プレイレポート
ミステリアドベンチャー「春ゆきてレトロチカ」プレイレポート。推理システムは独特だが,触ってみると実はシンプル
今回,発売に先駆けて本作のPC版に触れる機会を得たので,推理システム周りを中心にその概要を紹介する。
白骨死体と“不老の果実”。100年におよぶ四十間家の謎に迫る
本作の主人公・河々見(かがみ)はるかは,「探偵 西毬真琴」シリーズを代表作に持つミステリ作家だ。令和4年(2022年)春,彼女は自身が書いたミステリ小説の監修を担当している生物学者・四十間(しじま)永司から,富士山麓にある実家で発見された白骨死体と,代々伝わる“不老の果実”・トキジクについて調査してほしいと依頼され,編集者の山瀬明里とともに四十間邸を訪れた。
半信半疑のはるかだったが,明里が持参した古雑誌には,永司の先祖・四十間佳乃の書いた,トキジクをめぐる物語が掲載されていた。それは小説の体裁を取ってはいるものの,大正11年(1922年)に実際に起きた殺人事件を記したものだという。はるかはその小説を読み,事件の謎を解き明かすことに。そして彼女は,100年におよぶ四十間家の謎に迫ることとなるのだ。
ミステリには謎があり,謎を解く手がかりも必ずある
本作はエピソード形式のアドベンチャーで,オープニングと本編数話,エンディングで構成される。オープニングからエンディングまで全体で大きな1つの物語だが,本編のエピソードはそれぞれ独立した犯人当てミステリとなっている。
各エピソードは,「問題編」「推理編」「解決編」の3パートで構成される。問題編では,まず殺人事件とその前後を描いた実写ドラマが再生され,その中に事件の謎を解く鍵となる「手がかり」が多数提示される。この手がかりは,提示された時点で獲得しているので,逐一確認しなくとも大丈夫だ。「必要な手がかりを取り逃したから,推理編で詰んだ」といった事態にはならないので,実写ドラマの鑑賞に没頭するのも悪くない。また手がかりや登場人物の概要は,実写ドラマ再生中でも画面下部に表示させて確認できる。
実写ドラマ再生中,随所に手がかりが表示される |
手がかりや登場人物の概要は,画面下部に表示可能 |
推理編では,六角形のマスで構成された「論理の路(みち)」が表示される。論理の路に配置された「謎」と隣接するマスに,実写ドラマから得た手がかりの中から関連のあるものを配置すると,「仮説」ができる。
論理の路に配置された謎に…… |
関連する手がかりをドラッグして配置すると…… |
この謎に関連する手がかりを探す作業は,ゲームに慣れないうちは少々分かりにくかったりもするのだが,そんなときは「ひらめき」を使うといい。ひらめきは,フォーカスしている謎に関連する手がかりを強調するヒント機能で,1回使うごとに画面左の六角形のゲージを1つ消費する。
また,仮説を6つ作るたびにひらめきゲージが1つ増える(最大6つ)。そのためよほど使いすぎない限りは,「ひらめきが使えなくなって詰んだ」という事態にはならないだろう。「この謎にはこの手がかりだと思ったのに,なぜか配置できない」となったときは,総当たりで試すよりも,ひらめきを使ってサクッと進めたほうがスマートだ。もちろん,「ミステリゲームで,ちょっと分からないからといってヒント機能に頼るのはなあ……」という気持ちも理解できるので,そこはプレイヤー次第である。
仮説を一定数作ると,推理をまとめるフェーズに移行できる。このフェーズで注目すべき謎と,それにまつわる仮説を順に選択していくと,「いい推理だ」「目の付けどころがいい」「もっと重要なことがある」といった旨の所感が表示され,自分の推理が当たっているのか見当違いなのか,ほかに着目すべきポイントがあるかなどを確認できる。ただし,事件解決に必要な仮説を作っているかどうかについては示されないので,プレイヤー自身でしっかり考えなければならないところが,本作の特徴となる。
解決編では,再び実写ドラマが再生されるので,要所で根拠となる選択肢や仮説を選びながら殺人事件の真相を暴いていく。仮説選びを間違えるとバッドエンドとなり,推理編に戻されてしまう。必要な仮説が足りないと思ったら,また仮説作りをしてもいいし,十分な仮説がそろっているのであれば,即座に解決編に移行してもいい。このパートに限らず,実写ドラマは5秒スキップや丸ごとスキップが可能なので,スムーズに失敗したところまで戻れて遊びやすい。
そんな独特で新しい推理システムを採用している本作だが,実際に触ってみると見た目と違ってシンプルに仕上がっており,こうしてテキストで説明するまでもないのでは……と思うくらいだ。上記のとおり,推理編の謎と手がかりを組み合わせるフェーズで「何だこりゃ」となったこともあったが,ひらめきを使うことでそれも解決。むしろ何回か使うことで組み合わせの傾向が読めるようになり,その後のひらめきを使う回数が減っていくという経験もした。
ストーリーやトリックについては,ミステリのゲームである以上詳しく言及できないが,ひらめきの存在も含めて「正解にたどり着いてほしい」という方針で作られているという印象だ。例えば筆者自身は,とあるエピソードにて推理編ですべての仮説を作り,さらには「いい推理だ」とまでいわれたものの,誰が犯人なのかサッパリ分からなかったのだが,解決編で提示される選択肢や選択を迫られる仮説の内容を見て,「なるほど,そういうことか」と無事事件を解決。ある意味,選択肢が限定されるゲームだからこそのクリア手段だが,推理は得意じゃないという人も,きちんと最後まで遊べるはずだ。
ミステリアドベンチャーファンはもちろんのこと,実写ドラマや推理システムに興味を持った人もぜひ触れてみてほしい。
「春ゆきてレトロチカ」公式サイト
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(C)2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by h.a.n.d., Inc. Story by Nemeton
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