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レビュー
ミドルクラスながら前世代のハイエンドGPUを超える性能は本当だった
NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
Turing世代のGeForce RTX 20シリーズに比べて,非常に高い価格対性能比を実現していることから,Ampere世代のGPUであるGeForce RTX 30シリーズは,ゲーマーの人気を集めている。しかし,一番下のモデルとなる「GeForce RTX 3070」(以下,RTX 3070)であっても,搭載製品の価格は7〜8万円ほどするので,手が届かないと嘆いてる人も多いのではないだろうか。
ミドルクラス市場向けのGeForce RTX 30シリーズを求める声に応える新型GPU「GeForce RTX 3060 Ti」(以下,RTX 3060 Ti)がいよいよ12月2日に登場する。
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本製品は,RTX 3070の下位となるGPUで,従来の「GeForce RTX 2060 SUPER」(以下,RTX 2060 SUPER)を置き換える存在だ。しかもNVIDIAは,報道関係者向けの事前説明で「RTX 3060 Tiは,『GeForce RTX 2080 SUPER』以上の性能を発揮する」と豪語していたほどだ。
本当にそれだけの性能を備えているのか,「GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition」をテストして,その実力に迫りたい。
RTX 3070と同じGA104コアを採用
フルスペック版から10基のSMを無効化
まずは,RTX 3060 Tiについて説明しておこう。
RTX 3060 Tiは,GPUコアとして,上位モデルのRTX 3070と同じ「GA104」を採用している。そのため,Samsung ElectronicsがNVIDIA向けにカスタムした8nmプロセス技術を用いて製造している点や,ダイサイズが392mm2である点,さらにトランジスタ数が約174億個である点は,RTX 3070とまったく同じだ。
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そのため,GA104のフルスペック版は48基のSMを持ち,CUDA Coreの総数は6144基となる。これがRTX 3070では,歩留まりの都合から2基分のSMが無効になっており,SM数は46基,CUDA Core数は5888基となっていた。
それが同じGA104コアを使うRTX 3060 Tiではどうなっているかというと,RTX 3070からさらにSMを8基,つまり,GA104のフルスペックからは10基のSMを無効化している。これにより,SMの総数は38基で,CUDA Core数は4864基となる。これは,RTX 3070の約83%という規模で,数だけで語るとRTX 2080 SUPERの約1.5倍,RTX 2060 SUPER比では約2.2倍もの規模ということになる。
GA104では,SM 1基対してリアルタイムレイトレーシング向け演算ユニット「RT Core」を1基組み合わせているので,RTX 3060 Tiが有するRT Coreの数は38基だ。ほかのGeForce RTX 30シリーズと同様に,RTX 3060 Tiが搭載するRT Coreは,第2世代へと進化したバージョンであり,NVIDIAの説明によると,「RTX 3060 TiにおけるRT Coreのスループットは32 RT-TFLOPS」であるそうだ。これは,RTX 3070の80%ほどで,RTX 2080 SUPERの34 RT-TFLOPSにもわずかだが届いていない。
また,AI推論アクセラレータである「Tensor Core」は,第3世代へと進化したものを採用しており,1基のSMに対して4基を統合しているので,RTX 3060 TiのTensor Core総数は152基になる。RTX 3060 TiにおけるTensor Coreのスループットは130 Tensor-TFLOPSで,これはRTX 3070の162.6 Tensor-TFLOPSと比べて約80%ほどの性能だ。
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一方のブーストクロックは1665MHzで,こちらもRTX 3070から60MHz低い。なお,テスト中のコアクロックをGPU-Zで追ってみたところ,2025MHzまで上昇しているのを確認した。RTX 3070は1950MHzだったので,RTX 3060 TiはCUDA Core数が少ないからか,動作クロックが伸びやすい印象だ。
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RTX 3060 Tiでは,グラフィックスメモリにGDDR6を採用しており,容量は8GB,メモリクロックは14GHz相当となっている。メモリインタフェースは256bitなので,RTX 3060 Tiのメモリバス帯域幅は448GB/sとなる計算だ。これは,RTX 3070とまったく同じ仕様で,RTX 2060 SUPERから変わっていない。つまり,RTX 3060 Tiの足回りは,従来から据え置きと言っていい。
なお,CPUとの接続インタフェースにPCI Express(以下,PCIe) 4.0をサポートしている点はRTX 3070と同じだ。
RTX 3060 Tiの主な仕様を,RTX 3070とRTX 2080 SUPER,それにRTX 2060 SUPERと合わせてまとめたものが表1となる。
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外観はRTX 3070 Founders Editionとほぼ同じ
カード長は実測約241mmと比較的短め
それでは,RTX 3060 Ti Founders Editionのカードそのものについて見ていこう。まず,外観はほぼRTX 3070 Founders Editionと同じで,黒色の放熱フィンがむき出しになっているデザインは変わらない。だが,側面がガンメタリックからシルバーへと色が変更されており,見た目の雰囲気は結構変わっている。
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カード長は実測で約241mm(※突起部除く)と,こちらもRTX 3070 Founders Editionと同じだ。基板自体の幅は167mmほどしかなく,カード後方にGPUクーラーが70mm強はみ出ている格好だ。
なお,実測重量は約1030gで,こちらもRTX 3070 Founders Editionとほぼ同じだ。
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NVIDIAが用意した基板の写真を確認すると,電源部は7+2フェーズ構成のようで,短めの基板に部材がみっしりと実装されている。PCIe補助電源コネクタは,12ピンが1基実装されているが,RTX 3070 Founders Editionと同様に8ピンを12ピンに変換するアダプターが付属している。そのため,定格出力を満たしているのであれば,従来の電源ユニットをそのまま使用可能だ。
こうした要素を見ても,RTX 3060 Ti Founders Editionの基板自体は,
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なお,映像出力インタフェースは,DisplayPort 1.4a×3とHDMI 2.1 Type A×1という構成で,このあたりもRTX 3070 Founders Editionとまったく同じだ。
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RTX 2080 SUPER超えはなるか?
ドライバには457.40を使用
それではテスト環境の構築に話を移そう。
今回は比較対象として,表1に掲載したRTX 3070とRTX 2080 SUPER,RTX 2060 SUPERの3種類を用意した。つまり,RTX 3070との立ち位置をハッキリさせたうえで,置き換え対象のRTX 2060 SUPERからの性能の伸びを確認しつつ,NVIDIAが主張するようにRTX 2080 SUPERを超える性能を発揮するかを確認しようというわけである。
グラフィックスドライバには,NVIDIAが全世界のRTX 3060 Tiのレビュワー向けに配布した「GeForce 457.40 Driver」を使用した。同社が11月9日に公開したドライバソフトが「GeForce 457.30 Driver」なので,そのRTX 3060 Ti対応版と捉えるのが妥当だろう。
RTX 3060 TiがPCIe 4.0をサポートしていることもあり,テスト環境にはCPUに「Ryzen 9 5950X」を,マザーボードにはAMD X570を搭載したMSI製「MEG X570 ACE」をそれぞれ用いている。それ以外のテスト環境は表2のとおりだ。
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
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マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
GeForce RTX 3070 Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
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GeForce RTX 2080 SUPER Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
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GeForce RTX 2060 SUPER Founders Edition (グラフィックスメモリ容量8GB) |
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ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | SilverStone Technology |
OS | 64bit版Windows 10 Pro(Build 19042.630) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 2.07 |
グラフィックスドライバ | GeForce 457.40 Driver |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション23.2に準拠している。RTX 3060 Tiも,リアルタイムレイトレーシングやDLSS,それにPCIe 4.0に対応しているため,これらの性能を確かめるべく「3DMark」(Version 2.16.7094)において,以下の4テストを追加した。
- Port Royal:リアルタイムレイトレーシング性能計測テスト
- DirectX Raytracing Feature test:レイトレーシング性能計測テスト
- NVIDIA DLSS feature test:アンチエイリアシング&超解像技術「DLSS」の性能テスト
- PCI Express feature test:PCIeの帯域幅テスト
なお,NVIDIA DLSS feature testでは「DLSS2」を選択し,品質モードは「Quality」に設定している。
さらに,「Fortnite」に関しては,グラフィックスAPIをDirectX 12に変更したうえで,DLSSとレイトレーシングを有効にし,レイトレーシングの設定に関しては負荷が最大となるように変更している。なお,テスト方法自体はレギュレーションから変わりない。
解像度は,NVIDIAがRTX 3060 Tiに関して,最高画質設定で1920×1080ドットによるゲームプレイを想定しているため,3840×2160ドットと2560×1440ドット,それに1920×1080ドットの3種類を選択している。
RTX 3070の90%程度の性能
RTX 2080 SUPERを超える性能は事実だった
それでは,3DMarkの結果から順に見て行こう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
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RTX 3060 Tiのスコアは,RTX 3070の87〜91%程度といったところで,思った以上に差は開いていない。また,RTX 2060 SUPERに対しては,44〜60%程度もの大差をつけ,世代の違いを見せつける形となった。RTX 2080 SUPERに対しても,RTX 3060 Tiは3〜7%程度ほど上回っており,NVIDIAによる主張どおりの結果となっている。
続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。
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ここではCPU性能の影響がなくなるため,RTX 3060 TiはRTX 3070の87〜89%程度と,総合スコアよりも若干だが差は広がった。RTX 20シリーズに対しても同様で,RTX 3060 TiとRTX 2060 SUPERとの差は51〜63%程度,RTX 2080 SUPERに対しては5〜8%程度と,わずかだが総合スコアよりも引き離す形となった。
Fire Strikeからソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したのがグラフ3だ。すべてのテストにおいてCPUを統一しているため,スコアもきれいに横並びとなっている。
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GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものがグラフ4だ。
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このテストは,CPU性能がスコアに与える影響が大きいため,RTX 3060 TiとRTX 3070では,Fire Strike“無印”での差が約6%と小さい。だが,Fire Strike ExtremeやFire Strike Ultraでは15〜17%程度と,Graphics scoreよりも差が広がる傾向が見られる。また,RTX 2060 SUPERに対しては45〜61%程度の差をつけたものの,RTX 2080 SUPER比では,Fire Strike Ultraで5%の差をつけたこと以外は肩を並べる結果となった。これも,本テストではCPU性能が影響するためと捉えるのが妥当だろう。
では,DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう。グラフ5は総合スコアをまとめたものだ。
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RTX 3060 Tiのスコアは,RTX 3070の89〜91%程度で,おおむねFire Strikeの総合スコアと似た傾向だ。RTX 2080 SUPERに対しては,安定して3〜8%程度の差をつけており,「RTX 2080 SUPER以上の性能」というのは,DirectX 12でも変わらなさそうだ。また,RTX 2060 SUPERとの差は45〜54%程度もあり,格の違いを見せつけている。
続くグラフ6はTime SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果となる。
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まず,GPUのテスト結果からだが,ここでもRTX 3060 TiはRTX 3070の87〜89%程度で,Fire StrikeにおけるGraphics scoreの結果を踏襲した形となった。RTX 2080 SUPERとの差は3〜9%程度と,CPU性能の影響がなくなったことで若干広がり,RTX 2060 SUPERとの差も54〜62%程度と,まったく寄せつけていない。
一方のCPUテストの結果は,Fire Strikeと同様に,CPUが同一なのでスコアも並んでいる。
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リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ8だ。
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RTX 3060 TiとRTX 3070との差は約86%で,Fire Strikeなどに比べると,若干だが差は広がった格好だ。一方,RTX 2080 SUPERには,明確な差をつけていない。RTX 3060 TiのRT Core数は38基に対して,RTX 2080 SUPERは48基と多いので,第2世代へ進化しても数の差を埋めるのがやっと,ということなのだろう。なお,RTX 2060 SUPERとの差は約61%と,まったく勝負にならないほど圧倒している。
さて,もうひとつのレイトレーシングテストであるDirectX
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このテストでは,タイトルどおりDirectX Raytracingを用いた描画を行うのだが,RTX 3060 TiとRTX 3070との差は約18%にまで広がった。DirectX Raytracingでは,確固たる上位モデルとの溝があるというわけだ。その一方で,RTX 2080 SUPERに対しては約24%もの開きを見せており,DirectX Raytracingでは第2世代へと進化したRT Coreが真価を発揮している。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ10となる。
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RTX 3060 Tiにおいて,DLSS 2.0有効時のフレームレートは,2560×1440ドットまでの解像度であればRTX 3070の88〜89%程度といったところ。ただ,3840×2160ドットでは差が約70%にまで開いてしまった。これは,RTX 2080 SUPERに対しても同様で,2560×1440ドットまでは大きく引き離しているが,3840×2160ドットでは逆転を許してしまっている。RTX 3060 Tiにおいて,3840×2160ドットでDLSS 2.0を使用する場面はそうないとは思うが,ドライバソフト側に何かしらの問題がある可能性も指摘しておきたい。
グラフ11は,PCI Express feature testの結果だが,PCIe 4.0をサポートするRTX 30シリーズと,PCIe 3.0までしか対応していないRTX 20シリーズでキレイに分かれている。
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では,実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ12〜14は「Far Cry New Dawn」の結果となる。
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ここではCPUがボトルネックとなり,1920×1080ドットでスコアの頭打ちが発生してしまっている。そのため,2560×1440ドット以上の解像度を見ていくが,RTX 3060 TiとRTX 3070の平均フレームレートにおける差は3〜11%程度だ。最小フレームレートを見ると,RTX 3060 Tiは4K解像度で60fpsに届いていない。RTX 2080 SUPERとの差は,平均フレームレートで16〜35%程度だった。
RTX 3060 TiでFar Cry New Dawnが快適にプレイできる解像度は,2560×1440ドットまでと捉えたほうがよさそうだ。
続いて,「バイオハザード RE:3」の結果がグラフ15〜17となる。
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バイオハザード RE:3におけるRTX 3060 Tiの平均フレームレートは,RTX 3070の91〜94%程度といったところで,差は比較的縮まっている印象だ。最小フレームレートとなる99パーセンタイル値を見ても,RTX 3060 Tiはすべての解像度で,しっかりと60fpsを上回っている点は評価できる。また,RTX 2080 SUPERに対してはかろうじて上回ってはいるが,平均フレームレート,99パーセンタイルともに,ほぼ横並びと見てよいだろう。
「Call of Duty: Warzone」(※グラフ内ではCoD Warzone)の結果がグラフ18〜20だ。
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RTX 3060 TiとRTX 3070の差は,平均フレームレートにおいて3〜6%程度で,バイオハザード RE:3ほどの差はついていない。また,RTX 2080 SUPERとの差は5〜10%程度と,3840×2160ドットで最も差を縮められる結果となった。これは,RTX 2080 SUPERのメモリ帯域幅が496GB/sと,RTX 3060 Tiの448GB/sを上回っている点が高解像度で功を奏するためと考えられる。
ただ,2560×1440ドットで,RTX 2080 SUPERに約10%もの差をつけている点は立派の一言だ。
レイトレーシングとDLSSを有効にした「Fortnite」の結果をグラフ21〜23に示す。
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これほどまでに負荷を高めるとプレイアブルな結果が得られていないが,RTX 3060 TiとRTX 3070との差は平均フレームレートで10〜12%程度と,相応に差をつけられる格好となった。それに対して,RTX 2080 SUPER比では平均フレームレートで7〜10%程度,RTX 2060 SUPER比では51〜53%程度と,それぞれ差をつけており,RTX 20シリーズからの進歩はしっかりと感じられる内容だ。
グラフ24〜26が「Borderlands 3」の結果だ。
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RTX 3060 Tiの平均フレームレートは,RTX 3070の89〜90%程度で,3DMarkのFire StrikeやTime Spyの総合スコアと似た傾向だ。RTX 2080 SUPERとの平均フレームレートの差は7〜10%程度。とくにRTX 2080 SUPERが2560×1440ドットの99パーセンタイルで60fpsに届いていないのに対して,RTX 3060 Tiはしっかりと60fpsを超えているあたりが見どころと言えそうだ。
グラフ27は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
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ここでも,1920×1080ドットではCPUが足かせになっているようで,スコアが2万3000台で頭打ちになっている。そこで,ほかの解像度の結果を見ていくと,RTX 3060 TiはRTX 3070に6〜10%ほどの差をつけられる形となった。逆に,RTX 2080 SUPERには4〜5%程度の差を付けた。
RTX 3060 Tiは,3840×2160ドットでも1万を超えるスコアを記録した点は評価できる。スクウェア・エニックスの指標では,スコア7000以上が最高評価となっているので,RTX 3060 Tiなら,4K解像度でも快適にプレイできることは誰の目にも明らかだ。
そんなFFXIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ28〜30だ。
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平均フレームレートはおおむね総合スコアを踏襲した形となっており,RTX 3060 TiはRTX 3070の90〜93%程度といったところ。一方,最小フレームレートはCPU性能の影響が大きいため,RTX 3060 TiはRTX 2080 SUPERには明確な差をつけられずにいる。
グラフ31〜33には,「PROJECT CARS 2」の結果をまとめている。
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RTX 3060 TiとRTX 3070との平均フレームレートにおける差は,10〜14%程度と開き気味だ。一方,RTX 3060 TiとRTX 2080 SUPERとの平均フレームレートの差は3〜4%程度にすぎないが,安定して上回っている点は評価できる。ただ,最小フレームレートは横並びとなっており,その差を体感することは難しいだろう。
RTX 3070より20Wほど低く,RTX 2080 SUPERから40Wも低くなった消費電力は立派
NVIDIAによると,RTX 3060 Ti Founders EditionのTGP(Total Graphics Power,グラフィックスカードの消費電力)は200Wで,RTX 3070の320Wよりは低いものの,RTX 2060 SUPERの175Wからは,25Wも増えてしまっている。ただ,性能面で拮抗するRTX 2080 SUPERからは50Wも下がっているので,実際の消費電力がそこまで低いかどうかは,かなり気になるところだ。
そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。PCAT自体の説明は,米田 聡氏によるテストレポート記事を参照してほしいが,グラフィックスカードだけの消費電力を,ほぼ正確に計測可能というツールだ。
なお,今回は3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中の結果を示している。その結果をグラフ34に示そう。
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この結果を見ると,RTX 3070が220W前後で推移しているのに対して,RTX 3060 Tiは200W前後と,消費電力がしっかり低減していることがうかがえる。また,RTX 2080 SUPERは250W前後で,RTX 3060 Tiとの差はかなり明確だ。
そこで,グラフ34の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたものがグラフ35となる。RTX 3060 TiはRTX 3070から15Wほど低くなり,RTX 2080 SUPERからは40W以上もの差を付けた。さすがに,RTX 2060 SUPERには届かないものの,消費電力はしっかり抑えていると言っていい。
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ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力のみを計測した結果も見てみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
その結果がグラフ36だ。
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ピーク値を採るテストであるため,差は広がる傾向となるのだが,それでもRTX 3060 TiとRTX 3070との差は10〜27W程度と,消費電力が低くなっているのが確認できた。RTX 2080 SUPERとの差も14〜41W程度にまで開いており,システム全体で見ても,RTX 3060 Tiは消費電力が低いと言ってよいだろう。
最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果はグラフ37のとおり。
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RTX 3060 Tiは,高負荷時でも70℃と低めだ。消費電力が抑えられているのだから,発熱量が少ないことは容易に想像できる話で,RTX 3060 Tiは,冷却にそれほど苦労することはないと言えよう。なお,アイドル時の温度が少々高めなのは,ファンの回転が停止するためだ。
最後に筆者の主観であることを踏まえたうえで,RTX 3060 Tiの動作音について述べておくと,かなり静かな印象を受けた。少なくとも,RTX 2080 SUPERより静かなのは間違いない。RTX 3070との差を確認することはできないものの,PCケースに入れてしまえばまったく聞こえないレベルだ。
ミドルクラス向けとして少々価格は高めながらも
WQHDまでの解像度であればかなり魅力的な存在
以上のテスト結果から,RTX 3060 Tiの性能は,大雑把だがRTX 3070の9割程度とまとめることができるだろう。ほとんどの場面でRTX 2080 SUPERを超えているのは立派で,それでいてRTX 2080 SUPERから消費電力を40Wほど低減しているのもかなり魅力的だ。RTX 3070と同様に,カードサイズも短くて済んでいる点も好印象である。
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ただ,国内市場では7万円を切るRTX 3070搭載モデルも登場してきているので,価格差がこの程度であれば,上位モデルを選択する人も少なくなさそうに思える。なにより,この価格帯は,ミドルクラス市場向け製品として,正直高めな感は否めない。ミドルクラスのグラフィックスカードを欲するユーザーにとっては,それこそ“Ti”なしのRTX 3060搭載カードで4万円程度の製品こそが待ち望まれているのではないだろうか。
ただ,前世代となるRTX 2060 SUPERの実勢価格を見ると,4万円台にまで下がっている製品もあり,RTX 3060 Tiも価格が落ち着けば,魅力はかなり増すのではないだろうか。4K解像度を重視せず,フルHDや1440pでのゲームプレイを想定しているゲーマーにとって,RTX 3060 Tiは食指が動くGPUであることは間違いない。
NVIDIAのGeForce RTX 30シリーズ製品概要
- 関連タイトル:
GeForce RTX 30
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