インタビュー
アニメとの同時制作が進行中の「アルスラーン戦記×無双」。アニメ再現や「無双」シリーズの爽快感はどうなるのか,本作プロデューサーに聞いてみた
今回,4Gamerは,「アルスラーン戦記×無双」のプロデューサーを務めるコーエーテクモゲームスの中臺(なかだい)重人氏に,開発バージョンのデモプレイを見せてもらうとともに,今回のコラボの経緯やゲームの特徴,アニメ版とのコラボをするにあたってのこだわりなどを聞いてみた。ゲーム版がどんな内容になるのか,無双シリーズとしての爽快感がどうなるのか気になっているというアニメファンと無双シリーズファンは,お見逃しなく。
「アルスラーン戦記×無双」公式サイト
アニメ「アルスラーン戦記」の世界を再現したストーリーモード
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは「アルスラーン戦記」と「無双」シリーズのコラボが実現した経緯を教えてください。
「無双」シリーズのプロデューサーである鯉沼(鯉沼久史氏)から今回の企画を持ちかけられました。私自身,学生時代に田中芳樹先生の書かれた小説版の「アルスラーン戦記」を愛読していたので,「これは面白そうだな」と。
4Gamer:
中臺さん自身も原作のファンだったんですね。
中臺氏:
ええ(笑)。それで私も,ディレクターを務めている青木(青木智彦氏)も,前のプロジェクトが終わったタイミングだったので,ぜひやってみようということになったんです。
4Gamer:
なるほど。ちなみに本作は,アニメ「アルスラーン戦記」とのコラボになるとのことですが,小説版でもマンガ版でもなく,最初からアニメ版というお話だったのでしょうか。
中臺氏:
実を言うと,当初,アニメの企画が進行しているとは知らなかったんですよ。講談社さんと企画の内容について打ち合わせをしたときに,「アルスラーン戦記」がアニメ化されるということを初めて聞いて,正直びっくりしました(笑)。
4Gamer:
それは驚くでしょうね(笑)。
中臺氏:
荒川 弘先生がコミック版を手がけていらっしゃることは,当然存じ上げていたのですが……ともあれ,そういうことであればと,アニメ版と「無双」シリーズとのコラボにしましょうということになりました。
4Gamer:
あえて「アニメ版」としたわけですか。
中臺氏:
ええ。バトルとバトルのあいだで展開する2Dのカットシーンは,アニメ版の素材をそのまま使用することで,コラボレーションとしての魅力を最大限発揮できると考えたんですよ。
4Gamer:
素材というと,アニメで使われるセルそのものですか?
中臺氏:
そうです。“アニメ作品を題材としたゲーム”ですから,購入してくださる方の多くはアニメ版のファンになると予想しています。そこでアニメ版の素材を使用することで,「こんな場面もあったな」と,ファンの方々に名シーンを追体験してもらえるようにしました。
4Gamer:
カットシーンはすべてアニメの素材になるのでしょうか。
中臺氏:
バトル中や一部のバトル前後のカットシーンでは,3Dグラフィックスを使っています。
4Gamer:
場面で使い分けられているんですね。ところで,デモプレイを見ていて気が付きましたが,ストーリーモードにいわゆるブリーフィング画面がなく,カットシーンとバトルが交互に展開していきますよね。
とくにバトル中は,次々に提示されるミッションをクリアしていくことでストーリーが進行していました。実際にプレイしてみると,「無双」シリーズというよりも,アクションアドベンチャーのような進行だなと思ったのですが。
中臺氏:
そうですね。「真・三國無双」シリーズや「真・戦国無双」シリーズはタクティカルアクションですから,ミッションが発生するとマップ上をあちこち移動しますが,本作ではアニメ版「アルスラーン戦記」の世界をそのまま追体験していただくところを実現しようと考えています。その意味では,アドベンチャーに近いかもしれません。
ですから,ストーリーモードではキャラクターをプレイヤーが選択するのではなく,バトル中のストーリーに応じて,プレイアブルキャラがアルスラーンからダリューンに変わるといった展開が発生します。
軍団で敵を撃破する新たな爽快アクション「マルダーンラッシュ」
4Gamer:
それでは,ゲームの内容について教えてください。基本的なプレイフィールは無双シリーズを踏襲しているようですが,本作では新アクションとして「マルダーンラッシュ」が登場しました。
「アルスラーン戦記」では,騎兵の一団が敵を蹂躙していくシーンがよく登場します。ゲーム中にも,そうした表現を取り入れようと,味方の軍団を率いて敵軍に総攻撃を仕掛けるというものを考えたんですよ。
4Gamer:
先ほどのデモプレイでも,大軍を率いて敵をまさに蹴散らしていましたね(笑)。
中臺氏:
仕組みは非常に簡単で,一定の条件を満たすとマップ上に現れる「ヒートエリア」に入り,[R2]ボタンを押すだけで発動できます。そして,その状態で「フィニッシュエリア」に到達すれば,あとはストーリーの展開に沿った演出に進みます。
4Gamer:
マルダーンラッシュを発動すると専用のゲージが表示されて,時間の経過とともにそれが減少していました。当然あれは発動時間を示しているんですよね?
中臺氏:
そうです。ただ,時間はあまり気にしなくても大丈夫です。というのも,マルダーンラッシュ発動後,フィニッシュエリアに入るまでに敵を倒すと「チェイン」を稼ぐことができ,チェインを稼ぐほどゲージも少しずつ回復しますから。
4Gamer:
なるほど。敵を倒せばそれだけ長く継続できるんですね。
中臺氏:
そして,マルダーンラッシュでより多くの敵を倒して,そのままゲージがなくなる前にフィニッシュエリアに入れば,その分だけ高い報酬も得られます。こちらはどちらかと言うと,これまでに「無双」シリーズをプレイしていただいている方や,アクションゲームの得意な方向けの遊び方ですね。アクションが苦手というアニメから入ったファンの方でも,ヒートエリアからすぐにフィニッシュエリアまで目指すだけで,迫力のある演出を楽しんでいただけますよ。
4Gamer:
ちなみにフィニッシュエリアに到達する前に,ゲージがなくなってしまうとどうなるのでしょう。
中臺氏:
マルダーンラッシュは,先ほどお話ししたように,バトル中のストーリーを進めるトリガー的な役割もあるので,もう一度ヒートエリアに戻って,マルダーンラッシュを発動させなければなりません。ただ,今回はゲームファンだけでなく,アニメファンの方も多いと思いますので,ライトユーザーでもクリアできるように調整しています。
4Gamer:
それまでに稼いだチェインというか,報酬の権利は……。
中臺氏:
当然,リセットされて稼ぎ直しになりますが,何度でもやり直すことは可能なので,失敗を恐れずに,より多くの敵を倒せるようにチャレンジしてほしいです。
4Gamer:
ゲージの状況を忘れないように注意したいですね。ちなみに,マルダーンラッシュでフィニッシュエリアに到達したときの演出としては,ほかにどんなものがありますか。
中臺氏:
ギミックを攻撃することで爆発させて状況を打開したり,大きな盾を持った兵士を吹き飛ばしたりするシーンを用意しています。実は,カットシーンだけではなく,マップ上に配置された櫓(やぐら)などの障害物を破壊することも可能です。またマルダーンラッシュには,騎兵が突撃するものだけではなく,歩兵や弓兵のバージョンもあるんですよ。
4Gamer:
マルダーンラッシュの兵種は,任意で切り替えられるのでしょうか。
中臺氏:
シナリオを損なわないよう,その場面にあった兵種のマルダーンラッシュが発動します。
プレイアブルキャラとしてアニメ版の主要人物が全員登場
4Gamer:
先ほど,プレイするキャラクターがストーリー展開で変化するとおっしゃっていましたが,ゲーム全体では何人くらいのプレイアブルキャラが用意されているのでしょうか。
まだ何人とはお答えできないのですが,アニメ版の主要人物は全員登場します。
4Gamer:
その主要人物に敵キャラは入りますか。「無双」シリーズでは,主人公の敵側からの視点で描かれるエピソードが挿入されることも少なくありませんよね。
中臺氏:
そこは今後の続報をおまちください。いまは,ご想像にお任せします(笑)。
4Gamer:
分かりました。続いて戦闘についてですが,デモプレイでは,アルスラーンもダリューンも3種類の武器をリアルタイムで切り替えて戦っていました。これは,全キャラ共通なのでしょうか。
中臺氏:
キャラクターによって2種類だったり,3種類だったりと異なります。また基本的にどのキャラクターも,アニメで使ったり所持していたものを“武器として”使用します。
4Gamer:
今回は,どちらのキャラも剣と槍,そして弓という組み合わせでした。ほかにはどんな武器がありますか?
中臺氏:
それ以外ですと,すでに発表済みですがナルサスが使う「筆」と,ギーヴが使う楽器「ウード」がありますね。筆に関しては「何で?」と驚かれた方もいらっしゃると思いますが……「真・三國無双」シリーズでは馬岱が大きな筆を持って登場しているため,「そうきたか」と思っていただける方もいらっしゃるようです。
4Gamer:
「無双」シリーズと考えると,「そうなるよね」と思えますね(笑)。
中臺氏:
はい(笑)。そこは無双寄りの解釈で追加しています。戦闘の仕様でいまお話しできる範囲ですと,武器ごとに複数のアクションフロー(コンボの種類)が用意されており,その武器を使い込んでいくことによって,アンロックされて選択できるようになります。
4Gamer:
1人のキャラクターが使えるすべての武器を,最高レベルまで使い込むことは可能ですか。
中臺氏:
もちろんできます。
4Gamer:
そのあたりが本作のやり込み要素になりそうですね。では,各キャラクターのモーションなどはどうでしょう。やはりアニメ版に寄せているのでしょうか。
中臺氏:
そうですね。キャラクターのイメージを崩さないよう,「このキャラは,こういう動きはしないだろう」という部分を極力排除しています。ただ,それが行き過ぎるとゲームとして面白味に欠けます。たとえば,ナルサスの筆のような,いわばハジケた部分は,講談社さんに確認したうえで追加しています。
4Gamer:
なるほど。デモプレイでは,ダリューン専用の騎馬アクションも披露されました。
中臺氏:
アルスラーンの母国であるパルスと言えば騎兵ということで,今回は騎乗アクションを気持ちよく表現することに努めました。従来の「無双」シリーズですと,馬は主に移動手段だったのですが,今回はダッシュ中に操作を加えることで,「パルス騎兵のすごさ」を味わっていただけます。
4Gamer:
原作の設定がしっかりと反映されているという点は分かりました。一方で,「無双」シリーズとして意識した部分はありますか。
中臺氏:
「無双」は爽快感が命です。ですから,それが損なわれるようではダメだと考えています。どんな武器を使っても,気持ちよく遊んでいただくことが大前提です。今回は,シリーズを通して追求している一騎当千の爽快感に加え,マルダーンラッシュという軍団を操って敵をせん滅する,今までとは異なる高揚感や迫力を感じられるアクションを楽しんでいただけます。
4Gamer:
デモプレイでは,ほかの「無双」シリーズよりも味方のNPCがプレイヤーキャラの周囲に多く集まっているように感じました。あれも大軍を表現するために,あえてそうしているのでしょうか。
中臺氏:
それはステージによりますね。今回見ていただいたのは,敵と味方それぞれの大軍勢が戦うという設定のステージです。そのため,おっしゃるとおり味方NPCを多くして,アニメ版の雰囲気を再現しているんですよ。
4Gamer:
青(味方)と赤(敵)のマーカーがちょうど向かい合っていて,ぶつかりあっているという感じでしたね。
ところで,見せてもらったのはストーリーモードの一部でしたが,ほかにどんなモードがあるのでしょうか。
中臺氏:
「フリーモード」と「オンラインモード」があります。フリーモードは,ご自身のお好きなキャラクターとステージを選択していただくという内容です。そしてオンラインモードは,ほかのプレイヤーとの協力プレイが可能になります。いずれも詳細は,後日あらためて公開します。
4Gamer:
分かりました。そう言えば先日,発売を2週間延ばしたというアナウンスがありました(関連記事)。
中臺氏:
発売日の変更については申しわけありません。基本的には,発表しているとおりクオリティアップが理由です。そしてもうひとつ,PS4にはソーシャルフィードバック機能があり,PS4版の「真・三國無双7」や「無双OROCHI2 Ultimate」でも採用していますが,PS4版「アルスラーン戦記×無双」では,それをさらに強化すべくお時間をいただくことになりました。
アニメ版のすべてを詰め込んだ本作。制作はアニメと同時進行!?
4Gamer:
それではアニメ「アルスラーン戦記」をゲーム化するにあたって,配慮したことなどを教えてください。
「無双」シリーズは,以前にもアニメ作品とコラボしていますが,アニメ「アルスラーン戦記」のファンの皆さんに失礼にならないように,ブラッシュアップを図っています。
とくにパルス王国を取り戻していく過程において,主人公のアルスラーンが信頼できる強い仲間達と旅をしていく重厚なストーリーを,あたかもアニメを観ているかのような感覚で楽しめるよう配慮しました。キャラクターの表現にトゥーンシェーダーを採用したのも,それが大きな理由です。
またゲームだと実際に自分が操作することで,より物語の世界に入り込めますから,アニメファンの皆さんには大きなインパクトになるのではないでしょうか。
4Gamer:
ちなみに,アニメ版のどの部分がゲームで描かれているのでしょうか。
中臺氏:
第一話から最終話に至るまで,すべてをカバーしています。まだアニメ版が絶賛放映中ですから,具体的に「アルスラーン戦記」のどこまでかと問われると,この場ではお答えできないのですが……。
4Gamer:
アニメ版の素材を使っているということですし,つまりは同時進行となるわけですよね。考えてみればアニメの最終回となるのは9月末でしょうから,本作の発売日が10月1日というのもすごいです。
中臺氏:
ありがとうございます。放映中のアニメ作品(の内容)とのコラボは今回が初めてでしたから,これまでのケース以上に,講談社さんやアニメスタジオさんと密なやり取りを行っています。
4Gamer:
あと気になるのは,発売後の展開などですが,いま教えていただける内容はありますか。
中臺氏:
まずは「アルスラーン戦記×無双」の初回限定特典として,ダリューンの武器とコスチュームを用意します。またパッケージを全国のローソンさんの店頭で先行予約していただくと,ファランギースのローソンコスチュームを特典として入手できますよ。ほかにも,アニメ版のBD/DVDの発売に合わせたキャンペーン展開なども予定しています。こちらの詳細は順次お知らせしていく形となります。
4Gamer:
分かりました。最後に,「アルスラーン戦記×無双」に注目している読者に向けて,メッセージをお願いします。
中臺氏:
アニメ「アルスラーン戦記」ファンの皆さんには,まずゲームに触れてもらって,ゲームによる追体験を楽しんでいただきたいです。また「無双」シリーズのファンには,一騎当千の爽快感に加え,マルダーンラッシュを上手に使って,いままでにない爽快感を味わっていただきたいです。ぜひ,ご期待ください。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
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(C)2015 荒川弘・田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
(C)2015 コーエーテクモゲームス
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