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外付けグラフィックボックス「AORUS GTX 1080 Gaming Box」レビュー。Thunderbolt 3接続のGTX 1080はどれだけの3D性能をもたらすか
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印刷2018/03/07 00:00

レビュー

Thunderbolt 3接続のGTX 1080はどれだけの3D性能をもたらすか

GIGABYTE
AORUS GTX 1080 Gaming Box

Text by 宮崎真一

 GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)初のノートPC向け外付けグラフィックスボックス「AORUS GTX 1070 Gaming Box」(型番:GV-N1070IXEB-8GD,以下 GTX 1070 Gaming Box)は,単体GPU非搭載のノートPCが持つ3D性能を大幅に引き上げる製品だった(関連記事)。だが同時に,接続インタフェースであるThunderbolt 3の帯域幅が足枷となり,デスクトップPC向け「GeForce GTX 1070」搭載グラフィックスカードをそのままデスクトップPCで使ったときと同等の性能は得られず,またそもそもの問題として,どのノートPCなら動作するかは試してみないと分からないというハードルの高さを抱えていたのも事実だ。

 しかしGIGABYTEは,外付けグラフィックスボックスという製品を諦めてはいなかった。GTX 1070 Gaming Boxの上位モデルとなる「AORUS GTX 1080 Gaming Box」(型番:GV-N1080IXEB-8GD,以下 GTX 1080 Gaming Box)を市場に投入してきたのである。

AORUS GTX 1080 Gaming Box(型番:GV-N1080IXEB-8GD)
メーカー:GIGA-BYTE TECHNOLOGY
問い合わせ先:CFD販売(販売代理店) 050-3786-9585(平日10:00〜12:00,13:00〜18:00)
実勢価格:10万3000円前後(※2018年3月7日現在)
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 製品名からも想像が付くとおり,GTX 1080 Gaming Boxは,内蔵するグラフィックスカードを短尺仕様の「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)へと変更した,GTX 1070 Gaming Boxの上位モデルである。
 はたしてGTX 1080 Gaming Boxは,従来製品の抱える弱点を克服できたのだろうか。ベンチマークテストを通じて明らかにしてみたい。

GTX 1080 Gaming Boxの製品ボックスと同梱物。GTX 1070 Gaming Boxと同様,GTX 1080 Gaming Boxも,製品がすっぽり入る小型のショルダーバッグに入った状態で梱包されていた。「このバッグを使ってノートPCと一緒に持ち運びましょう」ということなのだと思われる
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外観はGTX 1070 Gaming Boxと瓜二つ

ビデオ出力インタフェースは今どきの仕様に


本体正面。AORUSロゴが貼ってあるだけという見た目は,GTX 1070 Gaming Boxとまったく同じである
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 まずは外観のチェックからだが,GTX 1080 Gaming Boxの見た目はGTX 1070 Gaming Boxと瓜二つ。2製品が並んでいると,どちらがどちらか分からなくなるほどだ。
 実測サイズも約96(W)×211(D)×162(H)mmと,完全に同じ。本体左右側面に大きな吸排気用グリルがあるデザインや,本体前面のAORUSロゴがシールになっている点も変わっていないことからして,筐体部分は共用という理解でまず間違いない。

GTX 1080 Gaming Boxの左側面(左)と右側面(右)。左側面でグリルの向こうに見えるクーラーの形状が従来製品とは明らかに異なっている
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 背面はどうだろうか。電源コネクタの下に,USB Power Delivery対応のThunderbolt 3が1ポートと,USB 3.0 Type-Aポートが4つ並ぶところや,USBポートのうち,赤色の1つが急速充電規格「Quick Charge 3.0」に対応しているところは,GTX 1070 Gaming Boxから変わっていない。
 ただ,ビデオ出力インタフェースの部分は,だいぶ異なっている。GTX 1080 Gaming Boxのビデオ出力インタフェースは,DisplayPort 1.4出力×3,HDMI 2.0出力×1,Dual-Link DVI-D出力×1という構成だ。GTX 1070 Gaming Boxでは,Dual-Link DVI-D出力が2つある一方で,HDMIとDisplayPortが1系統ずつしかないという構成だったので,今どきのグラフィックスカードらしい構成となったというところか。

左がGTX 1080 Gaming Box,右はGTX 1070 Gaming Boxの背面。筐体部分のインタフェース類は変わっていないが,グラフィックスカード部分はかなり異なるのが分かる
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 なお,GTX 1070 Gaming Boxと同様,GTX 1080 Gaming Boxの筐体に電源ボタンはなく,電源ケーブルをつないだ状態で,PCとThunderbolt 3ケーブルで接続するだけで起動する。

 外観だけでなく,GIGABYTEのLEDイルミネーション規格「RGB fusion」に対応するカラーLEDイルミネーション機能を左側面に搭載する点も,GTX 1070 Gaming Boxから変わらず継承している要素だ。
 GIGABYTE独自の設定用ソフトウェアである「AORUS Graphics Engine」(以下,Graphics Engine)で,LEDの発光色や発光パターンをカスタマイズできる点もGTX 1070 Gaming Boxから変わっていない。

左側面の底部にLEDを内蔵。蛍光灯下であっても目立つほど,明るく光る
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プリセット順にカラーパターン9種類を光らせた様子。左から右に向かって1行めは赤,オレンジ,黄。2行めは緑,水色,青,3行めは青紫,紫,白の順だ。白色は,だいぶ青みがかって見える
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Graphics Engineの設定画面。LEDイルミネーションの設定パネルは表示されるものの,なぜか正常に反映されない。後述しているが,画面左側のオーバークロック設定も機能しないなど,かなり問題が多いソフトウェアと言わざるを得ない
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 しかし困ったことに,Graphics Engineが正常に機能しないという問題が出てしまった。
 今回のテストでは,Razer製の薄型ノートPC「Razer Blade」の2017年モデル(以下,Razer Blade 2017)をホストPCに利用したのだが,GIGABYTEがWebサイトで配布していたGraphics EngineのVersion 1.29では,エラーが発生して機能しなかったのだ。機材の撮影時には正常動作していたので理由は不明だが,このあたりの互換性情報をGIGABYTEは開示していないので,現状では「撮影時には動いていたものが,テスト時には動かなくなった」としか言いようがない状況である。

 また,これはGTX 1070 Gaming Boxのレビュー記事でも同様の指摘をしているのだが,Graphics Engineが持つグラフィックスカードのオーバークロック機能が正常に動作しなかった。
 GIGABYTEの製品情報いわく,GTX 1080 Gaming Boxは「OC Mode」と「Gaming Mode」からなる2つの動作モードを持ち,Graphics Engine上でどちらの動作モードを使うかを決められるとのこと。各モードの動作設定は以下のとおりで,工場出荷時設定は,GTX 1080のリファレンスクロックそのものとなるGaming Modeのほうになる。

  • OC Mode:GPUベース1632MHz,GPUブースト1771MHz,メモリ10010MHz相当
  • Gaming Mode:GPUベース1607MHz,GPUブースト1733MHz,メモリ10010MHz相当

 GTX 1070 Gaming Boxの発売からかなりの時間が経っているにもかかわらず,Gaming Engineの挙動が安定せず,かつ互換性情報が公開になっていないが,その状況はGTX 1080 Gaming Boxが登場しても,まったく変わっていないわけだ。
 日本ではAORUSブランドのゲーマー向けノートPCがほとんど市場シェアを獲得できていないだけに,他社製ノートPCとの互換性情報を出すのは半ば義務ではないかと思うが,どうだろうか。


搭載するGTX 1080カードは大型クーラー搭載の専用モデル


ケースを外した状態
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 気を取り直して,GTX 1080 Gaming Boxの内部を詳しく見ていこう。
 GTX 1080 Gaming Boxは,両側面の手前側にある2つずつと,背面にある2つという計6つのネジを外し,ケースから筐体を引き出すようにずらすと,内部へアクセスできる。
 下に示した写真は,その内部構造だ。上が本体正面向かって左側,下が右側から見たものになる。

本体向かって左側面側から内部を見たカット。写真右側が筐体前面で,グラフィックスカードの後端と筐体前面までには約20mmの余裕があるものの,補助電源ケーブルの取り回しを考えると,これより長いカードを差すのはけっこう難しいように思う
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右側面側から内部を見たカット。写真左端が筐体前面となる。カード後方への排気を筐体外へ排出するための小型ファン2基がある構造は,GTX 1070 Gaming Boxとまったく同じだ
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 搭載するグラフィックスカードは,基板上に製品型番のないものだ。見る限り,Mini-ITXサイズのGIGABYTE製GTX 1080カード「GV-N1080IX-8GD」をベースに,GTX 1080 Gaming Boxの筐体サイズに合わせた大型クーラーを組み合わせたものではないかと考えているが,確証はない。

筐体から取り出した無銘のGTX 1080 Gaming Box内蔵グラフィックスカード
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 Mini-ITXサイズということで,カード長は実測約171mm(※突起部除く)。GTX 1080 Gaming Boxに差した状態の高さ方向は,I/Oブラケット部から約25mmはみ出ているが,そのスペースを活かし,130mm角相当というかなり大きなファンと,8mm径のヒートパイプ2本,6mm径のヒートパイプ1本を採用するという,サイズを考えるとかなり豪華なクーラーを組み合わせてあるのが目を惹く。

実測で約171mmというコンパクトな基板に,130mm角相当の空冷ファンが載っているのは,なかなかインパクトがある。カード裏面には,電源部の放熱板や基板が筐体の電源ユニットと接触するのを防ぐためのスポンジブロックが2個貼ってあった。下段右で赤く囲んだ部分がそれだ
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 さて,GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点でメーカー保証は失効することを断りつつ,今回はレビューのため,特別にクーラーを取り外してGPUクーラーと基板を確認してみよう。
 基板から取り外したところ,GPUクーラーは,3本のヒートパイプがGPUに直接触れる構造となっているのが分かった。また,メモリチップや電源部もヒートシンクに密着しており,各パーツの冷却を重視したデザインなのも見て取れよう。電源部は基板裏面にもあるのだが,そちら側にも放熱板が貼ってあった。

GPUクーラーを取り外したところ(左)。ヒートパイプがGPUに直接触れる構造なのが見て取れる。右の写真で右側に見えるのは,カード背面側から外した放熱板だ
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 電源部は見る限り5+2フェーズで,GPU用の5フェーズにはVishay IntertechnologyのDrMOS「SiC788A」を採用していた。メモリ用の2フェーズ分には,Fairchild Semiconductor(現ON Semiconductor)のNチャネル型MOSFET「DH34AC 22CF 070D」を採用しているのも確認できる。

基板長171mmを実現するため,電源部は基板の後端側でコンパクトにまとめられている(左)。GPU用の5フェーズ電源回路にドライバーICとMOSFETを1パッケージにしたDrMOSを採用することで,実装面積を縮小しているようだ
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 メモリチップは,Micron Technology製のGDDR5Xチップ「MT58K256M321JA-110」(チップ上の刻印は「7QA77 D9VRL」)で,11Gbps対応。8枚でグラフィックスメモリ容量8GBを実現している。

1個の容量が1GBのGDDR5Xメモリチップ(左)と,基板裏面にあったデジタルPWMコントローラ「μP9511P」(右)
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Enhance Electronics製の電源ユニット「ENP-7145B1」。GTX 1070 Gaming Boxから変わっていない
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 筐体側もチェックしてみたが,採用しているチップやその構造などは,GTX 1070 Gaming Boxとまったく同じ。搭載する電源ユニットがEnhance Electronics製の「ENP-7145B1」(定格出力450W)なのも変わらずだ。
 PCI Express補助電源コネクタは,8ピンまたは6ピンに対応する1系統のみとなっている。

基板上の各種LSIをチェックしてみた。Intel製のThunderbolt 3コントローラは,「Alpine Ridge」こと「DSL6540」だ(左)。右は,背面USBポートの制御を担うGenesys Logic製のUSB 3.1 Gen.1ハブコントローラ「GL3523-S」を撮影したものになる
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USB Power Deliveryコントローラには,On Semiconductor製の「NCP81239」を採用していた(左)。「Cortex-M0」ベースのHoltek製マイクロコントローラ「HT32F52342」は,おそらくLEDイルミネーションの制御用と思われる(右)
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GTX 1070 Gaming Box比での性能向上は明らかだが,Thunderbolt 3が今回もネックに


 それでは,テスト環境のセットアップに入ろう。
 テスト環境はにまとめたとおり。GTX 1080 Gaming Boxは,製品ボックス付属のThunderbolt 3ケーブルを使用し,前述のRazer Blade 2017に接続してテストを行った。Razer Blade 2017内蔵のノートPC向け「GeForce GTX 1060 6GB」は,今回のテストでは使用していない。加えて,先述したとおりOC Modeに設定できなかったので,動作クロックはリファレンスクロック相当のまま使っている。

 また,比較対象として用意したデスクトップPCでは,「GeForce GTX 1070 Founders Edition」(以下,GTX 1070)とデスクトップPC向け「GeForce GTX 1060 6GB Founders Edition」(以下,GTX 1060 6GB)を使用した。2種類のデスクトップPC向けグラフィックスカードと比較することで,GTX 1080 Gaming Boxが,デスクトップPC向けGTX 1070やGTX 1060 6GBに迫る性能を発揮できるかどうか,確かめようというわけである。グラフィックスドライバは,GTX 1080 Gaming BoxとデスクトップPCともに,テスト開始時における最新バージョン「GeForce 390.77 Driver」で統一した。
 なお,比較対象のデスクトップPCには,なるべくRazer Blade 2017と近いスペックになるよう,CPUに「Core i7-7700T」(以下,i7-7700T)をチョイスしている。

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 テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション21.0に準拠。GTX 1080がハイエンド市場向けということもあり,解像度は3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3種類を選択している。

 以下,文中,グラフ中のいずれも,GTX 1080 Gaming BoxとGTX 1070 Gaming Boxは「GTX 1080 Gaming Box+Blade」「GTX 1070 Gaming Box+Blade」,比較対象のデスクトップPCは「GTX 1070+i7-7700T」および「GTX 1060 6GBi7-7700T」といった具合に「GPUとCPUの組み合わせ」で表記することを断ったうえで,テスト結果を順に見ていこう。

 グラフ1は「3DMark」(Version 2.4.4254)の「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものだ。Fire Strike UltraにおいてGTX 1080 Gaming Boxは,GTX 1070 Gaming Boxよりも約17%,GTX 1070+i7-7700Tと比べても約10%高いスコアを記録した。ただ,GTX 1070+i7-7700Tとのスコア差は,Fire Strike Extremeになると約2%にまで縮まり,“無印”のFire Strikeでは逆に約18%のスコア差を付けられている。
 比較対象のデスクトップPCと比較したとき,テスト負荷が下がるほど相対的にスコアが低下していく傾向はGTX 1070 Gaming Boxのテストでも見られたものだ。おそらく,Thunderbolt 3のデータ転送速度がネックとなり,GTX 1080の性能を引き出せていないためだと思われる。

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 グラフ2は,Fire StrikeからGraphics scoreを抜き出したものだ。総合スコアの傾向を踏襲しており,GTX 1080 Gaming BoxとGTX 1070 Gaming Boxのスコア差は15〜18%程度。一方,GTX 1070+i7-7700Tに対しては,Fire Strike Ultraでこそ約110%というスコアを示すものの,Fire Strikeでは逆に約80%にまで落ち込んでいる。

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 グラフ3は,同じくFire StrikeのPhysics scoreをまとめたものだ。Physics scoreは,CPU性能に拠るところが大きいため,GTX 1080 Gaming BoxとGTX 1070 Gaming Boxは,ほぼ同じスコアで揃っている。

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 続くグラフ4,5,6は,3DMarkのDirectX 12テストとなる「Time Spy」の総合スコア,Graphics score,CPU scoreを順に並べたものとなる。
 Time Spyにおいては,総合スコアとGraphics scoreともに,GTX 1080 Gaming BoxがGTX 1070+i7-7700Tを上回る性能を見せた。Fire Strikeでの傾向と同様に,ある程度描画負荷が大きい状況になると,グラフィックスカード内での処理性能がものを言うため,結果としてGTX 1080 Gaming BoxとデスクトップPCのスコア差が縮まったのではなかろうか。
 CPU scoreがGTX 1080 Gaming BoxとGTX 1070 Gaming Boxでほぼ横並びなのはFire Strikeと同じだ。

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 続いてゲームにおける性能も見ていこう。
 グラフ7〜9は「Prey」の結果となる。GTX 1080 Gaming Boxは,GTX 1070 Gaming Boxに比べると,平均フレームレートで20〜26%ほどスコアを伸ばしているものの,解像度2560×1440ドット以下の条件ではGTX 1060 6GB+i7-7700Tにさえ及ばない。GTX 1070+i7-7700T比では,1920×1080ドットの平均フレームレートで約55%という大差を付けられてしまっているほどで,Thunderbolt 3のボトルネックは看過できない印象を受ける。

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 その傾向は,「Overwatch」でも同様だった(グラフ10〜12)。Overwatchにおいて,平均フレームレートでGTX 1080 Gaming BoxはGTX 1070 Gaming Boxに最大約21%のスコア差を付けたものの,解像度が高くなるにつれて,その差が縮まっている。描画負荷が高まってデータの転送量が増えると,Thunderbolt 3の帯域幅が制限となって,両者の差が縮まるということなのだろう。
 比較対象として用意したデスクトップPCとの比較だと,平均フレームレートはGTX 1060 6GB+i7-7700Tの74〜94%程度に留まっている。

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 グラフ13〜15は「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果だ。PUBGにおいて,GTX 1080 Gaming Boxは,平均フレームレートでGTX 1070 Gaming Boxに対して20〜27%程度と,明らかに高いスコアを示している。
 GTX 1070+i7-7700Tに比べると,GTX 1080 Gaming Boxの平均フレームレートは77〜92%程度となっている。とはいえ,1920×1080ドットにおけるGTX 1080 Gaming Boxの最小フレームレートが,ベンチマークレギュレーションで合格ラインとする80fpsを上回っている点は評価できよう。

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 「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)の結果がグラフ16〜18だ。Shadow of Warでも,GTX 1080 Gaming Boxは,GTX 1070 Gaming Boxに平均フレームレートで20〜21%程度のスコア差を付けている。
 また,3DMarkのFire Strikeと同様に,描画負荷が小さい1920×1080ドットでこそGTX 1070+i7-7700T比で約79%のスコアに留まるものの,3840×2160ドットで肩を並べるまでに至ったのは見どころだ。Shadow of Warでも,高負荷の設定になるほどグラフィックスカード内での処理性能が効く傾向にあるようで,結果としてGTX 1080 Gaming BoxとデスクトップPCのスコア差が縮まると言えようか。

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 グラフ19〜21は「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)の結果だが,GTX 1070 Gaming Boxがそうだったように,GTX 1080 Gaming Boxのスコアも振るわない。
 3840×2160ドットにおける平均フレームレートで,GTX 1060 6GB+i7-7700Tに並ぶのがやっと。それより低い解像度では,GTX 1060 6GB+i7-7700T比で75〜81%程度と,まったく太刀打ちできておらず,1920×1080ドットで平均フレームレートがなんとか30fpsに届く程度だ。レギュレーションで平均50fps以上とした合格ラインには,まったく届いていない。

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 GTX 1070 Gaming Boxのレビュー記事においてGIGABYTEは,Wildlandsで性能を発揮できなかった理由として,

「Wildlandsは3Dリソースの消費が大きく,そのためPCIe x4(※ノートPCによってはx2)接続となるThunderbolt 3では,膨大な量のデータ転送でボトルネックが発生している可能性が高い」

という見解を示していた。どうやらGTX 1080 Gaming Boxでも,同様のことが起きていると判断してよさそうだ。

 グラフ22は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものになる。
 GTX 1080 Gaming Boxは,GTX 1070 Gaming Boxと比べて,2560×1440ドット以上で22〜24%程度高いスコアを示す一方,1920×1080ドットになるとギャップは約11%まで縮まった。スコア差が縮小した原因は,Thunderolt 3のボトルネックによる影響が大きく,結果としてGTX 1080 Gaming Boxの性能を発揮できなかったためと考えるのが妥当ではないだろうか。

 もっとも,3840×2160ドットではGTX 1070+i7-7700Tに対して約5%高いスコアを示し,2560×1440ドットではスクウェア・エニックスが示すスコア指標の最高評価であるスコア7000どころか,4Gamerがハイエンド環境の合格ラインとするスコア8500すら上回っている点は正当に評価すべきだと思われる。

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 続くグラフ23〜25は,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの平均フレームレートと最小フレームレートを解像度別にまとめたものだが,おおむね総合スコアを踏襲したものとなっている。
 欲を言うえば,最小フレームレートは高ければ高いほうが望ましい。ただ,GTX 1080 Gaming Boxは,2560×1440ドットで30fps以上の最小フレームレートを記録しているので,プレイするうえで快適性が損なわれるということはないだろう。

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 Wildlandsで振るわなかったGTX 1080 Gaming Boxだが,「Forza Motorsport 7」(以下,Forza 7)の結果もかなり悪い(グラフ26〜28)。GTX 1070 Gaming Boxに対して平均フレームレートで32〜52%程度高いスコアを示すものの,GTX 1060 6GBi7-7700Tと比べると63〜67%程度しかないからだ。
 Forza 7は決して処理負荷の高いゲームではないので,処理負荷が低いほどデスクトップPCに差を付けられるという3DMarkで見られた傾向が,極端な結果として現れたというところだろうか。

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 GTX 1080 Gaming BoxでPUBGをプレイしたときのプレイフィールについても,軽く触れておきたい。
 グラフ29は,マップ「Miramar」において高プリセットかつ1920×1080ドットでPUBGを5分間プレイしたときのフレームレートを,「Fraps」(Version 3.5.99)で記録したものだ。
 マッチングが終了し,ゲームが始まった時点から計測したものだが,最初の40秒近くは輸送機での移動となるため,フレームレートは低めだ。しかし,地上に降り立ってからは,何度か60fpsを割り込む場面があるものの,50fps以上は維持できており,快適さが損なわれることはなかった。ハイエンドなデスクトップPCには劣るものの,十分満足なプレイができていると言ってよいだろう。

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消費電力はおおむね250W前後

GPUクーラーの冷却性能と静音性は優秀


 GTX 1080 Gaming Boxの消費電力もチェックしておきたい。
 今回は,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を使い,GTX 1080 Gaming BoxおよびGTX 1070 Gaming Boxのみの最大消費電力を計測することにした。ただ,比較対象であるGTX 1070+i7-7700TとGTX 1060 6GBi7-7700Tでは,システム全体の消費電力を取得しているため,デスクトップPCとの比較にあまり意味はない。GTX 1080 Gaming Boxの消費電力がどの程度かの目安と考えてほしい。
 なお,テストにあたっては,電源プランの設定を「高パフォーマンス」で統一し,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 結果はグラフ30のとおり。各アプリケーション実行時は,Forza 7を除けばおおむね250〜260W程度といったところで,GTX 1070 Gaming Boxよりも36〜50W程度増えたことが分かる。それに対してアイドル時は,GTX 1080 Gaming Boxが26Wと,29WのGTX 1070 Gaming Boxよりも若干低めとなった。
 気にかかるのは,Forza 7の消費電力だけが200Wを切っているところだ。同様にスコアが振るわなかったWildlandsが,他のゲームと同じくらいの消費電力であるため,スコアの高低と単純な比例関係にあるわけではないだろう。そうなると,Forza 7におけるベンチマークテスト結果が振るわなかった理由は,Thunderbolt 3がボトルネックになっただけでなく,DirectX 12周りの挙動にも何か原因があって,GTX 1080が全力で動作できなかったためかもしれない。

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 GPUの温度も確認してみた。今回は,温度24℃の室内で,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。デスクトップPCのテスト環境は,PCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態で計測している。
 実のところ,グラフィックスカードごとに温度センサーの位置や温度の制御法や,GPUクーラーが異なるため,横並びの比較に意味はない,と断ったうえで見ていくとしよう。

 結果をまとめたのがグラフ31だ。GTX 1080 Gaming Boxのスコアは高負荷時が72℃でアイドル時が33℃と,なかなか優秀だ。GTX 1080 Gaming Boxのために用意された専用GPUクーラーは,申し分ない冷却性能を有すると言っていいだろう。
 また,GTX 1080 Gaming Boxの動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで話を続けると,やはり多少の動作音はするものの,密閉型のヘッドセットやヘッドフォンを装着すれば問題ないレベルだった。

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アップグレードパスとしてはアリだが,動作検証済みノートPCの情報を公開してほしい


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 以上のテスト結果を見る限り,GTX 1080 Gaming Boxのグラフィックス性能は,GTX 1070を搭載するデスクトップPCに歯が立たない程度で,GPUが持つ性能を期待どおりに発揮できているとは言い難い。やはり,Thunderbolt 3のボトルネックは相応に影響が大きいのだろう。それでも,GTX 1070 Gaming Boxから確実に性能向上を実現した点は評価したい。

 その一方で,動作するPCを選ぶというGTX 1070 Gaming Boxの問題点が,GTX 1080 Gaming Boxで解消していないことも浮き彫りになった。実は今回,Razer Blade 2017だけでなく,単体GPUを搭載しない薄型ノートPC「Razer Blade Stealth」の2016年モデル(以下,Blade Stealth)でもテストを試みていた。ところが,2台用意したBlade StealthのどちらもGTX 1080 Gaming Boxをまったく認識せず,どうやっても動作しなかったのである。

 また,前述したように,設定ソフトウェアであるGraphics Engineが,満足に機能しなかった点も問題だ。GTX 1080 Gaming Boxの実勢価格は,10万3000円前後と,決して安価な製品ではない。それにも関わらず,安定して動作するかどうか以前に,使えるかどうかさえ,実際にThunderbolt 3ケーブルを差してみない限り分からないというのは,購入を検討するユーザーにとってはかなり深刻な懸念事項である。GIGABYTEは,「どのノートPCならば確実に動作する」といった情報を公開してほしいと,切に思う。

 ゲーム用途が目的で,GTX 1080 Gaming Boxの導入を前提にノートPCを選ぶくらいなら,単体GPUを内蔵するゲーマー向けノートPCを購入したほうが,動作の確実さはもちろん,性能面でも有利だ。一方,Thunderbolt 3搭載で単体GPUを持たないノートPCをすでに使っていて,そのPCでリッチなグラフィックスのゲームもプレイしたいというのであれば,GTX 1080 Gaming Boxは選択肢となり得るだろう。
 とはいえ,そのPCでGTX 1080 Gaming Boxが正常に動作することが購入に当たっての大前提となるわけだから,その意味でも本製品は,かなりユーザーが限られる製品と言わざるを得ないのではないだろうか。

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