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[CEDEC 2021]「アサルトリリィ Last Bullet」のアドベンチャーパートにおける開発テクニックを紹介
ラスバレは,アクションドールシリーズ「アサルトリリィ」をベースにメディアミックス展開を行う,「アサルトリリィプロジェクト」の一翼を担うスマホ向けRPGだ。開発はポケラボで,発売はブシロードが担当しており,2021年1月に正式サービスが始まっている。
「CEDEC 2021」公式サイト
本作のウリの1つに,2Dキャラが寸劇を繰り広げるアドベンチャーパートが挙げられる。静止画像を見る限り,かつてのアドベンチャーゲームに近い画面構成だが,最近はボイス再生や漫符を使った表現,カメラワークやモーションをつけた立ち絵など,演出面を中心に数多くの工夫が生まれている分野だ。
こうしたコンテンツのリッチ化に伴って,各作業に携わるスタッフの数も増えており,各作業でのルールを事前に決めておかないと,さまざまなトラブルに見舞われることになる。ラスバレ開発チームもその問題に悩まされてきたという。
講演では,ラスバレのアドベンチャーパートの演出などについて具体例を紹介すると共に,開発チームがどのように効率化を進めていったのかが,ポケラボでエンジニア兼プランナーを務める松村勝広氏によって語られた。
ラスバレのアドベンチャーパートでは,日常のシーンだけでなく戦闘シーンも登場する。しかも,ときとして19名以上のキャラによる集団戦闘も行われるのだ。これを2Dのアドベンチャーパートで表現するにあたり,どのような演出が行われているのかが,順番に説明された。
◎「立ち絵」の出し方について
アドベンチャーパートの最も基本的な演出は,キャラクターが棒立ちになった「立ち絵」だ。表示させるキャラクターが1人の場合は中央に配置,2人の場合は左右対称に配置するなど,当たり前のように感じるかもしれないが,それが大切だ。例えば,複数のキャラが登場するシーンで1人だけ登場を遅らせたり,ずらして配置したりすることで,何かしらの演出意図が込められる。
立ち絵に限った話ではないが,作業内容については可能な限り,統一したルールを決めておくことが大事だという。開発規模が大きくなると複数スタッフの分担作業が発生するが,仮に同じ指示を与えたとしてもアウトプットに違いが出ると,トラブルになりかねない。以上のような細かなルールの積み重ねも,作業効率化につながっているとのこと。
スクリプトの制作担当者は最初にシナリオに目を通し,会話の流れや状況を把握する。そのうえで,各キャラを画面に表示させたり,ズームインなどの演出を盛りこんだりするタイミングを考えるという。これらの作業は,アニメの絵コンテ制作に通じる部分があり,「頭の中で場面を想像しながら作る」ことがポイントだという。
◎戦闘シーンの見せ方について
上記のとおり,ラスバレのアドベンチャーパートでは会話中心の日常シーンだけでなく,戦闘シーンも表現される。漫画チックな集中戦やスピード線のほか,画面揺らしやカットインなど,さまざまな演出を積極的に盛りこんだ。またラスバレには,剣と銃の両方の形態を取れる「CHARM」という武器があるが,その見せ場を演出するための斬撃や銃撃とったエフェクトにもこだわっているという。
戦闘シーンの演出では,カメラワークを変化させることの効果が大きい。戦闘中のスピード感を演出できるほか,使い方によってはキャラクターの性格を表現することも可能で,何より画面を見ていて飽きにくいのだ。ただし,カメラワークの変化は工数が比較的かかる側面もあるとのこと。
◎立ち絵のキャラを構成する表情とモーションについて
アドベンチャーパートの立ち絵では,「表情」と「モーション」を場面ごとにそれぞれ細かく設定できるという。表情は眉,目,口,チークなどの顔パーツごとに動かせるが,それらのバリエーションは膨大で,スクリプト担当が毎回全部設定するのは大変な作業だ。
そこで,主に使用する顔パーツの組み合わせは,「表情」のプリセットとして用意している。スクリプト担当者が作業するときは,(顔パーツではなく)表情を指定するだけで済み,これが作業の効率化に大きく貢献した。
なお現在,表情は19パターン用意されているが,シナリオによっては既存のプリセットでキャラクターの感情を表現しきれない場合もある。そのため,必要に応じて随時追加しているそうだ。
モーションに関しては,さまざまな試行錯誤があった。開発チームは最初,各キャラクターの設定を踏まえていくつかのモーションを作成したが,実際に使用したところ,オーバーリアクションになることが多かった。
舞台役者の演技を見ると,場面によっては役者がまったく動かなくても感情が伝えられる。ラスバレのアドベンチャーパートにはセリフも表示されるので,さらにモーションを添えると,ときとしてオーバーリアクションになってしまうわけだ。
開発チームが分析したところ,モーション,すなわち体の動きには,さまざまな目的が込められている。感情を伝えること,情報を伝えること,そしてキャラクターの存在感を伝えることなどだ。そのため,テキスト表現された場面にモーションを添える際は,そのキャラクターが何を目的としているのかを把握することが大切だという。
◎作業のワークフローについて
ラスバレのシナリオは膨大であり,さらにアップデートによって随時追加されている。現在,アドベンチャーパートのスクリプト作業には5名以上が携わっているそうだ。
これらの各作業はスプレッドシート上で行われており,スクリプトに不慣れな人でも作業しやすい。また,人によって演出が異なることを避けるなど,クオリティの統一には特に気をつかっている。
松村氏らの開発スタッフは,ラスバレの開発初期の頃,本講演で語られているようなノウハウを持っていなかったという。そのため二度手間や,指示が的確に伝わらないことに起因するロスが多く発生し,いろいとと苦心したため,各工程の言語化やルール化など,効率化には常に気を配ってきた。
その結果,現在の開発チームは1か月あたり200KB近くのシナリオを,アドベンチャーパートに実装できる体制が整えられた。これは,文庫本約1冊分のボリュームだという。
ただ,いかに作業の効率化を進めても,スケジュールやコストなどの問題は出てくるという。そうしたときに何より求められるのは,開発者自らが作品の魅力を確信し,それを表現することに全力を注ぐ心の持ちようだという。良質の作品を作るために必要なものは,ルールやテクニックだけではないと松村は強調し,講演を締めくくった。
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(C)Pokelabo, Inc. (C) bushiroad (C)Tokyo Broadcasting System Television, Inc. (C)Shaft
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