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[インタビュー]成長途中にある少年時代のセフィロスも登場する「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」。野村哲也氏を交えた制作陣にいろいろ聞いた
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印刷2023/09/07 18:12

インタビュー

[インタビュー]成長途中にある少年時代のセフィロスも登場する「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」。野村哲也氏を交えた制作陣にいろいろ聞いた

 スクウェア・エニックスは本日(2023年9月7日),スマホ向けゲーム「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」iOS / Android。以下,「EVER CRISIS」)の正式配信を開始した。

画像集 No.009のサムネイル画像 / [インタビュー]成長途中にある少年時代のセフィロスも登場する「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」。野村哲也氏を交えた制作陣にいろいろ聞いた

 本作は「FINAL FANTASY VII」(以下,「FFVII」)と「CRISIS CORE -FINAL FANTASY VII-」(以下,「CRISIS CORE」)の物語に加えて,完全新規オリジナルシナリオの「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」(以下,「FIRST SOLDIER」編)を含めた3編の物語を,章立ての配信によって追体験できるコマンドRPGだ。開発はアプリボットが担当している。

 「FIRST SOLDIER」編は,「FFVII」から15年前の世界が舞台となり,少年時代のセフィロスの姿が描かれるうえに,グレン・ロズブローク,マット・ウィンザード,ルティア・リンといった3名のソルジャーが登場し,彼らを中心に物語が展開されていく。

 今回は「EVER CRISIS」のリリースに合わせて,本作の制作陣にインタビューを実施した。本作プロデューサーの市川翔一氏,「FINAL FANTASY VII REMAKE」(以下,「FFVII REMAKE」)のシナリオデザインに携わった鳥山 求氏に加えて,「FFVII」シリーズを長年にわたって主導してきた野村哲也氏にも話を聞けたので,本稿でお届けしよう。

「FFVII REMAKE」ではなく「FFVII」をベースとした物語に


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは「EVER CRISIS」の制作において,皆さんが担っている役職について教えてください。

市川翔一氏(以下,市川氏):
 「EVER CRISIS」のプロデューサーを務めている市川と申します。

鳥山 求氏(以下,鳥山氏):
 本作の開発ディレクターの鳥山です。

野村哲也氏(以下,野村氏):
 「FFVII」リメイクプロジェクト全体のクリエイティブディレクターをやっている野村です。

4Gamer:
 「FFVII」の展開は多岐にわたりますが,シリーズにおける本作の立ち位置はどのようになりますか。

市川氏:
 本作は「FFVII」シリーズ全体を包括して楽しめるタイトルだと考えています。初代「FFVII」が25年以上前の作品ということもあって,当時を知る方々の年齢が上がってきている中で,より手軽に,より身近に「FFVII」を体験してもらえる機会を作るべく,今回はモバイル端末向けに開発しました。

4Gamer:
 最初の「FFVII」やシリーズ関連作を知らない人が,シリーズ全体の世界観に触れるキッカケになるというわけですね。

市川氏:
 ある種の振り返りも含めて,新しく知っていただく方にとっては概要を知ることができる作品として「EVER CRISIS」があるということになります。あくまでも原作がベースとなっていますので,直近の「FFVII REMAKE」ではなく,「FFVII」原作の事実に基づいたものをベースにモバイルへと最適化したストーリーが収録されています。

画像集 No.004のサムネイル画像 / [インタビュー]成長途中にある少年時代のセフィロスも登場する「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」。野村哲也氏を交えた制作陣にいろいろ聞いた

4Gamer:
 しっかりと過去作を踏襲した作りになっていると。

市川氏:
 そうですね。「FFVII REMAKE」は,物語や世界観にさまざまな解釈が含まれています。具体的に言うとフィーラーのような「FFVII REMAKE」で新たに登場した存在は「EVER CRISIS」にも登場しません。

4Gamer:
 なるほど。本作のストーリーはどのようにしてプレイできるのでしょうか。

市川氏:
 クラウド,エアリス,セフィロス,ジェノバをはじめとする「FFVII」のストーリーの根幹となる部分にフォーカスして,そこを章ごとに分けて配信していく予定です。

4Gamer:
 章立てのストーリーは,どれくらいのペースで配信されてきますか。

市川氏:
 アプリのリリースタイミングでは,「FFVII」「CRISIS CORE -FINAL FANTASY VII-」「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」の3編のストーリーを用意しています。その中から,いずれかひとつの1章分を1か月ごとに更新していく予定です。

4Gamer:
 本作の基本的なゲームシステムについても教えてください。

市川氏:
 ストーリーモードに関しては,キャラクターが共通となります。上昇させたステータスをそのまま使うことができますし,ほかのコンテンツでも同様です。またストーリーの戦闘時には,ストーリーパーティモードとフリーパーティモードのようなシステムがあります。
 戦闘のときにはプレイヤー自身が好みのキャラクターで戦うこともできますが,ストーリーパーティモードには鳥山が熱を入れて作っている部分もありまして……。

鳥山氏:
 原作を追体験する,というプレイをしたい場合には,原作通りのメンバーがバトルパーティとなるストーリーパーティモードのほうが楽しいと思います。
 なおかつストーリーパーティモードで進めていくと,キャラクターを満遍なく育てていくことができますので,さまざまなコンテンツで,いろいろなキャラクターを使えるようになります。初回プレイ時には,ぜひともストーリーパーティを使ってほしいですね。

画像集 No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]成長途中にある少年時代のセフィロスも登場する「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」。野村哲也氏を交えた制作陣にいろいろ聞いた

4Gamer:
 バトルシステムに関しても教えてください。

鳥山氏:
 スマホ向けのタイトルではありますが,家庭用ゲーム機向けの作品と同じ設計方針で制作しています。例えば「FFVII REMAKE」では「FFVII」原作よりもアクション性を増すバトルになっていましたが,「EVER CRISIS」はコマンドバトルの戦略性に特化した作りになっています。
 敵に弱点属性や大技の予兆行動などを入れることで戦略性をしっかりと感じられるバトルシステムにしていますが,それだと遊んでいて疲れてしまうこともあると思うので,オートバトルのAIを優秀にすることで,見ているだけでも楽しめるバトルになっています。
 そしてAIでは足りないこと,例えば自動のオススメ編成で装備される武器やマテリアを確認して,プレイヤー自身が育て忘れていたものを,自分で育て直したりするだけで,ゲームを進めていけるような作りになっています。

画像集 No.007のサムネイル画像 / [インタビュー]成長途中にある少年時代のセフィロスも登場する「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」。野村哲也氏を交えた制作陣にいろいろ聞いた

4Gamer:
 キャラクターの獲得方法についても教えてください。

市川氏:
 プレイヤーの皆さまの個々のストーリーの進捗に関わらず,プレイアブルキャラクターとして追加されたタイミングで加入していきます。ストーリー以外のタワーコンテンツやダンジョン系のモードがありますので,本作がリリースされたタイミングで一定のキャラクターを持った状態でゲームを始められます。


実は2021年に世に出ていた「EVER CRISIS」のソルジャー達


4Gamer:
 本作で用意されているストーリーや更新予定の章において,野村さんはどのあたりまで監修しているのでしょうか。

野村氏:
 基本的にすべて監修しています。また本作にはキャラクターの着せ替え要素としてコスチュームがあるのですが,そこもすべてチェックしています。そのほか,基本的にはすべてに目を通していますが,演出面は「FFVII REMAKE」や「FFVII REBIRTH」に携わっている鳥山のもとで行われています。

4Gamer:
 戦闘は等身大の3D,フィールド上はSDサイズの3Dとなっている本作ですが,キャラクターの会話ウィンドウなどに表示されるデザインは野村さんのイラストに寄せたものになっていますよね。

野村氏:
 狙って寄せてもらったわけではなく,ちょうど会話ウインドウの絵をどうするか?と市川から相談されているときに,自分が他チームで制作中の「KINGDOM HEARTS Missing-Link」の制作チームにいた藤瀬の絵が「BEFORE CRISIS」を想起させる雰囲気でありながら,洗練された現代感もあり,本作に所属を変えてもらい任せることにしました。彼女の絵は本作に違和感なくマッチしていると思います。

4Gamer:
 デザインと言えば,本作の「THE FIRST SOLDIER」編でセフィロスの少年時代が描かれるとのことですが,長髪が特徴的なセフィロスのヘアスタイルがショートカットになっていました。

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野村氏:
 もともとは「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」という2021年11月から配信が始まったバトルロワイヤルゲームにて,設定としては用意していたものです(※2023年1月11日サービス終了)。
 「EVER CRISIS」の「THE FIRST SOLDIER」編では,ソルジャーの創設期が描かれていて,そこでグレン,マット,ルティアといった3名の新キャラクターも登場します。そして,ソルジャーの創設期においてセフィロスは欠かせない存在だということで,最初からストーリーに盛り込む予定でした。髪型は悩みましたね。

4Gamer:
 つまり「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」が開発されていた時点で,先に物語の設定が固まっていたと。

野村氏:
 はい。「EVER CRISIS」の立ち上げは「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」とほぼ同時期でした。両作とも「FFVII REMAKE」の開発途中に立ち上がったものだったので,そのころから並行して物語を構想しています。

4Gamer:
 「THE FIRST SOLDIER」編におけるショートカットのセフィロスのデザインは,野村さんによる発案なのでしょうか。

野村氏:
 ゲーム内に実装デザインはされるイラストは前述の藤瀬によるものですが,元となるデザインはグレンたちも含めて自分が担当しています。セフィロスの少年時代は非常に悩んで作りました。今回は10代のセフィロスになるので,皆さんが知っているセフィロスとは別のものとして考えています。
 「CRISIS CORE」時代の良いセフィロスも,その後の悪いセフィロスも,どちらも人格は完成されていますよね。しかし今回の「THE FIRST SOLDIER」編で描くのは,それ以前の人格形成途中のセフィロスということもあって,未成熟な雰囲気を出すために,あのような姿にしました。

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4Gamer:
 「THE FIRST SOLDIER」編では,セフィロスの素の部分が見れるようなやり取りもあるのでしょうか。

鳥山氏:
 セフィロスは新しいソルジャーの代表として登場するので,彼自身が自分を英雄の型に当てはめようとしているような状態で,そこに対する葛藤も描かれます。
 これまでのどの作品とも違うセフィロスが見られますし,原作のキャラクターとも一味違う,クセの強いグレン,マット,ルティアたちといった人物に囲まれているがゆえに戸惑うセフィロスも見ることができると思います。

4Gamer:
 グレン,マット,ルティアの3名はどのようなキャラクターなのでしょうか。

鳥山氏:
 ソルジャーの計画の初期段階に“プロジェクト0”と呼ばれるフェーズがありまして,そのときのソルジャーは宝条の実験体ではなく,普通の兵士の中から優秀な兵士が選ばれてソルジャーになるような時代でした。原作で描かれたソルジャーとの境目の時代を「THE FIRST SOLDIER」編では描いています。

野村氏:
 グレンたちはソルジャーなのですが「普通のすごい人間」というだけです(笑)。

4Gamer:
 人間が本来持っているポテンシャルだけで,ソルジャーになったということですね。

野村氏:
 そうです。気合いと根性で頑張っているというか(笑)。

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4Gamer:
 グレンたちのキャラクター性も野村さんによる発案なのでしょうか。

野村氏:
 初期設定は自分が担当しました。もともとはマットを起点に考えていて,彼を有能で真面目な主人公,ただただ真面目すぎるやつとして思い描いていました。相棒として破天荒なグレンを考えて,次に調和を取り持つ存在としてルティアを考えました。
 取っ掛かりは,そういったイメージだったのですが,その後は運営されるナマモノなので,鳥山のほうで料理してくれるのだろうと思います(笑)。

鳥山氏:
 野村の発案にあったキャラクター性を活かす形でストーリーは作っています(笑)。記憶力に長けた理性派のマット,グレンは豪快でスラムの厄介者だったが人を思いやる優しい一面もあり,祖母のためにお金を稼ぐために戦っているというような設定に膨らめています。

野村氏:
 見た目は3人とも地味なんですよ。彼らは「FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER」のオープニングですでに登場ているのですが,作品性としてはプレイヤーはアバターキャラクターで構成されていたので,彼らの容姿もそこに溶け込ませる意図がありましたし,同じ制服を着ないといけないですし(笑)。
 そこまで派手にならないように,あえてデザインしましたが,いま思えば地味過ぎたかなと感じています。でも本作ではコスチュームの追加もありますので,逆にそういった着せ替え要素には最も適した3人だと思います。ぜひ格好いい彼らを自らコーディネートしていただきたいと思います。

鳥山氏:
 あの3人は普通の兵士服だったのですが,さすがにそれだと主人公としてどうかということで(笑)。ウェアーをストーリーの序盤でプレゼントすることにしました。着替える楽しみを彼らで味わってもらえればと考えています。地味とは言っても,それぞれ個性的な面々です。配信から1か月,2か月と付き合ってもらうとけっこう良いやつらだと親しみもわくと思いますので,ぜひパーティに入れてみてください。

4Gamer:
 ちなみに少年時代のセフィロスは操作キャラクターとして実装されますか。

市川氏:
 少年のセフィロスは,リリースする予定はありますが,それがいつになるのかは楽しみにお待ちいただければ幸いです。「THE FIRST SOLDIER」編の序盤は,グレン,マット,ルティアの3人を操作してもらう形になると思います。

4Gamer:
 これまでに発表されているストーリー以外に関してお話いただけることはありますか。

鳥山氏:
 キャラクターの深掘りができるストーリークエストというものがあって,各キャラクターの設定をベースにした新規シナリオを用意しています。例えば「FFVII」原作の脚本家の野島一成さんによる小説に,ティファとアバランチのメンバーが出会うエピソードがありまして,そこを元にしたシナリオを用意しています。
 それらの物語を体験してもらえれば,ティファがアバランチのメンバーを失った際の悲しみをより鮮明に感じてもらうことができるので,初代「FFVII」をベースとしたストーリーながらも,「FFVII REMAKE」や「FFVII REBIRTH」の内容をさらに深掘りできるような作りにもなっています。ほかにも季節ごとに配信されるエピソードもあるので,ぜひお楽しみください。

画像集 No.003のサムネイル画像 / [インタビュー]成長途中にある少年時代のセフィロスも登場する「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」。野村哲也氏を交えた制作陣にいろいろ聞いた

4Gamer:
 本作をプレイすれば,小説のようなメディアミックス作品のストーリーも追えるということですね。

鳥山氏:
 「FFVII」全体の細かいところまで取り入れたいと思っています。もちろん既存の設定や関連作で描かれていないところもありますので,細かいキャラクターエピソードにおいてはいくつか完全に新しい物語も制作して配信していく予定です。

市川氏:
 期間限定のシーズンイベントでもキャラクターがシナリオに絡むような内容もありますので,ストーリーモード以外でも「EVER CRISIS」ならではのものを用意しています。

4Gamer:
 最後に,メッセージをお願いします。

市川氏:
 本作は「もうひとつの可能性」と銘打っている通り,過去の原作では表現しきれなかったキャラクターの細かい所作や動きなどを,現代のクオリティで制作したグラフィックスでカットシーンも作り込んでいます。
 シリーズファンの方には,過去に伝えきれなかった部分を感じ取ってもらえればと思います。また初めて「FFVII」にふれる方にはバリエーション豊かに動くキャラクターを見ることで,お気に入りのキャラクターが出てくることがあれば嬉しいです。
 またリリース時には,ご不便をおかけしてしまうこともあるかと思いますが,制作チームとしては皆さまのご意見にしっかりと耳を傾けた運営をしていきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いします。

鳥山氏:
 スマホ向けのタイトルということで,最も身近な「FFVII」シリーズの一作になると思います。クラウド,ティファ,エアリスといったキャラクターと日常をともにして,気楽に遊びたいときでも,ガッツリとゲームを進めたいときでも,自由に楽しんでもらうことができると思います。
 「FINAL FANTASY VII REBIRTH」の発売に向けて予習をしつつ,キャラクターや世界観を楽しめると思いますので,ぜひ本作をプレイしてみてください。

野村氏:
 この一作で「FFVII」シリーズを広く楽しめる作品になっています。ですので「FFVII」シリーズ未体験の方でも一番入りやすい作品だと思います。また,来たるべき「FINAL FANTASY VII REBIRTH」をプレイする上でも本作を知っておいたほうが,よりストーリーで感じるものも多くなると思います。とくに「FFVII REMAKE」で表現した「FFVII」原作の範ちゅうを本作を通して体験してもらえれば良い比較にもなりますし,違った発見ができると思っています。
 そして運営型のゲームですから続けば続くほど,より良く楽しく進化するようになっていくと思いますので,ぜひいっしょに参加して楽しんでいただければ嬉しいです。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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