瑞起が開発・販売する「
X68000 Z 」の,一般販売版である
「X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODEL」 (以下,BLACK MODEL)の発売日が,いよいよ目前(9月28日)に迫ってきた。
これから手にする人の期待はもちろん,これから手にする人の期待はもちろん,X68000 Z専用モニター(オフィスグレー)の
購入型クラウドファンディング は初回ロット分が完売するなど,
「X68000 Z LIMITED EDITION EARLY ACCESS KIT」 (以下,EARLY ACCESS KIT)購入層にも「買ったからもういいや」ではなく,
「これから遊び倒すぞ」 といった雰囲気が感じられる。
レトロゲーマーやレトロPCファンから大きな注目を集めるX68000 Zだが,瑞起はなぜこういった製品を企画し,発売することになったのだろうか。その背景や,クラウドファンディング実施時の舞台裏,BLACK MODEL発売以降の展望,
「そもそも瑞起ってどういう会社なの?」 という根本的な部分などを,瑞起の取締役である
米内雄樹 氏に聞いた。
瑞起の米内雄樹氏
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瑞起は「X68000 Z PRODUCT EDITION BLACK MODEL」 を2023年9月28日に発売すると発表した。クラウドファンディングで提供された「EARLY ACCESS KIT」は,あくまでβ版だったが,本品は“製品版” という位置づけになる。予約受付は6月8日0:00から。
[2023/06/07 12:08]
4Gamer :
よろしくお願いします。さっそくですが,読者向けの自己紹介をお願いします。
米内雄樹氏 (以下,米内氏):
瑞起の米内と申します。取締役であり,営業や企画の責任者として,日々業務にあたっています。
4Gamer :
瑞起さんの名前を目にするようになったのは近年になってのことですが,ゲーム関連の事業はどういったところから始まったのでしょうか。
米内氏 :
本格的なお手伝いをさせていただくようになったのは,2016年に任天堂さんが発売された「
ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ 」へ,弊社の取り扱っているSoC(System-on-a-chip)が採用されたことがきっかけです。そこから,
セガさん や
タイトーさん ,
KONAMIさん などから,ご相談をいただくようになりました。
基本的にはハードウェアやメカニクスの部分に関して,製造部材の調達から製造・設計・量産までを包括的に担当しております。最近ではレトロゲームのエミュレーションをメインとして一部のソフトウェアも手掛けるようになり,移植したタイトル数は
200本 を超えています。
4Gamer :
ミニ系のゲーム機だけでなく,Nintendo Switch版「
電車でGO!! はしろう山手線 」のワンハンドルコントローラ(
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米内氏 :
それもタイトーさんからご相談を受けて,作らせていただきました。
4Gamer :
当時は開発会社の情報などが打ち出されていなかったと思うのですが,2017年の
「電車でGO! PLUG&PLAY」 (
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米内氏 :
はい,我々はハードウェアとソフトウェアの下回りと量産関連を担当しました。現在は,それに続く
「電車でGO! PLUG&PLAY2 山陽新幹線編EX」 (
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2007年に発売されたソフト なんですが,今はもうソフト自体が希少になっていますし,「やっぱり専用コントローラで遊びたい」という声もあったりしたので,本製品をタイトーさんと企画したんですよ。今回は,製造から販売までを我々がやらせていただいています。
4Gamer :
基幹事業としてはゲーム以外が主かと思いますが,関わられている製品にはどのようなものがありますか。
米内氏 :
Allwinner製SoCの日本総代理店として,各社にSoCを提供させていただいております。シャープさんのモバイルTVに我々のSoCが採用されていたり,Cerevoさんの
「LiveShell W」 という業務用配信機器ではハードウェアとソフトウェアの下回りを手掛けています。他にはデジタルサイネージや,監視カメラなどにもSoCを提供していますね。
4Gamer :
話をゲーム関係に戻しまして,いろいろリリースされたミニ系ゲームハードの流れからX68000 Zが出てきたわけですが,ゲーム機でなくPCスタイルだったり,自社販売だったりと,それ以前とは毛色が違う製品ですよね。この企画の立ち上げには,どのような経緯があったのでしょうか。
米内氏 :
先ほども述べたように,我々は各メーカー様の製品に裏方としてお手伝いをしていたわけですが,
「お客様にとって価値のある過去のIPを,瑞起の技術でもっと支えられないか?」 という声が社内から立ち上がって来たんですよ。そこからワンハンドルコントローラを自社販売して,それに続く第2弾の製品を決めるための企画会議を行いました。その中で,数人の社員が
「X68000というPCを復活させてみるのはどうか」 という案を出してきたんです。
それで調査し,提案したスタッフにヒアリングする中で,私自身も「製品として面白いものになる可能性がある」と感じて,シャープさんとの交渉を始めました。
4Gamer :
興味本位でお聞きしたいのですが,X68000以外にはどういった案がありましたか。
米内氏 :
他の候補ですと,レトロPCというカテゴリではPC-88や98,FM TOWNSなども挙げられていました。でも,その中で「最初にやるべきなのは何だ?」と考えた時に,目立つのはやっぱりX68000ですからね。企画を挙げてくれたスタッフもX68000ユーザーで,X68000に育てられてソフトエンジニアになったという背景がありました。それだけに熱意も高かったんですよ。
4Gamer :
過去の思い出的なところで言うと,米内さんご自身のゲーム遍歴はどのような感じでしょうか。
米内氏 :
私は1980年生まれで,ゲームの思い出というところで言うとやっぱりファミコンですね。小学2,3年生のころに買ってもらって,そこからずっとゲームを遊んでいます。X68000は「近所のちょっと年齢の高いお兄ちゃんの家に行ったとき遊ばせてもらった」という思い出があります。ゲームは
「グラディウス」 だったかと。
スーパーファミコンやPlayStation,セガサターンなどを触っていった中で,ゲームクリエイターに憧れを抱くようになり,運良くKONAMIさんにデザイナーとして採用していただいたところから、キャリアがスタートしました。
4Gamer :
X68000と言えば,権利関係の複雑さが有名ですよね。それこそKONAMIが,Human68k(OS)の開発元であるハドソンを吸収合併したりもしていますし。
米内氏 :
そうですね。それに,製品化の許諾を取るにあたって最初はもちろんシャープさんに問い合わせるのですが,どの部署に尋ねればいいのか分からないというのもありました。
ただ,私はシャープのX(旧Twitter)の中の人と知り合いでして,彼に一度相談してみたんですよ。「確認するからちょっと待ってて」と言われてから1週間くらいですかね。「この人と,この人に企画書を出してみて」みたいな話になって,そこから本格的な交渉が始まりました。なので,スタートは
「Twitter(当時)仲間から」 といった感じですね。
4Gamer :
先ほど「内部スタッフの熱意が高かった」というお話がありましたが,X68000ユーザーには熱烈な人が多いですよね。「X68000 Z」も,正式発表前の“匂わせ”段階から大きな反響がありましたし。
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瑞起は本日(2022年8月5日),同社の公式Twitterアカウントでマウス とキーボード の画像を公開した。これらはシャープが1987年から1990年代初頭にかけて展開したX68000シリーズ の周辺機器を元にしたものだが,「X68000ミニ」のような製品が開発中なのだろうか。
[2022/08/05 21:43]
米内氏 :
昨年の6月8日に,ぼかしのかかったグレーと黒のイメージを公開しましたが,「X68000のミニをやろうとしているな」と大きな反響を得られました。その一方で,
「生半可な気持ちでX68000をやってほしくない」 みたいなコメントや「慎重になった方がいい」といった警告の声も多くありましたね。
あのときの率直な感想としては,「やっぱり大変そうだな……」というものでした。
4Gamer:
ネガティブな意見で言えば,X68000 Zの本体やキーボードに対して
「瑞起のロゴが主張しすぎている」 といった意見をしばしば見かけます。
米内氏 :
我々もシャープさんのロゴを入れたいと思っていて,相談もしたんですよ。でも
「シャープのロゴはブランドロゴなので他社には貸せません」 と,そこは完全にお断りされてしまいました。また,X68000 Zという製品自体の責任は我々にありますので,その意味でも瑞起のロゴ入りという形にさせていただきました。
4Gamer :
まあ,パイオニアのOEM版X68000 PROもロゴ周りが置き換えられていたそうですから,そこはシャープ的には昔から一貫しているところですよね。
X68000 Zは音量操作のツマミや可動式のハンドルなど,ハードウェアの設計からしてミニ系ゲーム機以上にこだわっている印象がありますが,そういった部分の仕様が固まったのは,どの時点だったのでしょうか。
米内氏 :
最初の企画時点では,やっぱり
複数のゲームを収録したもの として考えていたんです。でも「やるからにはX68000自体を再現してほしい」「ゲーム以外のソフトウェアも収録してほしい」といった声を受けて,
大きく方向転換 することにしました。
Human68kも権利関係を調査して許諾を取りにいったのは,少し後になってからの話で,昨年の東京ゲームショウ前後くらいのタイミングでした。当時は「
詳細を10月8日に発表して,同時に予約受付を開始します 」と言っていたんですが,こういった経緯で延期することになりました。
4Gamer :
ある意味では,まだ1年経っていないプロジェクトなんですか……。
その後に実施されたEARLY ACCESS KITのクラウドファンディングですが,結果的には
1073% (
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米内氏 :
「100%を超えてくれたら……」という気持ちはもちろんあったんですけど,それがほんの数時間で達成されたのは,「嬉しい」と言うよりも
重い責任 を感じて本当にビクついていました。Kibidangoの支援者向けページでも厳しい声をいただいたりしたので,社員一同,改めて身を引き締めて,解決のために相当の時間と労力を費やしました。クラウドファンディングが良い勢いで推移していた裏側では,てんてこ舞いの状況がずっと続いていたんですよ。
4Gamer :
「
Z-CLUB 部室放送 」での提供ソフトの発表なども,なかなか後追い的にやっている雰囲気が感じられます。
米内氏 :
コンプリートパックに付属する「ゲームコレクション Vol.1」は,収録タイトルの発表が断続的になっていますが,当初は交渉が間に合えば同時に公表したいと考えていました。でも,なかなかうまくいかなくて。
今はけっこうクリアになってきましたが,ゲームソフトも想像以上に権利関係が複雑なんですよね。もとの権利元が倒産してしまっているというケースはもちろん,権利元が明確でも「自分達だけでは許可が出せない」という場合もあったりして。
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2023/06/07 12:08
4Gamer :
現状,追加ソフトの予定はどのようになっているのでしょうか。
米内氏 :
まず
「ジェノサイド」 と
「ファランクス」 を収録した
「ZOOM PACK I」 (
関連記事 )を8月8日に発売しました。さらにウルフチームさん等のタイトルを,個別のパックとして発売します(
関連記事 )。それ以外では,BEEPさん(三月うさぎの森)から
エグザクトさんの4タイトルを収録したパック が冬に発売されます。
4Gamer :
構想レベルでも構わないのですが,それらの他に出したいと考えているパックなどはありますか。
米内氏 :
交渉が締結寸前まで来ているのが1社ありまして,そこから4タイトルくらい出したいと考えています。ゲームコレクションのVol.2も,来年になるとは思いますが出したいですね。将来的には,
月イチくらいのペース で何かしらのタイトルを発売していければと思っています。
4Gamer :
瑞起さんから発売されるタイトルは内製なのでしょうか?
「PCエンジン mini」 だとエムツーさんが開発協力として関わったりもしていましたが。
米内氏 :
はい,内部で開発しています。他には
「EGRET II mini」 などでも,ほとんど我々が作らせていただいています。
4Gamer :
開発現場の様子などはいかがでしょう。
米内氏 :
X68000というものを理解するのに時間がかかっている部分はありますね。例えば,SASI(Shugart Associates System Interface)やSCSI(Small Computer System Interface)といったものは,やっぱり若いエンジニアにとっては言葉の意味自体が分からなかったりもしますので。それに,エミュレータでの動作を実機に近づけないといけないわけですが,「どういう処理を行えば実機に近付くか」という部分には,相応のノウハウや知見が必要なんですよ。当時の資料が無いので,そこの解決も課題だったりします。
4Gamer :
「エミュレータならポン付け的に実装できるだろう」と言う人もけっこういますけど,実際のところ大変そうですよね。海外の移植系メーカーにも,当初はクオリティが芳しくなかったものの徐々に品質を上げていったところがあったりして,経験が必要だということを感じます。
米内氏 :
そうですね。我々の場合は約200タイトルの経験があるので,その知見で比較的スムーズに進んでいるとは思いますが,それでも難しい部分には行き当たります。
とくにX68000のOS側のエミュレーションは苦労しているところで,
「HACKER'S EDITION」 (
関連記事 )のテスターになっていただいた方々にソースコードを見てもらったりもしながら開発を進めています。HACKER'Sの皆さんがいなかったら,もっと開発に苦労していたでしょう。そういった部分をどのように公表すればいいのか分からなかったので,「あいつらは何をしているんだ」みたいなことを言われたりもするんですが,実はいろいろやっているんですよ。本当に感謝しかありません。
4Gamer :
開発進捗の公表というのはなかなか難しいですよね。言わずもがな社外秘の部分もありますし。
米内氏 :
X68000で経験を積んだ世代の人達って,会社で上のポジションに就いていらっしゃったりするので情報を慎重に扱っていただけるのですが,その分だけ一般の方々に情報が届きにくかったのは反省点です。本来なら我々が伝えていくべき部分でした。
4Gamer :
ネガティブな話ですと,「SoCのスペックがX68000のエミュレーションには不足している」という話を聞いたりもしたのですが,実際のところいかがでしょうか。
米内氏 :
確かに,その声はよく聞きます。我々としても,満足のいくスペックかと言えばそうでもないのですが,これまでの開発からパフォーマンスを工夫して引き出すノウハウを持っているので,公表されている
スペックシート以上のことを実現できている んですよ。なので現状としては,価格のバランスや品質的な信頼性も含めて,ちょうど良いSoCだと思っています。
SoC「Z7213」の搭載イメージ図。同チップは,メガドライブミニやPCエンジン miniなどにも採用されている
4Gamer :
だいぶ気の早い話かとは思いますが,公式サイトのロードマップにある
「XVIモデルやX68030の“次”」 を作ることになった場合,SoC選定はどうなりますか。
米内氏 :
もし実現に向けて動くことになったら,ハードウェアは見直したいですね。そのためにも皆さんの応援を継続して得られればと思っています。
4Gamer :
Z-CLUB 部室放送で「“次”は製品版が売れたら」といった旨の話がありましたが,BLACK MODELの予約状況などはいかがでしょうか。
米内氏 :
お陰さまで,それなりに予約をいただいています。ただ,次の製品を作るとなると,先行投資的なお金も必要となるので,ある程度BLACK MODELを出荷できないと難しいというのが正直なところですね。もし“次”が気になっている方がいらっしゃったら,
「スターターパック」 は価格を抑えたりもしていますので,買っていただけるとより“次”に近付いていくことができます。
4Gamer :
BLACK MODEL自体の開発状況はいかがでしょう。
米内氏 :
現在(※インタビュー収録時点)は製造の部材調達を進めていたり,量産手前の最終確認フェイズに入っています。あとはジョイカードの試験などですね。ボタンを
100万回 押す耐久テストをクリアしたものが上がってくるので,その最終確認をするわけです。
BLACK MODEL本体と,いずれのエディションでも標準で付属するジョイカード(ゲームパッド),および「ZOOM PACK I」。ちなみに「ZOOM PACK I」に用いられているパッケージは,X68000 Z本体とサイズをあわせた新規設計のものだという
4Gamer :
BLACK MODELでは,マウスの形状が修正されていますよね。
米内氏 :
EARLY ACCESS KITではサイドボタンを左右ではなく,左側に2つ設けていました。現代のマウスに近づけた設計だったんですけど,正直なところ「片手で持って,その指で左右のボタンをクリックする」という使い方をちゃんと理解していなかったんですよ。金型はもちろん,ハードウェア的にもかなりの修正を加えました。
4Gamer :
金型からだと結構なコストの負担になりますね……。
米内氏 :
ですが明らかに誤りなので,ユーザーの皆さんの声を受けて修正しました。それでも,さすがにボールマウスにはできないのですが。
EARLY ACCESS KITに同梱のマウス。左側面に2つのボタンがある
BLACK MODELに同梱のマウス。ボタンは左右側面に1つずつとなった
4Gamer :
ユーザーと言えば,専用コミュニティサイトである
Z-CLUB の動きや内部の雰囲気などは,どのような感じでしょうか。
米内氏 :
ゲームを作っている方に投稿していただいたり,要望などを送っていただいたりしていて,想像していた以上に利用していただいています。我々も毎日チェックしていて,会社として反応できるものにはコメントを付けますし,要望を拾い上げて開発に検討させたりしています。全部の要望に返事をできるわけではありませんが,いずれにしてもご意見にはちゃんと向き合っていきたいと考えています。
うまくユーザーとメーカーのコミュニケーションを構築できていると思うので,今後の展開としては作ったゲームをアップロードして配布できるような環境や,簡単に動画を貼り付けられるシステムを作ったりしたいですね。また,Z-CLUB自体がちょっと使いにくいので,UIやUX的な改善もしっかりやっていきたいところです。
4Gamer :
X68000 Zを普段使いのマシンにするような構想はありますでしょうか。つまるところ懐古的なゲームマシンではなく,MSX3やPlaydateみたいな方向性での展開は検討されているのかというお話なのですが。
米内氏 :
今の段階では,普段使いするのは本当にX68000を好きな人というか,そういう先鋭的な人が遊び倒す感じですよね。将来的にチャンスがあれば,何か新しいチャレンジをしたいとは思っています。ネットワーク対応もやるべきですし,若い人がゲームを作って配布できるようなプラットフォームというか,それを含むエコシステムみたいなものをご提供するとか。まだ明確な答えは見えないんですけど。
植木(章夫)さんからもOh!X関係者の座談会で
「過去のX68000の枠組みを超えてできるような環境整備や展望にも期待したい」 と言われていましたので,何かしら
「X68000の先があったらこうなっていた」 と言えるものが実現できればと考えています。
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2022年6月8日にTwitter上で第一報が報じられ,その後は(追ってる人ならご存じのように)盛り上がる一方の,X68000 Z。X68000について語れる人は,年齢層高めゾーンに大勢いるが,その頂点はやはり「Oh!X」だろう。そんなわけで元編集部の関係者を数名お呼びしてみた。
[2022/12/30 11:00]
4Gamer :
個人的な願望としては,インディーズゲーム市場でバリューのあるプラットフォームになれば良いなと思っているんですよね。昨今,いろいろ“レトロ風”のゲームがありますけど,実機仕様の本格的な“レトロ風”に向いたプラットフォームがあれば,そこに向けて作られたゲームというものが一種のフラッグシップになるんじゃないかと。
米内氏 :
そういった意味では,教育系に持っていったりもしたいですね。いろいろと制限がある中で表現していた人達が教える側に回って,なくなりかけていたものが再生,存続され,新しいものが作られていけばと。
4Gamer :
その方向性で行くと,スプライトエディタなどの開発用ツールを提供する考えなどはあるのでしょうか。
米内氏 :
「SHOOTING68K Z-EDITION」 (
関連記事 )のようなコンストラクションツールという形で提供していくのもあると思いますし,当時もコンストラクション系のソフトがいくつかあったはずなので権利者の許諾をいただいて提供したり,新たに我々が開発して提供したりする可能性もあると思います。与えられたものをプレイするだけでなく,自分で作る体験をするための,お手伝いもしていきたいですね。
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2023/03/11 12:01
4Gamer :
最後に,読者へのメッセージをお願いします。
米内氏 :
「黒いX68000が思い出になっている」という人は多いですし,クラウドファンディング時点から「黒を待っている」という声をいただいたりもしましたが,そのBLACK MODELに辿り着けたのは多くの人にEARY ACCESS KITを購入していただいたからなので,皆さんの応援には本当に感謝しています。我々としても,BLACK MODELをリリースできたのは大きな喜びです。
ただ,その一方で辛辣な言葉を投げかけられることもあるので,それで社員が疲弊することもあったりするのも事実です。私は取締役という立場なので,マネジメントの一環としてモチベーションコントロールも行っているのですが,その部分では非常に苦労しています。言葉の裏にはX68000へ深い愛があるとわかってはいますが、正直もう少し優しくしてくれたらと思うこともありますね。
4Gamer :
何かしら矢面に出ると心無い言葉を投げかけられることはありますよね。個人的には,フロム・ソフトウェアの宮崎(英高)さんが「
bloodborne 」の頃,フレームレートに関するファンからの質問に対して,冗談めかしてですが「あまりいじめないでほしいな」と言っていたのが印象的だったりもします。
米内氏 :
ただ,厳しい意見にしても期待あってのことには違いないので,そこは甘えず,しっかりやっていこうと覚悟を決めています。基本的には,期待をやる気に変えて頑張るのが正解だと思うので,やっていくしかないんですよね。
瑞起という会社は,従業員は30人くらいですし,やっている事業も大手さんほどではないので,皆さんの希望にどれだけ答えられるかと言うと,やっぱり難しい部分はあります。他の案件と並行して開発している都合上,何かしらお待ちいただく状態はどうしても続くかとも思います。
でも皆さんの思い入れがあるX68000ですから,我々も生半可ではない気持ちで取り組んでいます。難しい問題はいろいろとありますが日々努力して,できる限りのスピード感で,可能な限りクオリティも高くしようと思っているので,見守っていただけますと幸いです。
4Gamer :
ありがとうございました。