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印刷2017/10/28 00:00

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[SPIEL’17]InnoSPIEL受賞作「Magic Maze」試遊レポート。協力したいのにままならない,もどかしさが光る協力型脱出タイルゲーム

 ドイツのエッセンで開催中のボードゲーム見本市「SPIEL’17」では,一般入場日に先駆けた2017年10月25日に,ドイツゲーム大賞を始めとする一連の授賞式が行われた(関連記事 )。
 その中でも,クオリティおよびオリジナリティの双方で高い評価を受けた作品に授与されるアワード「InnoSPIEL」の受賞作に選ばれた「Magic Maze」は,とくにボードゲーマーの注目を集めた作品の1つだ。その独創性を高く評価された本作の魅力とは,一体どのようなものだろうか。SPIEL’17の会場で試遊できたので,さっそく紹介したい。

初のInnoSPIEL受賞作であるSIT Down!の「Magic Maze」。デザイナーはKasper Lapp氏,イラストをGyom氏が担当している。そのおかげもあってか,SIT Down!ブースは大盛況だった
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「Magic Maze」公式サイト(英語)



4人のキャラクターの装備を調達し,出口へ導こう


 本作は,タイトルにもなっている「Magic Maze」という名のショッピングモールに迷い込んだ4人の冒険者を操って遊ぶゲームだ。彼らは装備品をすべて失っているため,それぞれのキャラクターに対応したショップでアイテムを盗み,素早く脱出しなければならない。
 登場するキャラクターは蛮族の戦士,魔法使い,エルフ,ドワーフというよくあるファンタジーものだが,それぞれのバックグラウンドにはユニークな設定が置かれている。

 ゲームの基本的なルールは,スタートタイル上に置かれたキャラクターのコマを各プレイヤーが動かして,ショッピングモールを探索していくというもの。まずは4種類のショップを目指し,4人全員がショップのマスに到達したら今度は出口を目指す。4人全員のキャラクターが脱出できれば勝利となるため,ゲームの目標はとても分かりやすい。

ゲームスタート時の状況。各プレイヤーの手元には青色のアクションカードがある
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ショッピングモールの新たなエリアを「発見」することで,タイルがどんどん広がっていく
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 ただし,プレイヤー達は砂時計(3分)が落ちきる前にゲームをクリアしなければならない。一見すると短すぎるようにも思えるが,タイル上の赤い砂時計がマークされたマスにキャラクターを移動させれば,砂時計をひっくり返して,時間の延長が可能だ。ただし,一度使用したマスは二度と使えないし,そもそも砂時計マークは全部で4つしかないため(つまりプレイ時間は最大15分),いつ使用するかの判断が重要となってくる。

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プレイヤー間の自然な協力を促すゲームルール


 本作のプレイヤーは,どのキャラクターコマでも自由に動かして良い。手番というものも存在せず,好きな時にコマを動かせるため,ダウンタイムが一切ないのだ。このあたりのリアルタイム性が,本作のテンポの良さに大きく貢献している。

 とはいえ,各プレイヤーが好き勝手にコマを動かしてはゲームにならない。そこで本作では,各プレイヤーの取れるアクションに制限を設けている。たとえば,「北に移動」だったり「西に移動」だったりと,あらかじめ配られたアクションカードに書かれていることしかできないのだ。
 またアクションカードには,「任意のキャラクターを同じ色の大渦に飛ばす(ただしゲーム後半の脱出フェーズには使用できない)」「エスカレーターを使用する」「隣接するタイルを『探索』してマップ上に追加する」といった特殊なアビリティもあるが,これも限られたプレイヤーしか使用できない。

 このため,迷路のようなショッピングモールで素早く移動するためには,プレイヤー全員がほぼ同じ密度でゲームに関与し,相互に協力しなければならないのだ。

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「会話禁止」のジレンマがもたらすゲームとしての深み


 本作は協力ゲームであるにもかかわらず,プレイヤー間での相談やアドバイスが基本的に禁止されている。会話やジェスチャーによって,ほかのプレイヤーに自分の意思を伝えることはできないのだ。このため,離れたマスに移動させたい場合に,自分がその方向にキャラクターを動かしたとしても,ほかのプレイヤーがその意図に気づかなければ,キャラクターは立ち往生してしまう。
 そのような場合は,少し大きめの赤い人形のコマで,アクションを起こしてほしいプレイヤーの卓の前をノックすることで「何らかの行動を促す」ことはできるのだが,やられている側は,どのキャラクターを動かせばいいのか分からないことも多い。

試遊中には,つい指で教えることもあったが,これも本来は反則
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 ただし,砂時計をひっくり返した場合に限り,いずれかのプレイヤーがアクションする前に会話できる。ここでは具体的な作戦会議が可能だ。もっとも,相談中も時間は進むので,じっくりと話し込むことはできない。

 個々のプレイヤーができることは極めて少なく,ゲームクリアはほかのプレイヤーのアクションに大きく依存している。それなのに,口出しがほとんどできないというのは,心理的にも非常につらい……というか,もどかしい。
 ほかのプレイヤーから「キャラクターを動かしてくれ!」と赤いコマで催促されると,一体どのキャラクターを動かせばいいかすぐには分からないし,制限時間があるだけに結構動揺してしまう。

赤いコマでノックされたほうは,焦ること請け合いだ
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 このようなジレンマを通して筆者が面白いと感じたのは,同じゴールを目指しているにもかかわらず,各プレイヤーが時としてまったく別のことを考えているということだ。クリア条件は明確で,プレイヤーに可能なアクションもさほど多くないが,4人のキャラクターをいざ動かそうとすると,「どこに動かすのがベストか」を判断するのは意外と難しいし,プレイヤーによっては目指している場所も違ってくる。

 例えば,キャラクターを先にショップに到着させるか,タイルを場に出してまだ発見されていない出口を探すか,それとも終わりに近づいている砂時計を回復させるかなど,優先順位の判断はかなり悩ましい。
 そして,自分では「これが最適解だろう!」と思って自信満々に動かしたアクションが実は間違っており,自分では元の場所に戻れないため別のプレイヤーにリカバリーをお願いする,といった「小さな親切,大きなお世話」になることだってある。

 それでも,このような苦労をしながらプレイヤー全員の力を合わせて4人のキャラクターを脱出させることができると,「我々のチームワークはやはり偉大だなあ」と感動してしまう。これは,「アドバイスの原則禁止」という縛りのおかげで,ゲームがいわゆる「声の大きな」一部のプレイヤーの独壇場とならず,一人一人の貢献が重要視されるためでもあるだろう。
 このようにMagic Mazeは,プレイヤーの協力を一見阻害するようなルールを導入することで,逆にプレイヤー間の連係の楽しさを提供している。

このように,皆の手が出ているのは,連係がうまくいっている証拠
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 また再プレイ性の高さについても触れておくべきだろう。探索時にドローするタイルはプレイごとにシャッフルされるため,毎回プレイ展開は違ったものになる。シナリオも用意されていて,初歩的なチュートリアルを始め,各キャラクターに特殊能力が追加されたり,砂時計をひっくり返すたびにプレイヤー間でアクションカードの交換をしたりと,趣向の異なるルールが楽しめる。当然,今までとは勝手が違って戸惑うことになるわけだが。

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 Magic Mazeは最大8人のプレイに対応しており,1人プレイではアクションの切り替えの難しさが味わえるし,8人プレイではよほどうまく相談,ないしほかのプレイヤーと呼吸を合わせないと,船頭多くして船山に上るということになりかねない。参加者の数によっても,プレイフィールは大きく変わる。

 なお本作は,ヘムズユニバーサルゲームズによって日本語版も販売されており(税別3980円),同社のオンラインショップなどで購入が可能だ。2017年10月には,拡張版「Maximum Security」が海外で発売されており,SPIEL’17でも人気商品となっていた。こちらの日本語版の登場にも期待したいところだ。

SPIEL’17会場では,デザイナーのKasper Lapp氏のサイン会も行われていた
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「Magic Maze」公式サイト(英語)

「マジックメイズ(日本語版)」販売ページ

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