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[インタビュー]「悪魔王子と操り人形」の世界観を表現するためのこだわりとは。ミニキャラや箱庭家具,カードイラストの制作秘話も聞いた

 呪われた世界“シャグラン”を舞台に,「悪魔」「人間」「天使」の3種族の運命を描く,ダークファンタジーADV「悪魔王子と操り人形」iOS / Android。以下,あくあや)。本作の魅力は何と言っても,尾崎ドミノ氏(キャラクターデザイン/世界観設定)による魅力的なイラストと,実弥島 巧氏(メインシナリオ)が手がける重厚な物語である。

プレイヤーは,呪いを浄化する力を持つ調律者(ちょうりつしゃ)となって,12人の弔花者(ちょうかしゃ)に自身の力を分け与えながら,彼らを見守る役目を担う
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 そして,その魅力をより引き立たせるためのゲーム作りが,ドリコムとリベル・エンタテインメントの共同開発により行われている。本稿では,「あくあや」のシステム面を支えるリベル・エンタテインメントのディレクター陣と,「箱庭」のデザインや,カードイラストの制作に関わるドリコムのデザイナー陣へのインタビューをお届けしよう。

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プランナーインタビュー
世界観を大事にしたゲーム作り


4Gamer:
 まずは「悪魔王子と操り人形」で,お二人が担当されているお仕事を教えてください。

ディレクター 佐井氏:
 私は,ゲームシステムを作る仕様作成と実装,その後の管理のほか,企画提案するにあたっての大枠の検討や,管理/進行なども担当しています。世界観以外は,ほぼ見ているという形です。

世界観ディレクター 北島氏:
 私は主にイラストの企画,ストーリー全般の監修業務を行っています。また,「箱庭」など,ワールド機能まわりの仕様作成を担当することもあります。

4Gamer:
 ありがとうございます。差し支えのない範囲で,「あくあや」を共同開発することになった経緯を教えてください。

北島氏:
 弊社からゲームの企画書を提出し,それがドリコムさまの目にとまった形です。弊社に女性向けゲームの知見やノウハウがあったこともあり,作品作りのお手伝いをさせていただくことになりました。

4Gamer:
 オフィスは異なりますが,やはり定期的にやりとりをされる機会を設けているのでしょうか。

佐井氏:
 はい,毎日朝会しています。尾崎ドミノ先生も池田プロデューサーもフランクに接してくれるので,こちらとしても提案しやすい環境になっているんです。別の会社ではありますが,密接にコミュニケーションを取らせていただいています。

4Gamer:
 とても良い環境なんですね。最初に「あくあや」の企画を聞いたときの印象はいかがでしたか。

佐井氏:
 弊社の手がけるタイトルには,これまであまりなかったダークファンタジーな世界観,そして目を引くキレイなビジュアルが印象に残りました。私個人としても,魅力的な世界観をどうゲームに落とし込むか,考えながらワクワクしましたね。

北島氏:
 ドリコムさまから企画書をいただいた時点で,ダークファンタジーらしい闇を感じる世界観に惹かれ,尾崎ドミノ先生のイラストもとても美しいと感じました。弊社内でも「このキャラクターいいよね」「こんなゲーム性が合いそう」と想像を膨らませるのが楽しかったです。

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4Gamer:
 内部でも楽しく開発をされていたんですね。ゲームの方向性が見えたのはいつですか。

佐井氏:
 キャラクター同士の関係性や,世界観をしっかり見せることは,ベースから固まっていました。どう見せるか考え,没入感のある「箱庭」要素であったり,楽しんで遊べるパズルだったり,システムを世界観に組み込む作業をある程度終えたとき,「ゲーム内サイクルができたな」「皆さんに世界観がお伝えできるな」という実感がわきました。

4Gamer:
 「箱庭」は女性向けコンテンツでもよく親しまれているコンテンツですが,それが全面に出たゲームシステムというのが面白いですよね。

佐井氏:
 プロデューサーの池田氏とも,そこを軸にしたいと話していました。弊社としてもストーリーラインを組み込み,ビジュアルでも見える形で展開していければ,分かりやすいですし,体験として面白くなるのではないかなと思ったんです。

 それが実現するように「このときはこうだよね」と,ゲームシステムを作る側と,世界観ディレクターの北島で相談し,共同作業で進めていきました。

4Gamer:
 北島さんとしても,「箱庭」と世界観の関係性はこだわられたポイントなんでしょうか。

北島氏:
 そうですね。とくに今回は,「箱庭」上でメインストーリーが展開していきます。物語には呪詛も絡んでいるので,それを「箱庭」でどう表現するのかは,開発メンバーと話し合い,こだわったポイントです。

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4Gamer:
 「箱庭」上のオブジェクトが呪詛に蝕まれると,登場人物たちの心に影響があったり,危険なものであるためシステム的にも動かせなくなっていたり,世界観が深まっていて楽しいなと感じました。

北島氏:
 ありがとうございます。調律者(プレイヤー)の皆さんが,「あくあや」の世界にいるという没入感を大事にしています。

4Gamer:
 開発を進めるなかで,難しかったところはどこでしょうか。

佐井氏:
 「箱庭」上のミニキャラクターの表現は,とても難しかったです。キャラクターが自然に「箱庭」のなかで生きている感じを出すには,どうすればいいのか……。キャラクターと世界観を表現するうえで,不自然にならない塩梅で会話を見せる作りこみが大変でした。

 具体的な例でいえば,「箱庭」上にキャラクターがいたら触れたくなると思います。それは神視点と言いますか,第三者が介入できる状態ということで,作品の世界としては「誰が触っているんだろう?」という違和感が生まれます。

 本来なら入れてもいい機能だと思いますが,現時点では世界観を大事にするために,タップでリアクションをとってくれるようなシステムは入れていません。

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4Gamer:
 なるほど。それに不用意に触ると,怒りそうなキャラクターも多いですしね(笑)。

佐井氏:
 指に穴が空くかもしれません(笑)。調律者さまの安全のためにも,ひとまずは未実装にさせていただきました。

4Gamer:
 幅広い層が遊ぶ作品だけに,難度や触り心地の調整には苦労されているのではないでしょうか。

佐井氏:
 賛否両論になる部分かと思いますが,メインストーリーを読み進める体験を重視していただくため,プレイしやすい難度になっています。そのかわり,しっかりとパズルを楽しみたい方に向けて,高難度の「解放クエスト」を用意しました。

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4Gamer:
 アプリとしての「あくあや」の魅力や,注目してほしいポイントを教えてください。

北島氏:
 キャラクター同士の会話は,物語の軸として大事にしています。いろいろなストーリーを読んで,主従や陣営同士の関係性を楽しんでいただけたらうれしいです。

 また,「箱庭」のオブジェクトもドリコムさまと話し合いながら,こだわって作っています。キャラクターごとに好きなオブジェクト,嫌いなオブジェクトもあるので,いろいろ飾って,好みを探ってみるのも楽しいと思います。

4Gamer:
 「箱庭」におけるオブジェクトは,凝ったものばかりですよね。

北島氏:
 完成したデザインを見たときは,弊社内でもかなり反響が大きかったです。とくにローゼはキャラクター性がよく出ていて,生配信でキャストさんも面白がってくださいました。今後も世界観やキャラクター設定は,どんどん盛り込んでいきたいです。

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4Gamer:
 イベントでも,新しいオブジェクトが追加されているので,これからの展開が楽しみです。ちなみにイベントのシステムは,リベルさんからも提案されているのでしょうか。

佐井氏:
 大枠の案はいただいているんですが,機能などは弊社から提案し,話し合いを重ねて実装するような流れになっています。

4Gamer:
 イベントならではのシステムも考えられているんですね。最後に,ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

佐井氏:
 尾崎ドミノ先生のデザインだったり,実弥島先生のメインシナリオだったり,キャラクターたちの魅力,関係性を楽しめるゲームをドリコムさまと協力して作らせていただきました。ゲームをとおして楽しんでいただけると,うれしく思います。よろしくお願いします。

北島氏:
 尾崎ドミノ先生やドリコムさまが考え,実弥島先生が深掘りして作り上げてくださった世界にそって,ワールドやクエストが存在しています。いろいろな機能を触って,楽しんでいただけたらうれしいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。



デザイナーインタビュー
ミニキャラ,箱庭,カードイラスト制作のこだわり


4Gamer:
 まず,本作で皆さんが担当されているお仕事を教えてください。

田島氏:
 私は主に,「箱庭」のミニキャラクターを担当しています。

永本氏:
 私は「箱庭」に置く,家具などのオブジェクトや,建物のデコレーションのデザインを担当しています。

鈴木氏:
 カードイラストまわりのレギュレーションのほか,構図を考えたり,品質管理を担当したりしています。

佐野氏:
 鈴木と同じくカードイラストの担当で,主に塗りや,仕上げ,背景ラフなどを担当しています。

4Gamer:
 ありがとうございます。デザイナーの皆さんから見た「あくあや」の魅力を教えてください。

田島氏:
 キャラクター同士の関係性や行動によって生まれる,会話が魅力的だなと感じています。それぞれ事情を抱えるキャラクターたちが,自分自身の想いで行動することで,すれ違ったりもする。各キャラクターの性質がしっかり立っているからこそ,生まれるものなのかなと。

永本氏:
 最初に尾崎ドミノ先生の描くイラストを見て,とてもキレイで印象的なコンテンツだなと思いました。シナリオを読んだあとは,4つの陣営や,敵対するキャラクター同士の関係性に魅力を感じましたね。

鈴木氏:
 初めてキャラクターデザインを見たときの,インパクトがすごかったです。尾崎先生の良さが全面に出ていて,とても魅力的なキャラクターだと思いました。そこからキャラクターの性質,ストーリー,ボイスがついていって,今ではより引き込まれるものになりました。

佐野氏:
 私もステキなキャラクターと,コルチカム王国のキレイなお城にひかれました。今は陣営が増えて,それぞれにワールドが用意され,違った文化を持つ建物や街の様子を見るのが楽しいです。世界観にボリュームがあり,魅力的だと感じます。

4Gamer:
 最初はやはりイラストに目がいきますよね。皆さんが担当されているお仕事で,こだわっているポイントを教えてください。

田島氏:
 ミニキャラにも二等身や三等身など,さまざまな等身があります。とにかく,かわいく,動きが見えるようにということで,今の等身にしました。その成果もあって「箱庭」上で小道具を使う動きや,会話するときの表情が見やすくなったと思います。その分かりやすさと,かわいさの両立は意識しました。

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4Gamer:
 今の等身にするまでに,バランスを調整するのは難しかったですか。

田島氏:
 最初はもう少し等身を小さくしたり,逆に高くしたり,何度か調整しましたね。ホーム画面では立ち絵が見られるので,そことの差を出すためにも今の等身に落ち着きました。

4Gamer:
 同じミニキャラでも,ディアとオスカーでは身長差があるように感じます。その差にも注意されているんでしょうか。

田島氏:
 意識しています。よりキャラクター性を感じたいと思い,今のような身長差を感じられる状態になりました。それでも並んだときや,すれ違ったときに差が分かるようにしました。

鈴木氏:
 ディアが小さいのうれしかったです。「ちゃんと,小さい」と(笑)。

田島氏:
 最初は皆同じ大きさだったんです。でも,「大きいなディア……」となって(笑)。「箱庭」でも,小さくかわいいディアにいてほしいということで,差をつけました。

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4Gamer:
 永本さんはいかがですか。

永本氏:
 「箱庭」に置くオブジェクトやデコレーションのデザインをしているのですが,デフォルメされた世界観に合うかわいいフォルムになるようにデザインしています。

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4Gamer:
 ファンミーティングのときに尾崎先生が“女児心をくすぐるデザイン”というお話をしていたのが印象的なのですが,オブジェクトのデザインでも意識されているのでしょうか。

永本氏:
 意識していますね。とにかく“かわいい”優先です。また,キャラクターたちがオブジェクトを使って,どんなふうに生活しているだろうなど,想像が膨らむような描き込みを意識しています。いろいろなテイストのオブジェクトが登場するので,世界観とギャップが出ないように,近代的になりすぎないように,曲線を増やすなどの工夫もしています。

4Gamer:
 初期に実装されたオブジェクトは,各キャラクターや,陣営に合わせた印象のものが多いです。設定などをよく見ながら,アイデアを出していったのでしょうか。

永本氏:
 もともとキャラクターの趣味や好きな食べ物,カラーが決まっていたので,そこをデザインに落とし込みました。テーブルに何を置くかなどは,そのキャラクターの好きなものを反映させています。

鈴木氏:
 進行によっては,オブジェクトのデザインが先に決まっている場合もありました。そんなときは,カードイラストにも取り入れています。

永本氏:
 カードイラストとリンクしている部分を探しても,楽しいと思いますよ。

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4Gamer:
 ちなみに,ゲーム内イベントで入手できるオブジェクトのデザインも担当されているんですか。

永本氏:
 そうです。イベントで入手できるアイテムがどんどん増えていくので,楽しみにしてほしいです。

4Gamer:
 カードイラストを担当されているお二人はいかがですか。

鈴木氏:
 尾崎ドミノ先生のイラストの美しさやパワーがすごいので,それを全面に感じられるようにしたいと常々思っています。イラスト制作では,絵として良いものであることを最優先にしつつ,見栄えや,何を伝えたいかを意識しています。そこに仕草や,キャラクター性,フェチズムなど優先度の高いものを入れていくという形です。

 イベントのカードでは,そのイベントならではのテーマや,ファンが見たいと思う要素を外さないように,かつ世界観やキャラクターがぶれないように注意しています。

4Gamer:
 しっかりカードストーリーとリンクしていて,メインストーリーを読むとイラストの魅力をより感じられますよね。

鈴木氏:
 そうなんです! 5倍くらい楽しめます(笑)。ぜひストーリーを読んで,「そういうことか!」と楽しんでいただきたいです。

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佐野氏:
 私は塗りや仕上げを担当しているので,いかに尾崎先生の独特なタッチに近づけるかを意識しています。尾崎先生は塗りに特徴があって,とくに髪の毛やファーのふわふわ感は,ほかではあまり見られない質感です。先生のイラストを横に置きながら,日々近づけるように勉強しています。

 もう1つ難しかったポイントは,手の甲の骨っぽさです。線で描きすぎるとテイストが変わってしまうので,どうやったら尾崎先生の描き方に近づけるか研究しております。

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4Gamer:
 開発中に印象に残っていることはありますか。

田島氏:
 キャラクターらしい動きのアイデアを詰めていったことが印象に残っています。「箱庭」は,キャラクターの日常をのぞけるものにしたいと考えていたので,リベル・エンタテインメントさまと一緒に案を出し,話し合いました。例えばフィオーリだったらお花に水をあげるかなとか,オスカーならお酒を飲むかもしれないとか。キャラクターが,日常的に何をするかを考えたんです。

 パズルにもミニキャラが登場するのですが,勝利時はそのキャラらしい喜び方をしてくれます。ティスならジャンプ,アダラなら不適に笑うなど,同じ行動でも,そのキャラなら何をするかの違いを感じられるようにしたかったんです。

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永本氏:
 キャラクターのぬいぐるみや,衣装のトルソーのデザイン制作が印象に残っています。同じオブジェクトですが,机や椅子などのオブジェクトとは違ってキャラクター色が強く,とても新鮮な気持ちになりました。

 ぬいぐるみは,ラフを描いたときは等身が高く,デザインも今とは違うものでした。「箱庭」により合うものにするため,目や鼻の位置,体型や表情に微調整を重ね,納得のいくかわいいデザインになっています。

田島氏:
 ミニキャラもデザインとしては,デフォルメじゃないですか。ぬいぐるみをデザインする際に,どう違いを出してデフォルメするかをたくさん考えてくださいました。

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4Gamer:
 ミニキャラとオブジェクトは関わりも深いだけに,お二人で相談して作業することもあるんでしょうか。

田島氏:
 相談しつつ,基本的に永本がさらに広げてくれています。ミニキャラとぬいぐるみの差など個性を出したいなど,彼女が組み取って進めてくれます。

永本氏:
 出来上がったものをお見せして,ミニキャラと並べてバランスを取ったりしていますね。

4Gamer:
 鈴木さんは,印象に残っていることはありますか。

鈴木氏:
 尾崎先生の独特なイラストを再現するには,とにかくたくさん描かないとと思い,ファンミーティングで公開したカードイラストのイメージ案(未実装)を描きました。尾崎先生はフィードバックをていねいにしてくださって,こんな技法を使っていたのかと勉強になりました。

 尾崎先生のイラストは描きこみがしっかりしているのに,重い印象にならないんですよね。その再現が最初は難しかったのですが,教えてもらいながら覚えていきました。そのやり取りが,一番印象深いです。

4Gamer:
 佐野さんはどうでしょうか。

佐野氏:
 私は開発後期に参入したのですが,このチームの人たちは見えているものが違い過ぎると思いました(笑)。

一同:
 (笑)。

佐野氏:
 自分には十分カッコよく見えるキャラクターの顔でも,よりクオリティを高めようとしていて,すごいなと思いました。

 また,色付けについても,印象に残っていることがあります。暗めな背景のイラストで,「ここが濁って見える。グレーのなかでも緑すぎるんだよね」と言われて,「緑(どこに)!?」となりました。

鈴木氏:
 確かにこのチームは,色へのこだわりが強いかもしれません。

佐野氏:
 また,最初のころ金属を表現する金色を出すのが難しかったです。そんなときに「金属は暗いなかにあると,ピンク系の色味が加わるんだよ」と言われました。聞いたときは混乱しましたが,実際にピンクや紫を入れて描いたら,暗闇のなかで光っているように見えて……すごかったです。

 ほかにも一面の影でも青っぽいとか,緑っぽいとか,赤すぎるとかフィードバックをいただけて,勉強になるなと思っています。

4Gamer:
 目の肥えた皆さんだからこそですね。カードイラストはキャラクター数も多いですし,イベントごとに随時増えていくので,作業量も多く大変そうです。

鈴木氏:
 そうですね。そのなかでも,常に最大火力で頑張っています。

4Gamer:
 一見すると気づきにくいところで,注目してほしいところはありますか。

田島氏:
 キャラクターが着ている衣装は,細やかで華やかな装飾が施されています。それを厳密にミニキャラで再現すると,くどくなってしまうので,見た目の印象を保ちつつ,どうデフォルメに落とし込むかは考えました。

 先ほどのこだわりとも被るのですが,ミニキャラの表情は細かく設定しています。ミニキャラだからこそ見れる表情があるので,「こんな顔もするんだ」というギャップも楽しんでいただけるとうれしいです。目を離しているときに,かわいい動きをしていることもあります。見逃さないように気をつけてほしいですね。

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永本氏:
 実はメインストーリーで見られる各キャラクターの部屋に置いてある家具と,「箱庭」で設置できるオブジェクトの家具はリンクしています。背景を見て「あの家具だ」と気づいてもらえたらうれしいですし,同じように配置する遊びをしても楽しいと思います。

 あと細かいこだわりなんですが,カイのベッドにはぬいぐるみが4体飾られています。そのぬいぐるみの色が,天使たち3人とヴァニスのカラーになっているのが,個人的にこだわりです。そういう小ネタがほかのオブジェクトにもちょこちょこ入っているので,「もしかして……」と想像を膨らませていただけるとうれしいです。

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鈴木氏:
 カードイラストは、ストーリーの見せ場になっているシーンであることを意識しつつ、先ほどもお話ししたとおり,絵としても良いものになるように制作しています。そのため,布や髪の流れなど画面構成にはとくに気をつけていますね。

佐野氏:
 私は“チラ見え”とかが好きで,手袋と裾の間の素肌の部分が見えるようにしています。あと,筋肉の筋もちゃんと描いています。SSRのエスパダは,覚醒後のイラストでお腹が見えるのですが,しっかり筋を描きこみました。お好きな方は,ぜひ注目してほしいなと思います。

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鈴木氏:
 ポーズラフを描いたあとの作業を,佐野にお願いすることがあります。例えば,ラフの段階で「鎖骨をちゃんと見せたいな」と考えていたとしたら,その意図をしっかり拾ってくれるのでうれしいです(笑)。

田島氏:
 カードイラストは分担して作業しているので,担当者のこだわりにのっかって,各工程が進んでいる感じもありますね(笑)。

鈴木氏:
 確かに(笑)。

4Gamer:
 掲載時点では,2つのゲーム内イベントが開催されたあとになります。それぞれデザインのポイントを教えてください。

■「吸血鬼と銀の月灯り」

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田島氏:
 「吸血鬼と銀の月灯り」は一番最初のイベントで,「あくあや」の世界観にはこんなことがあるなど,より知ってもらうイベントになっています。尾崎先生に衣装デザインをしていただいて,ミニキャラやカードイラストを制作していきました。

 ミニキャラは今までと違う衣装になるので,動きの制限があるなか,かわいさを保ちつつ,しっかり動きも見せられるように注意して制作しました。フィオーリの髪型も大きく変え,揺れるようにしているので,それがかわいく見えていたらうれしいです。また,見ていて楽しくなれるようなデザインを意識しています。

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鈴木氏:
 田島も言っていましたが,最初のイベントなので,世界観の延長線上にあるテーマや,デザインという印象で,その良さを伝えたいと思いました。カードイラストとしては,衣装を見たときに揺らしがいがあるなと思って,楽しくラフを描きました。SSRのディアは覚醒前はあどけない表情,覚醒後はかっこいい姿を見せたいというギャップは意識して描き分けています。

佐野氏:
 イベントではキャラクターの衣装が変わるので,覚醒前は衣装をしっかり見せることも大切にしています。

鈴木氏:
 そう! 覚醒前に衣装を見ていただいて,覚醒後はポーズや雰囲気が伝わるものにしています。

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佐野氏:
 ディアは覚醒前も覚醒後も太ももがよく見えるので,仕上げでも柔らかく見えるようにしました。

 私は,SRのフィオーリを描くのが楽しかったです。レース編みの衣装だったので,本来の線の細さが分かるように緻密に楽しく塗りました。それが調律者さんにも伝わっていたようで,うれしい感想がたくさんありました。

 SRのエスパダは,覚醒後に胸元の十字架のペンダントを引きちぎります。どうやったらたくましく,エスパダの魅力が出るポーズになるか,長いペンダントで実際に試しながら描きました。

鈴木氏:
 カードイラスト担当は,自分で試して見ることが多いですよね(笑)。

佐野氏:
 自撮りフォルダがドンドン増えていきますね(笑)。また,背景もいつものコルチカム王国と違う感じで楽しかったです。こうやってイベントでも世界観が広がっていくのかと思って,ワクワクしました。

永本氏:
 オブジェクトは,吸血鬼らしいゴシックな感じがちゃんと出るようにしました。耽美でゴージャスな印象になるように,薔薇ももりもりで作っています。

鈴木氏:
 薔薇もりもりでうれしかったです。最初のイベントで実装するSSRオブジェクトが,まさかの棺桶という衝撃はありましたね。

永本氏:
 しかも,中から薔薇が溢れていますからね(笑)。

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■「幻惑のショウタイム」

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田島氏:
 キャラクターイラストがとても色っぽいのですが,ミニキャラの場合,色っぽいとかわいさが減ってしまいます。かわいいミニキャラで,どのようにぴっちりした衣装を見せるかは苦戦しました。こだわりは,ちゃんとうしろにしっぽがあるところです。「箱庭」で彼らが動いている姿を,ぜひ見てみてください。

永本氏:
 オブジェクトの家具にも,ローゼの衣装の要素をかなり入れました。うさ耳としっぽ,ハートのアクセサリー,黒とピンクのツートンカラーを,いろいろなところに入れています。うさぎのオブジェも,実はローゼとお揃いの衣装を着せています。

 ローゼが開催したキャバレーなので,ポスターのローゼは誰に写真を撮らせたのかなとか,テーブルのブーケはお客様にもらったのかなとか,想像を広げていただけるとうれしいです。

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田島氏:
 壁紙も,これまでのシンプルなものや,窓を置くことを前提にしたものと違って,奥行があるデザインになりましたよね。

永本氏:
 今回は,アーチの装飾を含めて壁紙にしました。壁に配置するオブジェクトもあるので,こういうものは作っていなかったのですが,キャバレーらしさを出すために思い切ったデザインをしてはどうかという話になり,新たな試みを取り入れました。

佐野氏:
 SSRのローゼのカードイラストは,もう1人の塗り担当が手掛けてくれたのですが,背中のくぼみやあみあみの部分にこだわっていました。

鈴木氏:
 ローゼのイラストは,ラフを何案か提出したうちの1つです。制作管理もしているので葛藤しましたが,最終的にイラストの良さ重視で,イベント2回目にして工数が重そうな候補が選ばれました(笑)。

佐野氏:
 本人と鏡に映っている姿で,実質2人いるのと同じですからね。しっぽも見せたいし,顔も見せたいしとなると……。

鈴木氏:
 鏡は作業が大変になると分かっているので悩ましいのですが,この構図が一番良いだろうとなりました。覚醒後は全身が見えて,セクシーなポージングになっています。やりすぎると違和感が出てしまうので,「あくあや」の世界観のなかのローゼとしてちょうどいいバランスを相談しながら決めました。

佐野氏:
 SRアダラは,昭和に活躍したセクシーなアーティストのような,キャバレーに似合うおしゃれな衣装がほしいですと尾崎先生にお願いしました。

 SRのヴァニスは,ローゼとは違うタイプのバニーで,パンツのツヤ感にこだわっています。背景も,イベントで手に入るオブジェクトに合わせたものです。彼は調律者にも甘い言葉をくれるキャラクターなので,覚醒後も甘い表情にしています。

鈴木氏:
 ヴァニスの覚醒後は,ディーラーをしているイラストです。手元にこだわって,プロのディーラーさんの動画を見て研究しながら描きました。

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4Gamer:
 本当にこだわりが詰まっていて,今後実装されるイベントへの期待も高まります。最後にファンの皆さんに,メッセージをお願いします。

田島氏:
 担当しているミニキャラについてのお話になってしまうのですが,どんどんイベントが開催され,いろいろな衣装が増えていきます。ストーリーはもちろんですが,「この衣装とこの衣装が並んでいるのかわいいな」という「箱庭」での組み合わせも楽しんでいただけるとうれしいです。

永本氏:
 キャラクターのリアクションや「家具ストーリー」など,楽しめる要素がてんこ盛りなので,オブジェクトをたくさん集めていただきたいなと思います。今後のイベントでも,かわいいオブジェクトを多数用意しているので,楽しみにしていただきたいです。

鈴木氏:
 リリースされ,重厚なメインストーリーを楽しんでいただいていると思います。ゲーム内イベントも,王道から予想もつかないようなものまで,これから順次開催されていきますので,「このテーマは『あくあや』ではこうなるんだ」という部分も楽しんでいただきたいです。

 イベントに付随するストーリーも面白く,予想外のキャラクター同士の掛け合いも増えていきます。それを見て,キャラクターをもっと好きになって,遊んでいただけるとうれしいです。

佐野氏:
 メインストーリーはもちろんですが,イベントのストーリーも本当に魅力的で,いろいろな人に楽しんでほしいと思っています。ストーリーの魅力が伝わるように,カードイラストも頑張って作っています。どんどん「あくあや」の世界に,ひたってほしいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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