レビュー
Zen 4世代の新ハイエンドCPUの実力をゲームで検証。第12世代Coreを上回れるのか
AMD Ryzen 9 7950X,Ryzen 9 7900X
2022年9月26日,AMDのデスクトップPC向け新世代CPU「Ryzen 7000」シリーズ(開発コードネーム:Raphael)のレビューが解禁となった。国内発売は9月30日19:00の予定で,ラインナップと税込のメーカー想定売価は以下のとおり。
- Ryzen 9 7950X:16コア32スレッド,11万7800円前後
- Ryzen 9 7900X:12コア24スレッド,9万2500円前後
- Ryzen 7 7700X:8コア16スレッド,6万6800円前後
- Ryzen 5 7600X:6コア12スレッド,4万9900円前後
本稿ではファーストインプレッションとして,Ryzen 7000シリーズのラインナップから,上位モデルである「Ryzen 9 7950X」と「Ryzen 9 7900X」のゲーム性能をチェックしたい。
CPUのアーキテクチャに関する詳細は,別途,解説記事を掲載しているので,そちらも合わせて参照してほしい。
前世代であるRyzen 5000シリーズは,高いゲーム性能によってゲーマーから好評を博したものの,Intelが第12世代Coreプロセッサを投入すると,性能面では若干のリードを許すようになった。それに対して,新しい「Zen 4」アーキテクチャに基づくRyzen 7000シリーズは,Ryzen 5000シリーズと比べて最大29%の性能向上を実現したという。Ryzen 7000が,競合を上回るゲーム性能を獲得したのかが今回の見どころだ。
なお,ゲーム以外での性能やオーバークロック関連,またRyzen 7やRyzen 5などの下位モデルに関しては別の機会に取り上げたい。
新しくなったSocket AM5の使い勝手
まずは,Ryzen 7000シリーズの導入を考えている人が気になりそうな情報を,冒頭でまとめておこうと思う。気がかりな点は,新しくなったSocket AM5プラットフォームと,DDR5メモリの2点だろう。
Ryzen 7000シリーズからは,ソケットが従来のμPGAタイプから,Socket AM5では1718ピンのLGAタイプへと切り替わった。要は,Intelが採用しているLGAソケットと良く似た機構だ。
ソケットの使い方は,IntelのLGA1700などとほぼ変わらない。ノブでクランプを外して,CPUをソケットに装着後,クランプで固定する方式だ。Socket AM4までのPGA型は,外すときにCPUクーラーに貼り付いてCPUもろとも抜けてきたり,そのときにピンを折ってしまう事故が珍しくなかったが,Socket AM5ではそういうことは起こらない。ソケット側のピンを傷めないよう注意しさえすればいいだけなので,Socket AM4よりも安心して使えるプラットフォームで,歓迎する人は多いだろう。
また,既報のとおり,CPUクーラーはSocket AM4対応品と互換性があり,マザーボードのソケット上下には,Socket AM4と同寸の穴と取付具が装備されていた。CPUの高さもSocket AM4と揃えてるようで,問題なく既存のクーラーが利用できる(※Socket AM4用クーラーがすべて使えることを保証するものではない。クーラーメーカーの互換性情報を確認してほしい)。
というわけで,Socket AM5自体は,PC自作の経験があるゲーマーなら,違和感なくすんなりと使えそうなので,あまり心配はないだろう。
AMDは,同社が提唱するメモリプロファイル規格である「EXPO Technology」(以下,EXPO)に対応するメモリモジュールの利用を推奨している。EXPOに対応しているメモリモジュールならば,モジュールに書き込まれているオーバークロックプロファイルをマザーボードのUEFI設定で適用することにより,容易にメモリのオーバークロックが行えるという。Intelの提唱する「XMP」と,同じようなものだ。
なお,Ryzen 7000では,内部ファブリックとメモリコントローラの動作クロックから,DDR5-6000設定が最適なメモリクロックであると,AMDは述べている。公式には,DDR5-6000設定はオーバークロックになるので,AMDおすすめの性能が得られるメモリクロックで使いたいなら,EXPO対応モジュールが望ましいということになる。
ちなみに,AMDがデスクトップPC向けのメモリプロファイル規格を提唱したのは,EXPOが初ではない。10年前の2012年に,Socket AM3+に対応するDDR3メモリモジュールに向けて「AMD Memory Profile」(AMP)という仕様を提唱したことがあった。
AMP対応メモリモジュールは,いくつか市販されたのだが,いかんせん当時はAMD製CPUのシェアが大きくなく,市場ではIntelのXMP対応モジュールが主流となってしまう。AMPはいつの間にか姿を消してしまい,Intelが提唱するDDR4メモリモジュール向け規格「XMP 2.0」に,Socket AM4が対応するという形になったわけだ。
こうした経緯があるので,EXPOが今後どうなるのかは,さっぱり予想できない。Intelは,DDR5メモリ向けに「XMP 3.0」を先行して導入しているので,AMPと同じようにEXPOがいずれ消えていくという可能性もある。ただ,AMP登場の頃と事情がまったく違うのは,現在はデスクトップPC市場においてRyzenが大きなシェアを獲得しているという点だ。Ryzen 7000シリーズでシェアを維持,ないし拡大できれば,EXPOが生き残っていく可能性はあるだろう。
ユーザーサイドから見ると,メモリプロファイル仕様が複数あるのは歓迎できる状況ではないのだが,いまのところRyzen 7000シリーズで高速なメモリモジュールを使いたいなら,EXPO対応を表明している製品を購入するのが無難だろう。
比較対象はRyzen 9 5950XとCore i9-12900K
冒頭で述べたように,今回はRyzen 7000シリーズから,Ryzen 9の2製品でゲーム性能をチェックする。
比較対象としては,Ryzen 5000シリーズの最上位モデルである「Ryzen 9 5950X」と,第12世代CoreプロセッサのCore i9から「Core i9-12900K」を用意した。テストに用いるCPUの主な仕様を表1にまとめておこう。
テストに使用した機材は表2のとおりだ。マザーボードは,レビュワー向けにAMDが提供したASUSTeK Computer製「ROG Crosshair X670E Hero」を使用している。マザーボードのBIOSおよびチップセットドライバは,レビュワー向けに配布されているバージョンだ。
また,メモリクロックおよびメモリタイミングは,AMDがレビュワーに推奨しているDDR5-6000設定を,EXPOのプロファイルで設定している。必然的に,同じDDR5メモリに対応するCore i9-12900Kとは,メモリモジュールやメモリ設定が異なるので,そこも注意してほしい。
CPUクーラーには,ASUSTeK Computer製の液冷クーラー「ROG Ryujin II 360」を使用した。時間的な都合もあり,今回はCPUのオーバークロックは行わず,ゲームというCPU負荷が比較的軽いワークロードでのテストなので,ファンおよびポンプの動作設定は,「標準」プリセットとしている。
実行するテストは,4Gamerベンチマークレギュレーション25から,「3DMark」とゲーム性能をテストする7タイトルを選んだ。ゲーム側のグラフィックス設定は高負荷を選択して,解像度は3840×2160,2560×1440,1920×1080ドットの3種類であるとした。
前世代に対して確実にゲーム性能を上げてきた
まずは,3DMark(Version 2.22.7359)の結果から見ていこう。グラフ1は,3DMarkのDirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアだ。
総合スコアはGPU性能が占める割合が高く,中でも描画負荷が高いFire Strike UltraやFire Strike Extremeは,ほぼ横並びと称していいだろう。描画負荷が軽いFire Strikeでは若干の差が見られ,僅差ながら上位からRyzen 9 7950X,Ryzen 9 5950X,Ryzen 9 7900Xの順となっている。そうなった要因を個別スコアで見ていくことにしよう。
グラフ2は,Fire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアだ。
Graphics testはGPU性能を見るテストであるから,CPUの影響はごく小さいことになっているが,GPUに対するコマンド発行効率などが若干のスコア差に現れることもある。GPUのスループットが最も高くなるFire Strikeに注目すると,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900XのスコアがRyzen 9 5950XとCore i9-12900Kに比べてわずかだが低いのは気になるところだ。
なぜそうなったのか,このテストだけだと推測が難しいが,UEFIやWindows,ドライバソフト類の最適化が不十分ということも原因になる。仮にそうだとすれば,このわずかな差はいずれ解消するかもしれない。
Fire StrikeのCPU性能テストとなる「Physics test」のスコアがグラフ3だ。
グラフのとおり,Ryzen 9 7950Xがトップとなり,Core i9-12900Kを上回った。AMDは,前世代に対し最大29%の性能向上をアピールしているが,Physics testを平均すると,Ryzen 9 7950Xのスコアは,Ryzen 9 5950Xの1.15倍で,29%には届かなかった。ただ,12コアCPUであるRyzen 9 7900Xのスコアが,16コアのRyzen 9 5950Xに対して1.05倍となっているところは,注目できる。Ryzen 7000世代における動作クロックとCPUコア性能の高さが,ここではCPUコア数の差を覆したわけだ。
グラフ4は,GPUとCPU両方に負荷をかけたときの性能を見る「Combined test」のスコアをまとめたものだ。
Combined testは,少しスコアばらつきやすいテストだが,描画負荷が高いFire Strike Ultra/Extremeだと,Ryzen 9 5950Xがわずかに高いのに対して,Fire Strikeでは,Ryzen 9 7950Xが大きな差を付けてトップになった。ちなみに,Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xのスコア差は約1.2倍で,CPUコア数の差がスコアに出ているという印象だ。Ryzen 9 5950Xのスコアがそこそこ高いのも,CPUコア数が効くからだろう。
続いては,3DMarkのDirectX 12テストとなるTime Spyの総合スコア(グラフ5)を見てみよう。
描画負荷が高いTime Spy Extremeは,ほぼ横並び。一方のTime Spyは,Core i9-12900Kが頭ひとつ高いスコアとなった。その理由を個別スコアで見ていこう。
Time SpyのGPUテストとなるGraphics testのスコアをグラフ6に,Time SpyのCPUベンチマークとなるCPU testのスコアをグラフ7にまとめた。
Graphics testはほぼ横並びなので,総合スコアのばらつきに影響を与えていないと推測できる。一方,CPU testでは,Time Spy ExtremeでRyzen 9 7950Xが,Time SpyだとCore i9-12900Kが有意な差をつけてトップと,2つのテストで異なる結果を残している。
その理由だが,Time Spy ExtremeとTime Spyでテスト内容が異なるためだ。Time Spy Extremeでは,命令セットとして「AVX2」を使用するのに対して,Time Spyでは「SSE3」のみを使用する。したがって,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xは,AVX命令セットの性能が競合より高い一方,SSE世代の命令セットにおける性能は,Core i9-12900Kに及ばないという命令セットごとの性能差がスコアに現れていると解釈できる。
ちなみに,Ryzen 9 7950Xのスコアは,Ryzen 9 5950Xの約1.39倍で,AMDがアピールする29%を超えるスコアを叩き出した。よって,AVX命令セットの実行性能自体が,前世代よりもかなり向上しているのではないかと推測できる。
なお,既報のとおりRyzen 7000シリーズではRyzenとして初めて「AVX-512」命令セットを実装した。Time Spy Extreme標準設定ではAVX-512のテストは行われないが,カスタム実行でAVX-512のテストも行えるようになっている。
AVX-512はまだゲームで多用されているとはいえないので,今回は見送ったが,続編ではAVX-512の実効性能についても調べてみたい。
話を戻すと,3DMarkの結果を見る限り,CPU性能が向上していることは確かなようだ。だが,それによってゲーム性能が向上しているかまでは,判然としない。そこはゲームで調べてみるしかないだろう。
というわけで,ゲームテストの1本めであるFar Cry 6の結果から見ていこう。グラフ8〜10がグラフィックス品質「最高」設定の結果である。
描画負荷が高い3840×2160ドットは,ほぼ横並びと見ていいだろう。2560×1440ドットはRyzen 9 5950Xだけが,平均および最小とも有意に低い一方で,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xは,Core i9-12900Kにかなり迫るフレームレートを記録した。1920×1080ドットも同傾向で,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xは,Ryzen 9 5950Xに比べるとフレームレートを大きく伸ばしたが,Core i9-12900Kには一歩及ばずといった格好だ。
Far Cry 6は,第12世代Coreプロセッサが高いフレームレートを残しやすいタイトルなので,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900XがCore i9-12900Kに及ばなかったとはいえ,ここまで迫れればまずまず,といっていのではなかろうか。とくに,最小フレームレートがRyzen 9 5950Xに比べてかなり伸びているので,プレイの体験は向上しているはずだ。
続いて,バイオハザード ヴィレッジのグラフィックス品質「限界突破」におけるフレームレートをグラフ11〜13にまとめた。
解像度により結果がばらついており,平均フレームレートを見ると,3840×2160ドット時はRyzen 9 5950Xがわずかな差でトップ。2560×1440ドット時は,Ryzen 9 7950Xがトップで,1920×1080ドット時は,またRyzen 9 5950Xとなっている。3840×2160ドット時は,GPU性能がボトルネックになるので除外するとしても,明確にどのCPUが有利かはよく分からない結果になった。スコア差は,実際にゲームを操作して行うテストゆえのばらつきという気もするが,バイオハザード ヴィレッジにおいては,Ryzen 7000シリーズに明確な性能向上は認められなかったという結論でよかろう。
グラフ14〜16は,Call of Duty: Warzone(以下,CoD Warzone) Season 2の高負荷設定におけるフレームレートだ。
3840×2160ドット時は,Core i9-12900Kの平均フレームレートがやや低いが,Ryzen同士はほぼ横並び。2560×1440ドット時は,Ryzen 9 7950Xの平均フレームレートがやや低めで,Core i9-12900Kがやや高い。1920×1080ドット時になると,Core i9-12900Kが頭ひとつ高い平均フレームレートを記録した。
前世代比で見ると,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xは平均フレームレートこそ伸びていないものの,最小フレームレートが低解像度では有意に高いので,プレイの快適さは増していると考えられる。
Fortniteのグラフィックス品質「ウルトラ」設定におけるフレームレートをグラフ17〜19にまとめた。
3840×2160ドットは,ここでもほぼ横並びだ。2560×1440ドットもほぼ横並びだが,強いて言うならCore i9-12900Kがわずかに高めのフレームレートおよび最小フレームレートを記録し,1920×1080ドット時は,有意にCore i9-12900Kが高い平均および最小フレームレートを記録した。ただ,1920×1080ドットにおいて,Ryzen 9 7950X,Ryzen 9 7900Xは,Ryzen 9 5950Xに対して平均および最小フレームレートの有意な向上が見られており,Core i9-12900Kに近い結果を残している。その点では,Far Cry 6に似た傾向と言えそうだ。
続いて,Borderlands 3における「ウルトラ」設定の結果をグラフ20〜22で見てみよう。
3840×2160ドットと2560×1440ドットはほぼ横並びと評していいだろう。1920×1080ドットもほとんど横並びだが,強いて言うならRyzen 9 5950Xがわずかに高い平均および最小フレームレートを記録した。Ryzen 9 5950Xや競合と比べて,Ryzen 9 7950X,Ryzen 9 7900Xに有意な性能向上は見られない。
グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
3840×2160ドットはほぼ横並び。2560×1440ドットと1920×1080ドットでは,Core i9-12900Kがわずかに高い結果だ。しかし,低解像度のスコアを見ると,Ryzen 9 5950Xに対してRyzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xは確実にスコアを伸ばしている。とくにRyzen 9 7950Xは,Core i9-12900Kに肉薄するスコアを記録した。Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xで,有意な性能向上が見られたタイトルと言っていい。
ちなみにRyzenは,Zen 3世代になってFFXIV暁月のフィナーレ ベンチでIntel勢を上回るようになったが,第12世代Coreプロセッサでは逆転された。Zen 4世代で逆転なるかと期待していたのだが,そうはならなかった。とはいえ,かなり近いスコアを記録するまで性能を伸ばしたのは確かだ。
グラフ24〜26には,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめておく。平均フレームレートはともかく,Ryzen系は,競合に比べると最小フレームレートがやや低いという傾向は,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xでも変わってないことが確認できるだろう。
ゲームテストの最後として,Project CARS 3の高負荷設定における結果をグラフ27〜29で見ていこう。
どの解像度でも,Core i9-12900Kがやや高い平均および最小フレームレートを残している。ただ,とくに低解像度では,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xが,Ryzen 9 5950Xに比べて有意に高いフレームレートを記録した。Far Cry 6に近い結果で,Ryzen 9 7950Xになると,Core i9-12900Kに肉薄するフレームレートを残している。
以上,ゲームによるテストを見てきたが,贔屓目に見ても,Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900Xが競合を上回るゲーム性能を獲得したとは言えない。しかし,これまでIntel製CPUが有利だったFar Cry 6やProject CARS 3といったタイトルで,Ryzen 9 5950Xに対して確実なフレームレートの向上を見せており,全体を見れば競合と肩を並べる程度のゲーム性能が得られるようになったと言えよう。
また,Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xの間には,ゲーム性能において大差がないので,ゲームだけを考えればRyzen 9 7900Xのほうが価格対性能比がいいことになる。ゲームにおいて16コアと12コアの差が効いてくることはほとんどないうえ,最大クロックにも大差がないので,これはそうなって当然と言うところか。
消費電力は増えたが,電力対性能比には優れるRyzen 9 7950X/7900X
最後に,ゲームプレイ中の消費電力も見ておこう。ベンチマークレギュレーション25に準拠した方法で,アプリケーション実行中におけるCPU単体の最大消費電力と,無操作時にディスプレイ出力が無効化されないよう設定したうえで,OSの起動後30分放置した時点(以下,アイドル時)の計測結果をまとめたのが,グラフ30だ。
Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xの,ピーク時消費電力に当たる「Max Socket Power」(PPT)は230Wで,Core i9-12900Kに近い値となった。それでも,最大消費電力だとCore i9-12900Kが頭ひとつ,アプリケーションによっては大幅に高い消費電力を記録した。Core i9-12900Kは,Far Cry 6時で238W台を記録したのに対して,Ryzen 9 7950XはBorderlands 3時の208W台,Ryzen 9 7900XもBorderlands 3時の187W台が最大値である。せいぜい150W以内に収まるRyzen 9 5950Xに比べると,消費電力は大きく増えたが,それでも競合よりは低い水準で抑えているようだ。
一方,アイドル時の消費電力は,Core i9-12900Kが3Wを切るのに対して,Ryzen勢は30W近い消費電力を記録する。Ryzen 7000シリーズになっても,この点はとくに改善が見られないか,むしろわずかにアイドル時の消費電力は大きくなっているようだ。それだけ第12世代CoreプロセッサのE-coreが低消費電力ということかもしれないが。
続くグラフ31に,ゲーム実行時の典型的な消費電力を示す消費電力中央値をまとめている。
Ryzen 9 7950Xは,Fortnite時に100W台,Ryzen 9 7900XもFortnite時に90W台という中央値の最大を記録した。せいぜい80W台後半に収まるRyzen 9 5950Xに比べると,消費電力中央値もRyzen 9 5950Xと比べて有意に高くなったと言える。
一方,Core i9-12900Kは,Project CARS 3に103W台の中央値を記録しているので,それに比べればまだ低い。
ゲームプレイ中の消費電力だけを見ると,Ryzen 9 7900Xが優秀と言っていい。上位モデルや競合とおおむね同程度のフレームレートを記録しつつ,消費電力中央値も100W以下とまずまずだからだ。
消費電力テストの最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テスト実行時点におけるシステムの最大消費電力をグラフ32にまとめておこう。
ここでもRyzen 9 7900Xは優秀だ。3DMark時には600Wを記録しているものの,他のCPUよりも,有意に低い最大値に収まっている。ゲーム性能が上位モデルや競合と大差ないわけだから,Ryzen 9 7900Xの消費電力あたり性能は優秀だ。
Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xのアイドル時におけるシステム消費電力が,Ryzen 9 5950Xに対して18W近く増えているのは,少し気になる点だろうか。DDR5メモリに加えて,マザーボードの消費電力も大きくなっている可能性がありそうだ。
Ryzen 9 7950XとRyzen 9 7900Xは,性能で競合に肉薄して電力あたり性能は上回る
一方,ゲーム中のピーク消費電力は,Ryzen 9 5950Xに比べると,かなり上昇してしまっているが,消費電力の中央値で見ると,Ryzen 7000シリーズは大きく上昇していない。つまり,消費電力あたり性能では,とくにRyzen 9 7900Xが優秀と言っていい。
残念なのは価格だろうか。北米における価格設定はRyzen 9 5950Xと同じかやや低い程度だが,円安の影響もあって国内では大幅な値上げになってしまった。本稿執筆時点で,Core i9-12900Kが税込9万〜10万円程度に対して,Ryzen 9 7950Xのメーカー想定売価は税込11万7800円前後,Ryzen 9 7900Xが9万2500円前後である。「とにかくゲーム性能最重視!」というゲーマーにとって,Ryzen 9 7950Xは最適な選択肢とは言い難い。
とはいえ,ゲーム以外で高い性能が得られるなら話は変わってくるだろう。それは次回でまとめたい。
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