「ありがたき哉 日本語化」は,ここ最近で日本語対応となった海外作品を良い機会だからあらためて紹介しようという,フワッとしたコーナーです
「頼むから混ぜてくれ……。複数ユニットが入り乱れるオートバトラーと我らが至高のゲーム『スレスパ』(「Slay the Spire」)を混ぜてくれぇッ!」みたいな欲求がある人は,今回ご紹介する
「Hadean Tactics」を試してみるといいかもしれません。
Hadean Tacticsは,複数のユニットを
オートバトル(自動戦闘)で戦わせ,その流れにカードで変化をつけるというPC用ゲームです。もちろんデッキの構築も可能ですし,戦闘前だけでなく
戦闘中にカードが使えるというのも面白い点でしょう。オートバトラーの
「Dota Auto Chess」とデッキ構築型ローグライト「
Slay the Spire」の要素をミックスしたような作りでして,端的に言って中毒性は極めて高いです。筆者は軽い気持ちで始めたのですが,気付けば
頭痛がするまでぶっとおしで遊んでいました。
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皆さんは“人生が変わるゲーム”に出会ったことがあるだろうか? 私にとってのそれは「Slay the Spire」だった。本稿では今さらながらStSを紹介しつつ,“デッキ構築ローグライク”というジャンルの魅力を伝えたいと思う。
[2024/01/31 08:00]
そんな本作は2021年2月にアーリーアクセスが開始となり,2023年8月に正式リリースとなりました。同年末の日本語β実装を経て,2024年1月に正式に,日本語対応となったんですよね。ありがたき哉。本稿執筆時点で,Steamレビュー(レビュー全体)は
「非常に好評」です。
集めたユニットとカードを強化して戦う
Hadean Tacticsは,ブラジルを拠点とするゲーム開発スタジオ・Emberfish Gamesが開発したタイトルです。
スタジオの公式サイト(※外部リンク)によれば,本作は
Doug Lima氏と
Lili Lisboa氏の2人が中心となって開発しているんですね。日本語化を行ったのは,海外インディーゲームの翻訳や,フリーゲーム
「メビウスの旅」(
BOOTH※外部リンク)などを手がける,
まさぼっくり氏(本作のクレジットでの表記は“MASABO”)とのことです。翻訳,本当にありがとうございます。以下,正式リリース直後のツイートです。
クレジット画面です
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さてそんなHadean Tacticsは,地獄に降り立ったヒーロー(英雄)が,冥界を支配する「地獄の六翼」を討伐するために戦うというタイトルです。……が,ストーリーはそれほど重要ではない気がしますし,筆者もあまり分かっていないので,世界設定の説明はこれぐらいにしましょう。神話的ファンタジー世界とでも言いますか,そんな感じで理解してください。
なるほど
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キャラクターデザインも好みです
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ゲームシステムとしては前述のとおり,デッキ構築型ローグライトとオートバトラーを組み合わせたような形となっています。プレイヤーはメインのユニットであるヒーローを選び,仲間のユニットやカードを集め,自身を含むユニットとカードを強化し,
「レリック」や
「ルーン」といった戦闘を有利にするためのアイテムを適宜入手して戦います。
具体的には,プレイのたびに生成されるマップで,戦う場所,休息する場所,カードやユニットを得たり強化したりできる場所を選んで進み,ルートの終端まで到達したらボスと戦います。ボスを倒せば,さらに強敵の待つマップへ移動します。途中で力尽きるか,ボスを3体倒すまでが,プレイの一つのまとまりといった感じですね。プレイを重ねてエンドコンテンツをアンロックすれば,さらなる戦いも楽しめます。
このマップでルートを選択します。お馴染みとなった感のあるビジュアルですね
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止まった場所によって,戦ったり
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キャンプでHPを回復したり,カードをアップグレードしたり
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ショップでお買い物をしたり
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ユニットを入手したり,アップグレードしたりします
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“?”に止まった時のイベントも多彩です
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オートバトルだが,時間を止めて流れに介入できる
本作のキモはもちろん戦闘です。戦闘は
「戦術フェーズ」と
「バトルフェーズ」を交互に繰り返す形で進行します。
戦術フェーズはいわば戦闘の準備段階ですね。ここでは,敵味方のユニットにさまざまな影響を与えるカードをプレイしたり,味方ユニットの初期配置を決めたり,各ユニットの攻撃対象を指定したりできます。
配置を決めたり
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攻撃対象を指定したり
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カードをプレイしたりといった感じです
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カードにはそれぞれ,使用するためのコストとして
「エネルギー」が設定されており,画面左下部に大きく表示されている,使える総エネルギーの範囲内でプレイが可能です。まあこのあたりの作りは,カードゲームを遊んだことがある人ならお馴染みでしょう。ひととおり準備を終えたら,画面右側の剣のようなマークを押すと
「バトルクロック」が作動し,バトルフェーズへ移ります。
バトルフェーズでは,実際にユニット達がワラワラと動いて,基本的には自分に最も近い敵を見つけて戦います。“バトルクロック”の名称で想像がつくとは思いますが,数秒(デフォルトでは7秒)間が1回のバトルフェーズの時間です。時間が過ぎたら,また戦術フェーズへ移って準備して――を繰り返す形になりますね。
バトルフェーズはオートなので基本的には見ているだけなのですが,実はバトルクロックを一時停止する,つまり
時間を止めることが可能です。プレイヤーは停止中に,(使えるエネルギーが残っていれば)カードをプレイしたり,(回数制限はありますが)各ユニットの攻撃対象を変更したりできます。
画面右端に並んだボタンの一つから,全ユニットの攻撃対象を表示できます。カメラの位置も自由に変えられるので,見やすい角度にして,攻撃対象の確認と指定が行えますよと
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もちろん,オートで放っておいても“勝てる戦いで勝つ”ことは可能ですが,本作ではユニットのHPを回復する手段が限られているため,ボスまでの道中ではできるだけ各ユニットのHPを温存しなければなりません。一時停止を駆使して,あえて余らせておいたエネルギーを使って良いタイミングでカードをプレイしたり,マメに攻撃対象を変えたりすることが,安定して冒険するうえでは重要な要素となるんですね。というか敵が強くなっていけば,この操作なしでは勝つことが難しくなります。
分かりやすいのが回復系のカードですね。戦術フェーズの段階で回復が必要なユニットがいない場合,必要なカードとエネルギーを温存しておいてバトルクロックを進め,いずれかのユニットのHPが減った段階で使う――といった使い方ができます
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独自のヒーローとデッキも作成可能
本作ではメインのユニットとなるヒーローはあらかじめ用意された中から選んで使用します。そしてプレイしてランクを上げていくことで,上位のヒーローや,特性の異なる新たなヒーローをアンロックすることができます。カードのまとまりであるデッキも,基本的にはヒーローごとの特徴に合わせてあらかじめ用意されたものを使います。
ヒーローはほかのユニットとは異なり,アップグレードは各マップの開始時(つまり最初と,各ボスの撃破直後)に行います
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ただそれとは別に,本作では
「地下室」というコンテンツをアンロックすることで,プレイヤーが独自のヒーローを作れるようになります。ヒーローとしてカスタマイズできる項目は,スキン(見た目)と,所属したユニットすべてに特性を与える
「アライアンス」,戦闘中にマナが最大まで溜まるたびに発動する
「スキル」,そしてデッキです。つまり,戦闘でシナジーを生み出せる組み合わせを,自分で考えて作ることができるんですね。
地下室のメイン画面です
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デフォルトで用意されているヒーローと同様に,自らカスタマイズしたヒーローも,実際に使用してランクを上げ,使えるカードやレリック,ユニットなどをアンロックしていけます。
それとは別に,プレイで稼げる
「ジェム」を使って,カスタマイズで利用可能なスキン,アライアンス,スキル,デッキを構成するカードをアンロックしていけます。デフォルトのヒーローでのプレイでもかなり楽しめるのですが,地下室のコンテンツを触り始めるとグッとやれることが増えます。ここまでくると,もうこのゲームから抜けられなくなっているでしょう。
ヒーローの初期の強さや,アップグレード時に選べるパターンなどを作ることができます
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デッキ作りは時間が溶けますね。実際に溶けました
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複数ユニットの戦闘で表現されるインフレ感も魅力
本作は面白くなるまでの時間が早く,その持続時間も長いゲームと言えます。スレスパ風のデッキ構築型ローグライトなので,その点は保証付きという感じでしょうか。
結果のスコア画面を眺めて改善点を探したりしますよね
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「今週のヒーロー」のヒーローとデッキを使って挑戦することも可能です
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ボス3体を倒し,さらに先へ進めるエンドコンテンツが用意されています。マップのビジュアルも変わりますよ
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さらに本作は,ボード(戦闘のフィールド)上でのユニットのダイナミックなアクションを楽しめる点も魅力でしょう。とくにユニットやカードを強化し,エネルギーをたっぷり蓄えた状態での戦闘はインフレ具合もなかなかで,敵のHPが溶けていく時の爽快感はかなり高いと言えます。召喚ユニットでボードを埋め尽くした,ものすごいビジュアルの戦闘も,ぜひ体験してみてほしいですね。