レビュー
独創性に満ちた傑作アクション「ゲイングランド」がNintendo Switchに復刻。その魅力をあらためて振り返る
「ゲイングランド」は総勢20人のキャラクターを操作できる,固定画面のアクションゲームである。仲間達はそれぞれに固有の武器を持っており,槍や弓,マシンガン,ロケットランチャーなどを駆使して敵を倒していく。ステージに出現する敵を全滅させるか,すべての仲間が出口から脱出すればクリアとなる。
なお,敵を全滅させられなかった場合,脱出できなかった仲間は失われる。つまり,以降のステージでは選べなくなるのだ。
ゲイングランドはゲームセンターで長く親しまれた作品だった。当時,全国のどこに行っても,多くのファンが楽しんでいたと記憶している。その後,1991年にはメガドライブに移植されたが,こちらも高い評価を受けた。
誕生から30年経過しているが,ゲイングランドはいまだに根強い人気を誇る。それは,このタイトルが時代を越える魅力を持っているからだ。まずは,当時の時代背景から簡単に説明していこう
「SEGA AGES ゲイングランド」公式サイト
ゲームセンターの過渡期に登場したゲイングランド
ゲイングランドが登場した1988年は,ゲームセンターが大きく変わりつつあった時期である。1980年代のゲームセンターと聞いて,真っ先に思い浮かべるのはテーブル筐体のシューティングゲーム。店内はテーブル筐体で埋め尽くされ,シューティングゲームのマニアがハイスコアを叩き出そうと熱中していた。
この年,コナミの「グラディウスII」やカプコンの「ロストワールド」などがゲームセンターに登場している。今になって振り返れば,シューティングゲームが最後の盛り上がりを見せた年と言っていい。以降,シューティングゲームはベルトスクロール型アクションゲームや対戦格闘ゲームに押されていく。
ゲイングランドは主に「エアロテーブル」と呼ばれる筐体で出回ったが,これはそれ以前のものより画面サイズがひと回り大きかった。また,その後は「エアロシティ」をはじめとする,画面が斜めになった汎用筐体がテーブル筐体に代わって主流になっていく。さまざまな面において,ゲームセンターの変革期だったと言えるだろう。
独創的なゲームはいかにして生まれたか
筆者がゲイングランドを初めて見たとき,「ずいぶん変わっているな」と思ったものだ。まず,固定画面という点が珍しい。1980年代前半には「パックマン」のような固定画面のゲームが多く存在したが,1980年代後半にはスクロール型のゲームが主流となり,ほとんど見られなくなっていた。
ゲイングランドは当時流行していたシューティングゲームでもなく,「魔界村」のような横スクロール型アクションゲームでもなく,ベルトスクロールアクションでもなかった。少し似ているのは,アタリの「ガントレット」(1986年)くらいか。
今も昔も,ヒット作品が生まれると類似した作品が次々と出てくる。その中で,ゲイングランドは独自路線を突き進んだ独創的なゲームと言える。
なぜ,このような作品が生まれたのか。当時,筆者はアーケードゲーム専門誌・ゲーメストの編集部に所属しており,開発者にインタビューを実施した。ゲイングランドでは一人ひとりに名前が付いた,総勢20人のキャラクターがプレイアブルになる。
しかし,その仕様上,キャラクターの表示サイズはかなり小さい。この「キャラクターが小さい」という点がポイントである。
ゲームセンターに登場したゲイングランドは,「SYSTEM24(システム24)」と呼ばれるシステム基板によって作られていた。これは当時のほかの基板と比べて,解像度が高いという特徴がある。つまり,細かい表現も見分けられるようになっており,その特徴を活かすために,小さいキャラクターが登場するゲームが考えられたとのことだった。
反射神経に自信がなくても楽しめる
ゲイングランドでは仲間のキャラクターを使い分けることが大事だ。出口に急ぐのであれば,足の速いキャラクターが適している。敵を倒すのであれば,マシンガンを持ったキャラクターが強い。しかし,高所の敵に対しては,弓矢やロケットランチャーを持ったキャラクターが活躍する。このように,仲間の起用に戦略性が求められるゲームなのだ。
「戦略性」と聞くと,難しいゲームをイメージするかもしれない。しかし,逆に言えば,それは戦略さえ立てて挑めば,攻略できるということである。少しずつ対策を積み上げることで,誰でもゲイングランドがうまくなれる。
当時のゲームセンターには,スピード感があり,鋭い反射神経を求められるシューティングゲームが多かった。こうしたタイプのゲームは,頭では分かっていても操作がうまくできなければやられてしまう。
その点,ゲイングランドは反射神経が優れていなくても,対策を練っていれば先に進める。全国各地のゲームセンターで多くのファンを生んだ理由は,こうしたところにあったと思う。
4-8に存在したバグを覚えているか
それでは,ゲームの流れを紹介していこう。本作には4つのラウンドが存在し,それぞれが10のステージで構成されている。
最初のラウンド1は古代がテーマになっており,足の速い敵は槍やマシンガンで,高所の敵は弓で倒すというキャラクターの使い分けを自然に学んでいく。
基本的な戦い方をマスターしたプレイヤーにとって,大きな壁になるのがラウンド2(中世がテーマ)のステージ10だ。ここには巨大な魔神のような敵と,ワープする魔術師が出現する。敵が強いだけでなく,時間制限も厳しく,多くのプレイヤーが苦労したことだろう。
なお,「ゲイングランド」はゲームの設定によって制限時間が異なる。「ハード」設定のゲームセンターで遊んでいたプレイヤーは,とくに悔しい思いをしたはずだ。
ラウンド3は近世の中国が舞台。「ジェネラル」の火炎放射器で砂漠の中に登場する虫を炙ると,驚くほどのスコアを獲得できる。この事実を知った筆者は,ゲーセンで制限時間ギリギリまで虫を焼いたものだ。
最後のラウンド4は未来がテーマになっている。ここまで来たら難関が続くが,最大のポイントはステージ8である。なぜなら,すべての敵を倒しても全滅として扱われない(クリアにならない)。つまり,味方を出口から脱出させないと,次のステージに進めなかったのだ。
ところが,4-8にたどり着くまでに順調に仲間を増やしていると,かなりの人数になっているはず。一人ひとり脱出させるには時間が足りず,どうしても何人かの仲間を失うことになる。愛着のある仲間を見捨てるしかない現実に,切なさと歯がゆさを感じたものだ。
4-8では,すべての敵を倒しても全滅として扱われない。その理由はバグだったそうだ。当時,バグを修正したバージョンが作られていたと聞いた記憶がある。しかし,このバグが思わぬドラマ性(仲間との悲しき別れ)を生み,プレイヤーの心に大きなインパクトを残したことも事実だった。多くのプレイヤーがそれを不満と思わなかったため,修正バージョンが広く出回ることはなかったという。
実際,筆者は当時,修正バージョンを見かけたことがなく,「北海道では修正バージョンが稼働しているらしい」という噂を耳にした。
なお,SEGA AGES版では「バグの有無」を設定で選択できる。アーケード版のプレイヤーにはバグが存在するバージョンがスタンダードだが,果たして修正バージョンではどのような印象を受けるのか。気になるプレイヤーは,ぜひ試してみよう。
Nintendo Switch版はあらゆる層が楽しめる
ゲイングランドは1つのミスが大きな命取りになるゲームだ。ある仲間を失うことで,その後のステージがお手上げになる可能性もある。
ここで役立つのが,直前のゲームプレイを最大3秒間巻き戻せる「ヘルパー」機能だ。うっかりやられてしまったとしても,すぐに巻き戻せば挽回できる。この機能のおかげで,かなりのストレスが軽減されており,現代的な親切設計によって,初めてゲイングランドを遊ぶ人も楽しめるようになっている。
また,ゲイングランドは2人同時プレイに対応しているが,海外向けのアーケード版は3人同時プレイも可能だった。当時,日本国内で3人同時プレイを体験した人は,ほとんどいないはずだ。Nintendo Switch版では「海外版」も選べるので,ぜひ友人とワイワイ楽しんでほしい。
「SEGA AGES ゲイングランド」公式サイト
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