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俺のコラボカフェ:Menu 018「ファイナルファンタジータクティクス」に出てきた豆だけのスープとは。FF14での情報もあわせて考えた
4Gamerをご覧の皆さん,こんにちは。クッキングエンターテイナーの大西哲也です。夏真っ盛りの7月,いかがお過ごしでしょうか? 今年は学生さんの夏休み期間も変更になるようですね。私の学生時代の夏休みといえば,毎日親から隠れて睡眠時間を削ってゲームをしたものです。
今思い返しても1990年代後半は名作ゲームが大豊作で,文字通り寝る間も惜しいほどでした。中でも「ファイナルファンタジータクティクス」(以下,FFT)にはハマりすぎて三徹した思い出があります。キャラクターがランダムで唱える詠唱のセリフをほぼすべて覚えるほど,夢中でプレイしました。
決して明るくない重厚なストーリーは非常に読み応えがありました。FFならではのジョブチェンジやアビリティのシステムがやりこみ要素になっていて,どっぷりとハマってしまった記憶があります。レベルを上げるだけのゴリ押しでは進めない,しっかりと戦術を練ることが必要な場面が多いという高めの難度も好みでした。
とくにウィーグラフとの一騎打ちはどうしても乗り越えられず,丸1日を費やしたのも良い思い出です。FFTは,私が今まで出会ったなかで最高のシミュレーションRPGといえるでしょう。スマホ向けに「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争」が出ているので,改めてプレイしたいと思います。
さて,「FFTで料理とは……」と思った人もいるかもしれません。よく思い出してください。物語序盤,主人公が所属する騎士団が盗賊を討伐する際に盗賊団の女剣士ミルウーダは,騎士団の剣士アルガスとの会話でこう言っています。
「貴族がなんだというんだ! 私たちは貴族の家畜じゃない! 私たちは人間だわ! 貴方たちと同じ人間よッ! 私たちと貴方たちの間にどんな差があるっていうの!? 生まれた家が違うだけじゃないの! ひもじい思いをしたことがある? 数ヶ月間も豆のスープで暮らしたことがあるの? なぜ私たちが飢えなければならない? それは貴方たち貴族が奪うからだ! 生きる権利のすべてを奪うからだッ!」
この後に,作中で最も有名なセリフの一つ「家畜に神はいないッ!!」が飛び出しますが,階級社会などを描く複雑なストーリーを象徴する,屈指の名シーンだと思います。当時はあまり深く考えていませんでしたが,今改めて聞くと,肉丼や欧風カレーを呑気に食べているこの胸に突き刺さるセリフです。
そして私が気になったのは,ミルウーダのセリフに出てきた「豆だけのスープ」です。これはどういったものだったのでしょう。
現実世界でも豆のスープは多くの地域で食べられています。ポタージュも美味しそうですし,シチューやミネストローネに入っていても美味しいです。インド料理の「サンバル」やメキシコの「チリコンカン」なども,豆が主体の料理で大好きです。
しかし,ミルウーダがこれほど感情的に主張するということは,決してそんな上等なものではなかったのでしょう。さらに調べたところ,「ファイナルファンタジーXIV」(以下,FF14)には,以下のメッセージがあるようです。
粗末な木彫りのスプーンを差し出された私はその豆だけのスープを口に運ぶ。
薄いがほんのわずかに豆の風味を感じることができる。
その正体は乾燥したレンズ豆の戻し汁だ。
しかも,わずかな豆に水を加えてはその汁だけを食す。
それを繰り替えすため,とにかく味が薄い。
この畏国の貧しい村では岩塩すら貴重なのだろう、
塩気を感じることはほとんどない。
聞けばこのスープですでに1ヶ月を過ごしているという。
想像を絶する貧相なスープ(のようなもの)ですね。FFTの豆だけのスープがこれと同じようなものであるならば,これだけで数か月間過ごすことは生命に関わることになりそうです。
ここは一つ覚悟を決めて食してみようではありませんか。我々も「ハングリー精神」を持って挑まなければいけないときがあるのです。「命脈は無常にして惜しむるべからず… 葬る! 不動無明剣!」と気合を入れて。
■材料(4〜5人分)
レンズ豆 100g
水 1リットル
■実食
これは料理と呼べるものではありませんが,さっそく食べてみましょう。……あれ,意外と美味しいかも。
まあ,「豆の風味がするお湯」なのですが,滋味深いうま味を感じます。この後少量の塩を入れてみたり,油を1滴垂らしたりしたら激的においしくなりました。そういえば,実家の母はところてんを作るときに大豆の戻し汁を使っていたことも思い出しました。スープや煮物のベースとして充分使えそうです。
正直,予想外の結果となりました。「今回ばかりは何の感想も出てきません」みたいになると思ったのに……。
ただ,FF14の描写と比べると豆が多いですし,いわば“一番だし”なのでこのまま何度も水を変えながら数か月間繰り返すとなると,さすがに絶望します。このようなものを食べながら困窮する人々の中で立ち上がった盗賊団は,民衆からすれば非常に勇敢で,讃えられるような存在だったのかもしれません。奇しくもFFTのストーリーをより深く実感することができました。
それにこのスープを食べ続けたというミルウーダが不憫でなりません。せめてもの供養をしてあげたいと思案していたところ,なんと,「FINAL FANTASY XV」(以下,FF15)では極上に美味しそうな豆のスープが登場するという情報を入手しました。
私はFF15をプレイしていませんが,FF15が史上最高の飯テロゲームであることは知っています。友人がプレイしているところを見て,異常にこだわった料理が出ていたので驚きました(しかも料理するのは知的なイケメン「イグニス」です)。
そんなFF15に登場する豆料理は「満腹やわらか豆のスープ」です。名前からして美味しそうです。
FF15で登場したその見た目から分析するに,数種類の豆とトマトと野菜で構成される,シンプルな具材ながら心が温まりそうな料理です。
ミルウーダはこんなスープを誰もが食べられるような世の中を夢見ていたのかもしれません。彼女の来世はそんな世界でありますように……,それでは「天の願いを胸に刻んで,心頭滅却! 聖光爆裂破!」と叫びつつ作っていきましょう。
■材料(2〜3人分)
オリーブオイル 大さじ1
ニンニク(みじん切り) 5g
玉ねぎ(さいの目切り) 1/2個
塩 2g
カットトマト 1/2缶
ピーマン(乱切り) 1個
ミックスビーンズ 240g
ウスターソース 小さじ1
しょうゆ 小さじ1
ケチャップ 小さじ1
コンソメ(顆粒) 小さじ1
豆を戻した水 300cc
■実食二皿目
当たり前ですが,先程の豆スープとは見た目からしてまったくが違います。それでは,食べてみましょう。
これは……貴族も平民も教会も納得のうまさです。野菜のうま味が中心の優しい味でありながらも,ほのかな酸味で食欲が湧いてきます。豆の戻し汁がベースなのも,味の底上げになっているのでしょう。
豆は栄養価が高く腹持ちも良いので,トレーニングやダイエットのお供にも向いています。アレンジもしやすく,肉を入れても美味しいでしょうし,スパイスをもっと効かせてスープカレーのようにすることもできそうです。フランスパンを浸して食べるのも美味しそうですね。豆料理が世界中で食べられているのも頷ける出来栄えとなりました。ぜひ作ってみてください。
今回のメニューはいかがでしたでしょうか? 実際に作った人は「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」といったハッシュタグをつけてSNSに投稿してくれると嬉しいです。あわせて,感想や作ってほしいメニューなどの意見もどうぞ。また,今回のレシピは「COCOCOROチャンネル」での動画はありませんので,この記事を参考に是非チャレンジしてみてください。それでは,またお会いしましょう!
■■大西哲也(クッキングエンターテイナー)■■
あるときは,東京都,西調布にある「料理うまいBAR COCOCORO」のシェフ,またあるときは,「COCOCOROチャンネル」のYouTuber,しかしてその実体は……,料理を通じて多くの人を喜ばせたいと日々奮闘する,クッキングエンターテイナーだ! シェフが好きなFFTのキャラクターは「機工士ムスタディオ」。その理由は,狙撃のアビリティで戦術的に戦闘を楽しめるからなのだとか。ゲーム終盤でもオルランドゥを使わずにムスタディオを出撃メンバーに入れるというのだから,かなりのファンですね。
※次回の掲載は2020年8月22日を予定しています
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争
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