プレイレポート
アズレンのYostarが贈る,新作「Epic Seven」を先行体験。未来につなげるアニメRPGとは?
本作は,同社が先日開催したリアルイベント「アズールレーン 2nd Anniversary Fes.」でも,その一端が紹介されたタイトルだ。
女神と魔神の争いにより,破壊と再生を繰り返してきた世界で,プレイヤーは「7回目の世界から始まる物語」を体験する。タイトル名のEpic Sevenも,硬めに訳せば「7回目の壮大な叙事詩」といったところか。ゲーム内容を表現してのことらしい。
最大の特徴は,独自開発のグラフィックスエンジン「YUNAエンジン」を用いた2Dアニメーションにある。4K解像度に対応し,滑らかな高速描画が可能なこのエンジンにより,本作では“アニメの中を冒険しているような感覚”でストーリーやバトルを体験できるという。
会場ではまず,同社の代表取締役社長である李 衡達氏から,日本のYostarの現状と,本作を運営することになった経緯が語られた。
Yostarと言えば,10月からTVアニメも放送されている「アズールレーン」でお馴染みの運営会社だが,李氏は「これまで1本のゲームでやってこられたのは恵まれた環境だった」と前置きしつつ,ゲームパブリッシャーとしての現状は,ビジネス的に不健康であると語った。
それを打開するのがEpic Sevenなのだろう。つまりYostarは今後,会社として健康になるために“複数タイトルの展開”に注力するようだ。
開発元はSUPER CREATIVE,配信元はSmilegate Megaport(オンラインFPS「クロスファイア」シリーズなどでお馴染み)のEpic Sevenは,2018年8月ごろからアジアや欧州で順次配信されてきた。
李氏は当初から本作に強い関心を持っていたらしく,実際に遊んでみたスタッフらも満場一致で「これは面白い」と感じたという。そこで一同がSUPER CREATIVEにアプローチしたところ,SUPER CREATIVE側もYostarの作品や姿勢に好感を持っていたことから話はスムーズに進み,2社による日本展開のプランがスタートしたとのこと。
しかし,グローバル展開についてはすでにSmilegate Megaportに任していたことから,日本パブリッシングについては上記3社で相談しなければならなかった。その結果,日本での配信元はSmilegateに,ローカライズやカルチャライズを含む運営元がYostarに決まったらしい。
外野としては,なにはともあれだ。Epic Sevenが無事リリースされるようになった,それだけで喜ばしいことである。
ルーズさをしらみ潰しにするスピード感
その日,第六世界は魔神に破壊された。戦渦が広がりきったこの地で,魔を討ち滅ぼし,世界を守れる存在は唯一,生命の女神ディーチェにより生み出された“聖約の継承者”ラスと仲間たちだけだったが,決死隊めいた彼らは多くの犠牲を支払いながらも,魔神と使徒,それに仕える魔物に敗北した。序章では,この救いのなかった結末から描かれる。
世界は暗転する。ラスは騒々しさに眠りから目覚める。崩壊した第六世界の記憶を保ち続ける彼がそこで目にしたのは,明るく光に満ちあふれた“20年前に魔神が倒された世界”だった。20年前のその日は,ラスが魔神に敗れ,世界が壊された日。しかし,彼の眼前に広がる光景は戦火を感じさせぬ,平和な未来の姿。それになぜ,俺だけが眠っていた?
ラスは第六世界のときの記憶をいっさい持たない旧友ヴィルドレッドに連れられ,魔神を倒した張本人で,ラスの目覚めを予知していたイゼラ国の女王ディエネを訪ねることに。その道中,聖約の継承者と宿命をともにする神獣アルカサスや,少女にしか見えないイゼラの王子アイテールと出会いつつ,王国に無事たどり着いたラスは,女王の側近であるホムンクルス(魔物)の少女メルセデスと出会う。それから彼は彼女に先導され,王国に蔓延る脅威を調べに行くことになったのだが――。
序盤の流れは,物語的にもチュートリアル的にも王道RPGの文脈で想像しやすい内容だ。なお,実際のゲーム内テキストに“このような硬さ”はなく,シリアスからギャグまで緩急もあって読みやすい。
“聖約の継承者”ラス |
ヴィルドレッド |
「冒険」(クエスト。スタミナ制)は2D画面で,画面をタッチした方向に横スクロールで進み,モンスターとエンカウントしたら戦闘開始だ。画面内のキャラクターはすべて2Dで描かれており,どれほど些末なモンスターであろうと,こだわり感のあるアニメーションで動作する。
バトルは敵味方を問わず,アクションゲージが100%になったキャラクターから順に動けるターン制で,キャラの行動はそれぞれ固有の「3種のスキル」からひとつを選択する。例えばウォリアーなら単体攻撃・単体必殺・範囲必殺,プリーストなら単体攻撃・範囲回復・範囲防御などがあり,目にした範囲ではスキル名称や効果すらもすべて違っていた。
スキルを選択し,対象をタッチすると行動開始だが,この一連の流れはとてもスムーズだ。内部処理のためのディレイや画面停止など,妙な待ち時間がいっさい発生せずに“プレイヤーがターゲットを選んだ瞬間,派手なアニメーションの攻撃”が発動する。
このワンタップで流れるように進行していくところが,本作が掲げる「ターン制バトルのルーズさの克服」なのだろう。
バトルではそのほか,同タイミングで行動可能状態の仲間がいるときに発動できる「連携攻撃」,攻撃などをすると溜まるリソース「魂力」,魂力を消費してスキルの性能アップやクールタイム減少を行う「魂力解放」,さらに大量の魂力を確保したときだけ召喚可能な「神獣」など,RPGとしてのバトルシステムに多様性が設けられている。
神獣については神々しい獣(アルカサスの真の姿),巨大なロボット(?),壮健なドラゴンの姿を確認できた。とくにチュートリアル中に発動演出が見られた巨大なロボット(?)は,それこそ“スーパーロボットが超必殺技をかましたときのような大爆発感”が表現されていて,バトルシーンへの気合いの入れようを感じるほかなかった。
それでいて,戦闘開始時も戦闘終了後も暗転やローディングなどがほぼない。いわば“2Dのシームレス”といった感覚で,プレイが途絶させられることなくゲームを進行させられる。クエストクリア後もさらに画面端まで進んでいけば次のクエストがはじまるし,疲れたときは定番のオート戦闘を駆使すればよいと,遊びやすさはなかなかのものだ。
バトル系コンテンツには,さまざまな迷宮に潜る「戦闘」も存在する。こちらは名称に反して“フィールド内の奥側・手前側への移動も駆使して動き回る探索もの”になっており,序盤に開放される城内の探索などは,それこそシティアドベンチャーのような楽しさがあった。
また,迷宮の攻略中は1度だけ「キャンプ」を張れる。キャンプではパーティに編成したキャラクターたちが,さまざまな種類の話題を用意してくれて,それらを一定回数だけ聞くことができる。周囲の仲間と話題との相性がよければ,信頼度と呼ばれる数値も獲得できる。
ほぼすべてのデザインが2Dグラフィックスで,キャラクターたちの拠点が酒場で,RPGだけどベルトスクロールアクション的なプレイ感覚で,攻略中にキャンプを張れてと……ゲームジャンルや作風がまったく違うので鵜呑みにしないでほしいが,なんとなく「ドラゴンズクラウン」の匂いを想起させられた。狙っているかはさておいても,スマホ向けRPGにありがちな単調な戦闘の連続だけは強いない,といった表明に聞こえる。
冒険や戦闘に連れていけるキャラクターは主人公ラスを含み,ローンチ時点で100体以上の実装が予定されている英雄たちだ。これらもすべて2Dアニメーションが用意される(中にはアニメ映像も)。
登場人物の背景は,ラスたち聖約の継承者をはじめ,学生や精霊,国家や組織の異なる者,他の宇宙からの訪問者に,過去や未来にいる存在などバラエティ豊かだ。さらに戦闘で倒したモンスターもランダムで獲得でき,パーティに編成できる充実ぶりである。
パーティ編成は最大4人で,フレンドやNPCのサポート1人,神獣1体を加えられる。ロールの種別はメイジ,ナイト,ウォリアー,アサシン,プリースト,アーチャーとあり,それぞれイメージどおりの役割だ。各キャラクターには攻撃,生命力,スピード,防御力にクリティカルなどのパラメータが設定されているほか,指揮や政治の値,信頼度やレアリティ,火・氷・木・光・闇の属性,編成時の陣形効果なども存在する。
これら全キャラクターは,プレイヤーがレビュー(採点)できる機能「英雄評価」の対象となっている。1〜5までの得点投票で,採点したプレイヤーの平均値が割り出される仕組みだ。それと,点数や感想をつけた人自体に「いいね」「よくないね」の評価もつけられるので,悪い言い方だが,多少荒れたとしてもプレイヤーコミュニティによる自浄作用が働くことだろう。
あと,ゲームをはじめたばかりでは手持ちの問題もあり,英雄間の強弱となると評価を見たところで把握できなさそうだが,本作ではクエスト終了時,攻撃・防御・サポート・総合の貢献度が,数値とグラフで可視化される。なので,編成したキャラクターが効果的に機能しているかを確認するのは容易い。
キャラクターは戦闘経験値でレベルアップするほか,ツリー式の「覚醒」,スキル効果に関わる「スキル強化」,武器や防具などの「装備」,特殊アイテム「古代遺物」もある。古代遺物とはパッシブスキルに相当し,キャラの特性を伸ばしたり,弱点を補ったりできるものだ。
なお,キャラクターや古代遺物は召喚やゲームプレイで獲得できる。物語の登場人物であれば特殊なリンクミッションをこなせば仲間になるし,召喚は1日1回無料で引けるのだが,このあたりの仕組みがプレイヤーにとってどれくらい「嬉しい」のかは,実際にプレイしたときに判断したいところだ。
ついでに,本作ではストーリー第1章のクリア後に「30回まで引き直し可能な10連召喚」を利用できる。そこまでに引けた召喚は1回あったくらいで(ローンチ時に特典配布があったら別の話),ここまでのクリアにも結構な時間が求められたので,あらかじめ忠告しておくが,このゲームではいわゆるリセマラを前提にしないほうがいいかもしれない。
といった主軸のほか,クエストしながら誰かとおしゃべりできる「チャット機能」や,資源の生産施設を拡張していくシミュレーション要素なども備わっている。戦闘のみならず,ホーム画面についても各画面への遷移がローディングなしで軽快なので,本当にストレスフリーだ。
それでもひとつだけ苦言を呈するのであれば,「ホーム画面のアイコンやそこから派生する導線が多すぎる」ことだろうか。カジュアルに遊んでいたら,人によっては10時間くらいプレイしていても知らない画面に出会ってしまうのかも。各画面は最初のうちに確認しておきたい。
本体験会では2時間ほどプレイしたが,ストーリー第1章を普通に進めていくぶんには強化などは求められず,気持ちよく遊べた。それとキャラクターが戦闘を経てレベルアップする感覚が,「とりあえず戦闘経験値も入れておきました」といったものではなく,「戦って勝ってレベルアップした!」の感覚が強いため,実にRPGらしい喜びがある。
個人的にだが,このゲームを一番遊んでみてほしいのはゲームハードを買ったことがない,アニメやライトノベルが好きな学生である。そういう人がEpic Sevenを遊んでみて,コンシューマのがっしりしたJRPG好きと“RPGについて”を語り合ってみても,おそらく会話のギャップはほとんどない気がする。このゲームはそれくらい“往年のRPG”している。
「Epic Seven」事前登録ページ
「Epic Seven」公式サイト
最後に余談となるが,Yostarについては真夏のChinaJoy2019での海外取材の傍ら,“中国の本家Yostar”ならびに“アズレン開発のManjuu”への代表者インタビューを実施した(本記事で登壇している李社長が率いるYostarは,日本展開のための日本法人である)。
これまで両社代表の言動は,いずれも日本のファン向けにはほぼ公開されてこなかっただけに,Yostarやアズレンがどのように歩んできたのかに興味がある人は,ぜひこの機会に読んでみてほしい。
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ここ最近大変元気がよい中国系スマホゲームの中で,ひときわ目立つのが,アズレンを運営する「Yostar」だ。本家の社長が表に出ることはほぼ皆無なのだが,今回少しだけ時間をもらうことができたので,その様子を紹介しよう。
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(C)2018-2020.SUPERCREATIVE Inc. All rights reserved. Published by Smilegate Megaport, Inc. & Yostar, Inc.
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