おサルのボールをコロコロ転がす,あのゲームが帰ってきた。セガは2021年10月7日,アクションゲーム
「たべごろ!スーパーモンキーボール1&2リメイク」(
PC /
PS5 /
PS4 /
Nintendo Switch)を発売予定だ。ゴールして嬉しい,落ちると悔しいというシンプルイズベストな内容に,ゲームの面白さが凝縮された本作のプレイレポートをお届けしていこう。
本作は,2001年から展開されているカジュアル系アクションゲーム
「スーパーモンキーボール」シリーズの20周年を記念したタイトルだ。ニンテンドーゲームキューブで発売されたシリーズ初期作品「スーパーモンキーボール」「スーパーモンキーボール2」「スーパーモンキーボール デラックス」が1本になり,
新キャラクターやフォトモードといった新要素が加えられている。今回はNintendo Switch版をプレイしてみたので,購入予定の方は参考にしてほしい。
本作で使用するのはステージを傾ける左アナログスティックと,カメラを操作する右アナログスティックだけ。ボールが落ちないよう,ステージをあちらこちらに傾けてゴールへ導こう。どのキャラクターを選んでも能力は変わらないので,好きなキャラクターを選ぶといいだろう。
もちろん,それぞれのステージはいい意味で
イジワルというか,ミスを誘う作りになっている。気持ち良く転がっていたかと思ったら,いきなり道が途切れて宙に放り出されてしまったり,ピンボールのバンパーのような物体に当たって吹っ飛ばされたり,細い橋をギリギリで渡っていたら急カーブを曲がりきれずに落ちたり……などなど,制作者の手のひらの上で
“転がされている”感が味わえる(モンキーボールだけに)。
急な坂を気持ち良く転がっていると,徐々に道が狭くなっていく
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逆行するベルトコンベアではスピードを落とされてしまう
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巨大な溶岩塊は,触れると吹っ飛ばされてしまう。上下するスピードが妙に速いが,これを遅くするスイッチはスタート地点から逆走した場所にしれっと配置されているのがいやらしい
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ゆらゆらと左右に揺れる床。バランスを崩すと転がり落ちてしまう
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特にバナナの配置は
職人芸を感じさせるものがある。バナナはステージのあちこちに散らばっているボーナスアイテムで,取ると後述する「ポイントショップ」で使うポイントになる。また,バナナを全て回収することでもボーナスポイントをもらうことが可能だ。
このバナナ,
ステージクリアにはまったく関係なく,安全にゴールすることを優先するならば全て無視すればいい。しかし,転がっている最中,無防備にコースに置かれたバナナを見ると「あと少しポイントがあったら,ポイントショップで買い物ができるな……」とか「あそこのバナナさえ取れれば,全回収でポイントがもらえるな……」と魔が差してしまう。もうこうなると,欲望のままバナナの方へ寄り道をしてしまう。そして,開発者が狙ったとおりに奈落の底へ落ちるのである。
本作には残機の概念はなく,ミスからのリトライも素早いものの,プレイを巻き戻すような機能もないので,道中でどれだけ頑張っても,
ゴールできずに落ちてしまえば,最初からやり直しになるのだ(取ったバナナの数はミスしてもそのままなのが救いである)。
「今度こそバナナは無視しよう。安全クリアを優先しよう」と肝に銘じても,ついついバナナに惹かれて奈落に落ちてしまうという流れは,オリジナルが出た2001年頃にもまったく同じことをしていた自分を思い出し,マップ構成の巧みさに称賛の思いを新たにした。
ちなみに,Nintendo Switch版は
ジャイロセンサーに対応しており,本体やJoy-Conを傾けることでも操作が可能だ。プレイ中のスリルや,バナナの誘惑に負けて落ちた時の悔しさが増すので,ぜひ試してみてほしい。
沢山のバナナに喜んでいたら,加速がつきすぎてカーブを曲がれずに落ちてしまう
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プロペラのように回る建造物のあちこちには大きい房のバナナが! 喜んで近寄ると吹っ飛ばされてしまい,まず落とされてしまう
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ステージにはバナナが点在しているが,足元は穴だらけ。下手にバナナを取りに行くと転落間違いなしだ
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もし難しくてクリアできないときは
「おたすけ機能」をONにするといいだろう。ステージの制限時間が2倍になるのに加え,[R]ボタンを押している間だけゲームの進行がスローになる。行く手を阻むトラップ,狭い通路や急カーブといった難関にじっくり対応できるため,かなり難度が下がる印象だ。本機能は特にロックされているということはなく,ゲームの最初から使えるため,困った時は気軽に使ってしまおう。
それでもダメな場合は
「クリアしたことにする」コマンドを使う手もある。このコマンドにはそれなりのポイントが必要になるが,どうしてもダメだった場合はひとまず飛ばして先へ進み,後日再チャレンジするのもいいだろう。
「おたすけ機能」をONにすれば,[R]を押している間,ゲームの進行がスローになる
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本格的に心が折れたら「クリアしたことにする」コマンドを使うという手もあるが,2000ポイントとそれなりに高額だ
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稼いだポイントは
「ポイントショップ」で使うことができる。新たなキャラクターと,これを飾る帽子や服といったカスタマイズアイテム,「フォトモード」用の背景,そして新たなゲームモードが販売されており,ゲームがより楽しくなる。
キャラクターは後期作のように能力値があるわけではなく,
純粋に操作キャラクターとバナナの見た目が変わるのみ。「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のソニックならバナナがお馴染みのリングになり,「龍が如く」の桐生一馬はバナナがドリンク剤「スタミナンX」になるといった具合で,ちょっとした気分転換になるだろう。カスタマイズアイテムの帽子や服,
「フォトモード」の背景を買い込んで記念撮影としゃれ込むのも面白い。
「ポイントショップ」ではキャラクターやカスタマイズアイテムなどを買える
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コラボキャラクターとして「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のソニックが登場
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ソニックを使うと,収集アイテムのバナナがリングになる
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「龍が如く」の桐生一馬に,フォトモードの背景を合わせて1枚。コラボキャラクターには帽子などのカスタマイズアイテムを使えないのが残念
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桐生の場合,バナナは「スタミナンX」になる。ゲームの雰囲気がガラッと変わるのが面白い
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特に印象的なのが
「ダークバナナモード」「ゴールデンバナナモード」という2つのゲームモードだ。必死でバナナを集める本作だが,「ダークバナナモード」だけはバナナに触れると即座にアウトになる。おまけにコース上には無数のバナナが配されているため,ギリギリのところを走り抜けなければならない。「おたすけ機能」のスロー化を使ってもなお難しかった。
そして「ゴールデンバナナモード」では,「ダークバナナモード」とは逆に,コース上のバナナを全て集めなければならない。制限時間が短い上に,動く床などで不安定なコースにバナナが満遍なく敷き詰められていることもあり,こちらも難しい。
どちらも腕に自信がある人向けのコンテンツで,結構なやり応えを感じることができるだろう。
「ダークバナナモード」は紫色のバナナが配置されている。触れただけで即ゲームオーバーだ
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「ゴールデンバナナモード」は全てのゴールデンバナナを集めなければならず,こちらも高難度。筆者は即座に心が折れて「おたすけ機能」を使ったが,それでも難しかった
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「スーパーモンキーボール」シリーズではお馴染みの
パーティーゲームも健在で,懐かしの競技を再び楽しむことができる。皆でコースを走る「モンキーレース」,ライバルにパンチを浴びせてリングから落とす「モンキーファイト」,おサルのボールでピンを倒す「モンキーボウリング」,野球盤風の「モンキーベースボール」,懐かしいガンシューティングの「モンキーショット」,ミサイルや機銃で空中戦する「モンキードッグファイト」など,
実に多彩な遊びが用意されている。
ほとんど全ての競技が本編と別物のシステムで作られており,サービス精神の暴走っぷりが実にセガらしい。こちらは複数人プレイに対応しているため,Switchを持ち込んでJoy-Conをおすそわけして楽しむのもいいだろう。
「モンキーレース」は皆でサーキットを走る。爆弾やブラックホールなど,さまざまな妨害アイテムを使いこなして勝利を掴もう
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ライバルにパンチを浴びせてリングから突き落とす「モンキーファイト」は常に乱戦気味。このリングでは,端にパンチを強化するアイテムが出るため,危険を冒して取りに行くか,安全に真ん中に留まるかが悩ましい
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「モンキーボウリング」では,レーンが動くくらいは当たり前。ボールを転がした後でスピンを掛けて進路を変えられるので,なんとか対応しよう
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「モンキーベースボール」は野球盤ルール。ヒットのポケットを狙ってボールを打つ
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ガンシューティング「モンキーショット」。もはや本編とは何の関係もないが,昔懐かしいジャンルが入っている辺り,老舗セガらしいサービスだ
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「モンキードッグファイト」はステージを自由に飛び回り,ミサイルと機銃で空中戦する
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基本となるゲームシステムとステージ構成が練り込まれているので,時代を越えた面白さが感じられる「スーパーモンキーボール」シリーズ。本作はシステムがベーシックな初期作をリメイクしているだけに,
初めてプレイする人でもハマれるくらいにシンプルであり,そうした意味ではシリーズの魅力を凝縮した,老若男女を問わず楽しめる作品と言えるだろう。
システムが複雑化したゲームも多い昨今,本作のような作品はある意味で貴重である。今回はリメイクタイトルとなっているが,新作にも期待したいところだ。