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レビュー
価格対性能比はGeForce RTX 4090/4080をしのぐ新世代GPU
AMD Radeon RX 7900 XTX
Radeon RX 7900 XT
AMDの新世代GPUアーキテクチャ「RDNA 3」を採用した新型GPU「Radeon RX 7900 XTX」(以下,RX 7900 XTX)と「Radeon RX 7900 XT」(以下,RX 7900 XT)のレビュー情報が解禁となった。
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RX 7900 XTXは,Radeon RX 7000シリーズでは最上位に置かれるモデルで,RX 7900 XTは,それに続くハイエンド向けGPUとなる。
NVIDIAから登場した,「Ada Lovelace」アーキテクチャに基づくハイエンドGPU「GeForce RTX 4090」(以下,RTX 4090)や「GeForce RTX 4080」(以下,RTX 4080)に対して,AMDの新世代GPUは,はたして対抗馬に成りうるのだろうか。実際にゲームでテストを行い,そのポテンシャルを確かめてみたい。
Infinity Cache込みでのメモリバス帯域幅はRTX 4090の3倍に
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メモリ周りについて説明しておくと,RX 7900 XTXは384bit,RX 7900 XTは320bitのメモリインタフェースを持ち,どちらも組み合わせるメモリはGDDR6である。メモリクロックは20GHz相当だ。そのため,メモリバス帯域幅はRX 7900 XTXが960GB/s,RX 7900 XTが800GB/sとなり,RTX 4090の1008GB/sには届かないものの,RTX 4080の716.8GB/sを大きく上回っている。
またAMDによると,RX 7900シリーズでは,大容量キャッシュメモリである「Infinity Cache」が第2世代へと進化しており,それを加味したメモリバス帯域幅は,RX 7900 XTXが3494.4GB/s,RX 7900 XTが2912GB/sに達するそうだ。これはRTX 4090を凌駕するばかりか,前世代の最上位GPU「Radeon RX 6950 XT」が1793.5GB/sであったのと比べても,大幅に向上したと言っていい。
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なお,動作クロック設定は,RX 7900 XTXのゲームクロックが2300MHz,ブースト最大クロックが2500MHzとなっているが,後述するテスト環境において,「GPU-Z」(Version 2.51.0)でコアクロックの推移を追ってみたところ,最大で2830MHzまで上昇しているのを確認した。一方,RX 7900 XTのゲームクロックは2000MHz,ブースト最大クロックは2400MHzだが,こちらもテスト中のコアクロックを追ってみると,最大で2539MHzまで上昇していた。どちらもGPUクーラーの冷却性能が十分であれば,コアクロックは十分な伸びしろがあるようだ。
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AMDがレビュワー向けに用意したガイドによると,RX 7900シリーズのテストでは,CPUにRyzen 5000シリーズ以降,もしくはIntelの第12〜第13世代Coreプロセッサが必要であるという。もちろん,これ以外のCPUでもRX 7900 XTXやRX 7900 XTは動作するが,「十分な性能を発揮するためには,相応に新しい世代のCPUを用意することが望ましい」ということだろう。もし,RX 7900 XTXやRX 7900 XTの購入を考えているのであれば,CPUにも気を配りたい。
そんなRTX 7900 XTXとRTX 7900 XTの主な仕様を,RTX 4090とRTX 4080,そしてNVIDIAの前世代最上位に当たる「GeForce RTX 3090」(以下,RTX 3090)と合わせてまとめたものが表1となる。
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NVIDIAが独自のAI処理向け演算ユニット「Tensor Core」を採用しているのに対抗して,AMDは,RX 7900シリーズで,「AI Accelerators」を実装してきた。一方のNVIDIAは,AMDのInfinity Cacheに対抗して,GeForce RTX 40シリーズでL2キャッシュ容量を大きく増やしている点が興味深い。
話をグラフィックスカードに戻すと,RX 7900 XTXとRX 7900 XTのリファレンスカードについては,こちらの開封記事を参照してもらうとして,まず注目したいのがカードサイズだ。
AMDの新型GPU「Radeon RX 7900 XTX/XT」搭載カードがやってきた! 写真で見る新世代Radeonリファレンスカードの姿
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AMDの新世代GPU「Radeon
RX 7900 XTXのカードサイズは,実測で約288mm(※突起部除く)。RX 7900 XTも同278mmほどで,どちらも300mmを下回っている。それに対して,RTX 4090 Founders EditionとRTX 4080 Founders Editionは,どちらも約305mmで,カードの短さではAMDに軍配が挙がる。カードの厚みも,RX 7900 XTXとRX 7900 XTはともに2.5スロット程度,3スロット分の容積を占有するRTX 4090やRTX 4080よりは薄い。
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さらに,カード重量もRX 7900 XTXが実測で約1815g,RX 7900 XTが実測約1516gで,2kgを超えていたRTX 4090/4080 Founders Editionよりは,かなり軽めだ。つまり,リファレンスカード同士での比較であれば,AMDのほうがPCケースに対するハードルが低く,取り扱いやすいということになる。
なおAMDによると,RX 7900 XTXでは,カード周辺のPCケース内温度を検出するセンサーを新たに追加したという。これは,Radeonユーザーのコミュニティに寄せられた要望に応えたもので,このセンサーによって冷却性能を動的に制御することで,優れたエアフローを実現するという。将来的には,このセンサーで読み取った数値を公開する予定もあるそうだ。
RTX 4090/4080に食いついていけるのかに注目
それでは,RX 7900 XTXおよびRX 7900 XTのテスト環境に話を移そう。今回の比較対象として用意したのは,表1に挙げたRTX 4090とRTX 4080,それにRTX 3090だ。つまり,RX 7900 XTXとRX 7900 XTが,登場して間もないAda Lovelace世代GPUに,どれだけ食いついていけるかを確認しようというわけだ。
使用したグラフィックスドライバは,AMDがRX 7900 XTXとRX 7900 XTのレビュワー向けに配布した「22.40
そのほかのテスト環境は表2のとおり。
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
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マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | Radeon RX 7900 XTXリファレンスカード |
Radeon RX 7900 XTリファレンスカード |
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GeForce RTX 4080 Founders Edition |
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GeForce RTX 4090 Founders Edition |
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Palit Microsystems GeForce RTX 3090 GamingPro OC |
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ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | Corsair CMPSU |
OS | 64bit版Windows 11 Pro(22H2,Build 22621.819) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 4.11 |
グラフィックスドライバ | Radeon: |
GeForce: |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション26に準拠。それに加えて,「3DMark」(Version 2.25.8043)の新DirectX 12テスト「Speed Way」と,レイトレーシング性能を見る「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」のテストを追加している。
なお,解像度はいつもどおり,3840×2160ドットと2560×1440ドット,それに1920×1080ドットの3つを選択している。
RTX 4090を凌駕することもあるRX 7900 XTX
RX 7900 XTもRTX 4080といい勝負
それでは,3DMarkから順にテスト結果を見ていこう。グラフ1は,Fire Strikeの総合スコアをまとめたものだ。
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テスト解像度が1920×1080ドットとなるFire Strike“無印”では,CPUが足かせとなってスコアが丸まりつつある。それ以外を見ていくと,RX 7900 XTXは,RTX 4090の牙城を崩すまでに至っていないものの,RTX 4080を8〜12%程度上回る性能を発揮した。一方のRX 7900 XTは,RTX 4080には1〜4%程度およんでいないが,あと一歩のところまで迫っている。
また,Fire Stike“無印”以外では,RTX 3090に33%ほどの差を付けている点は立派だ。
続いてグラフ2は,Fire Strikeから「Graphics score」を抜き出したものとなる。
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ここではCPU性能の影響がなくなるものの,大勢は総合スコアから変わっていない。RX 7900 XTXは,RTX 4090とRTX 4080の間に位置づけられ,RX 7900 XTは,RTX 4080と肩を並べている。どちらもRTX 3090を大きく引き離した点も見どころと言えよう。
グラフ3は,ソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「Physics score」として抜き出したものだ。
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今回のテストでは,すべてのGPUでCPUを統一しているため結果も横並び……と言いたいところだが,RX 7900 XTXとRX 7900 XTは,若干ではあるが比較対象のGeForceシリーズより低い傾向が見られる。グラフィックスドライバのCPU負荷が,Radeonシリーズのほうが少しだけ高いのかもしれない。
GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果がグラフ4となる。
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これまでとは打って変わって,Fire Strike“無印”とFire Stike Extremeで,RX 7900 XTXがRTX 4080の後塵を拝してしまっている。RX 7900 XTもFire Strike“無印”でRTX 3090を下回っており,真価を発揮しているのはFire Strike Ultraのみという結果になってしまった。
グラフ3でRadeonシリーズのほうがグラフィックスドライバの負荷が高い可能性について触れたが,それゆえにCombined testでは,描画負荷が低い状況でスコアが伸び悩んだのではないだろうか。
次に,DirectX 12世代のテストである「Time Spy」の結果を見ていこう。グラフ5は,Time Spyにおける総合スコアをまとめたものだ。
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ここでのRX 7900 XTXは,RTX 4080を上回ったものの,その差は約3%程度だ。RX 7900 XTは,RTX 4080から5〜8%程度下回る結果となった。Fire Strikeに比べて,RX 7900 XTXとRX 7900 XTが伸び悩んでいる印象だが,これはGeForceシリーズのほうがTime Spyのスコアが高く出る傾向もあって,DirectX 12ではRTX 4090やRTX 4080のほうに分があるということなのだろう。
Time SpyにおけるGPUテスト結果がグラフ6,CPUテスト結果がグラフ7となる。
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まずGPUテスト結果だが,ここではRX 7900 XTXがRTX 4080に約4%弱の差を付ける一方で,RX 7900 XTはRTX 4080に9〜11%程度の差を付けられる具合で,総合スコアを踏襲した形となっている。
CPUテストの結果は,Fire Strikeとは異なりスコアが横一線となった。
もうひとつのDirectX 12のテストとなる「Speed Way」の結果がグラフ8だ。
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RX 7900 XTXは,RTX 4080に約21%もの差を付けられ,RX 7900 XTは,RTX 3090にわずかだが届いていない。Fire Strikeで良好な結果を示しているだけに,RX 7900 XTXとRX 7900 XTがDirectX 12のテストで伸び悩んでいる点には,若干の懸念を覚える。
リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ9となる。
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RX 7900 XTXは,RTX 4080に14%の差を付けられており,RDNA 3アーキテクチャでもレイトレーシング性能は,まだ競合製品に対抗できるとは言い難い。ただ,RX 7900 XTでもRTX 3090を上回っている点を見ると,RX 7900シリーズのレイトレーシングは,前世代から著しい性能向上を実現したと言っていいだろう。
しかし,もうひとつのレイトレーシングテストであるグラフ10の「DirectX Raytracing feature test」では,RX 7000シリーズが奮わない結果となった。
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RX 7900 XTXは,RTX 4080比で約59%のスコアしか発揮できておらず,RX 7900 XTに至っては,RTX 3090に約31%も差を付けられてしまっている。Port Royalでも見られたように,RX 7900シリーズにおけるレイトレーシング性能は,まだ手放しで称賛できるほどまでには至っていない。
それでは実際のゲームではどうなのか,「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」の結果(グラフ11〜13)を見てみよう。
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ここではCPUがボトルネックとなって,1920×1080ドットでは,フレームレートがまとまりつつある。そこで,ほかの解像度を見ていくと,RX 7900 XTXの平均フレームレートは,RTX 4080に5〜14%程度届いていない。
しかし,ここで注目したいのは1パーセンタイルフレームレートの結果だ。RX 7900 XTXは,RTX 4080に18〜29%程度の差を付けるだけでなく,RTX 4090をも10〜24%程度上回っている。つまり,本作におけるRX 7900 XTXは,平均フレームレートではRTX 4090に敵わないまでも,1パーセンタイルフレームレートでは逆転しており,ゲームの快適度ではRX 7900 XTXに軍配が挙がる。
RX 7900 XTも,1パーセンタイルフレームレートでRTX 4090を上回っているので,Marvel's Spider-Man: Miles Moralesは,RX 7900シリーズが良好な性能を示すケースと言ってよさそうだ。
続いて「モンスターハンターライズ:サンブレイク」の結果が,グラフ14〜16となる。
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2560×1440ドット以下の解像度であれば,RX 7900 XTXとRX 7900 XTは,RTX 4090以上の性能を発揮している。しかし3840×2160ドットになると,RX 7900 XTXの平均フレームレートはRTX 4080を下回り,RX 7900 XTの平均フレームレートもRTX 3090に肉薄されている。それは1パーセンタイルフレームレートでも同じ傾向で,本作におけるRX 7900シリーズは,4Kという高解像度では性能を発揮しきれない印象だ。
グラフ17〜19は「Call of Duty: Modern Warfare II」(以下,CoD MW2)の結果だ。
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RX 7900 XTXの平均フレームレートは良好で,RTX 4080に14〜22%程度の差を付けており,1920×1080ドットであれば,RTX 4090を約10%ほど引き離している点は評価できよう。RX 7900 XTの平均フレームレートも,1920×1080ドットではRTX 4090をわずかに上回っており,RX 7900 XTXやRX 7900 XTは,低めの解像度でフレームレートを稼ぎたいeスポーツ系のFPSやTPSのトレンドに合致したGPUと言えそうだ。
ただ,3840×2160ドットになると,先ほどのモンスターハンターライズ:サンブレイクと同様に,RX 7900 XTXの平均フレームレートはRTX 4090に約10%ほど離されてしまっている。その一方で,RX 7900 XTの平均フレームレートが,すべての解像度においてRTX 4080のスコアを上回っている点は注目に値する。
続くグラフ20〜22は,「Fortnite」の結果となる。
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ここでは,打って変わってRX 7900 XTXの平均フレームレートおよび1パーセンタイルフレームレートは,すべての解像度でRTX 4080に届いていない。RX 7900 XTの平均フレームレートは,RTX 3090に2〜9%程度の差しか付けれていない程度だ。Fortniteは,GeForceシリーズへの最適化が進んでいることもあるのか,RX 7900シリーズの最適化が足りていない様子だ。
RX 7900 XTXとRX 7900 XTにとってベストケースとなったのが,グラフ23〜25にまとめた「God of War」の結果だ。
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RX 7900 XTXの平均フレームレートは,1920×1080ドットであれば,RTX 4080はもとより,RTX 4090に約16%もの差を付けた。とくに1920×1080ドットでは,RX 7900 XTの平均フレームレートもRTX 4090を超えている点に注目したい。3840×2160ドットになると,RX 7900 XTXの平均フレームレートは,RTX 4080より約7%高い程度に差を縮められるものの,1920×1080ドットのような低解像度であれば,RX 7900シリーズはRTX 4090を凌駕する性能を備えている点は覚えておきたい。
グラフ26は,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
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本ベンチマークは,GeForceシリーズへの最適化が進んでおり,Radeonシリーズは毎度不利な戦いを強いられている。それはRX 7900 XTXやRX 7900 XTでも同じなのだが,RX 7900 XTXはRTX 4080との差を2〜7%程度まで縮めている点は評価できよう。RX 7900 XTも,RTX 4080には9〜17%程度ほど離されるものの,どの解像度でもRTX 3090は上回っているので,かなり善戦していると言っていい。
また,RX 7900 XTXとRX 7900 XTは,どちらもスクウェア・エニックスが指標で最高評価とするスコア1万5000を,3840×2160ドットでも上回っている点は注目しておきたい。
そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ27〜29だ。
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平均フレームレートは,総合スコアを踏襲しているが,最小フレームレートはCPU性能の影響が大きく,各GPUであまり差が表れていない。それでも,RX 7900 XTXとRX 7900 XTは,3840×2160ドットで最小フレームレートが60fpsを超えているあたりは見どころだ。
ゲームテストの最後となる「F1 22」の結果が,グラフ30〜32となる。
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ここでもGod of Warと同様に,1920×1080ドットの結果に着目したい。RX 7900 XTXの平均フレームレートは,RTX 4090に約23%もの差を,最小フレームレートでも約24%の差を付けている点は立派だ。RX 7900 XTも,1920×1080ドットではRTX 4090を上回っており,フルHDで強みを発揮するGPUと言っていい。
RX 7900 XTXとRX 7900 XTの消費電力はRTX 4080に比べると少し高め
RX 7900 XTXの「Board Power」(※カード全体の消費電力)は公称355Wだ。基準が異なるNVIDIAの「Total Graphics Power」(※GPUの消費電力)と比較するのは少々乱暴だが,RTX 4090よりはかなり小さいものの,RTX 4080よりは35W大きい値となっている。一方のRX 7900 XTは約315Wで,RTX 4080とほぼ横並びだ。
では,実際の消費電力はどの程度なのか,NVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。今回は3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向が出たGraphics test 2実行中の結果を示している。
なお,RTX 4090は補助電源コネクタに8ピンを4系統が必要となるため,3系統までしか対応していないPCATでは計測できず,ここではテストを省略している。12VHPWRに対応する新しいPCATも登場したのだが,今回のテストには間に合わなかった。
消費電力の計測結果をグラフ33に示そう。
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このグラフを見ると,RX 7900 XTとRTX 4080が300W付近で推移しているのに対して,RX 7900 XTXとRTX 3090は350Wあたりで,消費電力は大きめだ。
このグラフから,中央値と最大値を求めたものがグラフ34となる。
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RX 7900 XTXの中央値は約346Wで,RX 7900 XTの中央値は約308Wと,どちらもAMDが示すBoard Powerに近い数値となった。ただ最大値を見ると,RX 7900 XTXは,400Wに迫る勢いを見せており,最大値でも320W強のRTX 4080と比べると消費電力は大きめで,RTX 3090と同等と言ってよさそうだ。
一方のRX 7900 XTの最大値は360W弱と,RTX 4080よりは大きいものの,その差は34Wほどだ。
念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力も計測してみた。
ここでのテストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点をアイドル時としている。その結果がグラフ35だ。
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各アプリケーション実行時を見てみると,RX 7900 XTXは,RTX 4080よりも51〜87W程度高く,消費電力が大きいことに間違いはなさそうだ。また,RX 7900 XTの消費電力は,RX 7900 XTXより42〜62W程度低いものの,RTX 4080よりは20W前後大きい。
なお,AMDは電源ユニットに関して,RX 7900 XTXは定格出力800W以上,RX 7900 XTは750W以上のものが必要としており,電源ユニットに対するハードルはハイエンド市場向けGPUとしては低めだ。
最後にGPUの温度もチェックしておきたい。ここでは,温度を約24℃に保った室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。その結果がグラフ36だ。
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GPUごとに温度センサーの位置は異なり,また,温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの評価に意味はない。それを踏まえたうえでスコアを見ていくと,RX 7900 XTXとRX 7900 XTは,高負荷時でも70℃を下回っており,GPUクーラーの冷却性能はかなり高めだ。なお,アイドル時にはファンの回転が停止するため,温度が高めとなっている。
最後に筆者の主観であることを断りつつ,RX 7900 XTXとRX 7900 XTの動作音について触れると,どちらも非常に静かな印象を受けた。負荷がかかると,もちろん動作音はしてくるのだが,それでもCPUクーラーや電源ユニットのほうが動作音が大きく,RTX 4090 Founders Editionと比べても遜色ない内容のように感じられた。
価格対性能比ではRX 7900シリーズに軍配
消費電力と価格,性能のバランスが取れたRX 7900 XTに注目
まとめに入ろう。ベンチマークテスト結果から見るに,RX 7900 XTXはRTX 4090とRTX 4080のほぼ中間,RX 7900 XTはRTX 4080と同等かそれ以上に位置する性能を備えていると言っていい。とくに,フルHD解像度の液晶ディスプレイと組み合わせて,eスポーツタイトルを高フレームレートでプレイしたいといった用途には,RTX 4090やRTX 4080よりも,RX 7900 XTXやRX 7900 XTのほうが適していると言っていい。
その一方で,RX 7900 XTXやRX 7900 XTは4K解像度での性能に若干物足りなさもあり,そういった用途ではRTX 4090のほうが高いフレームレートでプレイできる。
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AMDが想定する税込の国内販売価格は,RX 7900 XTXが17万9800円前後で,RX 7900 XTが15万9800円前後となっている。RTX 4080搭載カードが,税込実勢価格20〜23万円で販売されているのに比べると,RX 7900 XTXはそれより2〜5万円ほども安く,RX 7900 XTに至っては,4〜7万円ほど差が開いている。RX 7900シリーズのお買い得感はかなり高い。
消費電力が抑えめで安価,それでいてRTX 4080と遜色ない性能を持つRX 7900 XTは,結構人気が出るのではないだろうか。
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