プレイレポート
不思議な和風の世界と,戦術が必要な立ち回り。「OUTRIDER MAKO 〜露払いマコの見習い帖〜」プレイレポート&インタビュー
「OUTRIDER MAKO 〜露払いマコの見習い帖〜」は,神々の世界で運び屋になった主人公・マコを主人公とした,見下ろし視点のアクションゲーム。プレイヤーはマコを操作して,指定された納品物をダンボール箱に“梱包”し,依頼主に届けるのだ。
まず目を惹くのが,雰囲気のあるドット絵。ゲームの世界には,和を感じさせるテイストが漂っており,キャラクターデザインはキモカワイイ系の依頼主や敵がユニークだ。とくに拠点の「ブモンよろず便センター」は,小学校の体育館と神社を足して2で割ったような薄暗い建物で印象に残る。
なかでも面白いのが,マヨイが帰ってくるなり,彼女につきまとう2匹の妖怪(?)だ。彼らは敵ではないし,邪魔をしてくるわけでもないが,助けてくれるサポートキャラクターでもなく,会話でのコミュニケーションすらできない。ただ近すぎる距離感でマヨイの周囲をウロウロするだけでなのだが,この得体の知れなさが妖怪っぽくて良い感じだ。マヨイ自身のドット絵も可愛らしく,アニメーションもキレキレ。フィールドの敵を倒すと,無数の破片に砕け散るのが心地よい。
マヨイを助けてくれる「こうまちゃん」。フードつきのパーカー(?)に前髪パッツンのキモカワイイ系 |
マヨイが敵を倒すと,粉々に砕け散る |
システム面での見どころが“飛びつき”と“赤蜜”だ。フィールドに立っている柱や,敵の頭に乗れるのが飛びつき。この状態から別の敵や柱に飛び移ることもでき,うまく使えば次々に飛びついてフィールドを爽快にビュンビュン飛び回れる。敵の頭上に飛びついた状態からは,赤蜜をぶっかけることができる。赤蜜はリソース消費型のアクションで,敵の動きをしばらく止める効果を持つ。厄介な相手には飛び付きからの赤蜜ぶっかけで無力化し,その間に別の敵を倒すという戦略も立てられる。
赤蜜は塗った敵に少量ながらダメージを与えるため,いざとなれば大量の赤蜜と引き換えに敵を倒すという手もある。ただし収集したアイテムを梱包するときにも赤蜜は必要となる。バトルで赤蜜を使いすぎると,せっかく集めたアイテムを梱包できないという事態になるわけで,リソース管理も重要になってくる。幸い,フィールド上の柱には赤蜜が塗られているものがあり,それに飛びつくことで補充が可能だ。
雰囲気の良いドット絵に飛びつきの爽快さ,そして赤蜜の戦略性と,完成が楽しみになってくる作品だった。
会場では,本作を開発するAsamado GamesのAsamado氏に詳しい話をうかがえたので,それを掲載して本稿の締めくくりとしたい。
4Gamer:
よろしくお願いします。まずは「OUTRIDER MAKO 〜露払いマコの見習い帖〜」の概要を教えてください。
Asamado氏:
見下ろし視点の2Dアクションゲームです。ステージ制になっていて,依頼をこなしていき,ボスと対決して勝つとクリアになります。
4Gamer:
ドット絵が良くできていると感じられましたが,もともとゲーム制作に携わっていたのでしょうか。
Asamado氏:
実はこのゲームが初めてです。以前の職業も,ゲーム関係ではありません。ドット絵やプログラミング,音楽など,なにもかも1人でやっています。音楽こそ少し経験がありますが,ドット絵やプログラミングはゼロから勉強していったので,ここまで上達するのに3年ほどかかってしまいました。
4Gamer:
てっきり,かつてゲーム制作に関わっていた技術を活かして作っているとばかり……。1人で全て開発するのもすごいですが,初作品とは思えないクオリティですね。では,ゼロからゲーム開発を始めようと思われた理由は何だったのでしょう。
Asamado氏:
実は,自分でもよく分からないんです(笑)。ただ,現在はゲーム制作一本に絞って,全てをかけて作っています。
4Gamer:
制作で苦労される点と,楽しい点は?
Asamado氏:
プログラミングについては素人なのでとにかく苦労します。逆に,世界をデザインしていくのは楽しいですね。想像が膨らみ出すとどんどん手が動きます。たとえば,レベルデザインの段階でステージ内に行き止まりを作った時,「ここはなんで行き止まりなんだろう? 崖崩れが昔あったんだろうか? 敵が追ってこられないように,誰かが道をふさいだのか?」などといろいろ考えていき,その結論をグラフィックスに反映させたりもします。単なる地形だけでなく,意味を持たせたレベルデザインになるんです。
4Gamer:
和風の世界観が不思議で,雰囲気が出ていますね。
Asamado氏:
和風のモチーフは出てきますが,現実の日本ではなく神々の住まう,実在しない異世界です。
4Gamer:
ゲームを構築する上で,インスパイアされた作品はありますでしょうか。
Asamado氏:
とくにこれといった作品はないんですが,私は「DARK SOULS」が好きなので,レベルデザインや遊び応えの部分で少し参考にしているかも知れません。
4Gamer:
このゲームのテーマは何でしょうか。
Asamado氏:
“ちょっとした戦略性”ですね。単に敵をなぎ払って倒していくのではなく,飛びつきでどう立ち回るか,考える余地を作ろうとしています。
4Gamer:
なるほど。確かに飛びつきでの高速移動は爽快ですね。
Asamado氏:
飛びつきは,ザコをスルーするだけでなく,スピーディな移動にも使えるようにと考えたシステムです。戦いを避けて先に急ぎたいときなどに,ザコを使って素早く移動できます。ザコをスルーすることにも楽しさが出てきますし,倒すべき敵を選ぶ戦略性にも繋がります。このゲームを開発するときは,移動や立ち回りが楽しいかどうかを常に考えているんです。
4Gamer:
なるほど。戦いたくないザコがいても,単に無視して進むだけではなく,飛びつきがあることで,高速移動できるプラスの存在に転じるわけですね。では,赤蜜のコンセプトは?
Asamado氏:
基本的には,攻撃よりも敵の動きを止めるためのものです。危険な敵を赤蜜で封じておき,その間に別の相手を始末するというような,立ち回りの戦術を広げる仕組みです。ただ,ゲーム内での説明が少し足りていなかったようでした。BitSummit初日のお客さんは,みんな敵を倒すために赤蜜を浪費してしまい,梱包で行き詰まっていました。そこで,その夜に急遽チュートリアルを追加し,新しいデモ版で2日目に臨みました。
赤蜜で敵にダメージを与えられるが,効率は悪い |
梱包にも赤蜜は必要となる |
4Gamer:
インディーズゲームらしいフットワークの軽さだと思います。
Asamado氏:
赤蜜をどのように説明するかは,今後の課題ですね。ゲームが進むと,いろいろなサブウェポンが手に入り,立ち回りの幅もさらに広がります。
4Gamer:
どんなサブウェポンが出てくるのかワクワクしますね。ゲーム全体のボリュームはどれくらいでしょうか。
Asamado氏:
BitSummitのデモ版ではステージ1を体験していただきましたが,完成版ではこの10倍を想定しています。
4Gamer:
では,最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。
Asamado氏:
BitSummitのデモ版は,これからもっとディテールが詰め込まれていくための“器”です。完成版は,もっとディテールが描き込まれ,いろいろなギミックも仕込まれた,“ここにいたい”と愛着を持ってもらえるような可愛らしい世界になります。
自分は40代でゲームを作り始めました。何歳だから無理だとか,年を取ってからやるものじゃないとか考えず,本当にやりたいならやった方がいいです。今はゲームエンジンも便利になっていて,いろいろと作ることができますから。
4Gamer:
完成を楽しみにしています。ありがとうございました。
「OUTRIDER MAKO 〜露払いマコの見習い帖〜」公式サイト
- 関連タイトル:
OUTRIDER MAKO 〜露払いマコの見習い帖〜
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