2022年8月6日と7日,京都市勧業館「みやこめっせ」で開催中のインディーズゲームイベント・BitSummit X-Roadsにて,モバイルデバイスとAI,そしてお絵かきを組み合わせた不思議なゲーム
「TOYFORMING」(
iOS /
Android。読み:トイフォーミング)が出展されている。会場でプレイしてきたのでレポートをお届けしよう。
Toyforming Studioブース
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本作は,Toyforming Studioが2023年2月の配信を予定しているモバイルデバイス用ゲームだ。公式ジャンルは「お絵かき&惑星シミュレーション」となっている。
デバイスの画面に浮かぶのは,小さな惑星だ。プレイヤーの仕事は,この惑星をテラフォーミングしていくこと。本作には,ペンツールや塗りつぶしツールといった初歩的なグラフィックツールのようなお絵かき機能があり,まずはこれを駆使して絵を描いていく。
小さな惑星の初期状態は何もない
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“絵を描くこと”と“テラフォーミング”。一見,無関係な2つの事象をつなぐのがAIである。プレイヤーが絵を描くと,
AIが「何の絵を描いたのか」を判定し,これを実体化して惑星上に出現させる。
例えば赤い丸を描くと,AIがこれを「太陽」と認識。惑星の近くに太陽が浮かび,周囲を照らし出す。プレイヤーが描いた絵を,AIが立体化したものが出現したわけだ。雲を描くと,空に雲が浮かんで雨を降らせ,惑星の低地に雨水が溜まると海になる。魚を陸上に描いてもビチビチ跳ね回るが,海に入れると泳ぎ出す。人を描いた場合は惑星を歩き回り,そこに道具が現れると喜んで手にする。ただ自分の描いたものが惑星に出現するだけではなく,そのシチュエーションにふさわしい振る舞いをしてくれるのだ。
 お絵かきツールを使って,太陽を描いてみた |
 AIが絵を「太陽」だと判定してくれた |
 惑星の空に太陽が現れた。周囲を照らし,地面に置いた木(を描いたつもりが,AIに家と判定された物体)に影が落ちている |
雲を描いて,空にたくさん置いてみたところ,雲から雨が降り出し,やがて惑星の低地に水が溜まった
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魚を描いて青く塗ると,AIが「魚」と判定し,立体化される
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人間を描いたら,AIに「住人」として判定された。人なので手足が動く
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いわゆる「棒人間」でも,「住人」と判定されるようだ。惑星の上に置くと,元気に動き回る
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公式サイトより引用。和服の住民が桜の下を歩いている。絵心があれば,素敵な惑星が作れるのだろう
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スコップを描いたつもりなのに,AIの判定は「斧」。斧も道具なので,住人が手にしてくれた
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重要なポイントは
「何の絵を描いたのかを判定するのは,あくまでAIである」ということだ。例えば,プレイヤーは猫を描いたつもりでも,AIが「これはゴキブリだな」と判定するとゴキブリでしかない。惑星の住人に持たせるつもりでカバンを描いたところ,AIはジュースと認識したため,住人は“カバン”を手にしてこれを飲み干した。どんぶりに山盛りのご飯を描いたのに,UFOだと認識されたら,食べ物は惑星の上を飛び回る。
人間の絵心とAIの認識のズレにより,思ってもいなかったモノが惑星に出現し,ハプニングを起こしてくれる。ゲームに変化を加えてくれると同時に,「わざと曖昧な絵を描いて,AIが何と判定するか見てやろう」といったズレを待ち望む気持ちも湧いてくる。
線画で猫を描いてみた。しかし,AIの判定は「ゴキブリ」。惑星の上に置くと,住民たちは「ゴキブリだ!」と叫んで逃げ出した。自分が描いたものと,AIの判定が食い違うからこそハプニングが生まれる
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公式サイトより引用。「星」を建物に付けると,イルミネーションのように輝くという
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「TOYFORMING」はToyforming Studioにとって初の作品となり,基本プレイ無料でのサービスが予定されている。将来的には「惑星の住人がいろいろな要求を出してくるので,プレイヤーはこれを絵に描いて与える」といった,画面の中とコンタクトを取れるようなシステムを目標にしているとのこと。おもちゃ箱や知育トイにも通じる不思議な楽しさがある作品で,2023年2月の配信が大いに楽しみだ。