インタビュー
「ディアブロ II リザレクテッド」合同インタビュー。オリジナルの良さを残しつつ,新たなプレイヤーに受け入れてもらうための数々のこだわりとは
「ディアブロ II リザレクテッド」公式サイト
4Gamerでも何度か記事にしているとおり,本作ではグラフィックスが4K解像度に対応し,PC版も含めゲームパッドでもプレイできるなど,さまざまな要素が現代的に強化されている。それでいながら,オリジナルD2らしさはスポイルされておらず,昔からの熱心なファンと未経験者の両方が楽しめるよう配慮されているのだ。
そんなD2Rについて,日本のメディア向けの合同インタビューが本日(2021年9月30日)行われた。オリジナルD2の経験者を含め,D2Rに興味のある読者は,ぜひ参考にしてほしい。
デザイン・ディレクター Robert Gallerani氏 |
エンジニア・スペシャリスト Kevin Todisco氏 |
―――D2Rのリマスターの作業では,オリジナルD2を尊重する方針が採られています。この方針に至った経緯について,あらためて聞かせてください。
Robert Gallerani氏(以下,Gallerani氏):
オリジナルD2は,アクションRPGジャンルにおける金字塔として現在まで語り継がれています。そういった伝説的な作品をリマスターするにあたり,当時のプレイフィールを可能な限り残すことを基本コンセプトとして掲げました。
一方で,オリジナルD2は20年も前のゲームであり,未経験の人も大勢触れることになります。そうした人でもD2Rを楽しんでもらうため,修正しなくてはならない部分もありました。その点を踏まえ,どこを変え,どこを変えないのか,開発中は非常に細かな部分まで議論を重ねてきました。
Kevin Todisco氏(以下,Todisco氏):
D2Rの開発スタッフは全員,オリジナルD2を深くリスペクトしています。今回のリマスター版では,オリジナルD2のプレイフィールを保ちつつ新しい時代に対応させ,文字どおりリザレクテッド(復活)させたかったんです。
Gallerani氏:
D2Rのリリース後に,オリジナルD2の経験者から「これは当時の(Diablo IIの)ままだね!」と言われることがあります。今言ったような方針で開発していたので,このようなフィードバックはとても嬉しいですね。
―――オリジナルD2のシステムには,振り返ると不便な部分もあると思います。開発者として,そうしたところを徹底的に修正したいというす気持ちはありませんでしたか。
Gallerani氏:
その点については,開発作業の初期段階で慎重に議論を行ってきました。最終的には,無闇に遊びやすく変更すると,熱心なファンにとってDiablo IIではなくなってしまう可能性があり,それは避けたいと思いました。
一例を挙げると,オリジナルD2はインベントリが小さく,1回の冒険で持ち帰るアイテムを吟味する必要がありました。その部分に,オリジナルD2の醍醐味を感じていた人もきっといるはずなので,D2Rではインベントリではなくスタッシュを大きく拡張しています。これは大多数のプレイヤーに受け入れられているでしょう。
もう1つの例として紹介したいのは,スタミナ関連のシステムです。
実際のゲームプレイでは,キャラレベルが10〜15になると常に走り続けられるので,いっそのことスタミナを撤廃することも検討しました。ですがDiablo IIには,スタミナを回復するためのポーションやシュライン(祭壇)などもあり,これらも無意味になってしまいます。そこまで手を加えてしまうと,オリジナルD2のゲームコンセプトまで変えてしまいかねません。
Todisco氏:
先ほども言ったように,今回のリマスター作業ではオリジナルD2をできる限り尊重しています。スタミナを中心とした一連のシステムを丸ごと撤廃するのは,「一線を越える」という認識があり,最終的に変更を見送ったわけです。
その一方で,D2Rではゴールドの自動ピックアップやスタッシュの共有機能などを実装していますが,この新要素ならオリジナルD2のゲーム体験は損なわれないと判断したからです。我々としては「かゆいところに手が届く」くらいの認識ですね。
―――そうした取捨選択の末に完成したD2Rをプレイして,オリジナルD2らしさが残されていると感じました。最近のオンラインゲームは必要以上にユーザーフレンドリーな作品が多いだけに,D2のシステムの数々が新鮮に思えます。
Gallerani氏:
ありがとうございます。開発スタッフの中には,オリジナルD2未経験者もいるのですが,そんな彼らがD2Rのテストプレイを行うと,同じ感想を持つようです。オリジナルD2は非常に古いゲームで,それを引き継いだD2Rは,現代のゲーマーにとって新鮮に映るようです。
たとえば,クエストを受注しても目的地が明確に示されなかったり,弓を撃つときにボルト(矢弾)を別途装備しなければならなかったりと,不便さを感じることもあるようですが,私としては,そういった反応を聞くたびに「それがDiablo IIなんだよ」と,ある意味で「教育」していますよ。
Todisco氏:
実は私も,開発チームに参加する前にオリジナルD2をプレイしたことがありませんでした。いろいろな意味で新鮮で,楽しめていますね。
―――ちなみに2人は,D2Rでどのクラスを中心にプレイしていますか。
Gallerani氏:
私は,オリジナルD2ではソーサレスがメインだったのですが,現在のD2Rではアマゾネスを好むようになりました。というのも,ゲームパッド操作における弓とジャベリンの使い分けが,とても楽しいことに気づいたんです。
もうひとつ好きのはネクロマンサーです。見た目がリアルになったスケルトンの大群を連れ回すのは痛快ですよ。
Todisco氏:
私は開発チームに参加してオリジナルD2に触れたときから,一貫してバーバリアンをプレイしています。
―――D2Rの開発作業を振り返って,最も困難だった部分について教えてください。
Gallerani氏:
繰り返しになりますが,オリジナルD2の未経験者と,20年来の熱心なファンの両方が楽しめるようにすることですね。
具体的には,D2Rではコンシューマ機向けに展開するうえで,ゲームパッドへの対応が必須でしたが,これはPCの「マウス+キーボード」操作とはまったく違います。これらの2通りのUI(ユーザーインタフェース)を提供しつつ,両方のプレイフィールを近付けることは,非常に大変でした。
Todisco氏:
私は,グラフィックスまわりの作業に最も苦労しました。
オリジナルD2は基本的に2Dグラフィックスで,描画の際に少しごまかして3Dっぽく見せているんです。そのように作られたオリジナルD2を,フル3Dグラフィックスに作り直すにあたっては,それまでのごまかしが通用しなくなりました。階段や丘など,高低差を考慮した動きを3Dで表現するのは難しかったですね。
―――グラフィックスに関して,ダンジョンの内部や夜間における「闇」の表現が印象的です。これも開発作業でこだわった部分ではないでしょうか。
Todisco氏:
そうですね。D2Rの画面は暗闇が占める割合が大きく,それによってプレイヤーが恐怖を感じられるように工夫しています。プレイヤーキャラクターの視界が広すぎると,怖さがなくなってしまうので,そうした部分も含めて細部にまで手を入れています。
また,画面全体が暗いことで,ライティングがひときわ映えるわけです。焚き火やソーサレスのスペルなどで画面内がリアルタイムで照らされる光景は,ぜひ見てほしいところですね。
―――D2Rの発売から約1週間が経過しましたが,現在の手応えはいかがですか。
Gallerani氏:
プレイヤーからのフィードバックは,全体的に非常に良好だと思います。
個人的に最も嬉しいのは,D2Rに触れたことで,オリジナルD2だけでなく,当時のことをいろいろと思い出したという感想ですね。
もう1つ嬉しいのは,オリジナルD2の経験者が,ゲームパッドのUIを好意的に受け入れてくれていることです。実は,オリジナルD2の経験者はPC版に,そして未経験者はコンシューマ版にと,プレイヤー層が2分されるのではないかと心配していたんです。コンシューマ版向けの新要素をPC版にも導入してほしいという要望も来ていて,私としては胸をなでおろしています。
Todisco氏:
フィードバックで面白かったのが,オリジナルD2の経験者が最初にD2Rをプレイしたあと,レガシーモード(※注)を試して,「昔はこんなグラフィックスで遊んでいたのか!」と驚くとことですね。
※注:オリジナルのD2のゲームエンジンで描画されたゲームモード
Gallerani氏:
オリジナルD2経験者がリザレクテッドモードをプレイして,グラフィックスの変化に気づかないのは,「思い出補正」だよね(笑)。
オリジナルのD2のグラフィックスも,あれはあれで味があって好きです。ですが,レガシーモードとリザレクテッドモードを見比べると,技術の進化に驚くでしょう。
―――コンシューマ版では,ポーションを使用するとインベントリからベルトスロットに自動で補充される新仕様が採用されています。これはPC版のプレイヤーにとっても歓迎されそうですが,アップデートで対応する予定はありますか。
Gallerani氏:
D2Rではゲームパッド向けにUIを最適化しており,そのほかにもインベントリ内のアイテムの自動整理などの追加機能を導入しています。先ほど申し上げた,「一線を越えてしまわないか」に気を付ける必要がありますが,そうした新仕様をPC版にも導入できないかと,現在検討を重ねているところです。
―――ゲームパッド操作と,マウス+キーボード操作で,プレイフィールがかなり違いますよね。
Gallerani氏:
それら2種類の操作スタイルで,できるだけ近しいゲーム体験ができるように努力していますが,どうしても違いは生じます。
たとえばゲームパッドによる操作では,アナログスティックを傾けるだけで移動できるので,より機敏に動けるという人も多いようです。その一方,カーソルが表示されないため,任意の場所をターゲットするのは苦手です。オートターゲットの機能には限界がありますし,また,テレポートやリープなど一部スキルの仕様も変更せざるを得ませんでした。
どちらの操作スタイルにも特徴があるので,我々としてはプレイヤーがそれぞれ判断して選んでくれればと考えています。
―――今後のアップデート内容について,現在話せることはありますか。
Gallerani氏:
現在の開発チームにとっての最重要課題は,バグフィックスおよびサーバーの安定化です。それらが解決したら,シーズン導入に向けて準備を行う予定です。シーズンの実装日は今のところ未定ですが,ラダー用のルーンワードや強力なモンスターは,すでにオンラインとオフラインのどちらにも開放しています。
また,シーズン以外のアップデートについても,いくつかのアイデアがあります。詳細を話すことができず申し訳ないのですが,こちらも期待してください。
※2021年10月22日22:20頃追記:当初「特別なルーンワードや強力なモンスターが登場します」と記載しておりましたが,発言内容の解釈に誤りがありました。正しくは「ラダー用のルーンワードや強力なモンスターは,すでにオンラインとオフラインのどちらにも開放しています」となります。お詫びを持って訂正いたします。
―――D2Rのリマスターと同じコンセプトで,初代「Diablo」のリマスター化を望む声もあるかと思います。こちらに関して,何か話せることはありますか。
Gallerani氏:
うーん……,どうだろう。Kevin?
Todisco氏:
我々は現在D2Rのみを担当しており,プロジェクト外のことをコメントできる立場ではありません。すみません。
―――では最後に,日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
Gallerani氏:
現在D2Rを楽しんでくれている日本のDiabloファンに向けては,この場を借りて感謝の気持ちを伝えさせてください。今回のインタビューもそうですが,日本にもたくさんのDiabloファンがいることを知ることができて嬉しかったです。ぜひ,これからもD2Rを楽しんでください。
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