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  • 発売日:2019/11/07
  • 価格:ダウンロード版:1800円(税込)
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Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影
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印刷2019/11/08 18:00

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Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影

 インディーズゲームスタジオのCherrymochiが2017年にリリースしたPC向けアドベンチャー「Tokyo Dark」のNintendo Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」が,UNTIESより2019年11月7日に発売された。同作はPC版をベースに,シナリオの追加をはじめ,さまざまな強化をほどこしたタイトルだ。
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 UNTIESは2019年10月15日,Cherrymochiが開発したPC向けミステリーアドベンチャーゲーム「東京ダーク」にシナリオを追加した完全版「TOKYO DARK -Remembrance-」Nintendo Switch版11月7日に配信することを発表した。ニンテンドーeショップでは,10月31日から11月13日までは20%OFFで購入可能となる発売記念セールが実施される。

[2019/10/15 16:53]
 本稿では,同作の概要とプレイフィールを紹介すると共に,開発元であるCherrymochiのウィリアムズ真保氏,およびSwitchへの移植を担当したメビウス・喜多村明夫氏へのインタビューをお届けする。海外でのクラウドファンディングから生まれた本作の魅力を,改めて紹介していこう。

「Tokyo Dark - Remembrance -」のメインビジュアル。ニンテンドーeショップでのダウンロード専売で,価格は1800円(税込)だ
画像集 No.001のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影

「Tokyo Dark - Remembrance -」公式サイト



ゲームパッド操作に最適化し,遊びやすくなった「Tokyo Dark」


 本作は現代の東京を軸として物語が展開するサスペンスもののアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは女刑事「伊藤絢美」となり,行方不明となった同僚にして恋人の「田中一樹」の捜索と,その発端となった“とある事件”の真相を彼女の視点から追いかけることになる。
 ゲームの基本は横スクロールタイプのポイント&クリックアドベンチャーで,さまざまな街のマップを歩き回りながら,適宜ポップアップするポイントをクリックして調べることで物語が進行する。その選択によって,主人公のパラメータと物語が変化していくわけだ。
 PC版では上記のとおりマウス操作を前提とした作りであったが,Switch版では調査するポイントや選択肢が,スティック操作や[L/R]ボタンで選べるようになるなど,Joy-Conへの最適化が行われている。本作の場合,むしろこちらのほうが操作しやすいのではと思えるほどに自然だ。

画像集 No.016のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影

調査ポイントでは四角いポップアップ表示が現れる。なお,PC版プレイヤーは“とある隠し要素”にまつわる操作が気になるだろうが,ちゃんと再現されているのでご安心を。所定の位置で[X]ボタンを押せばよいとのことだ
画像集 No.002のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影

 本作のもっとも象徴的な要素は,絢美の精神状態を示す「S.P.I.N」システムだ。これは4つのステータス――Sanity(正気度)Professionalism(プロフェッショナル値)Investigation(探索値)Neurosis(ノイローゼ値)の頭文字を取ったもので,プレイヤーの行動次第でそれぞれ増減が発生。これらの数値でエンディングが変化する仕組みになっている。
 だが,例えば安易に暴力的な行為に訴えるとProfessionalismが下がるなど,ある程度の指針はあるものの,どの選択肢で数値が変化するのかなどは,基本的にやってみないと分からない。また序盤のちょっとした選択にも影響が大きいものがあるので,選択肢を選ぶのはけっこうな緊迫感がある。

「S.P.I.N」システムの各値は,ステータス画面で確認できる
画像集 No.013のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影
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キャラクターとの会話のみならず,どんな調査を行うかでも物語は違う展開を見せる(画像は英語表示だが,もちろん日本語にも対応)
画像集 No.004のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影
ゲーム中の各所には,アニメ制作会社・グラフィニカが手掛けるアニメーションが挿入されるシーンも

 さらに本作は,1周目ではオートセーブしか使えず,一度選んだ選択肢を選び直すといったことはできない仕組みだ。2周目以降は「NEW GAME+」が開放され,物語の節目ごとにセーブが可能となるが,とりあえずは心の趣くままの選択でどんな結末を迎えるのか,見届けてみるのがいいだろう。

 なおSwitch版では,PC版では描かれなかった絢美と一樹の過去を補完するストーリーが追加されているとのこと。合わせて2つの新エンディングも用意されているそうなので,PC版をプレイ済みでも挑戦する価値はあるはずだ。

絢美と一樹の過去が描かれる追加シーン。画像はテキストが英語だが,もちろん日本語にも対応する
画像集 No.014のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影
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テキストやキャラクターのグラフィックスにも手が入っており,よりプレイしやすくなっている
画像集 No.005のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影


日本と西洋のアドベンチャーゲーム,その融合を目指して――Cherrymochi・ウィリアムズ真保氏インタビュー


4Gamer:
 本日はお時間をいただき,ありがとうございます。まず本作の開発経緯から聞かせていただけますか。

ウィリアムズ真保氏(以下,真保氏):
 Cherrymochiは,私(真保氏)と夫であるジョン・ウィリアムズの2人でやっているゲームスタジオでして,「Tokyo Dark」はその第1作目にあたるタイトルです。元々はジョンが小説として温めていたアイデアを,ゲームの形で世に出そうと決めたのが,本作の出発点でした。

4Gamer:
 なぜ小説ではなく,ゲームという形を選ばれたのでしょう。

Cherrymochi ウィリアムズ真保氏
画像集 No.006のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影
真保氏:
 小説を商品として成功させるには,かなりのクオリティとマーケティング能力が求められます。なので,これをそのままアウトプットしても,成功の目を得るのは現実的ではないと考えたのがまず一つ。もう一つが,ジョンが元々ゲーム制作のスキルを持っていたことです。結果,ビジュアルを重視したポイント&クリック式のアドベンチャーゲームにしようということになりました。

4Gamer:
 なるほど。それでKickstarterで支援者を募ることになったわけですね。

真保氏:
 ええ。でも最初はKickstaterではなくて,Facebookで企画概要を公開してみたんです。そうしたら予想以上の反響がありまして。当時スクウェア・エニックスが行っていたインディーズゲームの支援プロジェクト(Square Enix Collective)でサポートをいただけることになりました。Kickstarterで支援を求めたのはその後になります。

4Gamer:
 Cherrymochiはお二人の会社とのことですが,実際の開発はどんな風に行っているんですか?

真保氏:
 もちろん,2人だけですべてを作っているわけではありません。ディレクションはジョンの担当ですが,各分野のクリエイターをネット上で募って開発しています。皆さん国籍はバラバラで,イラストレーターはイタリア人の女性の方ですし,スクリプトライターはアメリカ人です。音楽はイギリスのメタルバンド「REIGN OF FURY」で活躍されている方ですね。

4Gamer:
 非常にグローバルというか,インディーズらしい進め方ですね。

真保氏:
 予算も限られるので,オフィスを構えるのは難しいんです。共通しているのは,皆さん日本の文化が好きな人ばかりという点で……スクリプトライターさんなんか,日本語も流暢にしゃべれるんですよ。

4Gamer:
 横スクロールタイプのポイント&クリックアドベンチャーという様式を選ばれたのはなぜなんでしょうか。とくに日本で流行っている,とは言えない気がするのですが。

真保氏:
 おっしゃるとおり,ポイント&クリックはどちらかといえば西洋で人気のシステムです。Cherrymochiでは「日本と欧米のゲームスタイルの融合」を理念として掲げていまして,本作ではポイント&クリックに日本のビジュアルノベルの表現力を合わせたい,というのが狙いの一つでした。

4Gamer:
 ポイント&クリックの自由度と,日本式ビジュアルノベルのいいとこどりを目指したわけですね。

真保氏:
 そうですね。はっきり「ここで分岐します」と明示する形ではなく,自然に物語が変わっていくプレイ感覚を目指しました。1周目が強制オートセーブなのも,最初は自分の選択が導く物語を大切にしてほしいからです。

4Gamer:
 では,キャラクターデザインがアニメ風なのは,日本のゲームスタイルに寄せたから?

真保氏:
 はい。根幹にあるのはやっぱり日本のビジュアルノベルなので,そこは外せない要素だったと思います。なによりジョン自身が,日本に移住してしまうくらい日本のポップカルチャー好きですから。
 ちなみに,先ほど話題に出たイタリア人のアート担当はアニメタッチの女の子が得意でして。その良さを最大限に引き出すために,女性キャラクターが多めになった経緯があります(笑)。

4Gamer:
 アニメーションのカットシーンなんかもあって,力が入っていますね。

真保氏:
 アニメシーンは,Kickstarterのストレッチゴールなんですよ。やっぱり海外のバッカーにとって,日本のアニメ制作会社に依頼できるというのは,すごく魅力的なことみたいです。かなり後半のストレッチゴールに設定していたのに,すさまじいスピードで達成できてしまいました。おかげでゲームとしても締まりが出たように思うので,グラフィニカさんに手がけていただけて,本当に良かったと思っています。

4Gamer:
 日本の神話や民俗学的なワードが頻出する,いわゆる伝奇要素が強いシナリオですが,これもジョンさんのアイデアですか?

真保氏:
 ええ,日本の歴史や伝統的な書物を読み漁ってました(笑)。当時のCherrymochi……というか私達の家は鎌倉にあったんですが,週末はよく北鎌倉にハイキングに出かけたものです。そこで見た「腹切りやぐら」の史跡に非常に惹かれたようで,そこを中心にいろいろ調べていったみたいですね。

※鎌倉の祇園山ハイキングコースにある史跡。倒幕軍に追い詰められた北条高時をはじめとした北条一族,鎌倉幕府の残党が逃げ込み,800余人が自害したという話が残っている。

4Gamer:
 それはすごい。一方で,作中ではカルトやJKビジネスといった問題にも触れています。

真保氏:
 もう14年くらい日本に住んでいますからね。ジョンが「自分の目で見た東京」を表現するにあたって,そうした要素も必要だったんだと思います。単なる外面だけでなく,東京という街の上に成り立つ“社会”を描くうえでは,そうした裏側も欠かせないのだと。

4Gamer:
 なるほど。海外の方があえてそうした面を描くというのは,なんというか新鮮に感じました。

真保氏:
 きっと「日本超楽しい!」っていう方のピュアな気持ちは,来日して最初の数年で満足できてしまったのでしょう。これはどの国でも同じだと思うのですが,自分が過ごしてきた社会とは異なる文化に触れたとき,人には「なぜこういう構造になっているんだろう」「なぜ日本人はこう考えるんだろう」といった疑問を持つものです。そして,それを突き詰めて考えていくことで,その文化のより深い面白さが見えてくる。
 少なくとも,彼は間違いなく日本が大好きで,今でも惚れ込んでいるんです。その愛情が「なぜ自分はこの国が好きなんだろう」という興味につながっている。中でも彼をもっとも惹きつけるのが,そうしたダークな部分なんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 舞台として東京を選んだのは,そうしたダークな側面を描くのに適していたから?

真保氏:
 それもありますが,どうも東日本大震災の経験が大きいみたいですね。当時被災地に居たわけではありませんが,あの当時の人や社会の動きが印象深かったようです。それでシナリオのコンセプトが「混乱の中で見えた日本の社会を,少し違った視点で切り取る」という形になり,それに適した街として東京を選んだのだと。そう,私は聞いています。

画像集 No.010のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影


さまざまな改良が加えられたSwitch版


4Gamer:
 ここからは,今回のSwitch版について詳しく聞かせてください。移植は日本の開発会社であるメビウスが担当されたとのこと。本日同席いただいていますが,これはCherrymochiさんからオファーされたのでしょうか。

真保氏:
 はい。オリジナル版はConstruct 2というゲームエンジンで制作したのですが,これはPC用の,どちらかと言えばブラウザゲームなどで使われるものでした。ですのでコンシューマ機に移植するのは難しい……というか私達ではほぼ不可能な状況だったんです。そんな中,メビウスさんが名乗りを上げてくださり,さらにはパブリッシャとしてUNTIESさんからもご支援いただけて,大変感謝しています。

4Gamer:
 実際のところ,移植作業はいかがでしか。

メビウスゲームズ 喜多村明夫氏(以下,喜多村氏):
 Construct 2のスクリプトと,Switch版で使用するUnityのスクリプトがあまりにも噛み合わない,というのが最大の問題でした。すでにほかのデベロッパさんが断念された後だったので正直心配だったのですが,「俺ならできる」と豪語するプログラマーが手を挙げまして。

4Gamer:
 それは頼もしい(笑)。

喜多村氏:
 ただ本作はフラグ管理が非常に複雑で,スクリプトをそのまま移植したらものすごい数のバグが出てしまい。時間はかなりかかってしまいましたね。

真保氏:
 Construct 2は海外の小規模なエンジンということもありドキュメントが少なくて。結果的には,Unityでイチから書き直したほうが早かったかもしれません。

4Gamer:
 コンシューマ版ではエンディングの追加などの新要素があるそうですが,ほかにも変わっているところがありそうです。とりあえず先ほどプレイさせていただいた感じだと,日本語フォントはすごく読みやすくなっていました(笑)。

真保氏:
 はい。まずグラフィックスの面ではすべてのアートをメビウスさんに監修いただき,調整を加えています。女性キャラクターなんかはほぼ元のままですが,男性にはかなり手が加わっていますね。結果,日本のプレイヤーの皆さんにも受け入れ安いビジュアルになったのではないかと思います。

喜多村氏:
 あとは背景ですね。オリジナル版も雰囲気はよく表現されていましたが,建物の構造や小物のパースなどがより正確になるよう調整を加えています。例えば,道場などが顕著ですね。バーの背景のお酒のビンなんかも,一つ一つ資料を確認して書き直していますので,その辺りも注目していただけるとうれしいですね。

画像集 No.008のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影

4Gamer:
 あー……なんか分かる気がします(笑)。

喜多村氏:
 それからテキストにも手を入れまして,オリジナル版からさらに読みやすくなるよう,調整を行いました。とはいえ,すべてCherrymochiさんの監修の元で行っていますので,原作ファンの方もご安心いただければと。

4Gamer:
 確かに読みづらい部分はありましたね。

喜多村氏:
 原作の日本語は,会話であっても“地の文”に近い書き方がされていましたので,そこを少し緩和しています。加えて分かりづらかった表現なども,改めさせていただきました。

4Gamer:
 インタフェースもゲームパッド向けに改修されていてプレイしやすかったです。欲を言えば,バックログ機能が欲しかったところですが……。

喜多村氏:
 UIについてはSwitch版だけでなく,PS4版も考慮してゲームパッドに最適化しています。バックログは検討したのですが……仕様上の問題があって実現できませんでした。

4Gamer:
 分かりました。ちなみにPC版のファンからの要望で実装された新要素って,何かあるでしょうか。

真保氏:
 追加されたエンディングとそこへつながるルート自体が,ファンの皆さんからの声に応えたものと言えるかもしれません。というのも,主人公である絢美は一樹を助けたい一心で捜査を続けるわけですが,PC版ではそこに感情移入できないという意見が少なからずあったんです。

4Gamer:
 ああ,一樹がどんな人物なのかって,プレイヤーにはほとんど分かりませんものね。なんとなく,いい人なんだろうとは思いますけど(笑)。

真保氏:
 ええ。2人の絆の強さを描いたシーンがなかったので,そういう印象を与えてしまったのだと思います。ですのでSwitch版ではそういったシーンを補完して,より感情移入しやすいように手を加えています。

4Gamer:
 なるほど。追加されたエンディングもそれに付随したものだと。ところで,さっきプレイさせていただいて思ったんですが,これボイスも新録されていますよね? 一樹に呼びかけるシーンの演技が,原作とは違っていた気が……。

真保氏:
 あの一瞬で良く気付きましたね! 新録というか,Switch版では絢美役のキャストが変更になってまして,声優の大原さやかさんにお願いしています。以前から「今,絢美を演じてもらうなら」と夢想していた配役を実現してもらえて,個人的にもすごくうれしかったですね。

画像集 No.011のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影


日本在住のイギリス人,ジョン・ウィリアムズ氏のこだわり


4Gamer:
 ちょっと脱線になるかもしれないのですが,ジョンさんと真保さんは,ご結婚されてから住む場所として,なぜ日本を選ばれたんですか?

真保氏:
 彼はイギリス出身なんですが,もうイギリスは嫌だったみたいですよ(苦笑)。
 彼はもともとHP(ヒューレット・パッカード)やBBCで働いていたそうなんですが,それはもう身を削るような忙しさだったようで。それで少ない休暇を縫って日本に遊びに来たとき,「なんて素敵な国だ」と感動して,そこで一念発起して仕事を全部辞めたんだそうです。

4Gamer:
 それはまた,思い切りましたね。

真保氏:
 それで,当初は1年間だけ日本に住む予定だったみたいなんですが,そのままズルズルと期間が延びていき,その間に私と出会い,結婚もして……という流れで現在に至ります。イギリスにもずっと帰っていなくて,本当に日本が大好きみたいです。

4Gamer:
 日本で働くとなると,それはそれで色々大変なような。ああでも,2人だけの会社ということなら,それほど窮屈でもないんですかね。

真保氏:
 そういった側面もあると思います。もちろん,自分の中のクリエイティビティと向き合う仕事ですし,それ故のストレスはあるみたいですが,それでもイギリスで働いていた頃よりは少ないらしいです。なにより,今はネコが2匹と,犬が1匹もいますから,そこで癒やされている部分もあるでしょうね。……将来的にはヤギも飼いたいんですけど(笑)。

4Gamer:
 そういえば,ゲーム中にもネコが頻繁に登場していました。やはりネコ好きでしたか。

真保氏:
 大好きです! Kickstarterを始めた頃から,「彼女(ネコ)は絶対ゲームに出す」と言っていたくらい。

4Gamer:
 絢美が飼っているネコですよね。作中では,なんというか「おネコさま」といった扱いでしたが,これも現実を反映したものだったり?

真保氏:
 ええ,彼女がウチのクイーンです(笑)。

4Gamer:
 ジョンさんって普段はどんな方なんですか? 例えば……好きな漫画とかゲーム,あるいは映像作品とか。

真保氏:
 海外のグラフィックノベル(アメコミ)はひととおり読んでますね。マーベルもDCも,アラン・ムーア作品なんかはとくに好きみたいです。海外ドラマも好きですし,日本の作品なら……「攻殻機動隊」とか「ベルセルク」「クレイモア」とか。あと一時期は,二人して「ひぐらしのなく頃に」に全力でハマってました。ゲームならフロム・ソフトウェアの大ファンで,いつも「宮崎(英高氏)は神」って崇めてます(笑)。

4Gamer:
 なるほど(笑)。そういえば絢美って,ちょっと(攻殻機動隊の)草薙素子が入っている気がします。

真保氏:
 影響はあると思います(苦笑)。ジョンは「日本の自立した強い女性」にこだわりがあるみたいで。絢美のデザインでは,アーティストに「トレンチコートとネクタイ,そして甘すぎない顔つき」というオーダーを出していましたね。

4Gamer:
 納得のオーダーです。

真保氏:
 海外の人が思い描く日本の女性って,「奥ゆかしくて可愛らしい」というイメージが根強いんですが,そこは彼なりのこだわりがあるみたいで。絢美に限らず,本作の女性キャラクターは,1人1人の意思と目的をハッキリ描くように心がけました。

画像集 No.009のサムネイル画像 / Switch版「Tokyo Dark - Remembrance -」プレイレポート&開発者インタビュー。日本在住のイギリス人が描く,“趣都”東京の光と影

4Gamer:
 そう言われれば,あまりステレオタイプな大和撫子はいない……というか,気の強い女性ばかりです(笑)。

真保氏:
 そうですね(笑)。なんにせよ,彼にとってあらゆるメディアは消化していくものなんだと思います。漫画にせよ映画にせよ,あるいはゲームでも,私から見ると「どうやって自分のクリエイティブに取り入れるか」を考ながら,片っ端から捕食しているように見えます。

4Gamer:
 元からそういう方だったんですかね?

真保氏:
 大学時代は「インタラクティブ・ナラティブ」という分野を研究していたみたいで,ただ受け取るばかりではなく,受け手の能動的な選択によって変化する形式の物語に強い興味を持っていたみたいですね。

4Gamer:
 本作が選んだ方向性にも通じるお話です。Cherrymochiとしては,今後はどんな活動を予定されていますか?

真保氏:
 できれば,また次のゲームを作りたいと願っています。金銭的な事情なんかもあって,「次やります!」とは軽々しく言えない状況ですが……このSwitch版が売れるか,宝くじが当たったら出ると思います!

4Gamer:
 ということは,既に次の構想があるわけですね。

真保氏:
 ええ,企画は2本ほど暖めています。あとは,それをいかにして実現させるかというところです。

4Gamer:
 期待しています。本日はありがとうございました。

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