX 11モードかMantleモードかを選択する」ことになる。
 ベンチマークは,ゲーム終盤と推測できるマップに,ところ狭しとユニットが配置された状態で,画面のスクロールと拡大縮小を50秒間実施するというもの。シンプルながら,Civilizationシリーズのファンであれば相応に高い負荷だと想像できるテストになっている。

ベンチマーク実行中の様子(※クリックすると解像度2560×1600ドットの画像を表示します)
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テスト結果は,「lategameview」という拡張子のないテキストファイルで保存される。データは一行でだらーっと記録されるため,Excelなどで読み出すためには行列変換を行う一手間が必要になる
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 さて,テストが終わると,「1フレームを描画するのに要した時間」がテキストファイルに保存される。これを利用すれば,平均や最小フレームレートを計算できるというわけだ。

 テストに用いた解像度は,1920×1080ドット,2560×1600ドット,3840×2160ドットの3つ。ただし,R7 250XEで4K解像度というのはさすがに現実的でないという判断から,同GPUのみは2パターンの解像度におけるテストとなる。

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 テストにあたってのグラフィックス設定は,プリセットにあたる「グラフィックプロフィール」から,最も高いグラフィックス品質を期待できる「ウルトラ」ベースとした。「ウルトラ」を選択すると,右の「詳細ゲームオプションを表示」にチェックを入れずとも,すべての詳細設定が一番上の「高」となるので,そこから,4Gamerのベンチマークレギュレーションに準ずる形でアンチエイリアシングを無効化したものを「標準設定」とし,4x MSAA(Multi Sampled Anti-Aliasing )を適用し,さらにCatalyst Control Centerから16x異方性フィルタリングを適用した状態を「高負荷設定」とする。

 ただし,Mantleモードで実行した場合,MSAAを有効化すると,自動的にEQAA(Enhanced Quality Anti-Aliasing)が適用されることは押さえておきたい。
 EQAA自体はNorthern Islands世代のRadeonでサポートされた機能なので,覚えている読者もいるだろうが,簡単にいうとMSAAの拡張版であり,カラー値(Color Sample)比で2倍の深度値(Coverage Sample,Z値)を取ることで,エッジ判定をより厳密に行い,オブジェクトの輪郭線を自然に強調しようというものだ。下に示したのは,2560×1600ドット解像度において4x MSAAと4x EQAAを比較したものだが,3倍に拡大すると,4x EQAAのほうが輪郭線がくっきりして見える一方,等倍だと違いはそれほどないことが分かると思う。
 いずれにせよ,Mantleモードのアンチエイリアシングは,DirectX 11モードよりも負荷が若干高くなり,しかもそれは変更できないので,その点は注意してほしいと思う。

2560×1600ドット時のスクリーンショットを3倍に拡大し,そこから512×288ドットだけ切り出したもの。4秒ずつ入れ替わるように設定したアニメーションgif化してある。オブジェクトの輪郭に注目してほしい
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2560×1600ドット時のスクリーンショットを等倍で切り出したもの。やはり4秒ずつ入れ替わるように設定したアニメーションgif化したが,等倍だと違いはほとんど分からない
画像集#025のサムネイル/「Mantle」で「Civilization:Beyond Earth」はどれだけ速くなるのか? ベンチマークとムービーでその挙動を確認してみた
参考までに,スクリーンショット全体像(※クリックすると解像度2560×1600ドットの画面を表示します)。左が4x MSAA適用時,右が4x EQAA適用時だ。必要に応じてチェックしてほしい
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特定条件でGTX 980を凌駕することよりも

最小フレームレートのブーストが目を引く


 以下グラフ中,DirectX 11モードで実行したRadeonのGPU名には「DX11」,Mantleモードで実行したRadeonのGPU名には「Mantle」と付記することを断りつつ,テスト条件ごとに結果を見て行こう。
 グラフ1〜3は,標準設定における平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものだ。今回のテストにおける半ば主役といえるR9 290Xを見てみると,1920×1080ドットと2560×1600ドットの2条件,具体的には平均フレームレートが60fpsを超える条件で,DirectX 11モードとMantleモードで平均フレームレートにそれほど大きな違いはないものの,最小フレームレートには20fps以上ものギャップが生じているのが見て取れる。R9 295X2とR9 285でも同様の傾向だ。
 Mantleは実質的に,ゲームにおけるCPU負荷を下げる技術なので,相対的にCPU負荷の高いBeyond Earthでは,その恩恵が大きく出て,最小フレームレートを押し上げる効果につながったのだろう。

 最小フレームレートといえば,3840×2160ドットにおけるR9 295X2の最小フレームレートに3倍近いスコア差がある点にも注目しておきたい。これは先に紹介したAMDの言い分どおりといったところか。
 なお,R7 250XEは今回のテスト環境だと,Mantleによるメリットをほとんど得られなかった。Mantleモードであることの恩恵を受けるには,「大きなGPUボトルネックが生じない」ことが条件として挙げられそうだ。

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 続いてグラフ4〜6は高負荷設定におけるテスト結果である。AMDは,3840×2160ドットで「ウルトラ」プリセットを選択し,さらに8x MSAAを適用する条件において,MantleモードのR9 290XがGTX 980よりも高いベンチマークスコアを示すと謳っているわけだが(関連記事),アンチエイリアシングのサンプル数がより少ない条件となるグラフ6でGTX 980を逆転できているだけでなく,より解像度の低いグラフ5でも,GTX 980より良好な平均フレームレートを示した。
 GPUボトルネックが顕著になる3840×2160ドットを除き,R9 290XとR9 285で最小フレームレートがDirectX 11モード比で大きく向上しているのと,R9 295X2のSFR動作で得られる最小フレームレートが,DirectX 11モードにおけるAFRモードで得られるそれを圧倒しているのは,標準設定時と変わらずだ。

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 では,この「平均フレームレートはそれほど上がっていないが,最小フレームレートは大きく向上している」事態は,実際のゲームプレイにおいてどのような効果をもたらしているのか。それをムービーで確認してみよう。
 ここでは高負荷設定の1920×1080ドット――HDMIで出力し,別マシンに接続したキャプチャデバイス「XCAPTURE-1」で録画する都合上,解像度は1920×1080ドットが上限になる――に設定したうえで,8人設定の「一番簡単」でゲームを進め,250ターン経過したセーブデータを使い,最近景にまでカメラを寄せてから,拡大縮小させつつ,マップをスクロールさせたときの挙動を見ることにした。
 下に示したムービーは,

  1. GTX 980のDirectXモード
  2. R9 290XのDirectXモード
  3. R9 290XのMantleモード
  4. R9 290X2のDirectXモード
  5. R9 290X2のMantleモード

という順番で,それぞれ約40秒,計3分ちょっとにまとめたものだ。R9 290X2はHDMI出力を持たないこともあり,DVI→HDMI変換アダプター経由となるため,結果としてサウンドが入っていないが,他意はない。


 Beyond Earthでは,セーブデータの読み出し後などといったゲームの開始直後は,遠景表示にしたとき,ヘックスがパラパラと現れ,すべて表示されるのに時間がかかることがあるが,これは最初だけ。キャッシュされた後はそういうこともなくなるので,キャッシュされた後の挙動をチェックしてもらえればと思うが,そこに注意して見てもらうと,DirectX 11モードにある“引っかかり”が,Mantleモードでは明らかに軽減されているのが分かるはずだ。


フレームレートではなく体感性能の向上を実現した,Beyond EarthにおけるMantle


 まとめよう。平均フレームレートという「数字」を見る限り,Mantleの導入による効果は,せいぜい1割といったところだ。端的に述べて,そのインパクトは全然なく,本稿のグラフだけ流し読みしたら,Beyond EarthにおけるMantleはまったくの期待外れと思うかもしれない。

 しかし,Beyond EarthにおけるMantleの効果は,最小フレームレートの向上,より分かりやすく言い換えるならば体感速度の向上にこそある。記事の中盤で,CrossFireの動作モードに関するAMDのコメントを引いたが,MantleモードのCrossFireで,平均フレームレートの大幅な向上は期待できないSFRをあえて採用しているあたりも含め,Firaxis GamesとAMDは,「ターン制ストラテジーにおける『快適さ』とは何か」を理解したうえで,そこに向けた最適化を行ってきたと言っていいのではなかろうか。

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 スクロールや拡大縮小時における挙動の違いは,プレイ時間が長くなればなるほど“効いてくる”感じだ。Beyond Earthを本気でプレイするためにグラフィックスカードを買い換える場合に,Radeonを選択するというのは一考の価値があるとまとめておきたい。

AMD公式BlogのBeyond Earth関連ポスト(英語)

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