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Kickstarterで再起動した「The Good Life」は何が変わったのか? 「REBOOT Develop 2018」で,開発者のSwery氏らに話を聞いた
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だが2018年3月,Swery氏はKickstarterで改めて「The Good Life」のキャンペーンを開始した(関連記事)。現状,「The Good Life」はどんな状況で,どのようなゲームを目指しているのか? そして,Kickstarterでの再チャレンジでは,どういった新たな試みに挑戦しているのか? クロアチアで開催中のゲーム開発者向けイベント「REBOOT Develop 2018」における講演内容と,そのあとで行ったインタビューの模様をお伝えしたい。
借金を背負ったナオミ,写真でお金を稼ぐ
まずは,講演の模様から紹介しよう。講演は「The Good Life」がどういうゲームなのかを示すため,Swery氏自らがプレイしつつ解説を行うというスタイルで進んだ。
なお,REBOOT Develop 2018で公開されたビルドは,「The Good Life」の内容を示す「プリプロダクション」と呼ばれるもので,バージョン的にはPAXで公開されたものと同じとのこと。
したがって,以下の写真の画面は,完成バージョンとは異なることを最初にお断りしておきたい。
上記のとおり,「The Good Life」の舞台となるのはイギリスの田舎町。プレイヤーが操る主人公ナオミは,諸般の事情で多額の借金を背負っており,彼女はこの借金を返すため,アメリカのとある大企業から,ゲームの舞台となるイギリスの田舎町へ派遣されているのだ。
ゲームの目的は,「写真を撮影してお金を稼ぎ,そのお金で借金を返済する」というもの。撮影した写真をゲーム内のSNS「フラミンゴ」にアップし,獲得した「Like!」の数に応じてお金が得られるというシステムは,実に現代的だ。
ナオミが派遣されたイギリスの田舎町は,背後に何らかの秘密があったとしても,基本的に実にのどかな風景が広がるばかり。「Like!」がたくさん取れそうな写真を撮りたくても,せいぜい羊やノーム人形を撮影するくらいしかない。それで大金が稼げるかといえば,さすがに無理だ。
ここで登場するのが「サイドクエスト」で,これは村人からの依頼という形で発生し(現状では「村人に話しかける」ことがスタートとなる),この依頼をクリアすることでお金がもらえたりするわけだ。
「撮影する」というパズルの面白さ
講演では,3種類のサイドクエストが紹介された。
1つめは,酔っぱらいの牧師の奥さんからの依頼だ。奥さんは,「旦那が隠れて酒を飲んでいるので,その現場を押さえたいが,うまくいかない」と言う。そこでナオミに,確たる証拠となる写真を撮ってほしいと依頼してきたのだ。
というわけでパブに行くと,それらしい人物が見つかる。あとは写真を撮るだけ……と思いきや,さすがに一筋縄ではいかない。牧師は自分が酒を飲んでいるところをナオミに見せようとしないのだ。具体的に言うと,パブにナオミが入ってくると,酒の入ったジョッキを隠してしまうのだ。
しかもこの牧師,まことに俊敏にジョッキを隠してしまうので,ナオミがパブのドアをくぐった瞬間にカメラを構えても手遅れ。さて,どうやって解決したものか。
答えは意外と簡単で,牧師は窓際の席に座っているので,「パブの外から窓越しに彼が酒を飲んでいるところを撮影する」というもの。俊敏だが,脇の甘い牧師である。
画面左奥にいるのが問題の牧師 |
正面から行ってもダメ |
確かに飲んでいるのだが,ここから1歩でも進むとジョッキを隠してしまう |
脇が甘い牧師の飲酒風景を激写 |
2つめのサイドクエストは,賭け事が大好きな男からの依頼だ。彼は賭けにのめり込みすぎて,自分が最も愛していた真っ赤なトラックを手放さざるを得なくなる。自業自得だが,かくして彼は,街中を走るかつての愛車を眺めるだけの生活になってしまった。
そんな男にナオミは,「私が車の写真を撮ってきてあげる」と提案する。愛車の写真を持っていれば,日がな一日,外を走る車を眺めるという生活から脱却できるはず。
前向きなのか,後ろ向きなのか,よく分からない提案だが,かくして彼女は車を撮影することになり,当然のように問題が発生する。ゲームのこの時点でナオミが持っているカメラはシャッタースピードが遅めで,走っている車にレンズを向けてシャッターを押しただけでは,ブレブレの写真しか撮影できないのだ。
これをどう解決するのか? 「The Good Life」では街中にさまざまなオブジェクト(ノーム人形やダンボール,鉢植えなど)があり,ナオミが自由に持ち上げて,移動させることができる。
これを使って簡易的なバリケードを作り,トラックが停車したところを撮影すれば,きちんとピントのあった写真が撮影できるのだ。これについてSwery氏は,「現実世界でこんなことをしたら確実に犯罪ですが,ゲームの舞台は世界一幸福な街なので,まあ,大丈夫でしょう」と述べた。
3つめのサイドクエストはちょっと毛色が異なっており,どうやらメインクエストに関連しているようだった。依頼主は心配性の男性で,どうも自分の妹であるエリザベスが最近,旦那以外の誰かと頻繁に会っているようなので,素行調査をしてほしいという。
エリザベスは教会の鐘楼で誰かと密会しているので,望遠レンズを使ってその様子をこっそり撮影すればいいのだが,ここで,本作の大きな特徴の1つが明らかになった。エリザベスが会っている相手が,謎の青い人物像として描かれているのだ。
Swery氏はこの画面を指して「人が青いのはバグではなく,ここに誰が入るのか,確定していないからです」と語った。この「確定していない」というのは「まだ決めていない」というわけではなく,プレイヤーがそれまでどのようにゲームを進め,そして街のNPC達とどんな人間関係を築いてきたかによって,そこに誰がいるのかが変わるというのだ。
このクエストは,さらに続く。エリザベスは兄から密会の写真を見せられたあと,失踪してしまう。男性と一緒にエリザベスの捜索を始めたナオミだったが,深い森の中を歩くうち,遠くから女性の悲鳴が聞こえてくる。
悲鳴のもとへ駆けつけると,あろうことか,エリザベスが刺されて死んでいるのだ。これを見たナオミは,「何が世界一幸福な街なもんか,この街は世界一クソッタレな街だ」と叫ぶ。
この展開において興味深いのは,本作のストーリーにおいて重要だという「エリザベス殺害事件」の発端となる撮影段階では,上記のように密会相手が確定していないことだ。Swery氏は講演で,「プレイヤーとNPCの関係によってNPCの行動が変わります。そして,エリザベス殺しの犯人もまた変わります」と語っている。
これは野心的なチャレンジであると同時に,重要なゲームギミックになり得るのは間違いない。
どんなにネタバレを禁止されても,プレイヤーは「エリザベス殺人事件の犯人は◯◯だった」という感想をSNSで語りたくなるのが人間のサガというもの。だが本作においては,この手のネタバレをそれほど恐れる必要はなさそうだ。なにせ,プレイヤーごとに犯人は違っている可能性があるのだから。
また,ゲームを徹底的にやり込みたいという人にとっては,「どういう条件で誰が犯人になるのか」を検証していくことが楽しい体験になり得るだろう。
「変化」するゲーム
このように,本作において「変化」は1つのキーワードになっている。それは,もう1つの大きなギミックである「猫・犬への変身」からも分かる。
「The Good Life」の舞台となる街では,月に1度,1週間にわたって住人全員が犬か猫に変身してしまうという。ゲームをある程度進めると,主人公であるナオミもまたこの現象に巻き込まれ,プレイヤーは,犬や猫になったナオミを操作してプレイすることができるようになるのだ。
ただし,この仕様にはまだ未確定の部分もあるようで,Swery氏は「任意のタイミングで変身できる」仕様も考えてはいる,とのこと。
現状では「猫に変身すると何ができるか」を検証するためのビルドが作られており,「体が小さいから,狭い路地にも入れる」「ジャンプ力が高いので,屋根の上にも登れる」といったところを基本として,猫になったからこそできる,面白いことを試しているという。
ちなみに,猫になったら写真が撮影できないのでは? というのは実に自然な疑問だが,これについてSwery氏は,「猫用のGoProを購入すると,猫のまま写真が撮影できます」と述べる。本作はあくまでも,写真を撮影するゲームなのだ。
また犬派の人は,「猫の検証しかしてないのか!」と憤慨するかもしれないが,これについては犬の検証ビルドももちろん制作しており,うまくいけばKickstarterのキャンペーン中に画面を見せられるかもしれないとのことだった。
猫なので牧師も油断しまくり |
あらまあ |
この,犬や猫への変身は非常に大きな「変化」だが,上記のようにナオミと街の人々との関係性や,NPCの間での人間模様,そしてナオミ本人のあり方も変化していく。
ゲーム開始直後,ナオミは多額の借金を背負った,気持ちに余裕のない状況にある。このためサイドクエストの会話においても,すぐにカネの話になる。「あんたの悩みを私が解決してやるから,代金をよこせ」といった具合だ。
しかし,ゲームを進めて街の人との関係が作られていくうちに,ナオミは変わっていくという。そうした,オープンワールドにおける人間関係の変化を楽しむのも,本作ならではの面白さになり得るだろう。
Q&Aセッション
講演の最後に,Swery氏と来場者による質疑応答が行われたので,興味深いものをいくつか抜粋してお伝えしよう。
質問:ゲームではローポリゴンのアートスタイルを採用しているが,なぜか。
Swery氏:大人のおとぎ話というイメージを作りたかった。ゲームで発生するイベントやストーリー,人間関係は割とリアルで,ときにグロテスクですらある。これをハイポリゴンの精緻な画面で表現するとキツすぎるので,緩和したかったという理由もある。
質問:「The Good Life」はある意味,人間観察のゲームとも言えそうだが,「Deadly Premonition」でも「Spy Fiction」でも,Swery氏の作品には「人を眺める」という要素があるように思える。これは意図的なものか。
Swery氏:どのゲームでも,基本的に「やらなくてはならないこと」だけが存在すればいい。しかし,本当にそれだけだと,ゲームというより,こなすべきタスクの連鎖でしかなくなってしまう。そのため,見なくても構わないところや,やらなくてもいいことも作り込む。その部分が,人を眺める要素として感じられているのではないか。
質問:「The Good Life」はオープンワールドになるとのことだが,広大な空間にメインクエストやサイドクエストを配置するのは簡単ではないように思える。どのような手順で行っているのか。
Swery氏:まずマップを作る。そして,そこに住む住人を設定し,住人の役割を決める。それに基いてストーリーが作る。このストーリーに対してゲームシステムが決まり,システムを使い切るためにサイドクエストを作る,という順番になる。
例えば現状,「犬に変身したら嗅覚が鋭くなり,臭いで追跡できる」といったシステムを考えているが,これが完成したら,それを活かすサイドクエストを考える,という流れになる。
質問:「The Good Life」はSwery氏とグランディングの二木幸生氏によって開発が進められている。クリエーターが2人いる,いわば二頭体制での開発には苦労があるのではないか。
Swery氏:2人でミーティングを行うようにしている。ミーティングでは,毎回6時間くらいかけて互いに歩み寄る。そして,互いに歩み寄ってたどり着いたゴールのはずが,「なんだ,最初から2人とも同じことを言ってたんじゃないか」となるのが現状だ。
質問:ナオミのキャラクターにクセがあるが,彼女の個性が嫌われることでゲームのセールスにマイナスが生じる可能性はあると思うか。
Swery氏:嫌なヤツというのは,悪い評価ではないと考えている。むしろ,無味無臭のキャラクターになってしまうほうが,ずっと問題だ。
Swery氏:日本でも今,働き方が変わりつつある。もちろん安定した大企業を選ぶ人は多いが,「自由に働ける」ことを理由に職場を選ぶ人も増えてきた。White Owlsは会社としてユニークなところがあるので,それに惹かれて若いスタッフが集まっている。
Swery氏&二木幸生氏インタビュー
講演のあと,REBOOT Developの会場で「The Good Life」の開発を進めるSwery氏とグランディング
の二木幸生氏に話を聞けたので,最後に紹介しよう。
4Gamer:
Kickstarterで新しくクラウドファウンディングを始めるにあたり,「ここが変わった」という部分を教えてください。
Swery氏:
以前は,犬に変身できるバージョンと猫に変身できるバージョンを分けるといった話をしていましたが,これは「1本のソフトを買えば両方を体験できる」ように変更しました。
技術的なことで言うと,NPCのAIを大幅に見直しています。以前のNPCはタイムテーブルに従って行動する方式になっていて,各NPCの行動は個別にデータをいじって調整していました。
今回はこれを改めて,AIでNPCを自律的に動かすようにしています。それぞれのNPCが自分の欲求に従って行動するという感じですね。これによって,プレイヤーの行動やNPC同士の行動が,パラメータに影響を及ぼし,NPCの行動が変わっていくという要素を実装できました。
エリザベス殺しの犯人がプレイによって変化するのも,この技術があってこそです。
4Gamer:
NPCの行動パターンが動的に変化していくというシステムでは,シナリオを書くのがとても大変になるように思えますが。
二木幸生氏(以下,二木氏):
NPCの行動変化としては,例えば集まるバーが変わるとか,あるいは夜になるとすぐに寝てしまうようになるとか,望遠鏡を持ってみんなで天体観測を始めるとか,そういったことで,あくまでキャラクターの個性を違えない範囲で起こります。ですので,NPCの変化によってストーリーが破綻することはまずないと思います。
Swery氏:
「エリザベス殺し」の犯人ですが,ミステリーって,いきなり何にもないところから「実はコイツが犯人でした」というのは成り立たないけど,プレイヤーにちゃんと伏線を踏ませておけば,誰が犯人でも大丈夫なんです。
犯人になるべき人物像がある程度決まっていて,その絞り込みがNPCのAIと関係するというイメージになります。
4Gamer:
「The Good Life」は,写真を撮影して人々の悩みを解決し,お金を稼ぐのが中心ですが,カメラに対するこだわりはどの程度までゲームに取り入れますか。
Swery氏:
講演でもお話したように,絞り,ピント,ズームなどの要素は入れたいと思っています。でも,具体的な撮影のテクニック――f値だとかISOだとかいったところまでは踏み込まない予定です。それが楽しいのは知っていますが,このゲームを遊ぶプレイヤーで,そういう要素があってよい,楽しいと感じてくれる人って,やはり少数派だと思うんですよ。
カメラはあくまでRPGの「装備品」のような位置づけで,ゲーム全体から見れば,「カメラを選んで」「被写体を選んで」「撮影場所とフレーミングを決める」という流れの中にあるモノ,という感じですね。
シャッタースピードとズーム,絞りの組み合わせでも十分に面白いパズルになりますし。
4Gamer:
ゲーム内に,変わったカメラはありますか。
Swery氏:
犬と猫向けのGoPro的なものを用意します。それから,ドローンも入れようと思ってます。
二木氏:
ドローンは,ものすごい音がするものになる予定です。舞台が田舎なので,ドローンを飛ばすと人々がみんな見上げて指差す,といった反応になるかと。少なくとも,人々の自然な様子が撮影できるようなものにはならないでしょう。
4Gamer:
確かに,めっちゃ見上げて指差しそうです。
Swery氏:
主人公はフォトグラファーですが,けしてカメラシミュレータではないので,カメラも「面白さ」を優先しているところがありますね。被写界深度なども,「背景ぼかし機能」といった名前で実装したいと思っています。
4Gamer:
撮影関係でもう1つ聞きたいのですが,本作では撮影した写真をSNS「フラミンゴ」にアップして,そこで「Like!」をもらうことでもお金が稼げます。そこでハッシュタグが活用されるという話も聞いたのですが,これについて教えてください。
二木氏:
ゲーム的な機能で言えば,ハッシュタグは「デイリーイベントの提示」だと考えてください。フラミンゴを見て「#Sheep」の付いた写真が人気の上位に並んでいるならば,今日は羊の写真がフラミンゴ映えするんだなと分かり,羊の写真を撮れば効率よく「Like!」が稼げる,という感じですね。
Swery氏:
Getti Imageのように,「写真をダウンロードしてもらえたら,お金になる」のが現実的だと思っているんですが,それはちょっと,無駄にリアルすぎるところがあるんですよ。
二木氏:
どちらかと言えば,「インスタでFavがつくたびに1ドルもらえたら楽しい」というイメージで作ってます。
Swery氏:
「The Good Life」は,やっていることはグロテスクだけど,外側は可愛らしく,という部分を守って作っています。あくまでゲームであってシミュレータではない,というのは大事にしてますね。
4Gamer:
クラウドファウンディングを再起動するにあたり,戦略をこう練り直した,といったところはありますか。
Swery氏:
大きく分けて,4つの変更をしています。1つめは,「このゲームは完成するぞ」と証明をすること。そのためパートナー企業を探し,彼らからのファンディングも受けていることを明らかにしました。
2つめは,目標金額の引き下げです。これは単純に,達成の可能性を高めたいということです。
3つめは,グラフィックスを最終型に近いものにしたことです。以前公開していた2Dグラフィックスは完全に排除しました。こんな画面のゲームになる,というのを,誰にでも分かるようにした感じですね。
4つめは,ゲームデザインの整理です。以前は「犬になれる」「猫になれる」というあたりが1人歩きして,結局,これってどんなゲームなんだ? という疑念を持たれました。今回は,「これは撮影するゲームなのだ」というメッセージを強く打ち出しています。
4Gamer:
手応えとしてはどうでしょう。
Swery氏:
とくに3つめと4つめからは,大きな手応えを感じています。ただ,ここまで来るのが大変だったのも事実です。「2017年12月に再起動する」と宣言しながら,結局今年の3月にずれ込んだのも,グラフィックスを最終型に近いものにするのに時間がかかったからです。
二木氏:
クラウドファウンディングはある意味,ゲーム開発の素人さんが見て「面白そうだから出資しよう」と決断してくれるものなので,やはりグラフィックスは可能な限り完成形に近づけなければダメですね。
これがプロのパブリッシャなら最終形を想像してくれますけど,一般の人は見たものを見たまま判断しますし,それが当然のことですので。
4Gamer:
現状はプリプロダクションですが,これからのマイルストーンを聞かせてください。
Swery氏:
2019年の第3四半期にリリースするのが最終的なゴールですが,これはクラウドファウンディングの結果によって若干の前後があり得ます。
それ以外は,2018年5月に正式に開発を始め,6か月でα版,そこから6か月でβ版,さらにそこから6か月でコンテンツのフィックスと各種調整を行う予定になっています。
4Gamer:
ゲームの仕様からデバッグ大変そうなイメージを受けるのですが,大丈夫でしょうか。NPCの行動が変化したせいでクエストがスタックするといったバグを完全に排除するのは,かなり大変な気がします。
Swery氏:
メインクエストの進行は,「どれくらい借金を返したか」がトリガーになっています。街中でフラグを立てることでゲームを進めるのではなく,言ってみれば「街の外で起こること」がクエストを先に進めるため,構造的にスタックすることはないですね。
4Gamer:
なるほど。そこはとても安心できます。では,対応機種について教えてもらえますか。
Swery氏:
PC(Steam)とPlayStation 4でのリリースを考えています。Nintendo Switchで出さないのかという質問をよく受けるんですが,最初は出さない予定です。そこまで手が回らないですね。
Kickstarterのバッカー(出資者)からは「ゲームをメディアに入れて配布してほしい」という意見が寄せられるんですが,これも予定としてはありません。我々はKickstarterでも資金を集めていますが,パートナー企業からの出資も受けていますので,出資してくれた企業の利益を最大化することも考えねばなりません。DRMフリーにできないのも同じ理由です。
とはいえ,Kickstarterでしか手に入らない「特装版」はありまして,これは世界的に有名なメーカーに作ってもらいます。Kickstarterならではの特典が欲しい人は,そちらを選んでもらえればと。
4Gamer:
Steamでリリースということですが,アーリーアクセス版のプランはありますか。
Swery氏:
Kickstarterでは,βアクセス権の得られるコースを割といいお値段で出しているんです。いいお値段の理由としては,フィードバックを開発に送る権利付きだからというのがあります。
そのため,うかつにアーリーアクセス版を出してしまうとと,βアクセス権を購入した人に損をさせかねない,というのがあります。
4Gamer:
出資者はきっちり優遇するということですね。見方を変えれば,アーリーアクセス版で遊びたい人は,βアクセス権を購入してほしいと。
Swery氏:
そういうことになります。今後も開発状況をストリーム配信していく予定ですので,そちらも合わせて楽しんでください。ストリーム配信,大変なんですけどね。
4Gamer:
話題は変わりますが,最近,PCゲームの開発を国際的なチームで行うのが一般化してきました。アートや音楽をアウトソーシングにするとか,AI研究部門が海外にあるとか,そういったパターンです。こういう状況で,「海外のゲーム」と「日本のゲーム」を明確に区別できるのだろうか,という疑問が個人的にあります。実際に開発に携わる立場から見て,いかがですか。
Swery氏:
僕はいろんなパートナーと一緒に仕事をしていますが,パートナーごとに仕事のやり方がまったく違います。とくに海外のスタジオと仕事をするときは,まるで違うと感じます。
その点から言えば,グランディングはまさに日本的なゲーム制作プロセスを極めたスタジオなので,「The Good Life」はとても日本的なゲームだと感じます。
ただ,その「日本的」というのが具体的に何かと聞かれると,うまく答えられないところはありますね。最終的なゲームとしての違いは小さいけれど,間違いなく違いがある。
二木氏:
アートなどをアウトソーシングにするのは大丈夫ですが,物理的に距離が離れたメンバーやチームでゲーム本体の開発を行うのは非常に難しいというのが実感です。どうしても温度感が伝わらないところがありますね。
グランディングは国内に3つのスタジオを持っていますが,たとえ国内でも物理的距離が問題になると感じています。ですから,2つのスタジオが1つのゲームを作るといったことは可能な限り避けているのが現状です。
とはいえ,これって,僕らがずっとこの方法でやってきて,これしか知らないからだ,ということもあるかなと思います。次の世代,例えば10年もすると,状況は変わるかもしれませんが,それまでは,「日本的なゲーム」が作られ続けるでしょうね。
4Gamer:
本日はお忙しいところ,どうもありがとうございました。
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