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北京五輪でも注目のカーリングってどんな競技? Switch用「みんなのカーリング」のプロデューサーと,元日本代表の山口剛史選手に聞いた
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印刷2022/01/13 12:00

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北京五輪でも注目のカーリングってどんな競技? Switch用「みんなのカーリング」のプロデューサーと,元日本代表の山口剛史選手に聞いた

 イマジニアは2022年2月10日,Switch用ソフト「みんなのカーリング」をリリースする。本作は,氷上で行うウィンタースポーツ・カーリングを忠実に再現しつつも,Joy-Conを使った簡単操作で手軽に楽しめるように仕上げた,日本カーリング協会公認のゲームだ。

画像集#001のサムネイル/北京五輪でも注目のカーリングってどんな競技? Switch用「みんなのカーリング」のプロデューサーと,元日本代表の山口剛史選手に聞いた

 カーリングといえば,2018年の平昌オリンピックに日本代表チームが男女とも出場を果たし,女子代表のLS北見(現ロコ・ソラーレ)が銅メダルを獲得したことなどから,大きな注目を集めた。そのロコ・ソラーレが,2月4日より開催される北京オリンピックにも出場するということで,今回は最初からガッツリ観戦して応援したいという人もいるかもしれない。

 しかし競技としてのカーリングには,漠然としたイメージしかないという人も少なくないのではないだろうか。例えば,同心円で示された目標に向けてストーンを投げ,より円の中心に近付けたチームが得点できるとか,投げられたストーンの前をデッキブラシのようなもので掃いてライン(軌道)やスピードを変える……といったようなことは知っていても,具体的な試合の進行や,どこに注目すれば観戦を楽しめるのかといったことまで把握している人はあまり多くないように思える。かくいう筆者も,把握できていない側の人間だ。

 そこで今回,カーリング SC軽井沢クラブの山口剛史選手と「みんなのカーリング」のプロデューサーを務めるイマジニアの保足直久氏に,本作の紹介を交えつつ,カーリングのルールや基本的な戦略・戦術,そして観戦する際の見どころを教えてもらった。

左から,保足直久氏(イマジニア,みんなのカーリングプロデューサー)と,山口剛史選手(カーリング SC軽井沢クラブ所属,平昌オリンピック日本代表)
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「みんなのカーリング」で学ぶカーリングの基本と観戦における見どころ


 カーリングは,4人1組の2チームがハウス(同心円状の目標)に向かってストーンを投げ,得点を競うスポーツである。試合は複数のエンドで構成され,1エンドでは先攻チームと後攻チームがそれぞれ8投ずつ交互にストーンを投げる。そして全部のストーンを投げ終えたとき,もっともハウスの中心に近いストーン(ナンバー1ストーン)を置いたチームが勝ちとなり,そのエンドで得点できる。得点となるのは,相手チームの一番中心に近いストーンよりさらに近い自チームのストーンの数だ。

 なおオリンピックや世界選手権,日本選手権などでは1試合で10エンドを行うが,そのほかのワールドツアーやU21では8エンド,ローカル大会などでは4〜6エンドとなっている。全エンドが終了した時点で,多く得点しているチームの勝利だ。

この場合,ハウスの中心に一番近い赤チームのストーンよりも,黄チームのストーン2つのほうが中心に近いため,黄チームが2点獲得する
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カーリングブラシを使ったスウィープのやり方やストーンの投げ方など,本作のゲームとしてのチュートリアルも,もちろんある
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 カーリングを楽しむうえで押さえておきたいポイントの1つが,“最後の1投を持っている後攻が圧倒的に有利”であること。というのも,極論を言えば後攻は先攻が置くストーンを弾き飛ばしていって,最終エンドの最終投てきでナンバー1ストーンになればいいからだ。
 そのためカーリングでは,あるエンドで負けた(得点できなかった)チームは,次のエンドでは有利な後攻になる。先攻のときは,次のエンドで後攻を取るために(少ない得点で)相手に勝たせて,後攻で大量得点を狙うといった駆け引きも重要になってくるのだ。

山口剛史選手(以下,山口選手):
 先攻のときは相手に最低限の1点を取らせて,次のエンドの後攻を取る。そして後攻のときは,2点以上を狙って相手との得点差を付ける。そうやって少しずつ得点差を広げていくのが,カーリングのセオリーなんです。あえて1点を取らせて,その後に2点を取り返すという考え方は,カーリングならではかもしれませんね。その一方で,先攻がリスクを取って攻めに出て得点する(スチール)のもアリです。後攻で2点取るか,または先攻でスチールするかを3回成功させたら,そのチームが試合で勝つ確率はかなり上がります。

 ちなみにリアルのカーリングだと,1エンドで後攻が2点以上を取る確率は40〜50%というデータがあります。1試合10エンドだと,だいたい5回後攻が回ってきますから,そのうち2点取れるのは2〜3回。ロコ・ソラーレでも40%程度です。世界のトップレベルでも,1エンドで2点取るのはそれくらい難しいんです。


第1エンドの先攻・後攻は,公式大会だとストーンを投げてよりハウスの中心に近くに置いたチームが選べるが,本作ではコイントスで決める。なおコイントスは,簡易ルールとしてリアルの試合でも使われているとのこと
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 また,「フリーガードゾーンルール」についても押さえておきたい。これは両チーム合わせて5投を投げ終えるまでは,フリーガードゾーン(下図参照)上にある相手のストーンをプレイエリアから弾き出してはいけないというもの。つまり5投めまでは,後攻が有利なライン取りをできないよう,先攻が意図的にフリーガードゾーンにストーン(ガードストーン)を置けるのである。

画像にある黄色の部分がフリーガードゾーン
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山口選手:
 カーリングの場合,各エンドの最後の1投に注目が集まりがちなんですが,実はそこに至るまでのセットアップ,すなわち序盤で,Aチームがここにガードストーンを置くと,Bチームがこう来るだろうから,Aチームはあらかじめこうしてくるだろう……といった流れを把握し,両チームがそのエンドで何を狙っているのかを推測できるようになると,より面白く観戦できるんです。そういった先を読むセットアップは,将棋に近いイメージですね。僕も最近知ったんですが,四間飛車の戦法は考え方が近いです。

 基本的なルールを踏まえたうえで,山口選手と保足氏による解説を交えた対戦の第1エンドを見ていこう。試合序盤,先攻の保足氏は,ガードストーンを置いて山口選手のライン取りを妨害する。
 一方,山口選手はガードストーンを回り込むようにストーンを投げるカムアラウンドを駆使して,積極的にハウスの中心を狙っていく。

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保足直久氏(以下,保足氏):
 先攻の僕は,このエンドで相手に1点だけ取らせて負けたいんで,序盤ではハウスを狙わずにガードストーンをいくつか置いていきます。わざと負けることにより,次のエンドで後攻になって最後の1投を投げられるので,2点3点の獲得が狙えるわけです。

山口選手:
 後攻の僕は保足さんの置いたガードストーンを弾き飛ばしたいところですが,フリーガードゾーンルールがあるので,両チーム合わせて5投めが終わるまでそれができないんです。

 そして保足氏が3投め(両チーム合計5投め)でナンバー1ストーンを置くと,フリーガードゾーンルールの制約がなくなった山口選手が中央のガードストーンを弾き飛ばす。

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山口選手:
 後攻は有利なんですけれども,それゆえ先攻に得点させたくないんです。今,先攻のストーンがナンバー1なので,少しでも自分に不利な状況を崩して,有利にならないと。
 本当なら,保足さんのナンバー1ストーンを弾き飛ばしたいところですが,この状況では自分のストーン2つが密着しているので厳しいですね。

 さらに保足氏がハウスの中心を狙ってストーンを置き,先攻後攻合わせて4つのストーンが密着。ちなみに本作ではナンバー1ストーンがどれなのか試合中でも確認できるが,リアルのカーリングでは,このシーンのように複数のストーンがハウス中央に集中した場合,どれがナンバー1なのか確信が持てなくなることもあるという。最終的にどれがナンバー1ストーンになったのかは,両チームとも8投ずつ投げ終わったあとに,コンパスを使って正確な距離を測定して判定する。

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山口選手:
 リアルのカーリングだと,どちらのストーンがナンバー1か分からないこともよくあります。そのときは,状況に応じて「守りに行く」「絶対得点できるから攻める」といったように方針を決めるんです。

 そして山口選手が,ストーンの密集部分を狙って強いショットを放ち,先攻後攻それぞれのストーンを1つずつ弾き飛ばしつつ,ナンバー1ストーンを置いて形勢を逆転。なお山口選手によると,弾き飛ばされるストーンの軌道は,かなりリアルに近いそうだ。

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 ここからは相手に1点取らせて次のエンドで後攻を取りたい保足氏と,可能なら2点以上得点を重ねて試合を有利に運びたい山口選手の駆け引きに。一時は山口選手が「75%の確率で2点取れます」と宣言する状況となった。しかし山口選手のミスに乗じて,本作の挙動を知り尽くしている保足氏が敢えて弱いショットを投げてスウィープで距離を伸ばすテクニックなどを披露。当初の目論見とは異なる結果だが,保足氏が見事スチールで1点を獲得し,エンド終了の運びとなった。

山口選手が「75%の確率で2点取れる」と宣言したシーン
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山口選手に1点は取らせたいが,2点にはしたくないので,保足氏は後攻のストーンをうまく弾き出すべくラインを慎重に決めていた
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山口選手も負けじと2点取れる状態をキープ
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山口選手の7投め。少し強めに投げてしまったので,2点獲得が難しくなった
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山口選手の8投め後の判定にて,僅差で保足氏のストーンがナンバー1に
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保足氏:
 リアルのカーリングだと,リンクの状況に応じてストーンの滑りやすさや曲がりやすさが変わります。また,ハック(蹴り台)を蹴るときにストーンの軌道を曲げるテクニックもありますが,かなり難度が高く素人にはまずできません。
 しかし,このゲームにはそうした要素がなく,ストーンの軌道などゲームの挙動を把握してしまえば,基本的に狙った位置にストーンを投げられるので,リアルのカーリングより戦略・戦術性を問われるんです。もともとカーリングは「氷上のチェス」と表現されますが,本作はさらにチェスや将棋などに近づいていると言えますね。

 また,狙った位置にストーンを投げられるので,リアルのカーリングよりもハウスにストーンが集中しやすくなっています。そのため,3点以上の得点を指す「ビッグエンド」も発生しやすいですし,場合によっては先攻が4〜5点獲得することもあるんです。リアルのカーリングだったら,会場が大きく盛り上がる場面ですね。

山口選手:
 リアルのカーリングで3点以上取れるのは,主に相手がミスしたときです。例えば邪魔なストーンを弾き飛ばそうとして,失敗して横をすり抜けてしまったときとか。あとは,作戦的に相手のショットが決まらないと先がないような場面を次々に作り出し,失敗させて自分たちのチャンスに変え,3点,4点を取っていくというケースもあります。


本格的なカーリングを再現しつつ,遊びやすくアレンジした「みんなのカーリング」


 「みんなのカーリング」には,CPUと対戦し世界一を目指す「ワールドチャンピオンシップ」,プレイヤー同士が対戦する「VSカーリング」「詰カーリング」「バラエティゲーム」といった4つのモードがある。

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 このうちワールドチャンピオンシップとVSカーリングは,エンド数を変更できたり,すべてのチームメンバーを操作する「フルモード」と,チームのリーダー的存在・スキップの操作がメインとなる「スキップモード」が用意されていたりと,ゲームとして遊びやすい設計になっている。

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 詰カーリングは,提示されたお題をカーリングのルールに則ってクリアしていくパズルだ。難度は3段階あり,初級や中級には試合中によく遭遇するシチュエーションも登場し,それぞれに適切な手段やテクニックなどを学べるという実用的な側面もある。
 上級ではさらに難しいお題が登場するが,これは世界のトッププレイヤーがスーパーショットを決めたときのシチュエーションなどをゲーム的にアレンジした内容とのことで,実用性よりもパズルとしての歯応えを楽しむものになる。
 そのほか,ドローモードでのショットの強弱を練習する「デリバリートレーニング」もできる。

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 バラエティゲームには,カーリングをベースにした2種類のカジュアルゲームを用意。いずれも,まだカーリングのルールを覚えるのが難しいというお子さんでも遊べる内容だが,ショットの強弱やストーンを弾き出す角度などを自然に覚えられるようになっているという。

ペンギンプール
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陣取りBINGO
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 以上が「みんなのカーリング」の概要と,カーリングのルールや基本的な戦略・戦術,そして観戦する際の見どころとなる。北京オリンピックでロコ・ソラーレを応援しようとと考えている人は,一度「みんなのカーリング」に触れて,カーリングへのさらなる理解を深めてみてはどうだろうか。

 最後に,本作に注目している人に向けて,両氏から寄せられたメッセージを掲載して,本稿の締めとしよう。

山口選手:
 「みんなのカーリング」で学んだり培ったりした戦略・戦術は,リアルのカーリングでも生かせると思います。またカーリングには,「どの角度でストーンを当てたら,邪魔なストーンがどの方向に飛ぶか」「当てたストーンをどこで止めるか」といったビリヤード的な要素もあるんですが,それがチャンピオンシップや対戦だけでなく,お子さんでも遊べるバラエティゲームにも反映されているのがとてもいいですね。

保足氏:
 カーリングは,1試合10エンドを戦う競技です。その過程で1〜2点差を付けられようとも,残りのエンド中,どこの後攻で2点を取るか,それとも先攻でスチールするかということを積み重ねることによって,点差を縮めて逆転できます。そうした理解を深めることによって,10エンドある試合をようやく楽しく観戦できるようになるんです。そこに達するまでの最初の第1歩が,「みんなのカーリング」だと捉えています。カーリングに関心のある方は,ぜひよろしくお願いします。

「みんなのカーリング」公式サイト

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