インタビュー
「Bloodstained: Curse of the Moon 2」発売直前インタビュー。五十嵐孝司氏ら3名のキーパーソンが語る新たなキャラクターと追加要素の魅力
本作は,2018年5月に発売された「Bloodstained: Curse of the Moon」(PC / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch / PS Vita / 3DS。以下,「CotM」)の続編にあたる,8bit調のグラフィックスとサウンドを特徴とするステージクリア型の2Dアクションゲームだ。
発売に先駆けてBitsummit(6月27・28日開催)での発表内容を踏まえたうえで,本作のプロデューサーを務めるインティ・クリエイツの會津卓也氏とディレクターの宮澤拡希氏,そして世界観およびシナリオの監修を手がけたゲームクリエイターの五十嵐孝司氏にメディア合同インタビューを行った。本稿では,その模様をお伝えしよう。
「CotM」で斬月が仲間を誰も殺さなかったエンディングの続編
──本日はよろしくお願いします。さっそくですが,「NEW GAME+ EXPO」では「CotM2」の発表でかなり盛り上がっていました。「Bloodstained」シリーズのファンの中には,2019年に発売された「Ritual of the Night」(以下,RotN)の続編だと思った人もいるようです。
改めて説明すると,「CotM2」の前作にあたる「CotM」は,Kickstarterで「RotN」の開発資金調達をしたときのストレッチゴールの1つとして実現したんですよね。ところが「RotN」の開発が遅れてしまい,「CotM」のほうが先に発売されてしまったので,皆さんを少し混乱させてしまったかもしれません。
「CotM」は発売後の反響が非常に良く,インティ・クリエイツさんと,せっかくだから続編を作ろうという話になりました。
──「CotM」は「RotN」のスピンオフなんですよね。
五十嵐氏:
そうです。世界観こそ同じですが,それぞれ別の次元で物語が展開していると考えてください。
會津卓也氏(以下,會津氏):
五十嵐さんは,本編の「RotN」に対する「CotM」の位置付けをしっかり設定しているんです。しかしそれを全部オープンにしてしまうと,ファンの皆さんの想像の余地がなくなってしまうんですよね。それで「CotM」は「RotN」の“スピンオフ”という表現を使っています。
五十嵐氏:
設定上で「RotN」と「CotM」はつながりがありますけれども,さてどこでつながっているでしょう? といったところです。
──それでは「CotM2」の物語は,「CotM」からどのようにつながっているのでしょうか。
五十嵐氏:
「CotM」でエンディングを迎えたあと,魔塔が出現するんです。その報告をドミニクから受けた斬月が一緒に魔塔に向かうことになります。
──「CotM」はマルチエンドでしたが,どのエンディングからつながる物語なんですか。
宮澤拡希氏(以下,宮澤氏):
そこはシンプルに,悪い奴を倒してめでたしめでたし,というエンディングからです。
五十嵐氏:
誰も殺さないエンディングですね。
──謎のエンディングもありましたが。
宮澤氏:
あれは忘れてください(笑)。ジョークです。
會津氏:
宮澤は遊び心があって,キャラクターのお茶目な面を見せたら面白いんじゃないかといろいろ入れたがるんですが,五十嵐さんのチェックで全部弾かれるんですよ(笑)。
五十嵐氏:
でも,残したところもありますよ。
──ちなみに今回は,斬月が誰かを殺して先に進むような分岐はあるのでしょうか。
會津氏:
今回はありません。
宮澤氏:
続編ですから,斬月も少し精神的に成長したということです。
──まあ,前作で誰も殺さなかったエンディングの続きなわけですからね。
會津氏:
ええ,そういう解釈が自然だと思います。
まだ行けないはずの場所に行ける! ルール無用の2Pプレイが面白い
──それでは,「CotM2」がゲームとして前作からどう進化したのか教えてください。実はステージ1をプレイ(※)しているんですが,大きな変化を感じ取れませんでした。
※取材参考用に渡されたアルファ版
前提から話すと「CotM2」は「CotM」の正統進化ということで,ボスをすべて変えて,シナリオを新しくして……というところがベースになっています。ただそれだけでは新作たり得ませんから,プラスαでいくつか要素を追加しています。
宮澤氏:
ステージ1は,チュートリアルを兼ねているんですよね。シチュエーションは違うけれども,プレイヤーが要求されるのは前作のおさらいなんです。あとは,皆の知っている斬月が帰ってきたというところも表現しています。
ステージ2以降は,新しい仲間の特性を活かすレベルデザインになっているので,かなり違うと感じるはずです。
──確かにキャラクター紹介を見ると,前作になかった攻撃がありますね。
宮澤氏:
新しい仲間は,前作の仲間以上に要素を盛り込んでいますので,やれることも増えています。
會津氏:
新しい仲間には,それぞれ個性的で尖ったところがあります。また「BitSummit Gaiden」で発表するのですが,前作の仲間も合流するので最大7人のキャラクターを切り替えてプレイするゲームになります。かなり遊びが広がっていると言えるでしょう。
宮澤氏:
仲間が7人もいると,どうやって特性の差別化を図るかが本当に大変で……。
會津氏:
7人になったぶん,シナリオのボリュームも増えました。前作と同じく,繰り返し遊んでいただける内容になっているんですが,五十嵐さんにもご苦労をかけてしまって。
五十嵐氏:
今回は,本当にボリュームがあるんですよ。シナリオの量は前作と同じくらいと聞いていたんですが,実際に届いたらすごく多くて。正直,チェックが間に合わないんじゃ……という話になるくらいでした。
とくに今回は,周回するごとに少しずつシチュエーションが変わっていくんので,前作よりも周回のやり応えがあるかなと。
──物語は,複数のエピソードで成立しているとのことですけれども。
會津氏:
エピソード1をクリアするとエピソード2,それをクリアすると3といったように遊べるエピソードが増えていき,最終的に1つのボリュームのある物語となります。
──「BitSummit Gaiden」では「2Pプレイが可能」という発表があるそうですね。
會津氏:
2Pプレイは,我々が言うのもなんですが今回一番面白い要素です。基本的には1台のゲーム機で2つのゲームパッドを使って遊ぶローカルマルチプレイですが,PS4にはシェアプレイがありますし,Steamにも「Remote Play Together」があります。またNintendo Switchには,おすそわけプレイがありますよね。
つまり今はハードウェアの進化によって,ネット越しや自宅外でもローカルマルチプレイの要素を楽しめるんですよ。それなら採用する意義は大いにあるんじゃないかと,宮澤が発案したんです。実際にPS4版で試してみたら,これが意外に面白くて。
化学反応が起きましたね。2Pプレイでは互いのキャラクターに干渉できる,つまり頭の上に乗ったりできるんですが,そうなると行けないはずの場所にも行けるようになるんです。
例えばあるステージを攻略していると,「ここはより高くジャンプできる仲間がいないと行けない」という場所に遭遇するんですが,2Pプレイだと行けるようになります。ただ,そうなるとゲーム内のいろんなことが破綻しかねないのですが「ま,いいか」と。
一同:(笑)
宮澤氏:
そこには制約をかけなかったので,「今,やっちゃいけないことをやってる!」という感覚を楽しめると思います。
會津氏:
プレイヤーがこれをやったらバランスが破綻するから潰しておこう,ということを一切やっていないんですよ。「試したらできるんじゃないか」と思うことは,ほとんどできるはずです。特定のタイミングでしか攻撃できないはずのボスが,殴り放題になったりもします。
宮澤氏:
2PプレイのRTA(※)動画がすごく見たいですね。
※リアルタイムアタック。特定のスタート地点からゴール地点までの実時間(ゲーム内での表示時間ではない)を計測し,その時間の短さを競うというプレイスタイル
會津氏:
RTAの強者2人に,ぜひチャレンジしていただきたいです。
五十嵐氏:
これはステージクリアタイプのゲームだからこそできることですよね。探索型だと「このルートにこのタイミングで入られるとまず間違いなく破綻する」という部分があるんですが,ステージクリア型だと,入ってほしくない場所はあるにせよ最終的にボスを倒してもらえればOKですから。2Pプレイをルール無用にしたのは,良いアイデアだと思います。
──つまり入ってほしくない場所に入っても,物語の進行そのものは破綻しないという理解でいいでしょうか。
會津氏:
そのとおりです。物語はステージとステージの間で進行していきます。ステージクリア時に条件を満たしているかどうかで,そのあとの分岐が決まります。
──逆に2Pプレイでしか行けない場所はありますか。
會津氏:
基本的にはありません。ただ,1Pプレイでは到達するのが難しい場所に,2Pプレイならかなり簡単に行けるようなことはあります。
──どこにでも行けるようになることで,システム的な不具合が発生する可能性はないのでしょうか。
會津氏:
ゲーム内で行ける場所はもともと何かしらの手段で行けるように作っていますから,基本的には大丈夫なはずです。もっとも,我々のチェック不足で「これを試したらゲームの挙動がおかしくなった」というケースが出てくるかもしれませんが……。
宮澤氏:
各ルートとも,あらゆるケースを想定してチェックしていますから,おそらく大丈夫かと。
──それでは,2人のプレイヤーが同時に同じキャラクターを使うことはできますか。
宮澤氏:
斬月のみ,色が青い2P斬月を用意しています。それ以外のキャラクターは,同時に使えません。
會津氏:
実は宮澤が,この青い斬月に設定を付けたいと言い出したんですけれども,五十嵐さんが……。
五十嵐氏:
却下しました(笑)。そんな人はいないんで。
會津氏:
斬月は孤高の剣士です,と。
宮澤氏:
あくまでゲーム内のみのメタ的な存在になっています。
會津氏:
それでいるかいないか分からないような,少し暗めの青にしているんです。シャドウと言いますか。
──ほかに2Pプレイの特徴はありますか。
會津氏:
2Pプレイのもっとも大きな利点は,片方が置いてきぼりになったときに,先行しているもう片方のところまでワープできることです。例えば片方が扉をくぐったり階段を通過したりして次に進むと,もう片方はどこにいようがショートカットして次に進めるんです。
また,1ボタンで相方のところにワープする機能もあります。これを活用すると,かなりクリアタイムを短縮できます。
例えば,このゲームは空中制動が決まっているので,ジャンプした瞬間に落ちることが分かるんですよね。そのとき,相方のところにワープすればミスを回避できるわけです。
前作の仲間達に負けない個性を持つ,新たな3人の仲間
──それでは,新しい仲間の特徴をそれぞれ教えてもらえますか。
五十嵐氏:
まずはドミニクですね。
──「RotN」をプレイした人は,ドミニクがプレイアブルキャラとして起用されたことに驚いたんじゃないでしょうか。
五十嵐氏:
今回のドミニクは,“あちら側”ではないんですよ。ちょっと説明しづらい設定のキャラクターですね。
宮澤氏:
私個人としては,“あちら側”だと思ったままプレイしてほしいですけどね。キャラクター紹介でも「謎の多きエクソシスト」と謳っていますし。
五十嵐氏:
今回のドミニクは,武器もデザインも一新しています。彼女が魔塔の出現を報告して,斬月と一緒に悪魔を倒しに行くことになります。
會津氏:
ドミニクのデザインが変わったのは,「RotN」の黒基調の衣装では8bitテイストのドット絵にしづらかったからです。
五十嵐氏:
キャラクターの性能としては,まず高いジャンプができます。またメインウェポンの槍の性能が非常に良く,上にも下にも攻撃ができます。そして一番特徴的なのは,サブウェポンの回復です。サブウェポンを使えば,単純な体力回復から皆さん待望の死者の蘇生までいろいろできます。
宮澤氏:
7人全員を仲間としてプレイしているときの蘇生は,べらぼうに強いですよ。
會津氏:
ドミニク以外の6人全員を蘇生しますからね。
五十嵐氏:
同時に,少し体力を回復してくれます。正直,一番最初に死なれると困るキャラクターです。
──大事に使ったほうがいいと。
五十嵐氏:
大事に使わないと,蘇生できなくなりますからね。
會津氏:
でも高いところにジャンプできたり,攻撃範囲が広かったりと使いたくなる局面が多いんですよ。
五十嵐氏:
体力が低めなので,そうやって頻繁に使っているとピンチに陥りやすいですね。ふと見るとドミニクだけ死んでる,なんてことはよくあります(笑)。
──それではロバートはどうでしょう。
宮澤氏:
前作の仲間とキャラが被らず,かつ負けないくらい強くすることを考えると,飛び道具しかないなと。それでガンマン,時代が18世紀なのでメインウェポンはマスケット銃,銃を扱うから元軍人という設定ができていきました。
ほかの仲間が剣や槍で攻撃しているのに,1人だけ銃を使えると圧倒的に強くなることは予想できたので,体力は低めにしないとダメだろうとも考えました。しかし元軍人の体力が低いというのもおかしな話ですから,ほかの仲間と違って退魔の力を持っていないために打たれ弱いという設定になっています。
五十嵐氏:
“悪魔耐性”が弱いということですね。
宮澤氏:
性格的には,最初はちょっと嫌な奴っぽく見えるんですけれど,だんだん打ち解けてきて,最終的に好きになってもらえるキャラクターだと思います。
會津氏:
サブウェポンの使い勝手が良くて,威力が高いもの,射程が長いもの,斜め上を攻撃できるものと充実しています。ここでゴリ押ししようという局面で使いたいんですけれども,体力が低いのであっと言う間に死ぬんですよね。
宮澤氏:
最初に死ぬのは,だいたいロバートなんです。ロバートが死ぬと,遠距離射撃で倒せるはずの敵がまったく倒せなくなるので,急に難度が上がって総崩れにつながります。
──こういうアクションゲームで通常攻撃が遠距離というキャラクターは,あまり例がないですよね。
會津氏:
ただ,マスケット銃なんで連射ができないんですよ。ワラワラと敵が出てくると,対処しきれないまま詰め寄られて,ダメージを食らうことになります。
宮澤氏:
波状に上下しながら飛んでくる敵にも攻撃を当てづらいです。
會津氏:
あとは壁蹴りができるので,三角飛びで少し高いところに行けます。このあと紹介するハチはホバー移動ができますから,ロバートで高いところに上がってハチに切り替えると非常に高い位置を保ちながら平行移動が可能になるんです。
──それでは,そのハチもお願いします。
會津氏:
ハチはこう見えてコーギー犬なんです。昔,助けてもらった恩を返そうと斬月を追いかけていた最中に悪い錬金術師に捕まり,魔導アーマーの生体ユニットとして組み込まれてしまったという経緯があります。余談ですが,ゲーム内のキャラクター切り替えのアイコンがコーギー犬の姿なので,「NEW GAME+ EXPO」で発表したときはそこだけ切り取って「犬だ!」という投稿がSNSにあふれ返っていました。
また今回,ステージ間のデモに仲間達がたき火を囲んで談笑しているようなシーンがあるんですけれども,そこでは魔導アーマーから出たハチが走り回る姿なども見られるので,おそらく好きになっていただけるんじゃないかと。
──魔導アーマーと切り離せないような存在ではないんですね。
五十嵐氏:
生命維持的な理由から,あまり長い時間は離れられない設定になっています。
宮澤氏:
作中ではとくに説明していないんですけど,おそらくそうだと感じ取れると思います。
會津氏:
性能的には,お話ししたとおりホバー移動ができます。また,ほかの仲間だとダメージを受けるトゲをストンピングで壊すことができます。さらにサブウェポンは,時間経過でウェポンポイントを消費し続けながら無敵状態を保つというものです。ウェポンポイントがある限りは無敵ですから,ボスをガシガシ殴るといったゴリ押しも可能です。
実のところ,ハチは強キャラなのでもうちょっと弱体化したほうがいいという話も出るんです。でもスタッフはみんな,宮澤がその話を切り出すとすごく嫌な顔をするんですよ(笑)。
宮澤氏:
「ハチがいないとクリアできない!」って(笑)。
會津氏:
「好きだからじゃないんかい!」という(笑)。
宮澤氏:
実際,キャラクターを切り替えない縛りプレイをやると,ハチの場合は全然苦にならないんです。とてつもなく強い。
──前作の仲間3人に,何か変化はありますか。
五十嵐氏:
全体的にパワーアップしています。
會津氏:
とくにアルフレッドは,同じ攻撃型キャラのロバートがすごく強いので,前作のままでは見劣りしてしまうんです。そこで今回は,かなり強くしました。
宮澤氏:
細かい話をすると,前作のアルフレッドは凍らせて殴るというコンボが一番強かったんです。そのせいで最強の錬金術として設定した「ヴォルティックレイ」の影が薄くなってしまったので,失敗したなと。そこで今回,ヴォルティックレイをとんでもなく強くしました。
會津氏:
あるステージの敵を瞬殺できるんですよ。
宮澤氏:
ウェポンポイントさえあれば敵が溶ける,というくらい強くしました。
あとは分身の錬金術ですね。前作では意図的にハズレのサブウェポンとして弱めに設定していたんですが,今回は強化されて普通に強いです。
會津氏:
ほかの2人も強化しています。ジーベルの使い勝手の良さや,ミリアムの使っているだけで安心できるところを残しつつ,パワーアップしました。
各ルートに7人それぞれが活躍できる場がある
──難度は前作同様,「ベテランスタイル」と「カジュアルスタイル」の2種類があるということですが。
宮澤氏:
カジュアルは前作と同じく残機の制限がないこと,ダメージを受けたときにのけぞらないことに加え,部屋を移動して切り替わったときにランタンだけ復活するという要素を加えました。そのおかげで,「ずるいんじゃない?」と思えるくらい易しくなっています。
逆にベテランは前作より少しだけ難しくなり,部屋を切り替えるとこちらは敵が復活します。
會津氏:
皆さんがYouTubeなどに投稿している前作のプレイ動画や生配信をチェックしていると,いろいろ指摘してくださっているんですよね。ありがたいご指摘も,胸が痛くなるようなご指摘もあるのですが,それらをフィードバックとして受け止め,「CotM2」の開発や難度調整の参考にしました。
──具体的な例を教えてもらえますか。
宮澤氏:
例えば,ほかの仲間が全員死んでアルフレッドだけ残った場合に,もう無理だから死んでやり直そうということが多いんです。ただ作った身としては,残された仲間だけで頑張っているうちに,それまで気づかなかった仲間達の良いところが見えてくると思っていて。ですが,今回は皆さんに少し歩み寄って「あきらめてやり直す」という,いわゆる全滅コマンドを用意しました。
會津氏:
これは,かなり大きな変更です。
──ベテランとカジュアルでエンディングが変わることはありますか。
宮澤氏:
難度でエンディングが変わることはありません。
會津氏:
難しいゲームを好む人は,ぜひベテランで遊んでほしいですね。我々としてはベテランの難度をスタンダードなものと捉えて開発していますが,古き良きゲームのようなガチめの難度ですので,それだと今は「難しすぎる!」という人も少なくありません。そこでカジュアルを用意したわけです。
私自身,古いゲームをバーチャルコンソールなどで遊んでみて,「あれ,もっと上手だったはずなのに……」と思うことがありますから。
──プレイしてみてサウンドが非常に良いと感じたのですが,どなたか著名な方に依頼したのでしょうか。
會津氏:
一部,社外に依頼した部分もありますが,基本的には社内のサウンドスタッフが制作しました。前作では「RotN」の楽曲も使わせていただきましたが,今回は全曲オリジナルです。
宮澤氏:
サウンドプロデューサーが楽曲にすごくこだわった,という話は聞いています。
會津氏:
採用された曲よりボツ曲のほうが多いんじゃないか,という噂があるくらいです。
宮澤氏:
ボツ曲の中にも,個人的に好きな曲があるんですけどね……。
──前作も「CotM2」も,サウンドを含めて全体的に8bit感を高い完成度で表現しきっていますよね。制作に対してはどんなこだわりを持って臨んでいるのでしょうか。
會津氏:
とくにビジュアル面に関しては,背景担当もキャラクター担当も強いこだわりをもっています。例えば昔のハードにはフェードイン/フェードアウト機能がなかったので,パレットチェンジを使って表現していました。ファミコンのカラーパレットからパターンを選んで,「こうやると少しずつ青が暗くなってフェードアウトしているように見える」ということをやっていたんですね。だから綺麗にフェードイン/フェードアウトしないんですけれども,それをわざわざ再現したりしています。もちろんカラーはファミコンで使えたものだけを使っています。
ただ1キャラクターの中に使えるスプライトに関しては,なるべくファミコンに忠実に作っているんですが,背景に関してはより多くのカラーを使っており,ファミコンでは表現できないものになっています。
宮澤氏:
実はキャラクターも,ファミコンより1色多く使っているんです。
──五十嵐さんは,前作や「CotM2」のビジュアルを見てどう思いましたか。
五十嵐氏:
さすがだな,と。以前からファミコンぽく見せつつ,実は1色多い,少しパレット数が多い,ここはなるべく同じ色でベタ塗りにするといったような表現が非常に上手だと思います。
ファミコンぽいと思わせているんですが,実際に昔のファミコンのゲームと比較すると,格段に綺麗なんです。それは思い出補正があるので,昔とまったく同じだと今は通用しないということをよく分かっているからなんですよね。
會津氏:
正直なところ,メガドライブくらいのビジュアルになっていますね。そもそもファミコンが表示できるスプライトの最大値やVRAMの容量では,このゲームを作るのは無理なんです。スーパーファミコンよりもっと大きな容量のVRAMが必要ですから,どうしてもメガドライブくらいにはなってしまうんです。
宮澤氏:
チーム内では,「これは使ってOK」「これはダメ」というルールを決めて開発しています。「これはファミコンだと無理だろう」という部分も,「ここまではOK」という一律のラインに沿って作っているんです。
會津氏:
そういうルールがきちんとあるのに,宮澤はすぐ「もっと派手に!」と言い出すんですよ(笑)。「それをやると8bitっぽくなくなるよ」と言っても,「派手なのが正義です」と。
──それでは開発中,とくに苦労した点を教えてください。
宮澤氏:
7人の仲間を切り替えながら進むゲームなので,ステージのレベルデザインが非常に大変でした。前作における「Nightmare」モードのように,新しい場所に行けるルートでは新しい仲間が活躍できるような敵の配置やギミックを施しています。前作ではそれまで立ち入ったことのないルートに行っても,「初めてのルートだな」くらいの感じでしたが,今回は多少ご褒美があります。
──確かに7人それぞれに活躍の場を用意するのは,多大な苦労があっただろうと想像できます。
宮澤氏:
各ルートで,特定のキャラクターだと綺麗に攻略できるようにこだわりました。ずっと,「このタイミングでは,このキャラクターはまだこのルートに連れて来られない。でも将来的には連れて来ることになる」というようなことを考えていましたね。でもプレイヤーによっては,そのルートに,そのキャラクターでプレイしないままゲームを終えてしまうこともあるんですよね。
──ぜひ,やり込んで見つけてほしいと。
宮澤氏:
「このキャラクターで来たら,最短でクリアできるとは思わなかった」みたいな発見がたくさんあると思います。
會津氏:
あとは繰り返しですが,開発期間が短かったので五十嵐さんに無茶なお願いをしました。本当に大量のテキストを送りつけてしまって。
五十嵐氏:
「3日でチェックしてください」とかね(笑)。
宮澤氏:
今回は本当に怒られるんじゃないか,と思いながらシナリオを提出したんですよ。
五十嵐氏:
こちらも修正でバッサバッサと切りました(笑)。寸劇ができ上がっていたので,それを壊さないよう調整して……大丈夫でした?
宮澤氏:
ええ,一番やりたかった部分はきちんと残っていましたから。
會津氏:
五十嵐さんのほうからも「やりたいと思われる部分は残しておきました」というメッセージがあって。「Bloodstained」というシリーズにおけるキャラクターの整合性を考えたときに,どうしてもマズい部分に手を入れていただいた感じです。その整合性を取れるのは,五十嵐さんしかいませんから。
五十嵐氏:
確かにそうですね。
會津氏:
シナリオレベルじゃなくて,セリフまで監修して修正してくださってありがたかったです。
宮澤氏:
「RotN」をしっかりやり込んだつもりだったんですが,まだまだキャラクターを掴み切れていませんでした。
──今後「CotM」を,「3」「4」と続けて行く予定はあるのでしょうか。
會津氏:
実は,前作のセールスがハーフミリオンを超えるほど好調だったので,今回「CotM2」を作ろうという話になったんです。シリーズの継続に関しては,皆さんの応援がないと明確な話はできません。
宮澤氏:
とは言っても,いつもそうなんですけど,「これで全部出し切った!」というつもりでゲームを作っているので,もうアイデアがないんですよ。
會津氏:
いやいや,次回は10人切り替えで。
宮澤氏:
7人が限界です。
一同:(笑)
──それでは最後に,どんな人にどんな形で遊んでほしいか教えてもらえますか。
五十嵐氏:
古き良きゲームとして作っていますので,当時ファミコンなどに夢中になっていた人達には当然遊んでいただきたいです。ただ僕自身,ゲームはあまり進化していないと思っています。映像や演出はすごく進化しましたが,ゲーム自体はあまり進化していない。それなら今の若い人にも触っていただいて,「ああ,ゲームとはこういうものなんだ」ということを実感してほしいです。
宮澤氏:
ゲームを作るうえで,いつも「なるべく,うまくない人でも遊べるようにしたい」と考えています。具体的には,普段まったくゲームをやらない自分の父親がクリアできるくらいを下限にしようと思っています。そういった,普段ゲームをやらない家族や知人と一緒に遊べる仕掛けをいろいろ用意したので,いろんな人を巻き込んで一緒に楽しんでほしいです。
會津氏:
2人が夢のある話をしたので,私は違う方向の話を。
まず「CotM2」のNintendo Switch版は,あらかじめダウンロードに対応しているので,ぜひそちらをご利用ください。また前作同様,いろんなハードに対応したゲームですが,ハードによって2Pプレイを遊べる環境が異なります。もっともご自身に適したハードを選んでご購入いただければと思っております。
──ありがとうございました。
「Bloodstained: Curse of the Moon 2」公式サイト
- 関連タイトル:
Bloodstained: Curse of the Moon 2
- 関連タイトル:
Bloodstained: Curse of the Moon 2
- 関連タイトル:
Bloodstained: Curse of the Moon 2
- 関連タイトル:
Bloodstained: Curse of the Moon 2
- この記事のURL:
キーワード
(c)ArtPlay, Inc. / (c)INTI CREATES CO., LTD.
(c)ArtPlay, Inc. / (c)INTI CREATES CO., LTD.
(c)ArtPlay, Inc. / (c)INTI CREATES CO., LTD.
(c)ArtPlay, Inc. / (c)INTI CREATES CO., LTD.