「角川ゲームミステリー」シリーズの第1弾として,角川ゲームスから2016年6月16日に発売予定のミステリーアドベンチャー
「√Letter ルートレター」(
PS4 /
PS Vita)。島根県を舞台に,15年前の文通相手
“文野亜弥”の謎をめぐるストーリーが展開される本作を一足先に遊んでみたので,その
プレイレポートをお届けしよう。
本作については,4Gamerでもこれまでに何度かお伝えしているが,できれば事前情報なしに遊んでほしいゲームなので,今回はあえてストーリーやエンディングの内容には触れていない。あらためてゲーム内容を整理しておきたい人は,本稿を参考にしていただければ幸いだ。
15年前の文通相手からの“存在しないはず”のラストレター
本作の物語は,改築することになった実家の荷物を整理するために帰郷していた主人公が,自室で消印のない1通の未開封の手紙を見つけるところから始まる。それは15年前,高校3年生の頃に10通の手紙を交わし,その後,音信が途絶えてしまった文通相手,文野亜弥からの“存在しないはず”の11通めの手紙だった。
物語の発端は,15年前の文通相手,文野亜弥からの“存在しないはず”の手紙
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不思議に思いながら開封した手紙には,「私は人を殺してしまいました。罪を償わなければなりません。これでお別れです。さようなら」という衝撃の告白が書かれていた。15年前,彼女の身に一体何があったのか。その真相を確かめるため,主人公は亜弥が住んでいた島根県松江市に向かう。
手紙に書かれた内容の真相を確かめるため,主人公は島根県松江市に向かう
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しかし,手紙に書かれた住所を頼りに亜弥の家を訪れてみると,そこはすでに何もない空き地になっていた。なんと,文野邸は15年前に火事で全焼してしまったのだという。それでも亜弥に会うことをあきらめきれない主人公は,亜弥の手紙にあだ名で書かれていた7人の級友を探し出し,彼らから亜弥の消息を聞き出すことを決意するのだった。
しかし,手紙に書かれた住所を頼りに訪れた文野邸は,15年前に火事で焼失していた
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手がかりをつかみ,口を閉ざす級友達から真相を聞き出せ
というわけで,亜弥の捜索に乗り出した主人公(33歳・独身男性)。11年務めた設計事務所を辞め,新しい仕事の準備を始めていた主人公には「貴之」という設定上の名前があるが,こちらはゲーム開始時に自由に変更できる。また,主人公は高校時代,何事にも全力マックスな性格から“マックス”のあだ名で呼ばれており,亜弥からの手紙でも,そのあだ名で呼ばれている。ちなみに,あだ名のほうは変更できない。
名前入力では,残念ながらあだ名の変更はできない。亜弥にジンジャーくんと呼んでほしかった……
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本作は,10通の手紙がそれぞれの章に対応した全10章構成で,ゲームは
「手紙パート」「探索パート」「追及パート」の大きく3つのパートに分かれている。
まず,各章の冒頭に挿入されるのが,亜弥からの手紙を読み返す手紙パート。1章から7章までの手紙の追伸には,必ず亜弥から主人公への質問が書かれており,これに対して自分がどう答えたのかと,亜弥への質問を,選択肢の中から1つずつ選んで返信できる。これにより,亜弥との心の距離が変化し,クライマックスである9章と10章の展開や結末が大きく変化するという仕組みだ。
手紙パートでは,亜弥からの手紙を読み直して,自分がどのように返信したのかを選択する
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これに続く探索パートでは,「移動」「聞く」「調べる」といったコマンドを使って,島根(というか松江)の各地を巡りながら情報を集めていく。ゲームには実在する観光スポットやお店が多数登場し,現地取材に基づいた背景イラストは非常に美麗で見ごたえがある。また,実在する地元の方をモデルにした人物が登場し,ときには主人公に大きなヒントを与えてくれたりするという点も,本作ならではの特徴といえる。
探索パートは各種コマンドを駆使して手がかりを探していく,オーソドックスなスタイル
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ゲームには実在する観光スポットやお店が多数登場し,その場所の観光ガイドを見ることもできる
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探索パートで亜弥の級友を探り当てると,追及パートに移行する。ここでは,頑なに亜弥とのつながりを否定する彼らに証拠や証言を突きつけ,亜弥との関係を認めさせなければならない。間違った証拠や証言を提示すると,画面左にある封筒型のアイコンが1つ破れ,すべての封筒を失うと追及パートの最初からやり直しになる。
また,ここぞという場面ではゲージの動きに合わせて自分の気持ちをぶつける
「マックスモード」が発動する。そして最後は,亜弥からの手紙を見せることで彼らの心を開かせるのだ。
追及パートでは,適切な証拠や証言を突きつけて,正体を隠そうとする級友達を揺さぶっていく
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ここぞという場面ではマックスモードが発動。ゲージが増加するほど強い言葉を相手にぶつけられる
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亜弥の手紙を読み,それまで心に抱えていたわだかまりや誤解が解消した級友達は,ようやく主人公に15年前の思い出を語り出す。こうして,級友を一人ひとり説得して話を聞いていくことで,少しずつ亜弥の正体が明らかになっていく……のだが,心を開いた級友達もすべての真相を話してくれるわけではなく,ことはそう簡単に進まない。そもそもなぜ,彼らはそろって亜弥の存在を否定するのだろうか……。
追及を終え,亜弥からの手紙を見せることで,級友達は15年前の思い出を語り出す
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ノスタルジックな雰囲気が心に染みる良質のアドベンチャー
15年前のペンフレンドの消息を追ううちに次々と現れる予想外の謎。明らかに不審な態度をとる,亜弥のかつての級友達。そして,幽霊やUFO,島根に伝わる伝説や妖怪まで絡めた,亜弥の正体をめぐるストーリーが本作の大きな魅力であることは間違いない。しかし,筆者はそれ以上に,本作が持つノスタルジックな雰囲気――とりわけ,それを強く感じさせる手紙パートに心を引かれた。
亜弥について,まちまちの証言をする人々。果たして,亜弥の正体は……?
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ペンフレンドという会ったことのない相手だからこそ,なおさら会いたくなるし,相手の気持ちに思いをめぐらせながら返事をしたくなる。もしあのとき別の言葉を選んでいたら,また違った形の“今”があったのかもしれないとも感じさせる。そこには,今となっては手の届かない過去への,甘酸っぱい未練がある。本作をプレイすると,そうした想像力を自然とかき立てられ,いつの間にか主人公と一体化したかのような感覚を覚えるのだ。
まだ見ぬ相手だからこそ,募る想いもある。本作をプレイすると,そんなことを感じさせられる
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また,美しい島根の風景と,しっとりとしたBGMも本作に何とも言えない慕情を添えており,身近とまでは言えないものの,実際に自分の身にも起こりそうな等身大の物語と相まって,じわじわとプレイヤーの心に染み込んでくる。全編を通じて感じられる,心地いい懐かしさとでもいうべき雰囲気こそが本作最大の特徴であり,魅力と言えるだろう。
実際に島根を訪れたかのような美しい風景を眺めるのも,本作における楽しみの一つ
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アドベンチャーゲームとしても非常に丁寧に作られており,誰でも安心して楽しめる点も特筆しておきたい。とくに,その場の状況に合わせたヒントなどを示してくれる
「考える」コマンドは親切で,これのおかげで初心者でも途中で謎解きに詰まるようなことはないだろう。また,本作は1周めのプレイでは真相に辿り着けない,周回プレイが前提のゲームだが,2周め以降は面倒な探索パートをスキップして次の章に進めるなど,遊びやすさにも配慮されている。
「考える」コマンドはただのヒント機能ではなく,これを使うことで状況を打開できる場合もある
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その一方で,2周め以降のプレイで解禁される3つのサブシナリオは,探索パートをしっかりと遊ばないと見つけられないようになっている。これらをクリアすると,ギャラリーで閲覧できるコンテンツが1つずつ増えていくので,物語の真相を追う過程でじっくり遊び込んでほしい……ところなのだが,少しでも早くすべての結末を知りたいという人は,上述のスキップ機能を駆使して,エンディングの回収を優先してもいいだろう。こうした遊び方の自由度の高さも好感触だ。
サブシナリオの1つは,あちこちに出没する“しまねっこ”を見つけ出すというもの。たいていの場合,ストーリーの本筋とは無関係のところに隠れているので,各スポットをくまなく探索しよう
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物語の中で次々と殺人事件が起きるといった派手さはないが,じんわりと心に残るストーリーを丁寧なゲームシステムで包み込んだ「√Letter ルートレター」。本作が若者向けでないと言うつもりはないが,33歳という主人公と同世代以上の年齢の人には,より胸に迫るものがあるだろう。良質なアドベンチャーゲームとして,広くお勧めしたい一本だ。