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印刷2024/12/11 15:10

プレイレポート

[プレイレポ]「ペルソナ5: The Phantom X」クローズドβテストで見せつけられた,圧倒的な熱意。プレイフィールはほぼコンシューマゲームのそれだ

 アトラス,セガ,Perfect World3社の共同開発によるペルソナシリーズ最新作「ペルソナ5: The Phantom X」iOS / Android / PC 以下,P5X)のクローズドβテストが,2024年11月29日から12月5日にかけて開催された。

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 シリーズとしては初の運営型タイトルということで,果たしてどんな内容になるのかが気になっている――というより,そもそも「運営型タイトルの形式でペルソナを表現できるのか?」と疑問を感じている人もいるのではないだろうか。

 アーティスティックな映像表現に目を奪われがちな「ペルソナ」シリーズだが,完結する物語であることを前提とした緊張感のあるストーリー展開や,限られた時間の中を過ごす生活感も大きな魅力だ。そうした「ペルソナらしさ」と,運営型タイトルのプレイスタイルの印象には小さくない乖離がある。

 今回4GamerはCBTに参加し,P5Xがそのギャップをどう埋めたのかをチェックしてみた。なお,今回のプレイにはPC(Steam)版を用いている。


「ペルソナ5:The Phantom X」公式サイト



「P5X」は「P5」の世界を広げる意欲作
まずはネタバレなしの結論から


 具体的な内容に触れるまえに,まずはネタバレを含まない結論から書いておこう。先述のとおりP5Xは運営型タイトルだが,その土俵の上で「ペルソナ5らしい体験」をプレイヤーに与えようという,強い熱意を感じる作品だった

 ストーリーに関してもとってつけた感じはなく,想像が膨らむ独自の要素を持ち込みつつ,しっかりとP5の世界を広げてくれるような流れになっている。明らかにP5と同一の世界でありながら,シリーズファンが知るそれとはやや異なる展開を見せてくれるため,遊ぶほど「これがどうP5とつながるのか」と興味が湧き上がってくる。

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 プレイフィールもP5に近づけられており,ガチャなどのアイコンは主張しない位置に収められ,探索中の画面に不要な要素を表示しないなど,いわゆる“運営型ゲーム的な要素”を視界から外すよう工夫されている。そのため,特に序盤は運営型ゲームを遊んでいるという印象を感じなかった。

 特にアドベンチャーパートの出来はすさまじく,演出や物語の密度はまさにコンシューマゲームのそれ。あまりにしっかり作られているものだから,遊んでいて「本当にこれを運営型タイトルとして作り続けられるのか?」と不安になってしまうほどだ。

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 一方,異世界と現実世界の行き来がかなり自由になっていたり,戦闘シーンのオート&倍速機能が強化されていたりと,プラットフォームに合わせた調整はキチンと施されている。このあたりの塩梅はさすがというべきだろう。

 クローズドβテストなので物語の全容には触れられなかったが,P5シリーズファンの目線からは「遊んでおきたい」と思える内容になっているように思う。正式リリース時にどんな展開が待ち受けているのか,ちょっと怖いところだが,楽しみに待ちたいところだ。


スクショだけ見たらほぼP5の画面
ADV&生活パートの“P5感”は圧巻


 ここからは,具体的な内容について触れていこう。序盤のストーリーの内容や一部キャラクターへの言及が含まれるので,気になる人は注意してほしい。

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 P5Xの主人公は,東京に住む普通の学生だ。特に不自由ない生活を送っていたはずだったが,日々の中で小さな違和感を覚えはじめていた。そんなあるとき,電車内である事件に巻き込まれ,禍々しい異世界「メメントス」へと放り込まれてしまう。

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 メメントスへと主人公を導いた「ルフェル」によると,現実のほとんどの人間は“欲望”を奪われてしまっているのだという。人間の集合的無意識が作り出したメメントスと,そこに跋扈する怪物「シャドウ」たちは,そうした欲望が奪われる原因になっているようだ。

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 シャドウと相対した主人公は,自らの奥底から奪われた欲望と向き合い,それを奪い返す決断を下す。それにより,心の奥底でくすぶっていた心の力「ペルソナ」が覚醒。ルフェルと共に,人々の欲望を奪うシャドウとの戦いに挑むことを決意するのだった。

ペルソナや怪盗の概念については基本的にはP5と同じだが,一部にはルフェル独自の解釈が含まれているようだ
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メメントスでは「ジョーカー」(P5主人公)も登場したが,主人公たちを助けた後に姿を消してしまった。P5Xの物語で“心の怪盗団”がどう描かれるかは,今後の展開を左右する重要な謎になりそうだ
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 ……と,さらっと要約してみたが,そこに至るまでの間には主人公の生活がしっかりと描写される。シリーズに初めて触れる人であればざっくりとした世界設定を理解し,P5シリーズのファンであれば「ここはP5と同じ東京なんだ」と理解できるだろう。

 作り込まれた3Dマップやキャラクターを生かしたADVパート,自由に歩き回れる探索パートの“P5感”は極めて完成度が高く,非常に遊びやすく,ガチャやイベント報酬といった一部の要素を除けば,本当にコンシューマゲームのような内容だ。

細かなウインドウやマップの雰囲気,ADVパートの要所で見られる目線カットイン,擬音表現など,P5らしさが感じられる要素が随所に盛り込まれている
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要所にはP5さながらのアニメーションが挟まれ,3Dのキャラクターを使った演出も挟まる。ADVパートや探索パートのクオリティと相まって,感覚としてはP5のスピンオフか新規DLCを遊んでいるようだった
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 ゲームの基本的な流れは,これまたP5とだいたい同じだ。主人公は学生としての日常生活と,怪盗団としてのメメントスでの戦いの両方をこなさなければならない。

 P5と大きく異なるのは行動力と体力の概念だ。これらは「日常生活」と「怪盗活動」のそれぞれに使えるリソースで,一般的なスマートフォン向けゲームにおけるスタミナにあたる。

 「日常生活」では“行動力”を消費し,勉強やバイトといったアクティビティに加え,キャラクターとの交流などに活用できる。1日(リアルタイム)に溜まる行動力には限度があるので,どこに注力するかはプレイヤー次第というわけだ。

お金は現実世界でしか稼げないので,メメントスでの活動とは別にアルバイトをするのも大切だ
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P5で「コープ」と呼ばれた交流要素は,本作では「シナジー」と名前を変えている。アルカナでリンクしたペルソナを強化する要素ではなく,それぞれが固有の効果を発揮してくれる形式となった
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 「怪盗活動」では“体力”が必要になるが,これはメメントスに潜るだけでは消費されない。素材を集めるための特別なエリアに侵入したり,新たなペルソナをアンロックしたりするのに必要なもので,ストーリーの攻略を縛ることはない。

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 メインストーリーでは,メメントス内部に形成された巨大なダンジョン「パレス」を攻略することになるが,それを行うにあたっての時間制限などは存在しない。P5におけるカレンダーの概念は撤廃されており,自由なタイミングで攻略を進められる。

 時間制限がないので,キャラクターとの交流を取り逃がす心配もない。「この日までに攻略できなければ破滅!」という状況で計画を立てるのがシリーズの楽しさでもあったので,やや寂しく感じられる部分もあるが,そこは一長一短といったところだろうか。

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 ちなみに操作については,PC版はキーボード&マウスのみに対応しているとのことだが,ゲームパッドをつないでみたところ,問題なく認識した。P5でゲームバッドに慣れている人にとっては,こちらの方が操作しやすいかもしれないが,公式では非対応とのこと。バトルやメニューにおける操作で「現在行える操作のすべてにボタンが割り当てられている」場面もあるなど,ゲームパッドへの最適化が行われているわけではないので,注意してほしい。


1MORE関連の仕様が調整されたバトル
戦略性を維持しつつ,よりスピーディに


 バトルについてはP5のシステムに近くなっている。弱点を突いて敵をダウンさせ,「1MORE」(連続行動)を発生させるのが戦略のキモとなっている。もちろん,敵全員をダウンさせて大ダメージを叩き込む「総攻撃」も健在だ。

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 もっとも大きな変更点は「1MORE発生時の行動内容」「主人公が装備可能なペルソナ数」の2点。いずれもプラットフォームの変化に合わせ,よりテンポ良くゲームを遊ぶために調整された部分という印象だ。

 まずは,1MORE発生時の行動内容から見ていこう。P5では任意のキャラクターに“バトンタッチ”を行い,そこから自由にコマンドを選べたが,本作ではバトンタッチ相手が自動で「1MORE専用の行動」を取るようになった。

 たとえば,ルフェルはバトンタッチ時に炎属性のアクションを実行するように設定されている。炎属性が弱点の敵がいる場合は自動的に狙ってくれるので,主人公は炎属性以外を弱点に持つ相手の弱点を突いて,あとはルフェルに任せる……。といった考え方で戦いを進めることになる。

 ちょっと不自由にも感じるかもしれないが,敵全員の弱点を突ける環境であれば基本的には総攻撃を狙うので,むしろ戦闘のテンポが良くなって遊びやすい。もちろん,演出のクオリティはいわずもがななので,繰り返し遊びやすい配慮がなされているのは嬉しいところだ。

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 主人公が装備可能なペルソナ数については,最大3枠と大幅に縮小されている。装備しているペルソナは戦闘中に切り替えられるが,戦闘中に繰り出せる属性ダメージの種類が限られることになるので,主人公に頼りすぎないパーティ構成を考えるのがより大事になってくる。

 そのぶんペルソナの収集自体は容易になっており,シャドウの撃破時に自動でペルソナとして仲間に加わってくれる形となった。戦闘をこなしていれば必ず一定数のペルソナが集まるので,メメントスの探索を回す重要性はより高まっているといえる。

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 ペルソナ同士を合体させ,新たなペルソナを生み出すシステムもしっかり用意されている。

 ただし,シリーズにおけるアルカナの概念が存在しないため,指定されたペルソナ同士を組み合わせることで,目的のペルソナを完成させる仕組みとなった。シリーズに慣れている人であれば,ペルソナ合体がすべて「集団ギロチン」(特殊合体)に近い形式になったと考えれば分かりやすいだろう。

 そのかわり,余ったペルソナを使って既存のペルソナにスキルを継承させるなど,所持しているペルソナの使い道は増えている。収集によって戦力が向上するのは間違いない。

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 キャラクター本体やペルソナの育成要素については,やや“ソーシャルゲーム的”な仕組みが取り入れられている。契約(いわゆるガチャ)は「キャラクター」と「武器」に分かれており,いずれも強化アイテムを投入してレベルを上げる必要がある。

 属性相性の噛み合わせが重要になるゲーム性であるが,クローズドβテストの範囲内では,ストーリー上で登場するキャラクターと“契約から出たキャラ”との能力差を大きく感じることはなかった(主要キャラも契約から登場する)。このあたりのバランスは正式リリースを迎えてみなければ分からない部分なので,うまい調整に期待したいところだ。

ストーリー上で直接登場していないパーティメンバー(主に契約から入手できるキャラクター)は,主人公が認知した人物を具現化した認知存在「怪ドル」ということになっている。怪ドルは「ペルソナDuo」を操り,主人公たちの戦闘をサポートしてくれる
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武器の強化度合いは,新しい武器に引き継ぐことができる。複数の武器を大量に強化する必要はない
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 冒頭で述べたとおり,本作からは“運営型タイトル”という土俵の上で「ペルソナ5らしい体験」を与えるための工夫があり,それは功を奏しているように感じられた。仕組みの根本にいくらかソーシャルゲーム的な仕組みはあるが,あくまで軸足はP5側にある。

パレスの探索シーンもしっかり作り込まれていて,P5らしい潜入アクションを楽しめる
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 また,そうしたソーシャルゲーム的なシステムにも世界設定とうまく結びつくような理由付けを与え,それ自体をむやみにプレイヤーの視界に入れない姿勢には,シリーズが培ってきたイメージを守ろうという強い意思が感じられる。新たな主人公の物語がどこに着地するのか,いちファンとしても楽しみにしておきたい。

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