プレイレポート
バンドのジャムセッションをテーマにした風変わりなパズル「バックビート」のインプレッションをお届け
本作を手がけるのは,スウェーデンのデベロッパであるIchigoichie Gamesだ。音楽をテーマにしながら,リズムアクションではないユニークなゲームを手掛けるデベロッパで,2019年には,DJセッションをテーマとした「ヘキサグルーヴ:タクティカルDJ」をリリースしている。
「ヘキサグルーヴ」は,リアルタイムで進行するゲーム性と,抽象的なグラフィックスがポイントだったが,「バックビート」はターン制で,バンド演奏に青春をかける3人の姿を描く会話パートが挟まるなど,そのテイストはかなり異なるものになっている。体験版をプレイしてみたので,本稿でインプレッションをお届けしよう。
本作の舞台は1995年のアメリカ。エレキベースの演奏が得意な少女ワッツは,高校を卒業後,熱中できるものもないままに日々を過ごしていたが,ファンクバンドの自由な演奏を見て,自分もバンドを結成することを決意する。
内気なキーボード奏者のサトシや,元アメフト選手のドラマーであるジョシュといった仲間を勧誘し,ファンクバンド「パワースライド」を結成した彼女は,ステージでセッションを行ったり,ライバルバンド「ラ・トルメンタ」と対決したりすることになる。
本作の目的は,限られたターン数で,バンドメンバーの4人(体験版で加入するのは3人まで)をゴールへと導くことだ。
メンバーたちにはそれぞれ移動可能なターン数が設定されており,移動可能な歩数は画面左上の「タイムライン」ゲージで表されている。ゲージを使い切ってしまうとそれ以上動けなくなるので,プレイヤーはそれぞれのメンバーの移動ルートを設定し,ゲージを消費しきる前に全員をゴールさせる必要がある。
動けるターン数が限られていることもあり,なるべく少ない手順でゴールを目指したいが,マップ上でウロウロと動き回っている通行人が行く手を阻むこともある。通行人の移動パターンを見極めて,時には遠回りしながらルートを模索していく必要があるのだ。
移動ルートを変えたい場合は巻き戻し機能を使おう。使用回数に制限はないので,いくらでも試行錯誤できる。
また,メンバーの歩幅(1ターンで移動する量)は異なる。1ターンの行動で,ベーシストのワッツとキーボードのサトシは2マス,ドラムのジョシュは6マスも移動するのだ。
この歩幅の違いが頭を悩ませるポイントだ。例えば,長く伸びた通路の途中にゴールがある部屋の入口があった場合,ワッツやサトシなら小回りを効かせて曲がって通れる。しかし,ジョシュの場合そのまま向かおうとすると,勢い余って入り口を走り抜けてしまうことが頻発する。
ここで重要になるのが,“歩幅の調整”だ。メンバーは壁や障害物に当たると止まるので,うまくぶつかりつつ位置を調整していく。歩幅を調節しながら,それぞれのメンバーごとのルートを考えていくのは,本作のパズルの一番面白いところといえるだろう。
さて,ここまでなら「ちょっと風変わりなパズルゲーム」で終わるのだが,本作をさらに個性的にしているのが,“演奏”の要素である。
各ステージでゴールした際には,プレイヤーが決めたルートを3人が移動しながら,手持ちの楽器を演奏するというリプレイが見られるのだが,ここで演奏されるフレーズは,3人が上下左右どの方向へ進んだかで変化するのだ。つまり,クリアしたルートによって,演奏される曲が変わるというわけで,プレイヤーごとの個性が出るのが面白い。
さらに体験版のラストでは,「スタガー/Stagger」という要素が登場する。これはメンバーを移動させる際に,方向転換のタイミングをわざとずらすことで,変化に富んだ演奏が生まれるというもの。
個性的な演奏であればあるほど,画面右下のスタガーゲージが上がり,クリア時の評価が高くなるので,最短でゴールを目指すだけでなく,今後はスタガーも管理して高評価を目指していく必要が出てくるわけだ。パズルゲームでありつつ,最短ルート以外の手順を求めることに意味を持たせているのは,なんともユニークである。
個性的なゲームだけに,システム面の解説が中心になってしまったが,物語も魅力的だ。個性的なメンバーが集まっていく過程や,「バンド名を決めるのに3人の意見が合わない」「家に集まって練習しようとすると,兄弟が邪魔をしてくる」といったバンドを題材にした物語らしいネタが仕込まれている。大きな携帯電話や,ブラウン管テレビが置かれたレンタルビデオショップなど,1990年代アメリカの描写も目を引くポイントだ。
抽象的だった「ヘキサグルーヴ」とは,180度趣が変わった「バックビート」。音楽をテーマとしたゲームといえば,決められた譜面通りにミスなく入力していくリズムゲームが主流であるなか,即興演奏の魅力を表現する試みが面白い。製品版では「3つの音楽リソース,4つの必殺技,操作できる障害物,12のトリック」が登場し,ステージクリアが難しくなっていくという。ちょっとクセのある作品だが,気になる人は体験版をプレイしてみてはいかがだろうか。
「バックビート」公式サイト
「バックビート」Steamストアページ
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