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ネタバレなしでお届けする「キルタイム・キラーズ」体験会レポート。ヨフカシプロジェクトが贈る,殺人鬼だらけの新作マーダーミステリー
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印刷2022/07/21 12:00

プレイレポート

ネタバレなしでお届けする「キルタイム・キラーズ」体験会レポート。ヨフカシプロジェクトが贈る,殺人鬼だらけの新作マーダーミステリー

 KONAMIとアニメイトグループ,ドロッセルマイヤーズの共同によるアナログゲームブランド・ヨフカシプロジェクトの新作タイトル「キルタイム・キラーズ 絶泉館の殺人」2022年7月28日に発売となる。

新作マーダーミステリー「キルタイム・キラーズ 絶泉館の殺人」。プレイ人数は5〜6人で,価格は5500円(税込)だ
画像集#001のサムネイル/ネタバレなしでお届けする「キルタイム・キラーズ」体験会レポート。ヨフカシプロジェクトが贈る,殺人鬼だらけの新作マーダーミステリー

 本作は,「キネマ探偵カレイドミステリー」「楽園とは探偵の不在なり」などで知られる小説家・斜線堂有紀氏がシナリオ/設定を担当し,人気イラストレーターのTSCR(ティッシュクリーム)氏がキャラクターデザインとイラストを手がけるマーダーミステリー作品だ。
 “全員が殺人鬼”というトンデモ設定と,マーダーミステリーでありながら繰り返し遊べるゲームシステムが特徴の同作だが,これをいち早くプレイできる先行体験会が,大阪・なんばの「MIMARU大阪 難波STATION」で開催されたので,本稿ではそのレポートをお届けしてみたい。マーダーミステリー作品ということで,もちろんネタバレは含まないので,本作が気になっている人はぜひ読み進めてみてほしい。

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 「ゲームマーケット2021秋」に出展されていたKONAMIとアニメイトグループ,そしてドロッセルマイヤー商會による共同ブース「ヨフカシプロジェクト」「まっぷたツートンソウル」「魔警オルトロス」という作風のまったく異なるタイトルでローンチを目指す同プロジェクトだが,その思惑はなんなのか。会場で話を聞いてみた。

[2021/12/10 14:15]

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6人の殺人鬼による心理戦――新作マダミス「キルタイム・キラーズ」


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 さて多くのマーダーミステリーがそうであるように,本作のゲームの目的は殺人事件の謎を解くことだ。しかし各プレイヤーに個別の目的が設定されていて,これがそれぞれ“殺すべき相手を殺すこと”となっている。冒頭でも触れたように,「キルタイム・キラーズ」のキャラクターは全員が殺人鬼なのだから。

本作の表の顔は高校生探偵だが,裏では正義のために殺人を犯しているとか,死にたいと望む患者を殺す精神科医,といったとんでもないキャラクターが揃っている
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 体験会では事前の募集で集まった約50名がホテルの客室に分かれ,2日間で合計10卓のゲームが行われた。そのうちの1卓に参加した筆者が担当することになったキャラクターは,「自称魔法少女殺人鬼」こと“撫足まじか”だ。キャラクターごとに用意された冊子でプロフィールを確認すると……そのキャラの濃さに戸惑いを覚える。とはいえゲームが進んでいくと,これが次第にかわいく思えてくるから不思議である。

撫足まじかのキャラクターブック(小冊子)
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 まずページをめくると,事件の冒頭が漫画で紹介されている。その漫画のセリフを,それぞれのキャラクターを担当するプレイヤーが読み上げていき,小冊子の情報を頭に入れたら準備は完了。いよいよゲームスタートとなった。

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 物語の発端はこうだ。目が覚めると自分を含めた5人は館の中におり,傍には館の主人の死体があった。しかし,昨日のことは誰もが何も覚えていない。そこに館の執事が現れてこう言うのだ。「あなた方は全員殺人鬼です。主人を殺した犯人はあなた達の中にいます……」

 ゲームの進行は調査フェイズで調査カードを取得し,その情報を元に議論フェイズで話し合いを行う,これまたマーダーミステリーとしてはオーソドックスなものだ。ただしプレイヤーがそれぞれ持っているKP(キラーポイント)をめぐる駆け引きが少し特殊で,面白い要素となっていた。基本は調査カードを獲得するのに支払うポイントなのだが,どうやらそれ以外の使い道もあるようなのだ。
 この使い道や稼ぎ方を考えるのがキモのようで,この辺りの手触りはボードゲームに近いようにも感じられた。

こちらがKPのチップ。筆者の卓では,これをめぐってじゃんけん大会が発生する一幕も
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 プレイにかかった時間は休憩なども含めて3時間半ほど。いろいろとすったもんだはあったものの,最終的には後味のいいエンディングにたどりつくことができた。終了後のネタばらしでは,すべての伏線がスッキリとつながって,ミステリーとしての納得感も十分であった。

 ゲームの制作者の一人でもあり,筆者の卓でGMを担当してくれたドロッセルマイヤーズの渡辺範明氏によれば,ストーリーを重視したマーダーミステリーは多いものの,本作はキャラクターに特化したつくりになっているという。「ここまで“キャラ立て”に注力したものはあまり多くないのでは?」とのことで,確かに本作のキャラクター達はいずれも個性的で印象に残りやすい。自分のキャラクターの情報を追うだけでも,まるで一人称の小説を読んだような読後感だった。

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 ゲームを振り返ってみて,とくに面白いと感じた点は二つある。
 一つは“全員殺人鬼”というコンセプトだ。筆者は嘘がちょっと苦手で,人狼ゲームに代表される正体隠匿系のゲームがあまり得意ではないのだが,この殺人鬼という設定があるために,その心理的なハードルが少し下がったように感じられた。普段ならありえない発想も生まれやすい気がするので,筆者と同じタイプの人も一度挑戦してみてはいかだろうか。
 ちなみにシナリオを担当した斜線堂氏の命名だという本作のタイトル「キルタイム・キラーズ」は,「暇つぶしの殺人鬼達」という意味が込められているとのこと。クレイジーな物語の内容が,端的に表されたタイトルと言える。

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 もう一つのポイントは,GM役にも担当キャラクターが設定されていることだ。本稿の冒頭で,本作の特徴を“繰り返し遊べる”と紹介したが,これは正確には,「GMキャラクターを使えば,2回目以降もプレイできる」ということを意味している。ネタバレになるので詳細は明かせないが,実はGMのキャラクターにも独自の目標が設定されていて,神の視点でありながらゲームに参加できるようになっている。
 渡辺氏によると,これは一度しか遊べないというマーダーミステリーの弱点を補うために用意した仕組みとのこと。例えば今回の体験会に参加した人が,次は知り合いを集めて自分がGMをやる,といったことが可能なので,マーダーミステリーではありがちなGM不足を補ううえでもありあたい仕組みと言える。とくに本作はパッケージ販売型のタイトルであるため,この点はとくに重視したとのことだった。

なお本作はGMを入れて6人でプレイするタイトルだが,GMを省いて5人で遊ぶことも可能(1人がGMを兼ねる)だ。ただ出回る情報が減るので,難度は少し上がるかもしれない
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 あえて気になったところを挙げるとすれば,本作はテキスト量がかなり多いという点だろうか。キャラクターの個性がしっかり盛り込まれているので,決して不必要に多いわけではないが,じっくり読み込んでいると周りの会話から取り残されてしまうことも。この点について渡辺氏は,「斜線堂先生ならではの面白さを削らないよう,あえてそのままにしてあるので,いっそ情報の濁流を楽しむ気持ちで」と語っていた。

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「キルタイム・キラーズ」「魔警オルトロス」制作秘話が語られたトークイベントも


 会場では,体験会に先立ってトークショーも開かれていたが,ここではその中から「キルタイム・キラーズ」関連の話をピックアップしてお届けしよう。ここで紹介するのは,ドロッセルマイヤーズの渡辺氏が,シナリオを担当した斜線堂氏の担当編集者である漆原正貴氏,そしてワンドロー代表の木皿儀隼一氏と共に,本作の制作裏話やヨフカシプロジェクトの過去作について語ったトーク部分だ。

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 漆原氏は1年ほどかかったという「キルタイム・キラーズ」の制作期間で,斜線堂氏と共にどのようにシナリオを作り上げていったかを紹介した。


漆原氏:
 全員殺人鬼というコンセプトを最初に決めたら,斜線堂先生がわずか1週間で20人分の殺人鬼の設定を作りあげてきたんです。20人も出せないので,それらの設定を蟲毒方式でフュージョンさせていって,最強の殺人鬼を5人作りました(笑)。
 マーダーミステリーって,普通は真犯人だとか,犯人じゃないけど疑われる人だとか,ゲーム内の役割を用意してからキャラクターを乗っけると思うのですが,本作は完全にキャラクター先行で作り上げていきました。
 ただミステリの大家であるアガサ・クリスティや西村京太郎先生は,真相や犯人を決めずに登場人物を配置して眺めると,どんな事件が起きるかが自然と思い浮かぶそうです。それによって意外な展開が生まれる。だから,伝統的ミステリとしてはこの形もアリなんですね。プロのミステリ作家とプロのゲームデザイナーがぶつかったら,こんな面白いものができる! というのをぜひ実感してください。


斜線堂氏とのシナリオ制作過程について語る漆原氏(右)。同氏は集英社にて,マーダーミステリーの開発やデジタル新規事業を手がけている
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 木皿儀氏からは,氏がゲームデザイナーとして関わった,ヨフカシプロジェクトの第2弾タイトル「魔警オルトロス」の制作秘話が語られた。
 同作は,魔法警察の刑事2人からなるバディを組み,犯人を逮捕すべく競う,2〜4人用の対戦ボードゲームだ。刑事のキャラクター設定や1人ずつ異なる魔導書カードのデザインなど,世界観の緻密に作り込まれているのが特徴で,これは「この犯人を捕まえたい」「この刑事でバディを組みたい」というように,キャラクターに魅力を持たせることでプレイのモチベーションと,IPとしての広がりを生み出すこと意図しているという。

ボードゲームデザイナーとして,数多くの作品を世に送り出してきた木皿儀氏(右)。マーダーミステリー作品も多数制作している
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 また木皿儀氏は,2年間でプレイヤーとしては350回ほど,加えてGMとしても活動しているマーダーミステリーの愛好者であるという。その視点から,これから「キルタイム・キラーズ」を遊ぶ参加者に向けて,次のようなアドバイスが贈られた。


木皿儀氏:
 マーダーミステリーで一番大切なのは,犯人捜しよりも楽しい物語をみんなで作ることです。疑い合ったりいがみ合ったりもしますが,それはゲームの中だけのこと。推理しなきゃ,犯人を見つけなきゃと気負わずに,心のおもむくままコミュニケーションして,「人間のやりとり」を楽しんでください。


参加者にマーダーミステリーのプレイ経験を尋ねる渡辺・漆原両氏。1日目は経験者がほとんどだったが,「オフラインでは初めて」という人も。2日目は半数ほどが未経験者で,ボードーゲームをコンセプトとしたホテルへの興味や,斜線堂氏の小説がフックとなって参加した人が多かったようだ
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 ともあれ,「キルタイム・キラーズ」は魅力的なキャラクターと,ボードゲーム的なギミックが組み合わさった,意欲的なマーダーミステリーだと感じられた。マーダーミステリー初心者にオススメするには情報量の多さが少し気になるが,本稿を読んでどこかで琴線に触れた人なら,迷わず遊んでみて損はないはずだ。
 またヨフカシプロジェクトでは,本作以降もさまざまなジャンルのボードゲームが続々発売予定とのこと。第4弾がどんなタイトルになるかはまだ明らかになっていないが,こちらもお楽しみに。

 なお今回の体験会の会場となったホテル「MIMARU大阪 難波STATION」は“一晩中、みんなで遊べるホテル”をコンセプトに,ボードゲーマー向けのさまざまな専用設備を備えた“ボードゲームホテル”としてファン垂涎の施設となっていた。こちらは後日掲載の別記事にて詳しく紹介するのので,ボードゲーマーはぜひ合わせてチェックしてほしい。

体験会後は,ホテルの各部屋に希望者が集まって,夜までボードゲーム会が開かれた。写真はヨフカシプロジェクト第一弾の「まっぷたツートンソウル」だ。そのほかにも,さまざまなタイトルが遊ばれていた
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こちらはドロッセルマイヤーズの「ナンバーワンダフル」。同社の展開する「ゆるゲー」シリーズの一作で,挑戦者がさまざまな勝負でチャンプに挑む,ミニゲーム集となっている。画像は渡辺氏と,TANSANの朝戸一聖氏によるガチ腕相撲勝負のもの
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  • 関連タイトル:

    キルタイム・キラーズ 絶泉館の殺人

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