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[レビュー]第13世代のハイエンドCPU「Core i9-13900K」は,前世代やRyzen 9 7950Xをどれだけ上回れたのか
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印刷2022/10/20 22:00

レビュー

第13世代のハイエンドCPUは,前世代やRyzen 9 7950Xをどれだけ上回れたのか

Intel Core i9-13900K

Text by 米田 聡


 「Raptor Lake」(開発コードネーム)こと,IntelのデスクトップPC向け第13世代Coreプロセッサが発売となった。製品ラインナップと主な特徴は,発表時に紹介済みだが,おさらいすると,24コアの最上位モデルとなるCore i9のほか,16コアのCore i7,14コアのCore i5という計6製品が登場したわけだ。

 現行の第12世代と同じSocket LGA1700に対応していることもあり,対応マザーボードやメモリモジュールは,すでに多数出回っている。その点では導入しやすい製品なので,注目しているゲーマーも多いだろう。本稿では,第13世代Coreプロセッサの最上位モデルとなる「Core i9-13900K」を評価していく。

Core i9-13900K
メーカー:Intel
問い合わせ先:お問い合わせ
実勢価格:11万円前後(税込,2022年10月20日現在)
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 先ごろ発売されたばかりのRyzen 7000シリーズ最上位モデル「Ryzen 9 7950X」(関連記事関連記事2)も用意して定番のベンチマークテストを行い,2022年のゲーマー向け最強CPUはどれか,頂上対決を行おう。


Raptor LakeはAlder Lakeの改良進化版


 まずは,第13世代Coreプロセッサの特徴を簡単にまとめておこう。
 Intelは,開発コードネーム「Alder Lake」こと第12世代Coreプロセッサにおいて,性能重視の「P-core」と,消費電力あたり性能重視の「E-core」という2種類のCPUコアを集積した「ハイブリッドアーキテクチャ」を導入した(関連記事)。第13世代Coreプロセッサは,ハイブリッドアーキテクチャを受け継ぎつつ,E-coreの増量とより高いクロックでの動作,さらにキャッシュメモリの増量を図ったCPUだ。わりとストレートに高性能化を図った製品と言えよう。

 まず,E-coreの増量だが,Core i9/i7/i5のすべてにおいて,搭載コア数が2倍に増えた。Core i9-13900Kの場合,16基のE-coreを実装しており,P-coreと合わせて32スレッド対応となっている。ゲームのバックグラウンドで動くOSやドライバソフト,そのほかの常駐プログラムにP-coreを取られなくなるので,E-coreの倍増は効果が期待できる特徴だ。

E-coreが倍増したのが第13世代Coreプロセッサの大きなポイントだ
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 次の高クロック動作だが,第13世代Coreプロセッサは,前世代と同じ製造プロセスの「Intel 7」で作られている。ただ,Intelによると,名称は同じでも,第12世代Coreプロセッサのものよりも大幅に改良を加えているそうだ。
 それによって,第12世代Coreプロセッサに比べて,同じコア電圧ならより高い動作クロックで,また同じ動作クロックならより低い電圧で動作するようになっているという。CPUの消費電力は,ざっくり言って動作電圧の二乗とクロックの積なので,改良されたIntel 7によって電力効率が上がったと考えればいいだろう。
 第13世代Coreプロセッサでは,改良されたIntel 7の特性を使って,より高いクロックで動作させることにより高性能化を図っているわけだ。

スライドの右が電圧と動作クロックを示すグラフで,第12世代Coreプロセッサに比べると同じ電圧なら動作クロックを200MHz上げられ,同じ動作クロックなら電圧を50mV下げられるという
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 キャッシュメモリに関しては,L2キャッシュ,L3キャッシュともに容量が増加した。第12世代Coreプロセッサの場合,P-coreのL2キャッシュはコアあたり容量1.25MBだったが,第13世代Coreプロセッサでは,コアあたり容量2MBに増えている。一方,E-coreは,4コアをひとつのクラスタとして,クラスタごとにL2キャッシュを持つ構成なのだが,クラスタあたりのL2キャッシュ容量が4MBと倍増した。
 L3キャッシュも同様に増加しており,たとえば第12世代Coreプロセッサの最上位モデル「Core i9-12900K」は,L3キャッシュ容量が30MBだったが,Core i9-13900Kは36MBと,1.2倍に増えている。L3キャッシュの大容量化は,とくにゲーム性能の向上に寄与するので,ゲーマーにとっても期待できるポイントだろう。

 これらの強化に加えて,第13世代Coreプロセッサでは,CPU内部のコンポーネントをつなぐ内部ファブリックの動作クロックを引き上げたり,メモリコントローラがDDR5-5600に対応したりといった強化も行われている。もっとも,メモリクロックについては,Intelがオーバークロック向けメモリプロファイル規格「XMP 3.0」を推していたりもするので,公称のメモリクロック引き上げは,ユーザーにとっては,あまり大きな意味を持たないかもしれない。

DDR5-5600対応や内部ファブリックの動作クロック引き上げなど,足回りも強化された
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 なお,第13世代Coreプロセッサに合わせて,Intelは対応チップセットである「Intel Z790」を発表している。既存の最上位チップセットである「Intel Z690」に比べると,USB 3.2ポートの増加や,チップセット側から出ているPCI Express(以下,PCIe)4.0のレーン数が追加されたのが特徴だ。
 逆に言えば,それ以外はZ690と大差がないとも言える。Intelによると,Intel 600シリーズチップセットでも第13世代Coreプロセッサの性能を発揮できるそうなので,Intel 600搭載マザーボードでもゲーム用途には支障がないだろう。

第13世代CoreプロセッサとZ790チップセットの構成図
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Windows 11 22H2でテストを実行


 それではテスト環境を解説しよう。
 Core i9-13900Kのテストにあたり,比較対象として第12世代Coreプロセッサの24コアモデルであるCore i9-12900Kと,AMDのRyzen 7000シリーズから,32コアの最上位モデル「Ryzen 9 7950X」を用意した(表1)。

※1 Ryzen 9 7950XはCPUコアの動作クロックを示す
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Core i9-13900Kの表(左)と裏(右)
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 表1のとおり,Core i9-13900Kは,前世代に比べてP-coreの最大クロックが600MHz向上して最大5.8GHzと,6GHzの大台に迫っている。
 テストに使用した機材は表2のとおりだ。

※クリックすると詳細版を表示します
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CPU-Z(Version 2.02.0)で確認したCore i9-13900Kの主な仕様
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 押さえてほしいポイントは,テスト環境のOSに,最新のアップデートを適用した「Windows 11 22H2」を使用している点が挙げられる。これは,第13世代Coreプロセッサのテストに当たって,Intelが推奨しているためだ。
 Intelによると,第13世代Coreプロセッサに合わせて,Windows 11 22H2では,OS側スケジューラのアップデートを実施したそうだ。第12世代および第13世代Coreプロセッサは,ハイブリッドアーキテクチャを適切に使えるようにOS側スケジューラを支援する「Intel Thread Director」を備えており,Windows 11のスケジューラは,これに対応している。そしてWindows 11 22H2の新しいスケジューラは,AI処理を使用してスレッドのスケジューリングを行うことで,従来よりも高い精度で負荷に応じたP-coreとE-coreの使い分けを可能にするという。

 そのためIntelは,第13世代Coreプロセッサのレビューに当たって,Windows 11 22H2の使用を推奨しているわけだ。
 なお,新しいスケジューラは,第13世代Coreプロセッサだけでなく,第12世代Coreプロセッサに対しても有効である。Windows 11 22H2は,10月には全Windows 11ユーザー向けの配布が始まったので,Windows 11ユーザーなら誰でもWindows Updateから導入できる。

 そのほかの項目だが,Intel CPUのテストに使うマザーボードには,Z690チップセット採用の「ROG MAXIMUS Z690 HERO」を使用した。ROG MAXIMUS Z690 HEROは,2022年9月に登場したバージョン2004のBIOSで第13世代Coreプロセッサに対応したので,まったく問題なくテストに使える。

TUF GAMING X670E-PLUS
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 一方,Ryzen 9 7950Xでは,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)製のマザーボード「TUF GAMING X670E-PLUS」を使用している。TUF GAMINGブランドは,ROGブランドよりも安価な製品が主体のASUS製ゲーマー向けブランドで,本製品は,高い性能とシンプルな基本スペックを併せ持つマザーボードだ。

 また,メモリモジュールには,Ryzen 9 7950X/7900Xのレビュー時と同じものを使っている。ただし,対応メモリプロファイルの違い――IntelはXMP 3.0,Ryzen 7000はEPICに対応――があるため,Intel勢とRyzen 9 7950Xで異なるメモリモジュールを使用していることに注意してほしい。
 メモリクロックは,DDR5-6000設定で揃えたが,Ryzen 9 7950Xのメモリモジュールは,若干低レイテンシのメモリチップを使用しているので,とくにゲーム性能では,Ryzen 9 7950Xのほうがごくわずかに有利となる可能性はある。

 CPUの冷却には,ASUS製の大型簡易液冷システム「ROG RYUJIN II 360」を使用した。ファンおよびポンプの設定は,すべてのテストで最大の冷却性能が得られる「ターボ」プリセットを用いた。

 実行するテストは,4Gamerのベンチマークレギュレーション25準拠だ。ただ,Intelがリアルなユーザー環境を再現できるベンチマークテストを推奨していることを考慮して,「PCMark 10」の「Productivity」に代えて,UL Solutions製の商用ベンチマークソフト「UL Procyon」から,「Office Productivity Benchmark」(以下,Procyon Office Productivity)を実行することにした。

 Procyon Office Productivityは,Microsoft Office(※筆者が使用したのはOffice 365)をスクリプトで自動実行して,PCの性能を測定するベンチマークソフトだ。PCMark 10のProductivityと似たテストではあるが,世界的なシェアの低い「LibreOffice」を使うPCMark 10に対して,世界的に高いシェアを持つMicrosoft Officeを使った性能を測定できるのが,Procyon Office Productivityの利点ということになる。

 また,ゲームテストの解像度は3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3パターンとして,グラフィックス品質は高負荷寄りとしている。


Intelが強いタイトルでCore i9-13900Kが好成績を残す


 それでは,3DMark(Version 2.22.7359)の結果から見ていこう。グラフ1は,3DMarkのDirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアだ。

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 グラフィックスの負荷が高いFire Strike Ultraや同Extremeは,ほぼ横並びで,しいて言えばCore i9-12900Kがわずかに低い程度と評価していいだろう。一方,フルHD解像度相当のFire StrikeはRyzen 9 7950XがトップでCore i9-13900Kが最下位という,ある意味で意外な形になった。その理由を個別スコアで見ていくことにしよう。

 グラフ2は,Fire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアだ。

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 Graphics testはGPUのベンチマークテストなので,CPUでは差がほぼ出ない傾向になるが,描画負荷が低いFire Strikeでは,Core i9-12900Kがほかの2つに比べて,わずかに高いスコアを残した。Graphics testは総合スコアに反映される割合が大きいので,Core i9-13900KがCore i9-12900Kに届かなかった理由のひとつになっていると見ていい。

 グラフ3は,Fire StrikeのCPU性能テストとなる「Physics test」のスコアをまとめたものだ。

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 一目瞭然で,Physics scoreではCore i9-13900Kが頭ひとつ抜けている。平均値で比較すると,Core i9-12900Kに対して約1.21倍,Ryzen 9 7950Xに対しても約1.15倍のスコアを残した。Core i9-12900Kとの動作クロック比を考慮しても,それ以上に高いスコアなので,Physics scoreでは増量したE-coreが有効に機能したと見るのが妥当だろう。
 ちなみにIntelは,第13世代Coreプロセッサにおける推奨ベンチマークテストのひとつとして,Physics scoreを挙げている。このスコアを見ると,納得のいくところだ。

 もっとも,Fire Strikeでは総合スコアにおけるPhysics scoreの反映比率が低いので,ここでCore i9-13900Kが高スコアを出しても,総合スコアを逆転するには至らなかったということになる。

 グラフ4は,GPUとCPU両方に負荷をかけたときの性能を見る「Combined test」のスコアをまとめたものだ。

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 グラフのとおり,描画負荷が高いFire Strike Ultraや同Extremeはおおむね横並びだが,描画負荷が低いFire Strikeになると,Core i9-13900Kが明らかに低いスコアに留まった。総合スコアでCore i9-13900Kが振るわなかったのは,このCombined testの低スコアが大きかったようだ。
 なぜこうなるのかは,詳しい調査が必要なので突き止められていないが,倍増したE-coreが,Combined testにおいては逆に負のインパクトを与えた可能性がありそうに思う。Fire Strikeは,かなり設計が古いテストなので,ハイブリッドアーキテクチャにうまく適合しないのかもしれない。その点,比較的クセのないマルチコアCPUであるRyzen 9 7950Xが高スコアを残すのも,その傍証ではなかろうか。

 続いて,3DMarkのDirectX 12テストとなるTime Spyの総合スコア(グラフ5)を見てみよう。

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 Time Spy ExtremeではCore i9-12900Kがやや低め,Time SpyではRyzen 9 7950Xがやや低めという結果である。個別スコアも見ていこう。

 Time SpyのGPUテストとなるGraphics testのスコアがグラフ6,Time SpyのCPUベンチマークとなるCPU testのスコアがグラフ7だ。

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 GPUの性能テストであるGraphics testはおおむね横並びで,CPU testの結果が総合スコアに範囲されたことが一見して分かるだろう。
 CPU testでは,Time Spy ExtremeでCore i9-13900KのスコアがCore i9-12900Kを大幅に上回り,Ryzen 9 7950Xに迫る結果になっている。一方,Time Spyでは,Core i9-12900KとCore i9-13900Kがほぼ横並び。細かく見ると少しCore i9-13900Kのほうが低く,Ryzen 9 7950XはIntel勢に及ばずといった形だ。
 ここまで大きな違いが生じたのは,Time Spy Extremeでは「AVX2」までの拡張命令セットを使用しているが,Time Spyは「SSE4」までしか使わないことが理由と思われる。

 それを踏まえたうえで,Time Spy Extremeでは,Core i9-13900Kの高クロック動作や倍増したE-coreが何らかの形で貢献して性能を伸ばしたのだろうと推測できる。ただ,Time Spyのほうは,なんとも言えない結果だ。Core i9-12900Kを下回った原因はもう少し調査が必要だが,高クロック動作や倍増したE-coreの効果が見られないことは,ヒントになるだろう。
 Core i9-13900Kにおいて,最大クロックで動作するのは同時に2コアまでだ。よって,Time Spy実行時に複数のCPUコアを高負荷で駆動したことで,クロック上昇が抑えられたと考えられる。そのうえで,コア数が変わっていないP-core中心で処理が行われたという2つの条件が揃えば,Core i9-12900Kとあまり差がないスコアに留まることはあり得えよう。

 3DMarkを見る限り,Core i9-13900Kが好成績を収めたのがFire StrikeのPhysics scoreのみという,何とも微妙な結果になった。とはいえ,3DMarkのスコアがゲーム性能に直結するわけではないので,ゲームでのテストは異なる可能性もあろう。

 というわけで,ゲームテストの1本めとなるFar Cry 6の結果から見ていこう。グラフ8〜10が,グラフィックス品質「最高」設定の結果である。

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 3840×2160ドットはほぼ横並び,2560×1440ドットおよび1920×1080ドットではCore i9-13900Kがトップを取った。とくに1920×1080ドットでは,Core i9-12900Kに対して平均約13fpsも高く,CPU 1世代の差としては,かなり大きなフレームレートの向上と評していい。
 もっともFar Cry 6は,Intel製かつ世代の新しいCPUほど有利になりやすいタイトルではある。

 次に,バイオハザード ヴィレッジのグラフィックス品質「限界突破」におけるフレームレートを見てみよう(グラフ11〜13)。

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 平均フレームレートを見ると,3840×2160ドットはほぼ横並び,2560×1440ドットはCore i9-12900Kがやや高く,1920×1080ドットは,強いて言うならCore i9-13900K,Core i9-12900K,Ryzen 9 7950Xの順だ。とはいえ,差は2.5fps以内でしかない。バイオハザード ヴィレッジは測定時に操作が必要なので,手動操作によるスコアのブレも生じる。それを考慮すると,どの解像度も横並びと見るのが妥当な結果だろう。バイオハザード ヴィレッジはCPUによる差が見られなかったとまとめておきたい。

 続くグラフ14〜16は,Call of Duty: Warzone(以下,CoD Warzone) Season 2の高負荷設定におけるフレームレートだ。

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 バイオハザード ヴィレッジと同様に,CoD Warzoneも測定時に操作が必要なタイトルだ。手動操作によるブレを考慮すると,どの解像度も有意な差が出たとは言い難い。強いて言うなら,2560×1440ドットおよび1920×1080ドット時に,Ryzen 9 7950Xの最小フレームレートがやや高めに出ているので,Ryzen 9 7950Xが,ほかの2つよりわずかに快適かもしれない。

 Fortniteのグラフィックス品質「ウルトラ」設定におけるフレームレートをグラフ17〜19にまとめている。

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 Fortniteは,リプレイ機能を使うため,測定時に操作を行わない。それを踏まえたうえで見ていくと,3840×2160ドットはほぼ横並び,2560×1440ドットでは,Core i9-13900Kがわずかに低めで,1920×1080ドット時にはCore i9-13900Kがわずかに高い平均フレームレートを記録している。CPUの差は低解像度ほど出やすいので,ごくわずかだが比較対象に比べると,Core i9-13900Kが優秀と言えるかもしれない。ただ,その差は誤差の範囲だ。

 次に,Borderlands 3における「ウルトラ」設定の結果をグラフ20〜22で見てみよう。

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 3840×2160ドットと1920×1080ドットは横並びと評価していいだろう。2560×1440ドットの平均フレームレートには若干のばらつきが見られるが,1.6fps以内と差はわずかだ。CPUの性能差が出やすい1920×1080ドットが横並びであることから,全体的にCPUの差は見られないという評価で良いと思われる。

 グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ)の総合スコアをまとめたものだ。

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 3840×2160ドットは横並びだが,2560×1440ドットと1920×1080ドットでは,Core i9-13900Kが頭ひとつ抜けたスコアを記録した。とくに1920×1080ドットでは,Core i9-13900KがCore i9-12900KやRyzen 9 7950Xに対して約1.1倍も高いスコアを記録している。「GeForce RTX 3080」で3万3000台を叩き出したのは,筆者が知る限りCore i9-13900Kが初めてだ。
 FFXIVシリーズは,複数の描画スレッドを起動するタイプのゲームエンジンなので,おそらくは倍増したE-coreが効果を発揮したのではないかと推測している。一時,Ryzenに奪われていた「FFXIVベンチキング」(?)の座を,Core i9-13900Kが完全に奪い返したと評していいだろう。

 グラフ24〜26にFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめておこう。Core i9-13900Kが頭ひとつ抜けた平均フレームレートを記録しており,最小フレームレートも優秀だ。

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 ゲームテストの最後として,Project CARS 3の高負荷設定における結果をグラフ27〜29で見ていこう。

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 Far Cry 6と似た傾向で,CPU差が出やすい1920×1080ドットでは,Far Cry 6ほど極端でないにせよCore i9-13900K,Core i9-12900K,Ryzen 9 7950Xの順という傾向がはっきり現れた。
 Project CARS 3もまた,Intel製で最新のCPUほど有利になりやすいタイトルだ。Core i9-13900Kでもその傾向が継続して見えているとまとめていいだろう。

 ゲームによるテストをまとめると,Core i9-13900Kが有意に好成績を残したのは,Far Cry 6とFFXIV暁月のフィナーレ ベンチ,Project CARS 3の3タイトルのみだった。
 そのうち,Far Cry 6とProject CARS 3は,Intel製CPUで好成績が出やすいタイトルなので,Intel製CPUで性能が出るゲームであれば,Core i9-13900Kは,前世代よりも高い性能が期待できるという結論になってしまいそうだ。逆に言えば,Core i9-13900Kでフレームレートが伸びないタイトルも多くありそうで,無条件にゲームに強いCPUという評価にはならない。

 もうひとつ本題と外れるが,Ryzen 9 7950Xの成績が初回レビュー時より向上しているのも目立つところ。初回レビュー時はレビューアー向けのBIOSやドライバを使用したが,今回は発売後にAMDやマザーボードメーカーが公開した正式版のBIOSやドライバを使用した。さらにFortniteなど一部タイトルでは,Ryzen 7000シリーズ対応が行われた形跡もある。Ryzen 9 7950Xに低レイテンシのメモリを使用していることを割り引く必要があるが,これらの違いが奏功して初回レビュー時よりは実ゲームの性能を上げたようだ。結果としてRyzen 9 7950Xと競合の差が目立たないものになった。ここも押さえておきたいポイントだろう。


ゲーム録画では,前世代よりもわずかに優秀


テストに用いたOBS Studioの録画設定
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 続いては,レギュレーション25に準拠した「OBS Studio」(version 28.0.2)によるゲーム録画のテストを見ていこう。
 今回は,ビデオの録画解像度を2560×1440ドットにしたうえで,中程度の負荷となる高画質よりの「medium」プリセットと,「animation」チューニングを使用しつつ,「CRF」値を高画質よりの「19」まで引き上げることでCPU負荷を高めに調節する設定を使用した。

 なお今回から,録画に使用するタイトルを「Overwatch 2」に変更した。録画に使っている「練習場」は,ほとんど,というかまったく変わっていないが,グラフィックスの負荷が少し重くなっているようだ。そこを考慮して録画を見てほしい。


 やや重めの録画設定を使ったためか,Ryzen 9 7950Xではごく一部にフレームのカクつきが見られる。一方,Core i9-13900KとCore i9-12900Kでは,明確なフレーム落ちは見られない。左上に示されているフレームレートを見るとCore i9-13900Kのほうが,わずかにフレームレートが高めに推移するようだ。よって,Core i9-13900Kでは,ゲーム録画性能がわずかながら向上したと見ていい。
 ゲーム録画のような処理には,E-coreの倍増は効果があるだろう。重いエンコードスレッドをP-coreに回すことが容易になるからだ。そう考えると,Core i9-13900Kで,わずかにゲーム録画が軽くなったのは,理にかなっていると言えようか。


一般向けアプリで高い性能を見せるCore i9-13900K


 次に,レギュレーション25におけるゲーム以外のCPU性能を見ていこう。
 グラフ30は,「PCMark 10」(version 2.1.2563)のテストである「PCMark 10 Extended」から,カスタム実行により「Essentials」と「Digital Content Creation」のスコアをまとめたものだ。今回は,GPUを無効化するとトラブルが出ることがあるProductivityを含めていないので,レギュレーションどおりGPUを無効化している。

画像集 No.043のサムネイル画像 / [レビュー]第13世代のハイエンドCPU「Core i9-13900K」は,前世代やRyzen 9 7950Xをどれだけ上回れたのか

 アプリの起動速度やWebブラウジングの快適さを見るEssentialsでは,Core i9-13900Kが「11373」という,おそらく歴代トップのスコアを叩き出した。Ryzen 9 7950Xも好成績を残しているが,それを軽く上回るわけで,Windowsの操作はサクサクと考えていいだろう。
 Digital Content Creationのスコアも,GPUアクセラレーションをオフにしているにもかかわらず10000を超えた。かなり優秀と言え,CGレンダリングや画像処理といった分野でも,Core i9-13900Kは高い性能を持つと言えそうだ。

 続くグラフ31は,Procyon Office Productivityのスコアをまとめたものだ。

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 総合スコアのとおり,WordとExcel,PowerPointとOutlookのすべてでCore i9-13900Kがトップとなった。Core i9-12900K比では,約1.1倍のスコアを記録している。Procyon Office Productivityは,おおむね体感に近いスコアが出るので,Microsoft Officeにおいて,Core i9-13900Kは1割程度の性能向上を期待できるということになる。
 ちなみに,総合成績では次点がRyzen 9 7950Xであるものの,Outlookだけは振るわないのが興味深いところ。どうしてこうなるのかはなんとも言い難いが,Outlookで使用している命令セットによって,Intel勢とRyzen 9 7950Xの差がついたのかもしれない。

 次のグラフ32は,動画エンコードソフト「FFmpeg」(Nightly Build Version 2021-10-14-git-c336c7a9d7-full_build)による動画のトランスコード時間テストをまとめたものだ。

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 H.264では,僅差ながらCore i9-13900Kがトップでエンコードを終えた。H.265になると,Ryzen 9 7950Xには及ばなかったものの,約60秒遅い程度エンコードを終えている。Core i9-12900Kに比べれば,トータルで300秒以上のエンコード時間短縮を実現しており,総合的に見て,Ryzen 9 7950Xに迫るエンコード性能を持つCPUと評価していいだろう。

 グラフ33は,「HWiNFO64」を使ってFFmpeg実行中のCPUコア温度を,Core i9-12900Kと比較したものだ。今回は,8基あるP-coreのうち,最大を記録したコア温度をサンプリングしてグラフにした。

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 見てのとおり,Core i9-13900KとCore i9-12900Kは,頻繁に最大ジャンクション温度(Tjmax)である100℃に達するのだが,Core i9-13900KのほうがTjmaxに達する頻度が高い。というより,ほとんどTjmaxで動作していることが見て取れる。熱暴走の危険があるTjmaxを超えないよう,ギリギリに動作させているわけで,ある意味では神業的制御と言えようか。
 360mm長の強力な簡易液冷CPUクーラーを使ってこれなので,冷却システムの性能が低いと,Core i9-12300Kの性能は明確に落ちると見ていいだろう。Core i9-13900Kを使うなら,高性能な液冷CPUクーラーが必須であることは明らかだ。

 続いては,写真現像ソフト「DxO PhotoLab」シリーズの「DxO PhotoLab 5.5」(Version 5.5.0 Build4770)を用いたRAW現像時間を見ていこう。なお,本稿執筆中に「DxO PhotoLab 6」がリリースされたが,テスト中に変える時間もなかったので,今回は5.5のままテストしていることをお断りしておく。結果はグラフ34である。

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 グラフのとおり,Core i9-13900Kは,ほかの2製品に比べて短い時間でRAW現像を終えて,とうとう600秒(=10分)台という記録を叩き出した。このテストを使い始めた当時は,ハイエンドCPUでも60枚のRAW画像を現像するのに20分以上かかっていたので,それが半分以下になったと思うと,実に感慨深い。

 3Dレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R23」の結果がグラフ35である。

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 Core i9-12900K比で見ると,Core i9-13900Kは,シングルスコアで約1.2倍,マルチコアで約1.4倍のスコアを記録した。シングルスコアの成績は,最大クロック比率よりも高いので,おそらくはキャッシュメモリの強化などで上乗せされたのだろう。

 マルチコアテストのスコアは,Ryzen 9 7950Xに及ばなかったが,Ryzen 9 7950Xがトップに立っていたシングルコアのスコアを,Core i9-13900Kがわずかだが上回ったことは注目に値する。

 最後に,「7-Zip」(Version 22.01)の結果をグラフ36にまとめておこう。

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 前世代に比べると,Core i9-13900Kはスコアを上げているが,Ryzen 9 7950Xにはまったく及ばなかった。ただ,前世代比で見るとスコアは約1.4倍と大幅に高いので,CPU自体が高性能になったことは明らかだ。

 なおIntelは,7-Zipのベンチマーク結果と,実際のファイル圧縮や展開速度には差があると主張していた。とくに展開速度は,SSD性能で頭打ちになるから,どんなにベンチマークテストで好成績を収めても,実際はそれほど高速にはならないと釘を差している。ひねくれた見方をすれば,Core i9-13900KのスコアがRyzen 9 7950Xに及ばないことを見越したうえでの主張だったのかもしれない。

 一般向けアプリにおける性能を見てきたが,Core i9-13900Kは,前世代に比べ確実な性能向上を実現しているとまとめられるだろう。Ryzen 9 7950Xに対して優位かどうかはアプリによりけりとなるが,多くのアプリで肩を並べるか,上回る程度の性能を持つと言えそうだ。現時点でトップクラスの性能を持つデスクトップPC向けCPUであることは確かだろう。


消費電力はますますモンスターに


 さて,気になる人も多いだろう消費電力を見ていこう。ベンチマークレギュレーション25に準拠した方法で,アプリケーション実行中におけるCPU単体の最大消費電力をまとめたものが,グラフ37,38である。

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 ゲームのテストでは,Core i9-13900Kが3DMark実行時に275.5Wというずば抜けた最大値を記録した。ただ,これはおそらくCPU test実行時に記録したもので,ゲームにおける最大消費電力とは言い難い。
 それ以外のゲームで見ると,Core i9-13900Kは,CoD Warzone実行時に257.4Wを記録した。一方,Core i9-12900KもBorderlands 3時に262.2Wを記録しているので,最大値で見ると大きな差はないようだ。とはいえ,4タイトルでCore i9-13900Kの最大値が,ほかのCPUを上回っているので,Core i9-13900Kのゲーム実行時における最大消費電力は高いと見るのが妥当だろう。

 一方,ゲーム以外のアプリを見ると,Core i9-13900Kはほかに比べて明確に高い最大値を記録しており,Procyon Office Productivity実行時には,CPU単独として記録的な343.9Wを叩き出した。Procyon Office Productivityは全体的に高負荷なアプリというわけではないので,瞬間的にこの値を記録したのだろう。瞬時にこれだけの電力をつぎ込むわけだから,Procyon Office Productivityの成績が高いのも納得といったところだろうか。

 Core i9-13900Kのアイドル時における消費電力は,Core i9-12900Kに対して0.6W低いだけだった。ちなみに,Windows 11 22H2にアップデートすると,どのCPUもアイドル時の消費電力が高くなる傾向があったことは付け加えておきたい。それでもIntel勢は,10Wを切るので目立たないが,Ryzen 9 7950Xは40W弱までアイドル時の消費電力が上昇してしまった。Windows 11 22H2との組み合わせで,消費電力が高くなってしまう何らかの問題があるのかもしれない。

 グラフ39,40には,アプリ実行中の典型的な消費電力を示す消費電力中央値をまとめた。

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 ゲーム実行時から見ていくと,これまではCore i9-12900Kのほうが,Ryzenよりも中央値では低消費電力と言えたのだが,Core i9-13900Kでは,そうとは言えない。ゲームを見ると,4タイトルで中央値がRyzen 9 7950Xを上回ることから,ゲーム実行時の消費電力はRyzen 9 7950Xと同程度以上という評価になる。

 一方,ゲーム以外では,CPUに負荷をかけるとRyzenのほうが消費電力が低く,CPUに連続的な負荷がかからない状況ではIntelが消費電力が低いという傾向が見てとれる。PCMark 10やProcyon Office Productivityのように,実使用に近いベンチマーク実行時の中央値はなかなか優秀で,Ryzen 9 7950Xよりも典型的な消費電力が低いことが分かる。
 だが,FFmpegのように連続的な高負荷をかける処理になると,Core i9-13900Kは,Core i9-12900Kと同程度か上回る消費電力中央値を記録している。とくに7-zipでは,274.2Wという記録を叩き出しており,Core i9-13900Kに負荷をかけると,かなりの電力を消費することを覚悟しておく必要はあるだろう。

 消費電力テストの最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テスト実行時点におけるシステムの最大消費電力をグラフ41,42にまとめておこう。

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 システムの最大消費電力も,Core i9-13900Kは,多くのゲームタイトルで,ほかより頭ひとつ高い値を記録した。また,Procyon Office Productivityのような負荷が低めのベンチマークにおいても,Core i9-13900Kのシステムの最大消費電力がほかより高いことも注目すべき点だ。
 何より,極めて大きなシステムの最大消費電力を記録したのが,CPUとGPUの双方に高い負荷をかけるゲーム録画時だ。Core i9-12900Kの800W台にも驚かされるが,Core i9-13900Kはそれを超えて,820W弱を叩き出した。

 電源ユニットの余裕を考えると,筆者がテストに使っている1200Wの電源ユニットで対応できる上限に近いと考えていい。ご存知のとおり,「GeForce RTX 4090」という電力モンスターなGPUが登場しているので,これとCore i9-13900Kを組み合わせたら最大1000Wを超える消費電力を記録しても不思議はなさそうだ。
 そうなると,余力を考えれば1500Wクラス以上の電源ユニットが欲しくなる。デスクトップPCの世界もとんでもないことになってきた。


第12世代を素直に高性能化したCore i9-13900K


 まとめに入ろう
 4Gamerで最重要となるゲーム性能において,Core i9-13900Kは,現状で最も優れた性能を有すると結論できる。とはいえ,Core i9-12900KやRyzen 9 7950Xに比べて,圧倒的に高性能と言うほどではない。一部のタイトルで高いフレームレートを記録することから,今後,ゲーム側の対応次第,たとえば倍増したE-coreを有効に使うゲームが登場するといったことがあれば,Core i9-13900Kのゲーム性能はより向上していくかもしれない。

 一方,ゲーム以外では,Core i9-12900Kから確実に性能を上げており,前世代からの乗り換えでも,高性能化が実感できるはずだ。とはいえ,競合のRyzen 9 7950Xに対しては微妙なところで,明らかに上回るとまでは言えない。それでも,多くのアプリでRyzen 9 7950Xと同等か,ときには上回る性能が期待できるだろう。

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 全体的には,ハイブリッドアーキテクチャの癖や負荷をかけたときの強烈な消費電力を含めて,第12世代Coreプロセッサをそのまま高性能化した製品というイメージが強い。これらの癖を許容できるゲーマーなら,Core i9-13900Kを選ぶ価値はある。

 気になるのは価格だろうか。Ryzen 9 7950Xが11万円台後半の価格を付けているのに対して,Core i9-13900Kも本稿執筆時点での予価が11万円前後となっている。Ryzen 9 7950Xを導入するには,マザーボードやメモリモジュールも買い換える必要があるとはいえ,第12世代Coreプロセッサを導入済みのユーザーがアップグレードする場合を除けば,Core i9-13900Kを導入するときにもマザーボードの買い換えが必要となる(※DDR4メモリ対応のマザーボードを使えば,メモリは使い回せるが)。
 高性能ではあるものの,Core i9-13900Kが価格に見合ったアップグレードの選択肢となるかどうかは,微妙なところかもしれない。

IntelのCore i9製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    第13世代Core(Raptor Lake)

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