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印刷2022/11/30 08:00

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2万1000人の来場者が集結した「ゲームマーケット2022秋」総まとめ。CMON Japan 健部氏へのインタビューも

 2022年10月29日と30日に開催された,アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2022秋」
 東京ビッグサイトの西館から東館へと会場を移しての開催となった今回だが,公式発表によれば両日合わせての来場者数は2万1000人と,2022年春の1万6000人と比べ,1.3倍ほどの人出となった。とはいえ会場の面積が広がったこともあってか通路は大きく確保され,今回から復活した試遊卓のスペース増を考えても,それほど窮屈ではない印象だった。

会場の様子。一般入場が始まるころには休憩スペースも含め,多くの来場者で賑わった
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 ゲームマーケットの事務局長を務めるアークライトの刈谷圭司氏によれば,全体の傾向としては,インディーズでも5〜6000円クラスの高単価な製品が増えている印象という。クラウドファンディングを経て制作されるタイトルが増加したことで,そうしたタイトルが生まれやすくなってきているのかも,とのことだった。
 一方で,ゲームマーケットでは「ゲームマーケットチャレンジ」というコーナーを設け,トレンドに流されないゲーム制作を応援する動きも見せている。これは毎年春のゲームマーケットで“お題”を発表し,これに対応した作品をコーナー展示するという試みという。今回のお題は“カード枚数が32枚以下の小規模タイトル”だそうで,こちらは価格的にも1000円前後のものが多くなっていると話していた。

※“お題”の詳細内容は公式サイトを参照のこと。

「アークライト・ゲーム賞」コーナー。ここには「アークライトが商品化するなら」という観点から選ばれた作品が展示・表彰されている。後述する「HacKClaD」も,その一つだ
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今回の“お題”に沿った参加作品が展示される「ゲームマーケットチャレンジ」コーナー。今回は100点ばかりの作品が出品されていた
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 本稿では,これまでの記事で取りこぼしていたブースやタイトルについて,まとめて紹介していく。またCMON Japanの健部伸明氏に話を聞いたインタビューも掲載しているので,こちらもお見逃しなく。掲載が遅くなってしまったが,先に掲載した記事と合わせ,今回のゲームマーケットを改めて振り返ってもらえたら幸いだ。


「超精密スーパーカー消しゴム」などを販売しているGGF-Tブースで開催されていた「第1回スーパーカー消しゴム落とし大会」。変速ギア付きの「消しゴムブースターペン」も用意されるなど,本気度がうかがえるイベントとなっていた
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「ヨフカシプロジェクト」第4弾「破宮のデクテット」は早々に完売。第1弾〜3弾までのタイトルも特別価格で販売中だった
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「ゲームマーケット」公式サイト



アークライトブース


 ゲームマーケットの主催も務めるアークライトのブースでは,多数の新作が展示され,その場での購入も可能となっていた。

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 中でも注目は,人気コミュニケーションゲーム「ito」の続編にあたる「ito レインボー」だ。
 1〜100の数字をお題に沿った言葉で“たとえ”,数字の小さい順に並べていく「ito」だが,「レインボー」ではカードのデザイン変更や,自分の出したカードを明示するためのコンポーネント“クリスタル”の追加で,遊びやすさが向上。さらに大人数向けのチーム戦モードも登場し,さまざまなシチュエーションで楽しめるタイトルとなっていた。

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隣接した小学館ブースでは,コロコロコミック版「ito」の制作も発表され,そちらの壁を使ったブース間コラボも行われていた。このときのお題は「冷蔵庫の中にあったらテンション上がるもの」で,来場者が思い思いの回答をポストイットに書き込み,ランク付けて貼り付けていた
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 またブース内では,「Kaiju on the Earth」シリーズの最新作「クアント」や,拡張パック「東洋の翼」が制作中の「ウイングスパン」関連記事)などがピックアップされ,展示が行われていた。

「Kaiju on the Earth」シーズン2の第1弾「クアント」は,1人でじっくりと遊べる怪獣災害戦略ボードゲーム。2〜3人で遊べる協力ルールも用意されているとのこと
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「ウイングスパン」は,ブース内に大型の撮影用ブースが設置されていた。土足OKとのことで,ボード上で撮影するファンの姿も
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会場でお披露目されていた新作「ヴェルダント」は,観葉植物を適切に配置して,快適な空間を目指す1〜5人用パズルゲーム。猫にとって快適な空間を作る「キャリコ」の流れを汲むタイトルで,発売は2023年内を予定している
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“競り”とワーカープレイスメントを融合させた傑作「キーフラワー」が,アークライトから再版されることに。名作として知られるタイトルだけに,またプレイできる環境が用意されるのは喜ばしい


遊陽ゲームズ「HacKClaD」ブース


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 美麗なアートワークが目を惹く「HacKClaD」は,遊陽ゲームズの制作による1〜4人用のデッキ構築型の戦略シミュレーションゲームだ。Kickstarterでのクラウドファンディングで1000万円以上の支援を受けて制作された本作は,前回のゲームマーケット2022春でも人気を集め,アークライト・ゲーム賞2022で佳作の一つに選ばれるなど高い評価を獲得している。
 今回の出展では,その拡張セットにあたる「HacKClaD CROSS FATE」が発売となり,多くの来場者がブースに足を運んでいた。

開場間もない時間帯の「HacKClaD」ブースの様子。新作を求め,長蛇の列が形成されていた
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 本作は未来視の能力を持つ“魔女”達と,“クラッド”と呼ばれるモンスターの戦いを描いたタイトルだが,面白いのはシンプルな協力プレイゲームではなく,対戦ゲームであることだ。ゲームの目的はクラッドを倒すことでなく,魔女の中で最大の戦果をあげることにあり,プレイヤーはそのためにクラッドを攻撃したり,ダメージを回避したり,あるいは個人ミッションの達成を狙うことになる。
 この辺りの意図をゲームデザイナーのかく氏に聞いてみたところ,対戦ゲームにストレスを感じてしまう人でも遊びやすいゲームとしてデザインしたという。プレイヤーがお互いを直接攻撃し合うのではなく,それでいて相互にインタラクションが発生するゲームシステムを考えたとき生まれたのが,共通の敵であるクラッドだったそうだ。

デッキ構築ゲームゆえのコンボの壮快感や,事前にプロットされる敵の行動(これが未来視とされる)を読んで行動する戦略性,そしてそれでも予想外が起こりえるダイナミクスが魅力の「HacKClaD」。コンポーネントもまた大型で,豪華な内容となっている
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 拡張セットである「HacKClaD CROSS FATE」では,プレイアブルな2人の魔女が追加されるほか,新たな能力を持つクラッドも登場。さらにはプレイヤーが力を合わせてクラッド討伐を目指す“完全協力モード”も追加され,「HacKClaD」がより深く楽しめるという。また,かく氏によれば今後さらなる拡張セットを展開する計画もあるそうなので,お楽しみに。
 さらに「HacKClaD」をまだプレイしていない人に向けても,「これまで重量級のゲームにおよび腰だった人にも手に取ってもらいたい」とも語っていたので,気になった人はこの機会にぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。


「HacKClaD CROSS FATE」公式サイト



すごろくやブース


 高円寺と神保町に店舗を構える老舗のボードゲーム専門店「すごろくや」のブースでは,同社が販売を手がける3タイトル――「音速飯店」「ビストロ・コスモポリート」「ポンジスキーム」の体験コーナーがそれぞれ設けられ,試遊する来場者で賑わっていた。

 「音速飯店」は,「チャー」「ハン」「シュー」「タン」「メン」などの文字が書かれたカードを,つなげて料理名になるよう場に出していくアクションゲームだ。手番などの概念はないので,シンプルにスピード勝負となる。
 「ビストロ・コスモポリート」は,ウェイター役がスマホアプリから流れるお客の注文を聞いて,その料理のレシピから必要な食材を集めていく伝言ゲーム風のパーティーゲームだ。ただし料理名はさまざまな言語で読み上げられるのでまず聞き取ることからして難しい。
 「ポンジスキーム」は,投資自転車操業詐欺をテーマにした売買交渉ゲームだ。やがてくる破産を先送りにしつつ,勝利点となる産業タイルを集めていく。

音速飯店
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 すごろくやの担当者によれば,今回の出展は会場で遊んだ楽しさを持ち帰ってもらうのが目的だという。展示や物販よりもゲーム体験に重点を置いた,とてもボードゲーム専門店らしいアプローチでもあり,ゲームマーケットの出展形態としては理想的と言えるかもしれない(とはいえ,新作の「音速飯店」や定番ゲームなどは購入も可能だった)。

ビストロ・コスモポリート
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 なお,すごろくやの高円寺本店は2022年12月2日に吉祥寺に移転となり,リニューアルオープンを予定している。面積も広くなり,入りやすい店舗になるとのことなので,近隣の読者は一度足を運んでみるといいだろう。

ポンジスキーム
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すごろくや公式サイト



ミニュチュアゲームの再興を目指すCMON Japanの挑戦


 4Gamerでも10月26日に掲載した記事で,公式サイトのオープンをお伝えしたCMON Japanだが,残念ながらというか当然というか,今回のゲームマーケットへの参加はなく,ブースも用意されていなかった。しかし会場で同社のディレクターを務める健部伸明氏に話を聞くことができたので,その模様をお届けする。

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 ボードゲームメーカーのCMONは,同社の日本法人にあたるCMONJAPANを2022年8月に立ち上げたことを発表し,2022年10月26日にTwitter公式アカウントを公開した。Twitter公式アカウントでは「ローカライズだけでなく,英語版の販売も行います」といったアナウンスが行われている。

[2022/10/26 18:23]

 CMONと言えば,日本でもアークライトから発売された「ゾンビサイド」シリーズや,「Blood Rage」「Rising Sun」といったミニチュアを使った大型タイトルで知られるメーカーだ。そこに「グルームヘイヴン」の翻訳/監修を手がけた健部氏が参加するのだから,今後の台風の目になることは想像に難くない。一体どういう経緯があったのだろうか。

健部伸明氏。つい先日までアークライトに所属していたが,現在はCMON Japanでディレクターを務めている
画像集 No.009のサムネイル画像 / 2万1000人の来場者が集結した「ゲームマーケット2022秋」総まとめ。CMON Japan 健部氏へのインタビューも

CMON JAPAN 公式サイト


4Gamer:
 今日はお時間をいただき,ありがとうございます。今回はCMON Japanが活動を開始したとのことで,ディレクターとして名を連ねている健部さんに,今後の活動についてお話いただければと思います。

健部氏:
 CMONはシンガポールに本社を置いているアナログゲームメーカーで,CMON Japanはそのアジア部門の管轄下の会社ということになります。「Cool Mini Or Not」の頭文字を取ってCMONなので,つまり「かっこいいミニチュアがなかったらゲームじゃねえよ」みたいな会社ですね。

4Gamer:
 日本では「ゾンビサイド」などで知られたメーカーですね。続編がなかなか出ませんが(笑)。

健部氏:
 そうなんですよ! だから本腰を入れるためにCMON Japanを作ろうとなったわけです。ミニチュアゲームって,日本で出そうと思うとやっぱりハードルが高くて。単価であったり理由はいろいろですけど,どうしてもラインナップが“軽い”ゲームに偏ってしまいがちです。それはそれで嫌いではないですけど,自分としてはがっつりゲーマー向けのものを出したい。そう思っていたときにちょうど声を掛けてくれたのが,CMONだったわけです。

ゾンビサイド ブラック・プレイグ
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4Gamer:
 では今後は「ゾンビサイド」のようなミニチュアゲームが,日本でも続々登場すると考えていいのでしょうか。

健部氏:
 出したいです! ただ日本市場に向く/向かないは当然あるので,日本語版として出すタイトルは選ぶ必要があります。でも固定ファンは絶対いるわけだから,日本語版にこだわらなくてもいいんじゃないかって。

4Gamer:
 それはつまり,「日本語マニュアル付きの英語版」ということですか?

健部氏:
 そうです。今ならウェブ上にもルールブックやカードリストなんかを掲載するような形が良さそうです。とにかく日本じゃ遊べないという状況を変えたいですし,CMON Japanなら並行輸入のものを買うより断然安く提供できる。誰も損をしないじゃないですか。

4Gamer:
 なるほど。なら例えばですけど,「CYBERPUNK 2077: GANGS OF NIGHT CITY」なんかも,期待していいでしょうか。

健部氏:
 ……個々のタイトルを出すと怒られちゃうから言えませんけど,当然出したいです!

4Gamer:
 ではCMON Japanからは少し離れるのですが,健部さんといえば最近では「グルームヘイヴン」関連の仕事で知られていますよね。となると,続編である「フロストヘイヴン」がどうなってしまうのか,気になっているファンも多いと思うのですが……。

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健部氏:
 僕,“グルームヘイヴンおじさん”は公言してますけど,“フロストヘイブンおじさん”とはまだ言ってないからね(笑)。ただ,そこはAsmodeeとアークライトの契約なので,僕がどうこうできる話じゃないわけです。やりたい気持ちはありますし,CMON Japanとしてお手伝いできるなら関わりたいですが,まだどうなるか分からないですね。

4Gamer:
 ではこれまでの健部さんの仕事は,今後すべてCMON Japan名義になるわけですか。

健部氏:
 僕は今,三つの立場で動いてまして,その一つにCMON Japanのディレクターがあります。そして「ヤポンブランド」として日本のゲームを海外に出していく仕事がもう一つ。あとは物書きや翻訳家っていう,いわゆる作家としての自分ですね。
 ヤポンブランドとしての活動は,CMON Japanと話し合った結果,かなり強力にコラボレーションしていく形になりつつあります。さっきも言ったとおり,CMON JapanはCMON Asiaの直轄なので,まずは日本のゲームをアジア圏――とくに東南アジアに広めていこうと考えています。

4Gamer:
 東南アジアですか。

健部氏:
 東南アジアは日本のコンテンツとの親和性が高いんですよ。英語にローカライズしてCMON Asiaに持っていったら,なんで日本語のまま持ってこないんだって怒られたくらい(笑)。
 もちろん,そこからヨーロッパ,アメリカなんかにも広げていくつもりです。ここ3年ブース出展できていなかったEssen Spielにも,2023年は絶対出します。だからここゲームマーケットに出展していて海外に出て行きたい人は,ぜひヤポンブランドまで連絡してください。

4Gamer:
 分かりました。では最後に4Gamer読者に向けたメッセージをいただけますか。

健部氏:
 さっき言ったことに集約されますけど,まずは“ちゃんと”出していきますので,そこは信用してもらえたらと思います。例えば「基本セット出ました。拡張出ました。でもその次は出ません」って,よくあるじゃないですか。そういうことは絶対にしません。もしかしたら「完全日本語版」ではなくなるかもしれないけど,最後までサポートします。お楽しみに!

4Gamer:
 期待しています。本日はお忙しいところ,ありがとうございました。



 なお,CMON Japanの公式サイトでは,現在「所信表明」と題した健部氏のコメントが掲載となっている。同社の動きが気になる人は,こちらもぜひチェックしてみよう。

CMON JAPAN 所信表明


 次回「ゲームマーケット2023春」は,2023年5月13日と14日に開催される予定だ。会場は再び西1・2ホールに戻るとのことだが,回復傾向にある来場者数は次回もさらに伸びることが予想される。ボードゲームにカードゲーム,さらにはテーブルトークRPGからマーダーミステリーまで,さらに盛り上がりを続けるアナログゲームの祭典に期待しておこう。

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