レビュー
NVIDIAのノートPC向け新型GPU「GeForce RTX 3080」の実力を検証してみた。デスクトップ向けRTX 2070 SUPERを上回る性能を確認
デスクトップPC向けのGeForce RTX 30シリーズは,前世代を過去のものにする高性能を発揮して好評を博しているが,ノートPC向けGeForce RTX 30シリーズも同様なのだろうか。
そこで,今回,ノートPC向けGeForce RTX 30シリーズでは最上位モデルにあたる「GeForce RTX 3080」(以下,ノートPC向けRTX 3080)を採用したMSIの15.6型ノートPC「GS66 Stealth 10UH」を試用する機会を得たので,早速,その性能を試してみたい。はたして,ゲーマーが満足できるだけの性能をノートPCで発揮できているのか気になるところだ。
ノートPC向けRTX 3080はフルスペック版のGA104か
グラフィックスメモリは16GBを実装
実のところNVIDIAは,ノートPC向けRTX 3080について,あまり多くの情報は開示していない。だが,ノートPC向けRTX 3080のシェーダプロセッサである「CUDA Core」数が6144基である点や,CUDA開発キット付属の「devicequerydrv.exe」で確認すると,演算ユニットのクラスタである「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)が48基と表示される点を踏まえると,どうやらノートPC向けRTX 3080は,Ampere世代のGPUコアである「GA104」のフルスペック版である可能性が高い。
GA104とは,「GeForce RTX 3070」(以下,RTX 3070)や「GeForce RTX 3060 Ti」に使用されているGPUコアだ。CUDA Coreを128基集めて演算ユニットのクラスタであるSMを構成し,そのSMを12基束ねたミニGPUクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)を4基備えている。そのため,GA104のフルスペックでは,CUDA Core数は128×12×4の6144となり,ノートPC向けRTX 3080のCUDA Core数と一致するわけだ。
ノートPC向けRTX 3080のベースクロックは公開されていないものの,今回試用したGS66 Stealth 10UHでは,「GPU-Z」(Version 2.36.0)で見ると780MHzだった。また,ブーストクロックは,リファレンス仕様だと1245〜1710MHzと幅があるが,GS66 Stealth 10UHでNVIDIAコントロールパネルのシステム情報を確認すると,1245MHzであった。デスクトップPC向けRTX 3080は,ベースクロックが1440MHz,ブーストクロックが1710MHzであることに比べると,GS66 Stealth 10UHの動作クロック設定はかなり抑えめだ。
ちなみに,GS66 Stealth 10UHでテスト中の動作クロックをGPU-Zで追ってみたところ,1770MHzまで上昇しているのを確認した。なお,NVIDIAの説明によると,Dynamic Boost 2.0をユーザーが無効に設定することはできないとのことだ。
さらに,ノートPC向けRTX30シリーズでは,冷却ファンの動作音を基準に動作クロックを制御する「WhisperMode 2.0」も用意されている。なお,NVIDIAの説明によると,こちらは事前にノートPCの冷却性能に見合った各ゲームごとのプロファイルを用意しているとのことだ。
さて,ノートPC向けRTX 3080では,グラフィックスメモリにGDDR6を採用し,容量は8GBもしくは16GBとなっている。デスクトップPC向けRTX 3080でも,グラフィックスメモリ容量は10GBだったので,ノートPCでそれ以上の容量を実現しているわけだ。
だがその一方で,メモリインタフェースは256bitで,メモリクロックは12GHz相当なので,メモリ帯域幅は384GB/sと,こちらはデスクトップPC向けRTX 3080の約半分しかない。
もうひとつ,ノートPC向けRTX30シリーズで目を惹くポイントに,「Resizable BAR」というグラフィックスメモリへのアクセス機能がある。
Resizable BARとは何かを簡単に説明すると,CPUがグラフィックスメモリにアクセスする場合,従来は最大256MB単位でしかできなかったところ,その枠を外して,すべてのグラフィックスメモリにアクセスできるようにするというものだ。元々,PCI Express(以下,PCIe)では,同等の機能が「Re-Size BAR」として用意されており,ノートPC向けRTX30シリーズでそれを有効にした形だ。AMDが「Radeon RX 6000」シリーズで搭載した「AMD Smart Access Memory」も,同種の機能である。なお,ノートPC向けRTX30シリーズでは,Resizable BARを,ユーザーが明示的に無効に設定することはできないとのことだった。
そんな,ノートPC向けRTX 3080の主なスペックを,デスクトップPC向けRTX 3080ならびにRTX 3070とともにまとめたものが表1となる。
CPUにはCore i7-10870Hを採用。液晶パネルはリフレッシュレート240HzおよびG-SYNC対応
それでは,今回のテストに利用するGS66 Stealth 10UHが,どのようなノートPCなのか紹介しておこう。
GPUは前述のとおりノートPC向けRTX 3080を採用し,グラフィックスメモリにはGDDR6を16GB搭載する。CPUは,8コア16スレッドタイプの「Core i7-10870H」と,かなりハイエンドな仕様に仕上がっている。
とくに注目すべきは液晶パネルで,15.6型のノングレア(非光沢)タイプで,解像度は2560×1400ドット,最大リフレッシュレートは240Hzをサポートするほか,NVIDIAのディスプレイ同期技術「G-SYNC」に対応している。ただし,この液晶パネルを採用するモデルは製品化されておらず,国内販売となる製品は1920×1080ドット,リフレッシュレート300Hz対応モデルか,解像度3840×2160ドット,リフレッシュレート60Hz対応モデルとなっている点には注意が必要だ。テスト用の特別なモデルと理解してほしい。
MSIの統合設定ソフト「Dragon Center」(Version 2.0.98.0)では,ユーザーシナリオとして「Extreme Performance」「Balanced」「Silent」「Super Buttery」「User」の5つを用意している。この点は,MSIの既存ノートPCと変わらない。
Extreme Performanceは,最高性能が発揮できるようにCPUおよびGPUのオーバークロックを自動で行うモードで,先のDynamic Boost 2.0も,ここで生きてくるのではないかと予想される。また,工場出荷時設定でもあるBalancedは,性能と消費電力のバランスを取ったモードだ。Silentは,冷却ファンの動作音を抑えたモードで,Super Butteryは,バッテリの持続時間を延ばすことに重きを置いた低消費電力のモードとなる。
ストレージには,PCIe接続で容量1TBのM.2 SSDを搭載。メインメモリにはDDR4-3200を16GB(8GB×2)備えるなど,ゲーム用途では十分な容量を持つ。
そのほかにも,Wi-Fi 6に対応した無線LANや,2.5Gb Ethernetに対応した有線LANを備えるなど,ネットワーク周りの仕様も豪華だ。LEDバックライトが組み込まれた英語キーボードは,定評のあるSteelSeries製。2chのステレオスピーカーはDynaudio製と,ゲーム用途でも満足のいく仕様を誇っている。
そんな,GS66 Stealth 10UHの主なスペックをまとめたものが表2となる。
CPU | Core |
---|---|
メインメモリ | DDR4 |
グラフィックス | GeForce |
ストレージ | SSD(容量1TB, |
液晶パネル | 15.6インチ液晶, |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
有線LAN | 1000BASE-T |
外部 |
Thunderbolt 3(USB 3.2 |
キーボード | 英語配列 |
スピーカー | 内蔵2chステレオ |
インカメラ | 搭載(約92万画素) |
バッテリー容量 | 4セルリチウムイオン充電池 |
ACアダプター | 定格出力230W(20V 11.5A) |
公称本体サイズ | 約358.3(W)×248(D) |
公称本体重量 | 約2.1kg |
OS | 64bit版Windows 10 Pro |
3つのユーザーシナリオでテストを実施
ドライバにはGeForce 461.23 Driverを使用
それでは,テスト内容に話を移そう。
今回はテストに要する時間の都合から,比較対象のPCを用意することができなかった。そこで,ユーザーシナリオからExtreme Performance,Balanced,Silentのそれぞれでテストを実施した。グラフィックスドライバには,「GeForce 461.23 Driver」を利用。これは,NVIDIAがノートPC向けRTX 3080のレビュー用として,レビュワー向けに配布したものだ。
テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション23.2に準拠。ただし,「Far Cry New Dawn」については,CPUのボトルネックが顕著となり,GPUの性能を読み取りにくくなってきたことから,今回は省略した。その一方で,RTX 3080ではリアルタイムレイトレーシングやDLSSの性能が向上したことと,PCIe 4.0に対応したことを加味して,「3DMark」(Version 2.16.7117)において,「Port Royal」と「NVIDIA DLSS feature test」,それに「PCI Express feature test」を追加した。なお,NVIDIA DLSS feature testにおいては,DLSS 2.0を選択し,品質モードは「Quality」に設定している。
さらに,「Fortnite」に関しては,レギュレーションで定めたテスト方法に加えて,グラフィックスAPIをDirectX 12に変更したうえで,DLSSとレイトレーシングを有効にし,レイトレーシングの設定に関しては負荷が最大となるように変更してテストを実施した。なお,この際のテスト方法自体はレギュレーションから変わりない。
解像度は,GS66 Stealth 10UHのネイティブ解像度が2560×1440ドットであることから,それに加えて1920×1080ドットの2つを選択した。
デスクトップPC向けRTX 2070 SUPERを超える性能
多くのタイトルにおいて1440pでのプレイは快適
それでは,3DMarkから順にテスト結果を見て行こう。Fire Strikeの総合スコアをまとめたものがグラフ1となる。
Balancedのスコアは,Fire Strike“無印”で2万弱,Fire Strike Ultraで6300ほどと,CPUが揃えられないため断言はできないものの,RTX 3070のレビュー記事を参照すると,デスクトップPC向け「GeForce RTX 2070 SUPER」(以下,RTX 2070 SUPER)に近い数値が見られる。また,Extreme Performanceは,Balancedから1〜3%程度スコアを伸ばし,Silentは逆にBalancedの90〜91%のスコアに留まっている。Silentでのスコアは低下が著しいが,その理由は後述する。
グラフ2は,総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものだ。
ここでもBalancedのスコアは,RTX 2070 SUPERに近いと言ってよさそうだ。CUDA Core数はRTX 3070よりも多いのだが,RTX 3070ほどの結果を残せていないのは,やはり動作クロックの低さがネックとなっているためだろう。また,Extreme PerformanceはBalancedからスコアを伸ばせていないものの,SilentはBalancedの89〜91%程度と総合スコアを踏襲する形となった。
続いてグラフ3は,ソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものだ。
ここでは,Extreme PerformanceがBalancedからスコアを15〜16%伸ばしており,ユーザーシナリオの変更は,GPUよりもCPUへの影響が大きいことがうかがえる。なお,SilentはBalancedの94〜98%程度と,総合スコアより差が縮まっており,こちらはCPUよりもGPUへの影響がありそうだ。
グラフ4はGPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものだ。
Extreme PerformanceとBalancedとの差は,1%程度にまで縮まっており,オーバークロックによるCPU性能の差が,あまり表れていない。しかし,SilentはBalancedの87〜92%程度と,ほぼ総合スコアと似た傾向だ。
続いては,DirectX 12世代のテストである「Time Spy」の結果を見ていこう。まずは総合スコアをまとめたグラフ5からだ。
Balancedのスコアは,Time Spy“無印”で9400弱,Time Spy Extremeで4400弱となり,デスクトップPC向けRTX 2070 SUPERより,若干下といったところ。これは,動作クロックの低さとCPUの影響が大きいと考えるのが妥当だろう。また,Extreme PerformanceはBalancedに約4%の差を付けており,これはCPU性能が伸びたことで,スコアが向上したのだろう。一方,SilentはBalancedの83〜86%程度と,こちらはFire Strikeから差が開く傾向が見られる。
続くグラフ6はTime SpyのGPUテスト結果,グラフ7はCPUテストの結果となる。
まずはGPUテスト結果からだが,Extreme PerformanceとBalancedとの差は1〜2%程度と総合スコアよりも縮まっており,やはり総合スコアはCPUの影響が色濃く表れていると言えそうだ。なお,SilentはBalancedの82〜86%程度で,総合スコアと似た結果となった。
一方のCPUテスト結果では,やはりExtreme PerformanceはBalancedから12〜14%程度も伸びており,Fire Strikeと同様にCPU性能が向上しているのが分かる。一方のSilentはBalanceの約86%ほどと,Fire Strike以上にCPUへの影響は大きそうだ。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ8だ。
Balancedのスコアは6000弱と,ここでもやはりRTX 2070 SUPERと近い結果を残している。また,Extreme PerformanceはBalancedからスコアを伸ばせずにおり,シナリオの変更はあまりレイトレーシングへの影響はなさそうだ。その一方で,SilentはBalancedの85%程度にまでスコアが低下し,こちらはしっかりと影響が表れている。
もうひとつのレイトレーシングテストである「DirectX Raytracing Feature test」の結果がグラフ9だ。
ここでも,Extreme PerformanceはBalancedの差は小さく,Port Royalと同様に,Extreme Performanceのレイトレーシングに対する影響はあまりなさそうだ。その一方で,SilentはBalancedの約91%と,Port Royalよりは両者の差は詰まっているものの,オーバークロック動作の違いがレイトレーシングにも影響を及ぼしているのが見て取れる。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果がグラフ10である。
DLSSを有効にしたときのフレームレートの伸びを見て行くと,Balancedは59〜68%程度,Extreme Performanceは63〜69%程度,Silentは65〜69%程度と,ほぼ60%台に収まっており,シナリオによる違いはあまり見られない。ただ,フレームレートそのものは,DLSS有効時のExtreme PerformanceがBalancedから1920×1080ドットで約4%上回っているほか,SilentはBalancedの86〜90%程度と,シナリオの影響を受けている。
グラフ11は,PCI Express feature testの結果だが,ノートPC向けRTX 3080はPCIe 4.0に対応しているにも関わらず,CPUのCore i7-10870HプラットフォームがPCIe 3.0までのサポートとなるので,相応のスコアしか出ていない。
では,実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ12〜13は,「バイオハザード RE:3」の結果となる。
Balancedの場合,事実上の最小フレームレートとなる99パーセンタイル値を見ても,2560×1440ドットで100fps近い結果を残しており,かなり快適にプレイできるのは間違いない。Extreme Performanceは,平均フレームレートでは最大でも約3%しか伸ばせておらず,3DMarkと同様に劇的な変化は見られない。その一方で,Silentでは大きくフレームレートが低下しており,ファンの回転数を低くしたことで,熱によりCPUやGPUの性能が上がらないことは想像に難くない。
「Call of Duty: Warzone」の結果がグラフ14〜15だ。
ここでも,Balanceの結果は,2560×1440ドットでも平均フレームレートは120fpsを上回り,99パーセンタイルフレームレートも60fpsを超えているので,ゲームの快適性はまったく問題がない。CPUの違いはあれど,2560×1440ドットでは前世代の「GeForce RTX 2080 SUPER」に近いスコアを発揮している。また,ここでもExtreme PerformanceはBalancedからスコアをあまり伸ばせていない一方で,Silentはスコアが大きく落ち込んでしまっている。
次なる「Fortnite」では,まずレイトレーシングを使わない状態における結果をグラフ16〜17に示す。
Balanceの結果は,1920×1080ドットで最小フレームレートが110fps台,2560×1440ドットでも80fps弱と良好だ。ただ,GS66 Stealth 10UHはリフレッシュレート240Hzの液晶パネルを備えていることもあり,それを生かすためにフレームレートをさらに上げたい場合は,描画設定を落とす必要はありそうだ。なお,これまでのテストと同様にExtreme Performanceの平均フレームレートのBalancedからの伸び幅は小さく,SilentはBalancedの56〜60%程度の性能しか発揮できていない。
さて,同じFortniteで,グラフィックスAPIをDirectX 12に切り替えたうえで,DLSSとレイトレーシングを有効にした結果がグラフ18〜19だ。
さすがに描画負荷が大き過ぎるため,Balancedの1920×1080ドットにおける平均フレームレートは40fpsほどと,プレイアブルとは言い難い。だが,ここでもSilentの性能低下はかなり大きいのが見て取れる。
グラフ20〜21は,「Borderlands 3」の結果だ。
Balancedは,2560×1440ドットにおいて99パーセンタイルフレームレートが60fpsを大きく割ってしまうものの,1920×1080ドットであれば,ほぼ常時60fps以上の性能を発揮している。1920×1080ドットだけ見ると,Balancedの結果はRTX 3070に近いほどだ。また,ここでもExtreme PerformanceのBalancedからの伸びは鈍く,Silentの落ち込みはかなり大きい。
グラフ22は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,FFXIV漆黒のヴィランズ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
Balancedの結果は,2560×1440ドットで1万5000ほどとかなり良好だ。このスコアだけ見ると,やはりRTX 3070に近い性能を発揮していると言っていい。また,1920×1080ドットでは,Extreme PerformanceがBalancedから約5%ほどスコアを伸ばしているほか,Silentもスコアが低下しているとはいえ,2560×1440ドットで,スクウェア・エニックスが指標で最高評価とするスコア7000を大きく上回っている点は評価できよう。
そんなFFXIV漆黒のヴィランズ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ23〜24だ。
平均フレームレートは,総合スコアを踏襲したものとなっているが,ここで見るべきは最小フレームレートの結果だろう。同ベンチマークにおける最小フレームレートは,CPU性能の影響を受けやすいのだが,Extreme Performanceが1920×1080ドットで唯一60fpsを上回っている点は立派だ。Silentも1920×1080ドットであれば,最小フレームレートはBalancedからあまり低下していない点も見逃せない。
ゲームテストの最後となる「PROJECT CARS 2」の結果をグラフ25〜26にまとめている。
1920×1080ドットであれば,Balancedで常時60fps以上の性能を発揮。2560×1440ドットでも最小フレームレートが50fps近い結果を残しており,ゲームをプレイするうえで支障はなさそうだ。なお,Silentは最小フレームレートが20fpsまで落ち込んでしまっており,PROJECT CARS 2のプレイには,あまり適していない。
ノート全体の消費電力は170W前後。GPUの冷却性能は十分だが,Silentでは温度が上昇する場面も
さて,前掲した表1で,NVIDIAが公表したノートPC向けRTX 3080モジュールの消費電力を,80〜150W以上と書いた。消費電力に幅があるのは,動作クロック設定がノートPCによって異なるためだが,今回のGS66 Stealth 10UHは,NVIDIAコントロールパネルのシステム情報を見る限り,95Wとなっているようだ。これはデスクトップPC向けRTX 3080やRTX 3070に比べるとかなり低い値だが,実際に消費電力はどの程度なのだろうか。
そこで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,ノートPC全体の最大消費電力を計測した。なお,テストにあたっては,Windowsの電源プランを工場出荷時設定である「バランス」のまま,ユーザーシナリオをExtreme Performance,Balanced,Silentの3つに変更。そして,ゲーム用途を想定して無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ27だ。
Balancedの結果は170W前後と,ノートPCらしく低い値に収まっている。Extreme Performanceでは,そこから7〜21Wほど消費電力が増加し,逆にSilentでは2〜23Wほど低下している。ACアダプタが230W仕様であることを踏まえると,十分妥当で納得のいく消費電力だ。
最後に,GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。ここでは,温度約24℃の室内で,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
その結果がグラフ28だ。
Balancedの高負荷時は72℃と,デスクトップPC向けGPUほどは高くなっていない一方で,アイドル時は48℃と高めだ。これは,アイドル時に空冷ファンの動作が静音志向になるためだろう。とくに注目すべきはSilentの結果で,高負荷時に80℃を大きく超えてしまった。これは,空冷ファンの回転数を抑えたことで熱処理が間に合わず,温度が上がってしまっているということなのだろう。Silentにおけるスコアの低下は,熱によるものということが言えそうだ。
ちなみに,GS66 Stealth 10UHの動作音だが,今回は時間がなく騒音計を使った計測はできなかった。そこで,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,かなり静かな印象を受けた。ゲーミング向けノートPCは,高性能だが動作音を大きいモデルが多いのだが,このGS66 Stealth 10UHは動作音がかなり抑えられており,このあたりもノートPC向けRTX 3080を採用したメリットと言えそうだ。
Ampere世代らしく十分高い性能
ゲーミング向けノートPCでは注目の存在
ゲーマー向けノートPCは,市場で人気を博しており,ノートPC向けRTX 30シリーズの登場で,その流れはより一層強まりそうだ。とくに部屋のスペースが限られる日本市場においては,ノートPC向けRTX 30シリーズの登場は,かなり歓迎されるのではないだろうか。
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