テストレポート
「COUGAR 300M」マウスを再テスト。無償アップグレードによって交換される新モデルでセンサー性能は改善したか?
褒めるところのないリフトオフディスタンスと,ひどい読み取り性能で,さすがにこれを勧めることはできないと,筆者は2015年5月16日に掲載したレビューで結論付けている。
では,そんなマウスをなぜ再び取り上げるのか。それは,このタイミングになって,「COUGAR 300Mが新版に切り替わる」と,販売代理店であるマイルストーンから発表されたからだ。付け加えると,すでに旧版を購入済みの人も,申請すれば無償でアップグレード版に交換してもらえる「COUGAR 300Mアップグレードプログラム」が始まっている。旧版を使っている人が交換を申し込むためのフォームも,すでに以下のとおり開設済みだ。
COUGAR 300Mアップグレードプログラム案内ページ
HEC/COMPUCASE Enterpriseおよびマイルストーンによれば,あくまでも新版は「ゲーミングマウスとして性能を向上させた新バージョン」(※マイルストーンによるリリース,原文ママ)とのことだ。
ただし,新版では(筆者が指摘した)ファームウェアだけでなく,ハードウェアレベルでの修正が入っている。実際に新しいCOUGAR 300Mと,当初出荷されていたCOUGAR 300Mの基板を見比べてみると,抵抗が1つ変更になっていた。抵抗のスペックに問題があったのだとすれば,センサーから出る(もしくはセンサーに入る)電圧がおかしくなっていたということなのだろう。エンドユーザーの認識としては,事実上のリコール,もしくは欠陥製品から良品への交換措置という理解でまったく問題ないと思う。
では,この改修版でセンサー性能は本当にマトモになったのか。ファームウェアと設定用ソフトウェアを新しくした以外は前回と環境を揃え,センサー性能をチェックしてみよう。
具体的なテスト環境とマウス設定は以下のとおりだ。
●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
- ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:FW8_20150515(※先のレビュー時はV5)
- UIXバージョン:V1.05(※先のレビュー時はV1.03)
- DPI設定:400〜4000 DPI(主にデフォルト設定の800 DPIを利用)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
5月のレビュー時と同じように,まずはリフトオフディスタンスの検証から行ってみたい。当時と同じマウスパッド14枚を用意し,厚みの異なるステンレスプレートを重ねながら計測を行った結果が表だ。
ご覧のとおり,改修版のリフトオフディスタンスはすべて2.1mm以上であり,リフトオフディスタンス周りのチューニングは依然として何も行われていない気配なのが分かる。むしろ,5月のレビュー時に「Razer Manticor」で1.7mmというスコアだったのは,逆にセンサー出力が異常だったがゆえなのかもしれない。
気を取り直して,「Mouse Tester」でセンサーの挙動をチェックしてみよう。ここではマウスパッドを「ARTISAN 隼XSOFT」,レポートレートはデフォルトの1000Hzで固定したうえで,400
下に示したグラフは,5月のレビュー時から,800DPI設定時のスコアを流用したものだ。グラフは,Y軸のプラス方向が左への移動。対するマイナス方向が右への移動時におけるカウント数,横軸がms(ミリ秒)をそれぞれ示す。青い点が実際のカウントで,青い線はこの点を正規化したものとなるが,ご覧のとおり,マウスの切り返し時となる頂点部で波形は乱れ,さらに,左から右へとマウスを振っている途中でなぜかセンサーが左方向に反応するという致命的な不具合が生じていた。これが前述した「ひどい読み取り性能」の根拠である。
では,改修版はどうなっているのか。テスト結果は以下のとおりだ。
トップクラスとは口が裂けても言えないが,少なくとも,波形を見る限り,センサー性能の致命的な問題はクリアになった,と述べていいように思う。
ようやく「売り物になった」COUGAR 300M
継続的なファームウェア改善に期待
少なくとも,国内出荷時のCOUGAR 300Mにあったセンサーの酷い挙動は,改修版で,ようやく評価の対象にできるレベルとなった。「どういう理由でセンサーの挙動チェックすらしないまま量産に入ったのか」は,ぜひ担当者に聞いてみたかったりもするが,ともあれ,事実上のリコールが入ったことで,すでに購入済みの人が泣き寝入りしなくてよくなったのは歓迎すべきだろう。
残念ながら,リフトオフディスタンスのチューニングは依然として何もされていないと言ってよく,積極的に勧められるほどの製品にはなっていないが,形状が気に入ったのであれば,改修版を購入の選択肢に入れるくらいまではしてもいいように思う。
COUGAR 300Mアップグレードプログラム案内ページ
COUGARのCOUGAR 300M製品情報ページ(英語)
- 関連タイトル:
COUGAR
- この記事のURL: