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印刷2015/12/28 13:42

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5人プレイでも45分で決着。ライトだけれどピリリと辛い,ポーランド産文明ビルダー「CVlizations」をSPIEL会場で遊んでみた

画像集 No.001のサムネイル画像 / 5人プレイでも45分で決着。ライトだけれどピリリと辛い,ポーランド産文明ビルダー「CVlizations」をSPIEL会場で遊んでみた
 ボードゲームには,いわば「文明ビルダー」とでも言うべきジャンルがある。SPIEL’15で異彩を放っていた「MEGA CIVILIZATION」もその一つだが,文明の勃興を扱うこのジャンルには大昔からさまざまな傑作・怪作がある。例を挙げれば,PC向けストラテジーゲームの不朽の名作「Sid Meier's Civilization」などは,少なからぬボードゲームファンに影響を与えていて,「あんなゲームを遊びたい」「作りたい」というモチベーションの源泉となっているほどだ。
 一方で,文明の興亡を扱ったゲームは,そのテーマの壮大さゆえに,どうしてもゲーム時間は長くなりがちだし,ルールも複雑化しがちだ。数千年規模の歴史を扱うのだから,当然ではあるが,実際にプレイしようとするとそれなりの覚悟(とできれば予習)が必要なことは珍しくない。

 そんな中,簡単なルール,かつ短時間でプレイでき,そして文明ビルダーならではの成長感や達成感が味わえるカードゲーム「CVlizations」がSPIEL’15に出展されていた。会場の試遊卓で実際にプレイしてみたので,紹介してみよう。

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GRANNA公式サイト(ポーランド語)



文明ビルダーなのにシンプルなルール


 「CVlizations」が出展されていたのは,GRANNAというポーランドのパブリッシャのブースだ。デザイナーのJan Zalewski氏もポーランドのデザイナーであり,完全なMade in Polandのゲームといえる。プレイヤーは,「Sid Meier's Civilization」と同じくさまざまな文明の指導者となり,自国の文明を発展させ,世界で最も幸福な文明を作ることを目指していく。
 ゲームの構造は,いたってシンプルだ。

  1. 各プレイヤーは,ターンごとに行いたいアクションを,カードを使ってプロットする。
  2. プロットどおりにアクションが実行され,各プレイヤーはそれに応じたリソースを得る。
  3. 各プレイヤーはリソースを消費して,「車輪」や「手斧」にはじまり「スマートフォン」などに至るまでのさまざまな文明の成果(「アイデアカード」として場に置かれている)を獲得する。

 完全にこれだけである。うん,実に分りやすい。

青い縦レイアウトのカードがアクションカード。横レイアウトのカードがアイデアカード。カード以外に,リソースを管理するトークン(箱の中身)が付属する
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 1ゲームは大きく3つの時代に分かれており,各時代は3ターンで構成される。プレイ人数は2〜5人だがゲームの展開は早く,3人でプレイした筆者の場合,ルール解説から始めて45分程度で決着がついた。
 このように実にシンプルなゲームでありながら,「CVlizations」にはただ簡単なだけのゲームには止まらない。最大のポイントは,アクションカードのプロットとその扱いだ。

 アクションカードのプロットは,ターンごとに手番プレイヤーから順番に行のだが,このとき,1枚は表,1枚は裏でプロットする。手番が後のプレイヤーは,前のプレイヤーがどんなアクションカードをプロットしたかを,少なくとも半分は把握できる。各プレイヤーが手元に持つリソースの量と,場にあるアイデアカードを見比べれば,さらに推測は容易になる。
 一方で,アクションカードは「参加プレイヤーのうち,同じアクションを行うプレイヤーの数」によって,その効果が変化する。そのアクションを選んだのが1人だけの場合はボチボチの結果に,2人なら最大効率の結果が得られるが,3人以上になると最低限の成果しか得られない。

 このためプレイヤーとしては,できるだけ「2人しか選んでいないであろうアクション」を狙ってプロットすることになる。もちろん,リードしているプレイヤーであれば,「最低でも2人が選んでいるであろうアクション」を推測して,わざとそこに自分のアクションをぶつけることで,ほかのプレイヤーに損害を与えるといった戦術もあり得るだろう。

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文明は何を目指すのか?


 もちろん文明ビルダーらしく,獲得した文明の成果(=アイデアカード)によっては,特殊な効果を得ることもある。例えば「手斧」であれば,木材リソースを獲得するアクションにボーナスがつく。あるいは「孤立主義」のように,1人しか同じアクションを選んでいないときに,勝利得点が得られるといったものもある。

 ゲーム勘のいい人ならばここで気付くだろう。「それって,どんなアイデアカードがあるのか覚えているプレイヤーが圧倒的に有利なのでは? 強いアイデアカードが場に出た時に,確実に購入できるようにリソースを調整すべきなんだから」。この推測は,実に的を得ている。だが,そううまくはいかないのである。

 まず,本作のアイデアカードは枚数がとても多い。その一方で,ゲームのターン数はとても少ない。つまり特定のアイデアカードを狙い撃ちしようにも,そのカードが場に出ないままゲームが終わるという可能性が非常に高いのだ。
 カードの内容を覚えていたほうが有利なのは間違いないが,覚えていないと勝ち目がないかというと,「どうもそうではないらしい」というのが,プレイしてみての筆者の実感だった。
 むしろアイデアカードにまつわる問題としては,手元にアイデアカードが増えてくると,自分がアクションを行ったとき,アイデアカードから得られるメリットを取り忘れてしまうことがある。より注意を払うべきは,むしろこちらのほうだろう。

横置きされているのがアイデアカード。だいたいこれくらいから「効果の適用忘れ」が起こりがちになる。アイデアカードは最大で9枚まで保持できる
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 ちなみに本作でもう一つ面白い点は,本作の勝利点が,自国の国民の「幸福度」を意味しているところだ。アナログゲームでは,あれもこれもと要素を詰め込んでいくと,どうしたって煩雑なゲームになる。すべての処理を人間が行う以上,煩雑なルールはつい適用を忘れたり,間違った処理を引き起こす。そしてそれが頻発するようだと,ゲームとして破綻をきたしてしまう。
 このため,アナログゲームには「誇張と省略」が欠かせない。テーマに対し,何が最も重要なファクターで,何が些末な事柄なのかをデザイナーが判断し,ゲームシステムとしてつくり上げていく。それが,アナログゲームをデザインするという作業である。

 これを踏まえて「CVlizations」というゲームを見渡すと,デザイナーの意図が見えてくる。さまざまな文明が生み出す技術や思想といった成果物がもたらしてくれるのは,直接的には「財」や「力」の形をとってはいても,究極的には「幸福」をもたらすためにあるのだ。そう考えると,いかに幸福な文明を作り上げたかによって勝敗が決る本作は,なかなかスパイスの効いた「誇張と省略」を選択したといっていいのではないだろうか。

 「CVlizations」は文明ビルダーとしては小粒なれど,決して侮れない快作だ。多人数で,かつ短時間で,ワイワイ言いながらを楽しむのであれば,本作は間違いのない選択肢となるはずだ。今のところ日本語版の発売は予定されていないそうで,プレイにはある程度の英語力が必要になるものの,機会があればぜひ遊んでみてほしいタイトルだ。

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