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ワイン農園経営ボードゲーム「ワイナリーの四季」レビュー。酸いも甘いも,表も裏も。ワイナリー経営は一筋縄じゃいかない
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印刷2017/04/25 14:37

レビュー

酸いも甘いも,表も裏も。ワイン農園は一筋縄じゃいかない

ワイナリーの四季

Text by くまくま

画像集 No.009のサムネイル画像 / ワイン農園経営ボードゲーム「ワイナリーの四季」レビュー。酸いも甘いも,表も裏も。ワイナリー経営は一筋縄じゃいかない
 今,農業系ボードゲームが熱い。2009年に日本語版が登場した「アグリコラ」は,今も根強い人気を持つボードゲームだが,さらに「ファミリーバージョン」などのバリエーションも登場し,ますますファンを増やしている。国産でも,日本の林業がテーマの「たたらばと森」が2016年12月に登場し,植林と製鉄で自然との共存共栄を目指すユニークなタイトルとして注目を集めている。

 今回紹介する「ワイナリーの四季」は,そんな農業系ゲームの中でも一味違ったタイトルだ。ワイン農園(ワイナリー)の経営がテーマになっていて,ピノ・ノワールとかカベルネ・ソーヴィニヨンといった,ワイン通でなくても一度くらい名前を聞いたことのある品種のブドウの樹を,春夏秋冬の4ターンを一区切りとして植え,収穫してワインを醸造,出荷していくことになる。ゲームの勝利条件は,ワインを出荷して勝利点を貯め,いち早く20点に到達すること。誰か1人が20点を越えたら,その年の冬までアクションを実行し,最終的に勝利点の高い人が勝ちとなる。
 本稿では,リアルなワイン農園の経営を,楽しみながら追体験できる本作を紹介していこう。

両親から受け継いだワイン工房を経営する「ワイナリーの四季」(メーカー:アークライト・Viticulture Essential Edition / プレイ人数:1〜6人向け / プレイ時間:45〜90分 価格:税別7200円)
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ワイン工房 オモテの経営術「何はなくとも職人集め」


 本作は,春夏秋冬それぞれに,プレイヤーが決まったアクションを実行することで進行していく。各アクションは,プレイヤー全員でシェアする大きなメインボードに,資金(コスト)を支払って手持ちの職人コマ(ワーカー)を置くことで管理される。つまり,いわゆるワーカープレイスメントである。一方で,畑や醸造醸造所など,プレイヤーが育成していくワイナリーのステータスは,プレイヤーごとに配布される個人ボードで管理する仕組みだ。

ワイナリーの四季の最終盤面。勝利条件の20点に達したプレイヤーが出たため,この年の冬でゲームは終了。あとはワイン出荷などで,どこまで勝ち点を伸ばせるか
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 ゲームを始めるとまず,各プレイヤーは最初に両親(パパとママ)のカードをランダムに選び,遺産として受け継いだブドウ畑とワイン工場,それに当座の資金と職人を手にする。両親の組み合わせによって,資金や職人が多めになったり, 「ブドウの樹」カード(後述)を持っていたり,施設がいくらか建築済みの状態からスタートしたりするわけだ。

 は今年1年間(=1ラウンド)の手番順を決定するフェイズだ。1〜7の数値が書いてある,メインボード上の「起床計画」のスペースに,スタートプレイヤーから自分のコマを配置していく。夏以降に行うアクションは,それぞれに定員が決まっている(4人プレイなら先着3名,3人なら先着2名)ので,手番順はもちろん早いほうが有利だ。しかも先着1名には,資金が増えたり,カードが1枚多く引けたりといったボーナスもあるので,ここはできるだけ早起きしたいところ。ただし,あえて手番順を遅くすることで得られるボーナス(1年だけ使える追加の職人コマなど)もあるので,ここはよくよく考えなければならない。

 は,いよいよ農作業を行うフェイズだ。「ブドウの樹カードを得る」「畑にブドウの樹を植える」「ブドウの樹の育成に必要な施設を建てる」といった,農作業関連のアクションを先に決めた手番順に選び,実行していく。ブドウの樹の入手やそれを植えるアクションは,職人を配置すれば資金無しで行えるが,高級なブドウの樹を植えるには,「給水塔」「ブドウ棚」などの施設建設が必要で,そういった施設を建てるには,当然ながら資金がかかる。いざとなったら畑を売却して当面の資金を得る(後で買い戻しも可能)ということもできるので,計画的な資金繰りをこころがけよう。

本作の主役,「ブドウの樹」カード。左上にある設備がないと植えることがでない。設備なしで植えられる品種は完成したワインの価値も低いので,後述の熟成にも時間がかかる
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 は訪問者カードを入手するフェイズ。これについては後ほど詳しく説明するが,少ない資金で施設を建てたり,施設がなくても高級なブドウの樹を植えたり,ほかのプレイヤーから資金やカードを徴収するといった,不利な状況を一変させるチャンスでもある。ぜひ活用していこう。

 「ブドウの収穫」「ワインの醸造」「注文カードの入手」「注文カードに合うワインの出荷(資金と勝利点を獲得する)」「職人の育成(翌年の職人が1人増える)」といった,一年を締めくくる重要なアクションが選べる季節だ。ワインの出荷が資金と勝利点を稼ぐ一番の方法なので,来年の夏や冬のアクションの効率を考えながら,職人を働かせる必要がある。

 いずれの季節でも重要になるのは,コマンドを実行するのに必要になる職人(ワーカー)だ。最初はおおむね3人の職人を抱えているので,1年に実行できるコマンドは3つだけだが,職人を増やしていけば,効率よくワイナリーを回せるようになってくる。
 さらに職人の中には「親方」と呼ばれる一回り大きなコマがあり(プレイヤーに1つ必ず配布される),この親方だけは,実行したいアクションがほかのプレイヤーの職人で埋まっていても関係なく,アクションを実行できる。ただし年に1回しか使えないので,使いどころはよーく考えること。

 また人手の都合上,ブドウの収穫やワインの醸造は,どんなに急いでも2年目以降になるが,収穫・醸造したブドウやワインは1年ごとに熟成して等級が上がって高品質になるので,できるだけ早く収穫までは行っておきたいところ。
 ただし熟成についても,ワイナリー設備が初期状態ならランク3までにしかならず,それ以上を目指すなら,貯蔵庫(セラー)を中規模〜大規模に拡張していく必要がある。最初は安いワインしか作れなくても,コツコツまじめに打ち込んで高級ワイナリーを目指す。これがワイン農園,“オモテの”経営術なのである。

職人や設備のコマがリアルに作られていてかわいいのも,本作の大きな魅力の一つ。ブドウ棚などは,ぶら下がるブドウの房が丁寧に作られている。ちなみに右手奥に見えるのが職人コマで,左端の一回り大きいのが親方コマだ。スタートプレイヤーを示す“スタピン”も,ブドウの房をかたどったもので実に芸が細かい
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ワイン工房 ウラの経営術「訪問者カードでガンガン手抜き」


 ここまでなら,まじめに農家を経営するだけの牧歌的なゲームかと思われるかもしれないが,さにあらず。このゲームのキモは,いかにライバルを出し抜いて,効率よくブドウ畑を充実させ,高級ワインを出荷して勝利点を稼ぐかにある。そのウラ技が「訪問者」カードだ。

左の黄色いほうが夏の訪問者で,右の青いカードが冬の訪問者だ。訪問者カードは秋にどちらか1枚(条件によっては2枚以上)を選んで引く。カードを使うにも職人が必要で,夏の訪問者は夏,冬の訪問者は冬にしか使用できない
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 例えば,高級なブドウ「カベルネ・ソーヴィニヨン種」や「シャルドネ種」を植えるには事前に設備「ブドウ棚」「給水塔」の建設が必要だが,夏や冬の「訪問者カード」を使えば,これらの施設がなくてもブドウの樹さえ持っていれば植樹できてしまう。
 また,ワインの価値を2ランク上げる「無資格の醸造職人」や,ほかのプレイヤーから資金2ずつ回収し,払えない人がいたら1人につき勝利点1を獲得できる「ペテン師」なんて怪しいカードも……。一発逆転が期待できるので,訪問者カードはぜひ活用したいところ。ちなみに夏の訪問者は使用するためのコストが低く,資金や勝利点を直接得られるものが多い。一方,冬の訪問者にはワインの醸造やランクアップ,出荷を助けるカードが多い。なので,とくに冬の訪問者カードは中盤以降,積極的に狙っていきたい。

 毎年少しずつ施設を充実させて畑にお気に入りのブドウを育て,高級ワインを醸造するコツコツまじめなワイナリー経営もいいが,訪問者カードもしっかりチェックして,チャンスの女神を捕まえるのがワイン農園を大きくする秘訣というわけだ。

訪問者カードをタイミング良く使って,ライバルのワイナリーをいかに出し抜くかが勝利のポイント。ただし,「訪問者」と「ブドウの樹」,「注文」のカードは合わせて7枚までしか翌年に持ち越せないので注意。すぐに使わないカードは処分して,経営は計画的に
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 というわけでワイナリーの四季を簡単に紹介してきたが,本作のルールはそれほど複雑ではないため,3年目くらいまでプレイすれば,ワイン作りの手順や訪問者カードの使いどころが把握できるはず。勝利点を稼ぐ手段はワイン出荷以外にもあちこちにちりばめられているし,いざとなったら勝利点を減らしてでも,高い注文カードに合わせた高級ワインの出荷で一発逆転を目指すのも面白い。好きなブドウ品種や高級ワイン造りにこだわるもよし,訪問者カードで一足飛びを目指すのも,地道に勝利点をコツコツ拾うもよし,自分なりのプレイスタイルを極めるといい。

 でも,このゲームは勝負にあまりこだわり過ぎず,ワイングラス片手にチーズをつまみながらゆったり楽しみたい,そんな大人向けのゲームかもしれない。

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