イベント
[TGS2023]自身の血を弾丸として放つ! スペイン産の新作サバイバルホラー「Crisol: Theater of Idols」のデモを確認してきた
本作は,古代から続くヒスパニア王国が舞台だ。禁断の宗教がはびこる,トルメントーサという小さな村がある島に送られた,太陽神の騎士団に属する衛兵ガブリエルが主人公となる。
しかし,ガブリエルを乗せた船は,島に接近した際に難破。意識が遠のくなかでガブリエルは,何かの声によって導かれ,息を吹き返すことになる。
そして,驚くべきことに死の淵から蘇ったガブリエルには,「人や動物の死体から血を得ることで,自分の体力を回復できる」という吸血鬼のような能力が備わっていた……というのが,物語の導入部分だ。
今回のデモは,事前に収録した80分ほどのムービーを視聴しながら,Vermila StudiosのCEOであるDavid Carrasco氏に解説してもらう形で進行した。そもそも「Crisol: Theater of Idols」のティーザー映像が公開されたのも2週間前で,まだアルファ版というくらいの内容ではあった。
しかし,2020年にEpic Gamesからの資金援助を受けるEpic MegaGrantsを獲得したというだけあって、Unreal Engine 5をベースにしたグラフィックスは,おぞましくも美しく,現時点でかなりの完成度だった。
ゲームは一人称視点で進行し,アクションや探索要素は「バイオハザード ヴィレッジ」」に強くインスパイアされているとCarrasco氏は語る。
また,不気味な世界設定や強調されたキャラクターデザインは「バイオショック」を連想させるものとなっている。東西の“バイオ”を折衷したような雰囲気の中に,スペインのさまざまな歴史的エッセンスが組み込まれており,しっかりと独自のアートスタイルを確立していた。
ゲームの開始時点では、命を繋ぎとめたばかりのガブリエルは,ひん死の状態だ。無人の村の中をさまよいながら,馬の死体に手を当てて,まるで爪から血を飲むように採血をしたり,「人魚の血」という注射器を探し,それを体内に入れたりすることで体力を回復していく。本作の人魚は,牛の頭と魚の下半身を持った存在のようで,彫刻がゲーム世界のアチコチで見られる。村の風習や歴史などの裏設定がしっかりと作り込まれているようだ。
Carrasco氏は,「我々が巻いた伏線は,本作だけですべて回収できるかどうかはわかりません。しかし,ゲーム中で見つかる手紙や文書などを読むことで,しっかりと村の歴史や過去の出来事などを理解できるようになっています」と語る。
トルメントーサの村には4つの名家があり,彼らの屋敷を探索しながら過去の記憶を辿っていくことで,村の歴史が分かるようになっているそうだ。家ごとに12種ほどの記憶があるそうで,手に入れたムービーなどは,ゲームをクリアするといつでも辿れるようになっているという。
本作における敵についても紹介しておこう。プレイヤーに襲い掛かってくるのは、何かしらが命を吹き込んだ木像たちだ。
木像と言っても,その顔は陶器人形のようにツルツルで無表情に描かれているものが多い。スペインにはリアルに彫り込んだ人物の像に何度も何度もペイントを施していくような風習があったそうで,そうした文化を踏襲したものになっているそう。中には顔中に割れ目ができている人形や,泣いたような顔になっている人形もいてかなり不気味だ。
Carrasco氏は決して「ジャンプスケア」(瞬間的に飛び上がってしまうような恐怖演出。ホラー映画やゲームではチープとされる)には頼らないと話していたものの,音もなく背後から近づいてくる人形たちは,どこかゾンビのような雰囲気を漂わせていた。
戦闘システムで特筆すべきは,「ブラッド・メカニック」と呼ばれるものだ。ガブリエルが銃器を手にした途端に,そのグリップ部分には スパイクのような無数のイガイガが出現し,武器とガブリエルが一体化してしまうのである。一体化した銃は自分の血を弾丸にして飛ばすため,リロードする際には,体力(血)を消費する必要があるのだ。
銃をぶっぱなしまくっていると,リロードのたびにプレイヤーの体力が削がれていってしまうので,動物の死体を見つけるなりして,絶えず血を吸収しておかなければならない。また,上述した4つの名家の記憶を辿る際にも,惨殺された一族の血を吸収することで,彼らの血に存在する記憶を受け継ぐという演出が挟み込まれるなど,“血”は本作における重要なテーマとなっているようだ。
「Crisol: Theater of Idols」を開発しているVermila Studiosは,2022年夏にスウェーデンのEmbracer Groupに買収されていたが,2023年に入ってからEmbracer Groupが資金難に陥り,リストラの実施を発表したという。IPの消失を心配したCarrasco氏らは、自分たちで資金を集めてIPを買い戻し,現在に至るのだそう。
そのため,現在はパブリッシャが決まっておらず,今回の東京ゲームショウにやってきたのも,パートナーを探すことが目的だったようだ。
そんな状況でも,すでに日本語へのローカライズを決定しているのは嬉しいところである。イベントの参加に合わせて日本風にSDキャラ化させたステッカーなどのグッズや,日本語版のパンフレットを用意するなど,本気度がうかがえる。かつてはNintendo of Americaに在籍していた経歴を持つCarrasco氏自身も日本語が堪能だった。これからの動向に期待したい。
「Crisol: Theater of Idols」公式サイト
- 関連タイトル:
Crisol: Theater of Idols
- この記事のURL: