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[SPIEL’17]海賊船クルーの冒険を体験できる,リアルタイム協力型ゲーム「A Tale of Pirates」を遊んでみた
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印刷2017/11/01 13:56

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[SPIEL’17]海賊船クルーの冒険を体験できる,リアルタイム協力型ゲーム「A Tale of Pirates」を遊んでみた

 「アナログゲーム」という呼称は世界的に広がっているが,スマートフォンやタブレットといったデジタルを併用する作品は確実に増えている。むしろSPIEL’17の会場を見て回る範囲で言えば,「スマートフォンを併用しています」というのは,もはやそれだけでは作品の際立った特徴にはならないというのが実感だ。
 とはいえ,アプリとボード,そしてギミックをうまく併用することで,独特のプレイ感覚を産んでいるゲームもまた存在する。「A Tale of Pirates」は,そんな作品のひとつだ。

Cranio Creationsから2017年内にリリース予定の「A Tale of Pirates」。デザイナーは,Asger Harding Granerud氏Daniel Skjold Pedersen氏Daniele Tascini氏の3名で,価格は40ユーロほどになるようだ
画像集 No.001のサムネイル画像 / [SPIEL’17]海賊船クルーの冒険を体験できる,リアルタイム協力型ゲーム「A Tale of Pirates」を遊んでみた

「A Tale of Pirates」公式サイト



砂時計を使ってアクションを管理


 「A tale of Pirates」はリアルタイムの協力型のゲームだ。プレイヤーは海賊船のクルーとなって,敵国の軍船や岩場といったさまざまな困難を乗り越えたり,商船を襲って財宝を奪ったりする。

 また本作は,シナリオ進行形のゲームとなっている。シナリオはカードとアプリで提供され,一度プレイしたからといって二度とプレイできないというものではないが,原則としては「初見で対応する」ことが期待されるレガシータイプのゲームと言える。
 このため,本稿の写真はネタバレを防ぐために,実際に発生するプレイ状況とは異なるものとなっている。カードの構成を変えて,実際のプレイ後にイメージとして作ったものと,考えてもらいたい。

先々のシナリオはビニールパックで封印されている
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 さて,本作における大きな特徴は,まずは海賊船だろう。厚紙で作られた船は,それだけで見るからに楽しそうだ。
 この船だが,各所に穴が開いており,それぞれの穴ごとに実行できるアクションが異なる。各プレイヤーは自分のコマ(プレイヤーごとに1個)を必要な部署に配置し,そこでアクションを行って結果を得る,という仕組みになっている。

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 行えるアクションには,以下のようなものがある。

装填(1スロット):大砲に弾を装填する。当然だが,弾が装填されていない大砲は撃てない。

砲撃(2スロット×2か所):大砲を撃つ。なお大砲を打てる方向は決まっている(船の進行方向に向かって右斜前と左斜め前)。

物見(1スロット):マストの上に登って周囲を偵察する。周囲に存在する伏せられたイベントカードを表にできる。

修理(1スロット):故障ないしダメージを負ったスロットを修理できる。故障したスロットにはコルクの栓がさされるが,ここでのアクションによってそのコルクを取り除ける。

帆の上げ下げ(1スロット):帆を上げたり下げたりして,船の速度を変える。最低で0,最大で3で,1アクションにつき1段階の変更ができる。速度が0と3のときは船は方向転換ができず,1のときには120度まで,2のときには60度まで,1回のアクションで方向転換できる。

舵輪(1スロット):船の進行方向を変える。

帆の位置が船の速度を示す
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 本作の面白いところは,プレイヤーコマが砂時計であるという部分だ。実際の行動としては,以下のようになる。

・アクションを行うスロットに自分の砂時計をさす

・砂時計が落ちきるのを待つ

・砂時計が落ちきったら,アクションが解決される

 本作はリアルタイム進行だが,これによって「アクションに必要な時間」がちゃんと管理されることになる。原始的だが,効果的だ。

プレイヤーが一斉に砂時計をさす。船の左舷前方に刺さっているコルクは,その場所が「故障中」であることを示す
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 ただし1つだけ,アクションの選択において特別なルールがある。1人のプレイヤーが,同じ場所で連続してアクションを行うことは禁じられているのである。したがって前のアクションで物見をしたプレイヤーは,次のアクションでは物見以外を選択しなくてはならない。


チームワークこそが海賊船の力を決める


 さて,アクションの実行と解決は実にシンプルである。ではこれらの行動を使って,どのような課題を克服していくのだろうか。

 本作では,課題はカードという形で提供される。シナリオにもよるが10枚程度のカードが船の周囲に裏向きで配置されるので,シナリオによって指示された条件を満たすように,全員で協力して行動しなくてはならない。
 シナリオで指示される条件には,さまざまなものがあり得る(具体的に書けないことはご了承頂きたい)。が,例えば「敵の船4隻を撃沈せよ」であれば,時間内に敵船を4隻見つけ,それらに対して砲撃を行い,沈めねばならないというわけだ。
 そしてこのためには「物見」で敵船を探し,その間に「装填」で弾丸を大砲に込めて,敵船が見つかったら適切な方向に「舵輪」で船を回して,「砲撃」で敵船を攻撃する,といったプロセスが必要になる。これらを複数人で,かつリアルタイムで進行していくわけだ。

船の周囲6方向に,イベントカードを裏向きで配置してシナリオスタート
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「物見」でカードを表にして,砲撃で敵船を撃破したりしていく
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中には「指定の速度でここを通過せよ」というカードもある(右下の数字が速度)
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こちらは商船。右下の数字は速度で,この速度に船速を合わせて乗り込み,略奪する(略奪するためにはこのカードに砂時計を移さねばならない)

 ちなみに本作においては,1つのシナリオは2つ以上のフェイズに分かれる。そしてフェイズとフェイズの間においては,裏返っていたイベントカードはすべて表にされる。その後,もし場に敵船カードが残っていれば,敵船は我らが海賊船に攻撃を行い,海賊船のHPが減少する。
 海賊船のHPはシナリオによって異なるが,最大でも5だ。このため敵船から5回攻撃を受ける(=5隻の敵船を見逃す)と,たとえシナリオクリアの条件を満たしていても,船は沈んでしまう。

船の最後尾に刺さっているハートマークが,船のHP
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 これに加えて,もう1つの試練がある。アプリからもたらされるイベントだ。
 リアルタイム進行となる本作では,1フェイズの長さはアプリによって管理される(アプリに砂時計が表示され,時間切れになると教えてくれる)。そのうえで時折,「ベタ凪になったので速度を0に設定せよ」といったイベントが発生するのである(このあたりのデザインは,Czech Games Editionの「Space Alert」に似ている)。

アプリの側でイベント「ベタ凪」が発生
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 ちなみにアプリは「シナリオで提供されているイベントからこのカードを選択し,シャッフルして配置してください」といったセットアップのサポートもしてくれる。大変に便利である。


少しバランスが悪いところも見受けられるが……


 このように興味深いデザインがなされている「A Tale of Pirates」だが,実際に序盤のシナリオをプレイしてみると,多少のバランスの悪さも感じた。
 というのも,何はともあれイベントカードを表にしなくては話が始まらないうえ,それ以降もゲームが先に進まないので,「船の修理や砲弾の装填をしつつ交代で物見をする」ことに終止しがちなのだ。

 また状況が煮詰まってくると,「この物見で目指すカードが引けたら勝ち,引けなかったら負け」といった感じで,物見のドローによって成否が決まる状況も多かった。アプリ側でシナリオの難易度は変更できる(筆者らは「NORMAL」を選んだ)ので,このあたりは「EASY」ならもうちょっとなんとかなるだろうが,逆に言えば「HARD」ならもっと運ゲーになるのではという危惧感もある。

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ステージセレクト画面
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参加人数の設定や,シナリオの難易度設定を行う画面。アプリはかなり作り込まれている

 とはいえこんな初歩的な問題に制作者が気づいていないはずもないわけで,シナリオを先に進めれば強度な物見依存性も薄れていくものと考えられる。このあたりは先を期待してプレイするのも面白いだろう。

 アプリを使いつつ,砂時計というアナログな時間管理システムでリアルタイム協力ゲームを成立させた本作は,ただ「見栄えが面白いゲーム」というだけにとどまらない魅力がある。協力プレイなので,誰か1人が英語を読めればそれでプレイできるというのもハードルを下げる要素と言えるだろう。
 協力型ゲームが好きな人であれば,遊んでみたいゲームのひとつになるのではないか。そんなことを感じさせる作品である。

試遊卓はいつも大盛況だった
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「A Tale of Pirates」公式サイト

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