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インタビュー

「G2 Studios」の代表取締役社長・桜井 敦氏にインタビュー。新会社設立の経緯や組織作りの理念について聞いた

 「アイドリッシュセブン」iOS / Android)や「ツキノパラダイス。」iOS / Android)など,女性向けスマホタイトルの開発・運営を手掛けるギークスのゲーム事業部門を基盤として,2018年5月1日に新会社「G2 Studios」が設立された。業界動向に敏感な人であれば,ご存じのことだろう。

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 そもそもギークスを知らない人のために説明しておくと,ギークスとは,フリーランスのエンジニアと企業をマッチングする「IT人材事業」,ゲームアプリの開発・運営を行う「ゲーム事業」,映像・動画の制作を行う「動画事業」,ゴルフに特化してメディア運営やECなどを行う「インターネット事業」の4つを軸に展開する総合インターネットカンパニーだ。

ギークス内にて撮影
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 そのなかのゲーム事業で,「アイドリッシュセブン」や「ツキノパラダイス。」といった女性向け人気タイトルの開発が行われている。
 そんなギークスのゲーム事業部門を基盤として,事業展開のスピードを加速することを目的に,ゲームに特化した新会社「G2 Studios」が設立された。なおこれまで開発・運営してきた「アイドリッシュセブン」「ツキノパラダイス。」「ライブラリークロスインフィニット」iOS / Android)は, G2 Studiosが継承する形となっている。

 4Gamerでは新会社「G2 Studios」の代表取締役社長を務める桜井 敦氏にインタビューを行い,ギークスのこれまでや,新会社「G2 Studios」の今後の組織作り,事業展開などについて聞いてみたのでお届けしよう。


新会社「G2 Studios」設立,桜井氏が語る組織作りと事業展開について


「G2 Studios」代表取締役社長・桜井 敦氏
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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。4Gamerで桜井さんにお話をお聞きするのは初めてとなるので,まずは桜井さんご自身のこれまでの経歴を簡単に教えてください。

G2 Studios 代表取締役社長・桜井 敦氏(以下,桜井氏):
 僕はもともと,ゲームとはまったく縁のない人材業界で働いていたんですよ。最初はその関係で知り合った曽根原(ギークス代表取締役社長・曽根原稔人氏)が代表を務める,当時のベインキャリージャパン(現ギークス)のIT人材事業本部に入社しました。

 そこで4年ほどIT人材事業本部に勤めていたんですが,今から2年半くらい前でしょうか。IT人材事業が軌道に乗り出して大阪に進出したり,福岡の立ち上げに行ったり,いよいよ「IT人材事業をもっと全国区にしていくぜ!」と意気込んでいた矢先,曽根原からゲーム事業本部の本部長に任命されました。あれは全社員がどよめきましたね(笑)。

4Gamer:
 その大抜擢には,一体どんな経緯があったのでしょうか。もともとゲームに詳しかったとか。

桜井氏:
 いえ,全然ですよ(笑)。ただ僕がIT人材事業本部にいたころから,ゲーム事業本部を外から見ていて「もっとこうしたほうがいいのでは?」と,会議の場で発言したことはありました。そういうことを言っていたら,曽根原のなかで「桜井に任せてみよう」となったらしく。

 僕は昔こそ家庭用ゲーム機で遊んでいましたし,スマートフォンゲームも多少やっていましたけど,とはいえ“ゲーム事業本部”で自分は何をすればいいんだ,というのが最初の印象ですね。
 それと同時に,今まで外からゲーム事業本部を見ていて,組織としての在り方に問題があるなと感じていたので,そこをどうしていくかが課題になってくるとも思いました。

4Gamer:
 IT人材事業で得た経験を,ゲーム事業でどう活かされたのでしょうか。

桜井氏:
 まずは全員ととにかく対話しました。そもそもゲーム事業本部の本部長に,いきなりゲーム制作のノウハウも知らない僕が来たわけですから,最初は僕自身を知ってもらうことから始めたんです。僕自身を知ってもらわないことには,信頼関係は築けないですから,「僕はこういう人間なんだ」というのを,とにかく話し続けました。もともとIT人材事業時代にエンジニアの人と話す機会はたくさんあったので,彼らとの会話もとくに違和感がなかったのは,経験を活かせたところかもしれません。

 そしてやってみた結果わかったのは,人材業界とゲーム業界は扱うものは違えど,組織作りは基本的に変わらないということでした。ゲーム開発上の課題解決だったり,お客様とのやり取りも,今までやっていたビジネスと相違ないと感じたんです。つまり,ゲーム開発サイドと,ビジネスサイドのバランスの取れた組織作りが重要なんだと強く思いましたね。

4Gamer:
 そういったことを見越しての人事だったんですね。

桜井氏:
 そうなのかもしれません。曽根原自身,自分で「ダイナミックアサイン」と言ってるんですよ。「オレしかできない人事だ」って(笑)。

4Gamer:
 確かにダイナミックですね。ちなみにゲーム事業本部の課題はどんなところにあったのでしょうか。

桜井氏:
 1番の問題は人材不足でした。当時はゲーム事業本部の人員は40人くらいだったんですけど,1つのゲームを全員がフル回転して作っていたんですよ。1人1人のタスクが重くなってしまって,人さえいればスムーズにいくものもなかなか進まない状況でした。いいものを実現するなら,まずはちゃんとした土台を築かないとダメだと感じたので,まずは適材適所で仕事が回るように人材を集めようと思ったんです。

 それで就任して1か月経った頃,ゲーム事業本部のメンバーに向けて「この1年で80人の組織にするから」と宣言しました。そのときはみんな笑ってましたけど,実際1年で95人に増やして驚かせましたね。

4Gamer:
 有言実行したと。

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桜井氏:
 あとから言うのは簡単なんですけど,かっこ悪いじゃないですか。それに僕自身が有言実行しないことには,周りがついてこないので。「こういうことをしたい」と言い続けることが大事かなと思っていて。今では150人ほどの組織になりましたけど,「来期は300人くらいの会社にするよ」ってすでに話していたりします。

4Gamer:
 300人……! 新会社設立に伴い,採用枠も増やしてくということですか。そういった組織作りをギークスでしていった結果,「アイドリッシュセブン」「ツキノパラダイス。」などのヒット作を作り出してきたんですね。ちなみに,ヒットの秘訣はなんだとお考えですか?

桜井氏:
 ヒット作の秘訣は……誰にもわからないと思います。その時代のニーズにあったタイミングでリリース出来るかどうかも重要ですし,秘訣がわかっていたら,みんなヒットしているでしょうし(笑)。ただ,ヒットする確率を高められるメンバーがいるので,お客様がどうしたら楽しめるのかをとことん考え,かつ自分たちが本当におもしろいと思えるものを作っていくことが大事だと思っています。そして,働きやすい環境作りをして,より良いものを作れるようにしていくことが,僕のミッションなんです。

 僕はゲームは作れないですから,プロの仕事はプロに任せています。ゲームに限らず,結果を求めて仕事に取り組むのはビジネスマンとして当たり前で,例えば営業マンなのにモノが売れないなら意味ないですよね。ゲームも,お客様に楽しんでもらえるものを作る使命がありますし,それをできる集団が弊社にはいるので,すごく信頼しています。

4Gamer:
 実際,開発力・運営力の活躍を評価され,バンダイナムコエンターテインメントから賞をいただいていましたよね。

桜井氏:
 はい。バンダイナムコエンターテインメント社主宰の「第6回デベロッパーズミーティング」で,スペシャルサンクス賞をいただきました。バンダイナムコエンターテインメントの女性向けタイトルのなかでも,「ツキノパラダイス。」は結構注目株になっていたようです。

 近日「アイドリッシュセブン」が台湾,香港,マカオで配信されることが決まっていて,まだ事前登録を開始してそんなに経ってないんですけど,すでに登録者数は2万人を越えています()。台湾で2万人って,結構すごいことなんです。台湾の市場規模はまだ小さいですけど,アジア圏をとるうえで結構重要な位置づけなので。ゲームは海外でも共通の娯楽ですし,ほかのタイトルも楽しいものだったらどんどん海外にも広がっていけばいいなと考えています。

5月25日に配信


■人を見る目:人材を見るときのポイントとは?

 仕事柄,これまでさまざまな人と対話してきた桜井氏に,人材選びのポイントはどこにあるのか,気になったので聞いてみた。すると「話すときに,その人の背景を想像しながら話すようにしている」と意外な答えが返ってきた。

 桜井氏曰く,「質問に対する答えが正しい,正しくないかは,結局個人の価値観。でも思考は,生まれたときから現在に至るまでに形成されていて,そうは変わらない」のだという。続けて「親からどういう影響を受けたとか,小さい頃はどのように育ったのか,その人の背景を想像しながら話して,それが見えない方はどんなに表面上の印象がよくても,冷静に判断しています」と教えてくれた。

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 “背景を想像する”という想定外の答えに,「ええっ?」と驚いた拍子に表情が緩んだ筆者。その表情を見て,桜井氏はすかさず「その笑顔が,本当かどうか考えながら話すんですよ。引っかけで“その笑顔嘘かもね”と質問したりして」と突っ込む。なるほど……と思ったと同時に,面接でもないのに無性に緊張してしまった筆者なのだった。

 ほかにもいろいろポイントはあるようだが,採用にベストはないとのこと。面接は初対面同士でお互い探り合う“お見合い”みたいなもので,1度の面接で相手を判断するのは長年経験している桜井氏でも難しいそうだ。



4Gamer:
 続いて新会社のお話もお聞きしたいのですが,設立することとなった経緯やきっかけを教えてください。

桜井氏:
 半年ぐらい前から構想としてはありました。曽根原はグループ全体を見て,僕はゲーム事業の拡大を考えていて,お互い話をしていくうちに,ゲーム事業本部を子会社化することによって,よりスピード感ある意思決定ができ,ゲーム事業のブランディング力も高まるんじゃないかと。

4Gamer:
 そういう経緯があったんですね。それにしても決断が早い(笑)。

桜井氏:
 曽根原は物事をとてもシンプルに考えるんですよ。例えば何かを始めたとして,「なんでこのタイミングだったんですか?」と曽根原に聞くと,だいたいすべて「やりたいから」と,極めてシンプルな答えが返ってきます。僕は曽根原のそういうところを尊敬していますね。自分の立場とか,僕の立場とか,利害関係とかそういうことを考えてると,決められないじゃないですか。シンプルって,なかなか奥深いですよ。

4Gamer:
 シンプル……深い。そういえばギークスやG2 Studiosのロゴもシンプルなデザインですね。ロゴに込められた想いはあるのでしょうか。

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桜井氏:
 ギークスのロゴの葉っぱのマークには,すみずみまで血が通う“葉脈”という意味が込められているんですよ。新会社のロゴは,ゲーム事業本部のデザイナーが企画して作ってくれたんですけど,それにも葉っぱがあり二葉に分かれています。それはやはりギークスあってのG2 Studiosだということが表現されているんです。ちなみに我々がコーポレートアイデンティティに掲げている「アソビ創造集団。」も,ギークスの価値基準の「Buddyの心得」のなかからもらいました。

4Gamer:
 ギークスの理念を踏襲されているんですね。組織作りも,ゲーム事業本部時代に築かれたスタジオ制を継承されている形ですか。

桜井氏:
 じつは段階がありまして,結論からいうとスタジオ制()は廃止したんです。最初はスタジオ制がベストだったんですけど,今は1対150のフルフラットな組織に変えました。

※プロジェクトを複数まとめて管理する体制

4Gamer:
 “フルフラット”とは?

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桜井氏:
 会社組織では極めて異例だと思うんですけど,中間管理職をすべて排除して,僕1人 対 スタッフ150人の組織にしました。組織って間に人を入れたがるんですけど,それによってスピードも落ちるし,伝言ゲームすぎて話が曲がるんですよね。すべてダイレクトに僕が受けることで,提案だったり,課題だったり,不満に思っていることだったりを把握できるようになりました。

 ただ,この先もっとスタッフが増えて1対300になったらさすがに難しいですね。今はフルフラットでいいかもしれないですが,世の中のニーズによって組織の在り方は変えていかなければなりません。組織を作るうえで何より,お客様に対して“G2 Studiosが最高の会社であるべき”という考え方が根本にあるので,いかに時代に合わせて会社を変革していけるのかが重要だと思っています。

4Gamer:
 確かに300人を相手にするのは大変そうです。

桜井氏:
 今後はプロジェクトを横断的に関われるポジションや,フレキシブルに動けるチームを作っていきます。縦と横の関わりを強化していくことで,例えば開発メンバーが急遽足りなくなった場合も,いろいろとカバーできることがあるので。

 じつは今現在も役職としてではなく,“役割”としてエンジニアをまとめられる人材を各プロジェクトに配置しています。役職がついているからではなく,実績があってみんなが尊敬できる相手だからこそ,自然とその人が中心になっていく形ができているんです。

 ただ役職がないから評価していないことはなく,きちんと相応の評価をしています。だからこそ,「役職なんていりません」というメンバーが多いんです。そういった僕らの経営理念を理解してくれるメンバーが集まって組織が作られていますね。

4Gamer:
 組織作りをしていくなかで,桜井さんが社員に求めることがあったら教えてください。

桜井氏:
 求めることは“基本的にプラス思考であれ”ですね。物事は結局とらえ方次第なので,マイナス思考からは何も生まれません。気合いを入れるとかそういうわけではなくて,「嫌だな,なんでこんなことしなきゃいけないんだろ。でもやらなきゃ」と思うのか,「この業務を効率的に終わらせて,早く飲みに行こう」と思うのか,どちらがよりハッピーになれるかというとらえ方をしてほしいと思っています。


■社長と社員:話しやすい環境を作る大切さ

 フルフラットな組織作りをしていくうえで,桜井氏は社員から自分に対する“話しやすさ”を意識しているという。「話しかけにくい上司に,何か情報を入れようとは思わないじゃないですか。そもそも僕は偉くないですから,偉そうにしたって仕方ない。みんなが頑張ってくれたから,たまたまジャッジできる立場にいるだけ」と桜井氏は語る。

 また桜井氏はどんな場面でも自分から積極的に話しかけ,社員が髪を切ったり,色を変えたりしたら誰よりも早く反応するそうだ。ちゃんと1人1人を見ていると相手に気づいてもらうことで,自分が認められていると感じてもらえるのだという。そこから生まれる信頼も,大事だと話した。
 余談だが,「最近髪切ったねって気づいてもらえると,人は嬉しいじゃないですか」という桜井氏の言葉に,その場にいた女性全員が「うんうん!」と同意したのは,きっと今の世の中,そういう人が少ないせいかもしれない。

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 さらに「もし社員から話をしたいと言われたら,どんなスタンスで聞くのでしょうか」という質問に対し桜井氏は,「相手の顔を見て,どういう話なのかを見極めて使い分けている」と答えた。例えば,不平不満の場合は会議室をとって時間を決めて,言いたいことを聞く。すべて聞き終えたあとは1回検討するからと簡潔に終わらせ,必ずフィードバックをするのだという。ただし要望をすべて満たすわけではなく,ある程度は受け入れつつも,自分自身で考えて環境を変える努力をしてほしいと伝えるのだとか。

 社員のことをつねに気にかけている桜井氏は,「僕は会社に行くのが楽しいし,みんなの顔も見たいし,だから元気じゃない人がいたら気づくんですよ。もちろんいつも元気な人はいないけど,誰かに声をかけてほしいときだってあるじゃないですか。100%できているかって言われたら,怪しいですけど,極力そうしたいと思っています」と笑顔で想いを語った。





4Gamer:
 あくまで楽しむことが大事なんですね。事業展開もお聞きしたいんですが,G2 Studiosは“スマートフォン向けゲーム事業に特化した会社”とされていますが,コンシューマやPC向けタイトルの市場に進出するビジョンはありますか。

桜井氏:
 今はスマホ向けが主ですが,ブラウザゲームやコンシューマ系も作りたいという声は,社内で上がっています。ゲームに特化した新会社ですので,そういうチャレンジは今後非常にしやすくなるんじゃないかと。今現在,自由に新しい技術の開発やゲームが作れる環境にしているので,じつはすでにR&D(研究開発)を進めていたりします。

 細かい内容はまだ言えないのですが,それは必ずしもお客様向けに作っているものだけではありません。僕たちは“遊び”を楽しむことを大事にしているので。セクションごとに,いろいろ遊びながら研究開発を進めている最中なんです。

 ちなみに今年は,新卒社員を3チームに分けてゲーム開発を研修課題としています。自分たちがおもしろいと思うゲームを自由に作ることで,ゲーム作りの基礎も学べますし,何より楽しいかどうかを自分で考えて突き詰めてほしいんです。そこを経て,プロジェクトにアサインしていく,という形をとっているので,今からどんなものができるのか楽しみにしています。

4Gamer:
 G2 Studiosが掲げる「アソビ創造集団。」ですね。ではしばらくはデベロッパ戦略ということでしょうか。

桜井氏:
 そうですね。2020年くらいまでは,デベロッパ戦略で考えています。僕たちは今,パブリッシャ様とお付き合いさせていただいているなかで,各社のやり方とかノウハウを学べる状態にいて,つねに最新の開発環境や今のトレンドを追えるわけです。
 このノウハウを溜めたことによってチャレンジできることが,今後はたくさんあると考えているので,2020年以降は勝負を賭けたいですね。

4Gamer:
 2020年以降はパブリッシャとしても……。

桜井氏:
 はい。今はギークスの社名認知が上がってきましたが,これからのゲーム業界ではG2 Studiosの社名が認知を取っていくと思います。今は,女性向けタイトルで開発をどこに依頼するのか,各パブリッシャ様のなかでも,僕たちの会社の名前は挙がるようになってきたと思います。これは2年前にはなかったことでした。これまでメンバー全員で取り組んできた結果が,パブリッシャ様やゲームを遊んでくださるお客様の注目を集めているんだと思います。そういった流れを大事にしつつ,G2 Studiosの可能性をより広げていきたいですね。


■パブリッシャとしての反省点:すべてが中途半端だった

 2020年まではデベロッパ戦略を進めると語る桜井氏。その戦略に至ったのは,桜井氏の「僕たちにパブリッシャはまだ早い」という思いからだった。

 その理由として,プロモーションが手探り状態だったことを挙げる。他社を見ていると,アニメやCMなどをやっているが,それには莫大な費用がかかってしまう。中途半端に手を出してしまったことで,思うようにいかないことがあったようだ。

 しかしこの反省を踏まえたうえで桜井氏は,「将来パブリッシャとして成功するには,今はデベロッパとしてやっていこう。そして,十分な知識を得たタイミングでチャレンジしよう」と,全員が納得できる形にしたという。

 また桜井氏は,「今の時代,このタイトルは売れるだろうと前評判が高いものもヒットタイトルになるとは限らない」と,女性向けタイトルの難しさを話した。だからこそ,今僕たちに足りないパブリッシャとしてのノウハウを,他社から吸収していくのだという。「開発の技術を提供しつつ,ノウハウを学び知見を蓄積していきたい」と桜井氏は語った。




4Gamer:
 ちなみに桜井さんは他社のスマホゲームもプレイされますか?

桜井氏:
 やはり仕事柄,新しいものが出たらチェックしています。自分のなかで「すごい!」と思える作り方をしているゲームってたくさんあるので。あとはゲームで遊んでいて課金したくなるタイミングとかも知りたいじゃないですか。遊んでいくうちにどんどんつまらなくなるゲームとかもあるでしょうし,そういったことを感じたら,社内で共有しています。

4Gamer:
 日々研究されているんですね。最近注目した作品はなんでしょう。

桜井氏:
 少し前になるんですけど,チュートリアルでおもしろいと思ったのは,ポケラボの「SINoALICE」iOS / Android)です。あの世界観の作り方は素晴らしいですし,どんどん引き込まれて気づいたらチュートリアルが終わっている感覚って,なかなかないことだと思いました。
 あとはポノスの「ファイトクラブ」iOS / Android)も,シンプルなのにかわいいキャラクターが戦っていて,こういう簡単操作なら女性でも全然できますよね。

 さらにいうと,実写モノにも注目しているんですよ。GREEの「NEWSに恋して」iOS / Android)とか,いわゆるファン向けのゲームは,1つのキーワードだと思っています。これからはゲーム好きだけにターゲットを絞るのではなく,もっと裾野を広げたほうがいいんじゃないかなと。

 普段はゲームに課金しなくても,このIPが大好きだからグッズをたくさん購入するという人は,大勢いるじゃないですか。結局,そのIPの何に投資するのかが,たまたまゲームでもいいわけで,それによってゲームを好きになって遊んでくれたら最高ですよね。そういう意味では,実写モノに対する期待度はかなり高いというか,おもしろそうだなと思っています。

4Gamer:
 では最後にメッセージをお願いします。

桜井氏:
 ゲームだったり,便利アプリだったり,スマホというツールからエンタメが生まれていくって,すごく楽しいことだと僕は思います。そういった楽しいものを僕たち作り手側が遊びながら作っていくこと,さらにそのなかで1人1人が成長していける環境を作ることが,企業像というか大事にしたいことです。もしギークスやG2 Studiosに興味のある人がいたら,いつでも遠慮無く来てほしいなと思っています。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 「G2 Studios」の代表取締役社長・桜井 敦氏にインタビュー。新会社設立の経緯や組織作りの理念について聞いた

4Gamer:
 ありがとうございました!


■内定辞退0:飽きさせない研修

 新卒の研修にも力を入れているG2 Studios。桜井氏は「僕たちは新卒採用に強いんですよ。内定辞退者は去年は0でした」と語った。その理由は,“飽きさせない”ことだという。飽きさせないといっても簡単ではない。一体どんな研修をしているのだろう。

 さらに突っ込んで話を聞くと,少しだけその秘密が明らかになる。まず1つはインターンの内容は,去年入社した新卒に任せているということ。より年齢や立場の近いメンバーが加わることによって,若い世代が楽しいものがわかるからだという。また入社してきたときに見知った先輩が1つ上にいることで,その先輩の成長を目の当たりにできる。そうすることで僕も私もあんなふうになりたい,という循環を作っているとのことだ。

 もう1つは飽きさせない研修だ。G2 Studiosの優秀なメンバーがカリキュラムを考え,新卒のメンバーとしっかり向き合って教育しているのだという。普段はあまり口を出さず,自由にさせるタイプの桜井氏だが,カリキュラムに関しては内容をチェックして間違った方向性なら修正したり,「もっとおもしろい内容に」など助言したりすることもあるとのことだ。



 いかがだろうか。今回筆者は,組織は人間が作るもので,そのなかで人と人との対話が非常に大事だと改めて感じるいい機会になった。本稿を読んで,ギークスやG2 Studiosの魅力が伝われば幸いだ。

G2 Studios公式サイト

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