インタビュー
「モンスターハンターライズ」「ストーリーズ2」メディア合同インタビュー。気になるアレコレを開発のキーマンに聞いた
今回はモンスターハンターシリーズのプロデューサーを務める辻本良三氏と「モンスターハンターライズ」のディレクターである一瀬泰範氏に,メディア合同インタビューを行う機会を得て,TGS 2020で紹介された内容を踏まえたうえで,さまざまな質問をぶつけてきたので,ぜひ読み進めてほしい。
「モンスターハンターライズ」公式サイト
「モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜」公式サイト
「モンスターハンターライズ」
──本日はよろしくお願いします。さっそくですが,「モンスターハンターライズ」の開発に至った経緯を教えていただけますか。
辻本良三氏(以下,辻本氏):
以前から携帯機でも「モンスターハンター」を遊びたいという声をたくさんいただいていたんです。その上で,どんなものを作れるかと考えていました。
──開発はいつ頃にスタートしましたか。
一瀬泰範氏(以下,一瀬氏):
「モンスターハンタークロス」の開発を終えたあと,「モンスターハンターダブルクロス」のディレクターがスイッチしたタイミングで,辻本から今のような話がありました。その後,Switchの話が具体的になってきたところで本格的に何かやりましょうとなったんです。当時はまだSwitchの実機がなかったので,ニンテンドー3DSを使ってどんな新しい遊びができるか検証していました。
辻本氏:
「モンスターハンターライズ」は,シリーズで初めてREエンジンを使って開発しています。そのための検証も必要ということで,開発は通常より早めにスタートして十分な時間をかけました。
──「モンスターハンターライズ」の企画は携帯機向けの需要に応えてスタートしたというお話ですが,以前の「モンスターハンターポータブル」シリーズのような位置付けと捉えていいんでしょうか。
辻本氏:
現在のモンスターハンターシリーズは,タイトルごとにテーマを決めて企画・開発しています。そのため,タイトル名にもテーマを示すような言葉を入れています。例えば「モンスターハンターライズ」は,軽快なアクションや高低差のあるフィールドを縦横無尽に駆け回ることやユーザーに盛り上がってほしいという思いをテーマに掲げていますから,そのイメージを出すために“ライズ”になったんです。
──今回は「モンスターハンターポータブル 3rd」以来の和風テイストですが,改めて“和”に挑戦する理由を教えてください。海外展開を意識したとか?
辻本氏:
そういうわけではないですね。
一瀬氏:
作りたいものを作ったというのが,正直なところです。「モンスターハンターライズ」のチームが立ち上がった頃には,すでに「モンスターハンターダブルクロス」と「MONSTER HUNTER: WORLD」のラインが動いていましたから,それら2つとは違うテイストにしようとは考えていました。加えて「モンスターハンターポータブル 3rd」からかなり時間が経っていますから,あらためて和風やアジアンテイストにするのもいい頃合いなのかなと。
──先日の配信を見た限りでは,フィールドのマップが「MONSTER HUNTER: WORLD」よりも簡素化された印象を受けました。これは遊びやすさを意識したからでしょうか。
一瀬氏:
ライズではモンスターとハンターとのやり取りを重視しています。それを踏まえて,メインエリアの地形はあまり複雑にならないよう,フィールドを設計しています。ですが,それだけですと平面になってしまうので,チーム内でサブエリアと呼んでいる場所に探索できる要素を配置しています。
これまでのシリーズでは,モンスターがエリア移動したときにハンターはただ追いかけていくだけでしたが,今回はサブエリアを突っ切ってショートカットする,といった動きもできます。ハンター各自が攻略法を見出していくようなゲームサイクルを目指しています。
──ということは,ハンターがモンスターの行動パターンやフィールドの構造を熟知することによって,今まで以上に狩猟の時間を短縮できるわけですね。
一瀬氏:
もちろんそういった遊び方もできます。ただ強制しているわけではないので,ガルクに乗ってモンスターを追いかけ回しても構いません。開発チーム内でも,人によってかなりプレイスタイルが異なるので面白いです。
──今回はペイントボールが廃止されたり,ガルクでスタミナを気にせず高速移動ができたり,翔蟲(かけりむし)で軽快に移動できたりと,これまでと違った印象を受けます。
一瀬氏:
「モンスターハンターポータブル」シリーズもそうでしたが,携帯機のゲームには腰を据えてやるというよりも気軽に遊べるサイクルのほうが適しています。とくにペイントボールは「MONSTER HUNTER: WORLD」では導蟲(しるべむし)という形のシステムに置き換わったので,「モンスターハンターライズ」でもそれに代わる何かにしたいと考えた結果,今作ならではの遊びに落ち着きました。
今作では,ハンターがどういった道のりでモンスターに到達するのか,という遊びがこれまでとは異なっています。フィールドのところどころにハンターのステータスを上昇させる要素を配置しているので,少し遠回りして自分を強化してからモンスターを狩ってもいいですし,腕に自信があればそのまま狩ることもできます。
──ガルクは最初からクエストに同行させられますか。
一瀬氏:
ガルクもアイルーも,最初からオトモとしてクエストに連れていけるようにしようと考えています。オトモの位置付けもタイトルによって異なっていて,「モンスターハンターライズ」では,例えばネコが好きな人であればアイルーをたくさん雇えるようにしようという思想で作っています。詳細は,後日改めてお話しできると思います。
──限定特典のガルクの重ね着装備「なりきりレトリバー」が,ゴールデンレトリバーそのもので少し驚きました。
一瀬氏:
あれはデザイナーの発案でして,本編では表現しきれない犬種を特典にすると喜ぶ人もいるんじゃないかということで実現しました。
──翔蟲はどのようなひらめきで生まれたのでしょうか。
一瀬氏:
シリーズのアクションが「モンスターハンターダブルクロス」あたりである程度完成していたので,「モンスターハンターライズ」では違う遊びを入れようと考えていたんです。その中でチーム内で考え出したのが,立体機動ができるような遊びでした。縦横無尽に動けるようにすることで,移動するだけでも気持ちいい,探索しているだけでも気持ちいいという遊びを実現できないかと検討をおこなっていました。虫にしたのは世界観に合わせるためです。例えば魔法陣を描いて立体的な動きをしたらモンスターハンターの世界観にそぐわないですよね。
──ジャンプ攻撃を特徴とする操虫棍と翔蟲の共存はどう図っているのでしょうか。
一瀬氏:
翔蟲は糸を吐き出す虫という形に落とし込んだので,操虫棍の虫とはまったくの別物となります。
また,武器によって翔蟲を活かしたアクションが違うんですが,それぞれの武器の特性を広げるような形で作りこんでいます。先日,双剣と太刀のアクションを紹介しましたが,今後ほかの武器も披露していきますので,楽しみにしていてください。
──実機プレイでは乗りが紹介されませんでしたが,今作でも実装されていますか。
一瀬氏:
そこは今後あらためて紹介させていただきます。
──武器種は全14種類とのことですが,その中に新武器種は含まれていますか。
辻本氏:
これまでの14武器種と同じです。今回は各武器に翔蟲のアクションが入るので,それを楽しんでほしいですね。
──PVでは「百竜夜行」という言葉がキーワードとして出ていました。こちらについて現時点で話せる情報があればよろしくお願いします。
一瀬氏:
まだ詳しくは言えないんですが,過去にあったものとはまた違う,独自の遊びにしようと考えて準備しています。ストーリーとも関連していますので,もう少しお待ちください。
──配信では「フィールド上にさまざまな発見がある」といったことをおっしゃっていましたが,どんなものを用意していますか。
一瀬氏:
今回はフィールド内にいる環境生物を使ったいろんな遊びができるように作っています。先ほど少し言及しましたが,触れるだけでステータスが上がる生物や,アイテムのように使える生物,さらにはフィールド固有の生物などがいますので,それらをどう使うかを考えたり,あるいはたくさん採取ができる場所を発見したりといった遊びができます。モンスターを狩るだけでなく,フィールドを駆け巡ることで,RPGでマップを隅々まで探索するかのような遊びができるのではないかと考えています。
──「モンスターハンター」シリーズと言えば,各タイトルとも「G」や「MONSTER HUNTER WORLD: ICEBORNE」のような拡張版がリリースされてきました。今回もなんらかの拡張版は考えていますか。
辻本氏:
「モンスターハンターライズ」の発売後からイベントクエストを配信する予定です。あとはタイトルアップデートをやろうかなと。おっしゃるような「G」や「MONSTER HUNTER WORLD: ICEBORNE」に相当するものはまだ考えていません。それより先にやることがたくさんありますから。
一瀬氏:
何しろまだ本編が完成していませんし(笑)。今は全力で本編に取り組んでいます。ただ,長く遊んでいただける施策は入れ込もうと考えています。
──これまでモンハンシリーズではさまざまなリアルイベントが開催されてきました。現状は開催が難しいかと思いますが,何か代替の施策は考えていますか。
辻本氏:
おっしゃるとおりで,昨今はユーザーとのコミュニケーションが難しい状況です。ただ,僕達はハンターやファンの皆さんとコミュニケーションを図ってきたので,ネットを使ってできないかと考えています。SNSなどを使って僕ら自身から情報を提供する機会が増えるかと思いますので,ぜひ各種SNSをフォローしてもらえればと思います。
──amiiboの同時発売も発表されましたが,他社タイトルのamiiboも対応するのでしょうか。
辻本氏:
他社タイトルのamiiboにも対応しており,いろんなアイテムが入手できる福引に毎日チャレンジいただけます。さらに「モンスターハンターライズ」のamiiboでは特別な重ね着装備が手に入ります。
──映画「モンスターハンター」と何かコラボレーションを予定していますか。
辻本氏:
映画に関する詳しい情報が届いていないのですが,できるようなら何かしらやりたいですね。もう少し話が決まってきたら,きちんと考えていきます。
「モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜」
──「モンスターハンターストーリーズ2」はおよそ5年ぶりのナンバリング最新作となります。開発することになった経緯や続編を作るにあたって留意したことなどを教えてください。
辻本氏:
「モンスターハンターストーリーズ」を遊んでいただいた方から,「続編がほしい」というお声がけっこう寄せられたんです。続編を作るにあたっては,より多くの皆さんに遊んでいただきたいという思いを持って,どういうゲームにすればいいのか検証を続けてきました。
結果として,前作をプレイした方はもちろん,より幅広い層にアピールできる形に落とし込めたと思っています。例えばストーリーは,前作を遊んでいないと分からないということはありません。「モンスターハンターストーリーズ2」から始めた人でも,きちんとストーリーが分かり,本作を楽しめる作りにしてあります。
また,「モンスターハンターストーリーズ」シリーズをRPGにしたのは,個性的なモンスター達を身近に感じていただけるゲームを作りたかったからです。本作の主人公はモンスターと共に生きる「ライダー」で,好きなモンスターと一緒に冒険ができます。アクションとは異なる「モンスターハンター」という位置付けで本作を楽しんでほしいですね。
──世界観は前作と同一なのでしょうか。例えば前作のキャラクターが登場することはありますか。
辻本氏:
そこは今後の情報公開をお待ちください。
──前作よりもキャラクターの頭身が高くなっている理由を教えてください。
辻本氏:
「モンスターハンターストーリーズ2」を作るにあたり,頭身なども含めた世界観や雰囲気を,時間をかけて検証しました。その結果,幅広い層にプレイしていただけると判断したのが,現在公開しているビジュアルになります。何かに影響されたわけではなく,「モンスターハンターストーリーズ2」として作りたかった雰囲気が今の形です。
──PVでは,伝説のライダー・レドと,その血を引く主人公の双方が青年のように見えたのですが,例えばストーリーの進行上,回想シーンなどでレドの時代をプレイすることはあるのでしょうか。
辻本氏:
ゲームの舞台はあくまでも主人公がいる今の時代です。PVに出てきた青年のレドは,回想シーンで活躍するといった形になります。
──前作のバトルでは,オトモンの行動がランダムで,有効な攻撃を繰り出さないことも多くありました。今回はどのように調整を行う予定ですか。
辻本氏:
バトルシステムについては,後日改めて紹介します。少々お待ちください。
──「モンスターハンターストーリーズ2」と「モンスターハンターライズ」の連動要素も予告されていました。どういった内容を考えていますか。
辻本氏:
詳細は決まっていませんが,両タイトルをプレイしていると,それぞれのタイトルで少しいいことがあるといったものを考えています。
──前作ではアニメが放映されましたが,その反響を教えてください。
辻本氏:
けっこう長い期間やらせていただけたので,キャラクターに愛着を持ったという方が多かったです。「モンスターハンター」を知らなかったという低年齢層やファミリーの皆さんに観ていただけて,IP全体の認知度が高まったと捉えています。
──最後に両タイトルに期待しているファンの皆さんに向けて,メッセージをお願いします。
一瀬氏:
「モンスターハンターライズ」は先日発表したばかりで,まだお見せできていないシステムや要素,そしてモンスターがあります。これらについては,今後随時発信していきますので,楽しみにしていてください。発表済みの世界観などについては,いい反響をいただけており,チーム一同,励みにして完成を目指しています。今後もよろしくお願いします。
辻本氏:
2タイトルとも発売日に向けて順次情報を出していきます。ただ,今のご時世なので,リアルイベントがなかなか開催できない状況です。今日もオンラインでインタビューを実施していますが,そういった新しい形で皆さんに情報を伝えていく必要があると感じています。繰り返しのアナウンスになりますが,今後はSNSなどを活用して皆さんに情報をお伝えしていきますので,ぜひフォローしていただければと思います。
──本日はありがとうございました。
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