平成生まれ と言ったって,元年生誕だったら令和の今では31歳な今日このごろ。某アイドルゲームだったら最年長クラスですよ,最年長クラス。
そんな令和に,PS4版「
シスターズロワイヤル 5姉妹に嫌がらせを受けて困っています 」(以下,シスロワ)のパッケージ版がコーラス・ワールドワイド,ダウンロード版がアルファ・システムから発売されました。「シスロワ」の開発はアルファ・システムで,2018年6月のNintendo Switch版発売時は,かつて同社が展開した
「式神の城」 シリーズとゲームシステムが似ていることで話題になったりもしています。というか筆者も「式神じゃねーかコレー!」と驚いて記事を書きました。
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2018/06/14 13:29
他媒体に掲載された「シスロワ」プロデューサー・
須田直樹 氏のインタビュー記事を読んでみると,Nintendo Switch版のリリース当時は「ファンに勘付いてもらえたら」くらいの“匂わせ”に留めていたようですが,PS4版パッケージの裏表紙には
「名作『式神の城』シリーズの系譜を受け継ぐ弾幕シューティング最新作」 と書かれています。
裏表紙で表向きに打ち出された「式神の城」との関連性。なお,写真のパッケージ周辺にあるのはAmazon.co.jp限定版の特典です。店舗別特典については,PS4パッケージ版の公式サイト をレッツ参照
アーケード版「式神の城」は2001年の発売だったので,もう
19年前 のタイトル。立派なレトロゲームです……。今ではデジカからPC版がSteamで配信されていて,手軽にプレイすることが可能となりました。そんなわけで,今回はコレでやっていきましょう。XS Gamesから2003年に発売されたPS2用ソフト
「Mobile Light Force 2」 を!!
テッテレー!(華やかなSE)
……「Mobile Light Force 2」ですよ。何ですか,その「いや『式神の城』の話は?」みたいなキョトン顔は。もしくは薄笑いの訳知り顔は。
では起動してみましょう。「今日(こんにち)のレトロゲーム」という本連載のコンセプトは犬に食わせて,単に古いゲームを。面白いから。
PS2は非リージョンフリーなので,海外版ソフトをプレイするには対応した海外版本体が必要。これだから平成生まれは困る
こんなタイトル画面。ちなみにXS Gamesの公式サイトは
現存していて ,法人も消滅してはいないようですが,2011年ごろから表立った活動は見られなくなっています。
そんでメニュー画面!
ハイ「式神の城」ー!! ジャケットとタイトル画面とスタート画面は謎の女3人組が銃火器でロボット軍団と戦っている絵なのに,中身は「式神の城」ー!!
そう,お国柄に合わせたアートの改変が行われるのは,よくあること。最近は
「超偉人大戦−異世界で始める偉人大戦争−」 (
iOS /
Android )が巷で話題になりましたし,数年前は
「STREET FIGHTER X 鉄拳」 (
PlayStation 3 /
Xbox 360 /
PlayStation Vita )の
メガマン や,アニメ
「ファルコム学園」 の
北米版メガドライブ イースIII 《赤毛の冒険者》アドル など,古い時代のカオスぶりがネタにされたりもしました。そして,「式神の城」はこうなっ(てしまっ)たというわけです。
「式神の城」の女性キャラクターと言えば,小夜ちゃん,ザサエさん,ふみこの3人(あと隠しキャラもいますが)。お綺麗な皆さんですね
まあ,謎の3人組は置いといて,ゲーム自体を「シスロワ」と比較しながら見ていきましょう。ゲーム内のグラフィックスに変更はありませんが,ボイスは英語で,光太郎が渋いオヤジみたいな声で喋ります。
アルファ・システムのゲームは設定面の濃厚さが特徴的。「式神の城」1面ボスの悪美代子ひとつを取っても,恋仲のマネージャーが交通事故に見せかけて暗殺されるというアイドル業界の暗部やら,どんでん返しの裏設定やらが盛り込まれています。詳しい背景を知りたくなって,小説やコミックなどのメディアミックス作品や,設定資料集を買いましたねえ……
「シスロワ」のスピンオフにあたるランゲーム「シスターズランナー」がNintendo Switcfh向けにリリースされていますが,「シスロワ」に続編やメディアミックスなどはあるのでしょうか?
光太郎の式神攻撃・ザサエさんは,自動で敵を追尾&攻撃してくれるので,回避に集中したいビギナー向け。大量の敵が出る場面では苦戦しますが,基本的には強キャラです。この追尾&攻撃は,「シスロワ」の長女・ソナイに引き継がれました
小夜の式神攻撃・ヤタは自機の周囲を回転し,敵を攻撃するとともに一部の敵弾を打ち消せます。「シスロワ」の四女・ヌルも,それに似た周囲回転型の召喚獣を使用
自分の周囲に大剣を展開する金 大正。「シスロワ」では次女・セルマが同様の攻撃方法を持ちます
「シスロワ」の五女・ラーレは「式神の城II」のニーギ,三女・エジェは「式神の城III」のエミリオをオマージュした性能です
「シスロワ」のDLC追加キャラクターである,いかにも魔女な女性・OZ(オーゼット)は,ショットも召喚攻撃も「式神の城」の魔女な女性・ふみこと同じ性能。そう言えば,ふみこのミドルネームは……んんっ? 例の“設定面の濃厚さ”の気配が……
「Mobile Light Force 2」は幕間デモがオミットされているものの,ゲーム自体は「式神の城」なので普通に(?)楽しめます。ただ,ゲームオーバーになってスタート画面に戻ると,迎えてくれるのはやっぱり謎の3人組。どうしてこうなった。なぜこんなことになってしまったんだ。どういうことだってばよ。
そんなわけで,「式神の城」ディレクターでもあった須田氏から,
コメントをいただきました 。
ああ,忘れもしない「Mobile Light Force 2」……。
当時やりとりをしていたパブリッシャの担当さんから連絡をいただいたとき,リアルに「……は?」と言ってしまったのを今でも覚えています。
これを目にした皆さん全員が思ったであろう,「なんで1作目のゲームなのに『2』?」「このジャケットの“チャーリーズなんとか”みたいなお姉さんたちは,どなた?」は,勿論私も思ったことであります。
で,当時のパブリッシャー担当さんの説明によると,海外版のパブリッシャーであるXS Gamesさんとしては,キャラ色の強いシューティングゲームを「Mobile Light Force」という1つのシリーズとして販売しようと考えられたようで,彩京さんの「ガンバード」が「Mobile Light Force」,弊社の「式神の城」が「Mobile Light Force 2」として発売されることになったみたいです。
当然,市場の反応はご覧の通りでして,その後「式神の城II」を海外で販売する際には「Castle Shikigami 2」というタイトルになって,安心しました。
ただ,「主役が金髪でないと人気出ないので,変えたい」と光太郎の髪の色を茶髪から金髪に変えられましたけど……。
少しでも多くのユーザーさんに買っていただくために……と一生懸命考えられた結果ではないか,と思うのですが,日本人の我々からすると「なんでこうなった?」という疑問は正直拭えなかったです。
パブリッシャさんに「こうしないと売れないから!」と言われてしまうと,我々としても今ほど海外のユーザーさんの反応や嗜好が分かる時代でもなかったので,当時は「そ,そうなんですか」としか言いようがなかったんですが……。
ちなみに当時を知るイギリス人の知人に話を聞く機会があったのですが,彼も当時は「Mobile Light Force 2」のジャケットを見て「なんじゃこりゃ」と思っていたそうです。
ワーオ(コメントのご提供ありがとうございます)。
ちなみに須田氏の文中にもありますが,「『式神の城』が『Mobile Light Force 2』なら,『Mobile Light Force(1)』は?」という疑問に対しての答えは,
「彩京の『ガンバード』もアレされました……」 となります。
PlayStation用ソフトの「Mobile Light Force」(画像は,後年SteamでリリースされたPC移植版。なお現在は販売終了)。権利表記にPSIKYOとあるように,中身は「ガンバード」です。……俺達は伝えなければならない。俺達の愚かで,切ない歴史を。それらを伝えるためにデジタルという魔法がある。未来を創ることと,過去を語り伝えることは同じなんだ……
あと,イギリス人ゲーマーと
「式神の城II」 の話も出てきましたが,
System 3から発売された
イギリス版「Castle Shikigami II」 のパッケージもすごいですよ。城があって,人が飛んでいて,シューティングゲームっていうところは合ってるんだけどな。このビーム撃ってる赤シャツは誰だよ。モンタヌスかよ(※)。
※17世紀オランダの宣教師/歴史学者,アルノルドゥス・モンタヌス。渡日者からの伝聞を頼りに書いた「東インド会社遣日使節紀行」(邦訳版は国立国会図書館デジタルコレクション「モンタヌス日本史誌」などで見られる)の挿絵がキメッキメな出来栄えで,近年ではパイインターナショナル「おかしなジパング図版帖 -モンタヌスが描いた驚異の王国-」でまとめられたりしている。
テッテレー!(華やかなSE・2度目)
例えば鶴見六百氏が
IGDA日本のインタビュー で語っていたように,市場に合わせたキャラクターのビジュアル調整は大なり小なりままあることなので,筆者的には光太郎の金髪化は,まだ納得できる範囲だったりします。ビーム撃ってる赤シャツよりは全然。
ですが,「キャラ色の強い縦スクロールシューティングゲーム」という共通点だけで「ガンバード」と「式神の城」(と,もしかしたら,さらに別のシューティングゲームも?)を,まったく無関係なアートで結びつけてシリーズ化させようとするのは,乱暴にもほどがあるのではないでしょうか。
日本でも,1987年のサメ映画
「La notte degli squali」 (Night of the Sharks)が
「ジョーズ・アタック/死海からの脱出」 ,1984年のサメ映画
「Monster Shark」 が
「ジョーズ・アタック2」 として続編扱いでビデオリリースされたりしたけどさ……。マイナーなホラー/サスペンス映画だと,こういう無理やりな続編が多いですよね。アメリカのゲーム業界で起こるアレなローカライズと,日本の映画界で起こるアレなローカライズには似たものを感じます。
いちおう海外アートについてフォローしますと,
「現地テイストによるマッシュアップ」 的な感覚で作られた場合は,より良いものになったりもします。筆者的には北米GENESIS版
「カメレオンキッド」 や,欧州PS2版
「バイオハザード4」 のアートは国内版よりも好きですね。国内では
「VA-11 Hall-A」 と
「おしえて!ギャル子ちゃん」 のコラボも
素晴らしかった 。
映画で言うと,例えば国内版ポスター用アートでは,ヒグチユウコ氏&大島依提亜氏が手掛けた
「ミッドサマー」 ,開田裕治氏が手掛けた
「キングコング 髑髏島の巨神」 ,田島光二氏が手掛けた
「ランペイジ 巨獣大乱闘」 などが映画ファンに好評ですね。筆者の映画嗜好がモロ出しですが。
ただ,そんな
「より良いもの」 が出てくるのは極めて稀なケース。まず
「ちゃんとしたもの」 を出すことが,実は難しい。今は「式神の城」も「シスロワ」も,ちゃんとしたものが世界的に販売されていますし(海外版「シスロワ」はコーラス・ワールドワイドがダウンロード版を販売),この連載ではちょいちょい名前が出てくるStrictly Limited Gamesが,
「シスロワ」のフィジカル版 (詳細は未公開ながら,おそらく例によって豪華特典付き)を出すことも告知されています。こんな現在が,いかに素晴らしいか!
そう,水も電気もビデオゲームも,当たり前にあるものではなく,作る人・送り出す人・届ける人・他もろもろの人々による尽力があるからこそ,我々はちゃんとした生活やゲームを享受できるのです。アルファ・システムなどのゲームメーカーはもちろん,コーラス・ワールドワイドなどのパブリッシャにも感謝しきり。「シスロワ」のキャラクターも,昔のアメリカやイギリスだったらすごい絵になってたんだろうな……。
……でも
“珍訳” レベルになると一周回ってオイシくなってきますけどね。コインいっこいれてAll your base are belong to usですよ。ぶっちゃけ「Mobile Light Force 2」も,その意味でオイシく思ってますし。最近だと「最後は灰色です」のアレも,こっち側だと思う。オイシイ!! 開発者には申し訳ナッシン!!