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プレイレポート
[プレイレポ]和風×サイバーパンクの化学反応。「ブレードキメラ」は洗練されたメトロイドヴァニアの最前線だ
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Team Ladybugといえば,「Touhou Luna Nights」や「ロードス島戦記 ーディードリット・イン・ワンダーラビリンスー」といった,原作の世界設定を尊重した名作メトロイドヴァニアを送り出してきたデベロッパだ。
そんなメトロイドヴァニアマイスターが,いよいよ,オリジナルの世界設定による作品に挑んだのが本作「ブレードキメラ」だ。本稿では,メトロイドヴァニア大好きっ子の筆者がプレイレポートをお届けしよう。
和風×サイバーパンクの世界で,“妖蛍刀”とのコンビネーションが生み出す新たなゲーム体験
舞台となるのは,“妖魔”と呼ばれる存在が蔓延る世界だ。主人公のシンは妖魔を狩る組織「聖祭協会」に所属する男で,“マリュード”と呼ばれる妖魔ハンターのような役割を務めている。
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本作をプレイしてまず目を引くのは,その特異な世界だ。地下鉄や,そこかしこに見られる看板に書かれた文字などから,近未来の日本が舞台のようだが,異世界感もある。
それらが程よく荒廃していることでサイバーパンク感が出ており,魅力ある世界を形成している。
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妖魔の姿も個性的で,なじみのある日本妖怪たちが多く登場する。見た目だけで奇をてらっているわけではなく,ちゃんと妖魔の姿にちなんだ攻撃や動きをしてくる。アクションゲームの敵役としての存在感がキッチリと輝いている印象だ
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主人公の戦闘スタイルも個性的だ。近接武器はもちろんのこと,初期装備で銃も持っており,オートでロックオンして攻撃ができる。飛んでいる敵や,距離をとったほうが戦いやすい敵には銃が有効だろう。
ただし,銃ごとに設定された弾数によりリロードが発生するので,敵との距離が近いときなどは要注意だ。
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これらに加えて,本作のアクションの肝とも言えるのが,妖魔である“ルクス”が変身した魔剣「妖蛍刀」(ようけいとう)だ。
物語上,シンはルクスという妖魔と出会い,行動を共にすることになるのだが,聖祭協会は妖魔を狩る組織だ。妖魔が堂々と付き添うわけにもいかないので,普段はホバーセイバーという剣に姿を変えてシンに同行する。
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妖蛍刀の使いみちは実に多彩だ。壁に突き刺すと足場になり,暗い場所では明かりになる。また,地面に突き刺すとバリアを展開し,一部の敵の弾からシンを守る手立てになる。
物理攻撃を完全防御してしまう敵もいるのだが,そういうときは妖蛍刀で攻撃するとダメージが入ることもある。妖蛍刀を使いこなせるようになってくると,本作は俄然面白くなってくる。
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さらに,本作の重要なシステムとして,HPとMPの相互関係がある。
HPが尽きるとゲームオーバーになるわけだが,妖蛍刀による攻撃やバリアを使うと,なんとHPを回復できるのだ。
しかし,妖蛍刀によるアクションはいずれも少しずつMPを消費する。MPが尽きると回復手段も尽きるのかと思いきや,近接武器や銃などの物理攻撃をすればMPは回復するのだ。
この大胆なシステムにより,絶体絶命の状況からギリギリで盛り返す展開もあり得る。もちろん,HPやMPの回復系消費アイテムもあるが,それらに頼らずとも熱い戦いができるようになっているのだ。
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こんな感じで妖蛍刀はメチャクチャ便利なのだが,妖魔を狩る組織である聖祭協会に属するシンが,なぜルクスという妖魔を目の前にして攻撃せず,行動を共にする選択肢をとったのだろうか。
シンは過去の記憶を失っており,自身の過去に何があったのかを思い出そうとしている最中でもある。プレイヤーは,記憶喪失であるシンの視点を通して,この世界への理解を少しずつ深めていくというわけだ。
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この世界が荒廃する原因となった妖魔の出現,その理由。妖魔を滅ぼす聖祭協会という組織の発足と,逆に,妖魔をも受け入れ,聖祭協会と対立する組織の存在。ゲーム進行と共にこれらが少しずつ明かされていき,本作はストーリー面でも優れた牽引力を持っている。
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探索の楽しさと,アクションゲームとしてのやり応え
洗練された,メトロイドヴァニアとしての顔
本作のゲームシステムは,いわゆるメトロイドヴァニアのそれだが非常に完成度が高い。
まず,新たな能力の習得はスキルツリー形式になっており,レベルアップによって得られるポイントを消費して習得していく。記憶喪失のシンが戦いながら記憶を取り戻していくというストーリーに合致した成長システムといえるだろう。
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筆者がとくに驚いたのは,マップの移動についてだ。メトロイドヴァニアでは,マップの各所にワープゾーンが設置されていて,それを利用して広大なマップを行き来するのが定番だった。
しかし本作では,最序盤で習得できるスキル「ワープ」を使えば,特定の場所と状況を除き,踏破済みの場所にいつでもワープできるのだ。
HPがピンチになったら,とりあえずマップからセーブポイントに飛んで回復し,また先程の位置に戻る,といったこともできる。
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メトロイドヴァニアでは通常のジャンプでは届かない高所など,初期状態では行けない場所が敢えて序盤に設置されており,そこへ到達できる能力を得てから戻って来ることで新たにマップを開拓していくという一種の様式美がある。
ただ,さすがにすべての箇所を覚えてはいられず,結局は攻略サイトのお世話になるという人も多かったはずだ。
しかし,本作はマップにマーキングができることと,このワープスキルを駆使することで,探索に関する面倒な部分を大きく改善している。
メインストーリーの目的は常に画面左上に表示され,マップ上にも,向かうべき地点が表示される。次はどこへ向かえばいいのか分からない……といったことも起きないはずだ。
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ゲーム中,「現段階ではまだ行けないであろう場所」は多く出てくるが,スキルツリーによる新能力の開放と妖蛍刀のアクションを組み合わせていく試行錯誤が楽しい。
妖蛍刀を壁に突き刺して足場にして,ジャンプしてすぐに妖蛍刀を壁から外してまたすぐに壁に突き刺して……を繰り返せば,少しくらいなら垂直の壁を上がれる! ……と思ったら,ある段階から妖蛍刀が突き刺せない材質の壁になっていて,「そういうことするって読まれてたー!」と頭を抱えることも。
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同様に,妖蛍刀の壁突き刺しからの空中ダッシュ連打で,反対側にある高所にあったアイテムを入手できたときは「これ,正攻法なのかな……?」と思いつつ,自分で考えた方法で取れたことに喜びが増す。
こうした試行錯誤の楽しさはメトロイドヴァニアならではで,本作がその楽しさをキッチリ用意してくれていた点は嬉しい。
キーとなる能力がレベルアップによるポイント習得なので,ストーリーを進行する以外に,「もうちょっとレベルを上げたら,あの能力が開放できて,あそこへ行けるかも?」という誘惑があり,あれこれ試してみたくなる。
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メトロイドヴァニアはアクションゲームなので,アクションの楽しさも重要になってくるわけだが,本作はそちらも充実している。
先述した「暗所をルクスで照らしながら進む」シーンや,呼吸ゲージに気をつけながら水中を進むシーン,溶鉱炉のような場所にあるシーソーのように傾く床,シンではなく犬を操作して進むシーン,触れると重力の方向が変化する通路など,仕掛けが多彩で飽きさせない。
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ボス戦も素晴らしい仕上がりで,歯応えが,実に“ちょうどいい”。理不尽さを感じるような部分がなく,初見で「この攻撃はどうやって防ぐのか」「どのタイミングで攻撃すべきか」といった学びが一気に蓄積される。これが気持ちいい。
仮に負けても,「これは,次で倒せるんじゃないか?」という自信に満ちあふれた状態でリトライできる。「どうすればいいか分からないし,自分には無理かも」というような絶望感がなく,親切で丁寧に作られているという印象だ。
メトロイドヴァニアは好きだが,アクションはそこまで得意なほうではない筆者でも,長時間詰まるようなボス戦はなかった。安心してオススメできる。
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とにかく遊びやすい!
メトロイドヴァニアの最前線がここにある
昨今は,メトロイドヴァニアというジャンルのタイトルも順調に増えてきているが,それだけに「他作品との差別化」や「オリジナリティをどうやって出していくか」は重要課題となっているように思う。
その点,「ブレードキメラ」は個性の塊だ。
まず,初っ端から近接武器と銃を使い分けて戦えるうえ,多彩な使い方ができる“ルクス”が加わることで,序盤から戦闘が楽しい。
メトロイドヴァニアはゲーム進行と共に主人公のアクションや戦闘手段が少しずつ増えていくのが特徴でもあり,そのため,序盤は何かと抑えられていることが多いのだが,「ブレードキメラ」はそのスロースターター感がない。
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とくに,「好きな位置にいつでもワープできる」というのは実に大胆かつ,ゲーム性をまったく損なっていない。
今までの作品だと,「このへんにワープが欲しかった」と思うことはあったが,「マップの好きな場所にいつでもワープできたらな」とまでは考えもしなかった。今まで当たり前だと思っていたものに,まだ改良の余地があったことに気づかされた。
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世界設定も素晴らしい。和風とサイバーパンクという,一見,相容れなさそうな要素が見事に調和しており,案外,数十年後の日本ではこういう景色を見かけることがあるかも……と思わされる。
BGMも,ステージによっては和風の香りがしつつ,チップチューン的な懐かしさを覚える音色により,サイバーパンク感がある。正直,サントラが欲しい。
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正直,自分で書いていて「ほめすぎなのでは……?」と不安になってしまうほどだが,実際,欠点が見当たらないレベルで楽しいのだから仕方がない。
メトロイドヴァニアとしての楽しさはキッチリ押さえたうえで,より快適に,より多くの人がストレスなく楽しめるようにブラッシュアップされた,理想的な進化形だ。
作品としての個性もバッチリで,「和風サイバーパンクな世界で,ろくろ首や鎧武者に銃を乱射するメトロイドヴァニア」と聞くと,まさに唯一無二のゲームであることが分かるはずだ。
結論として,メトロイドヴァニア系が大好物の人にはもちろんオススメだし,まったくやったことがないという人にも自信を持ってオススメできる。
メディアの記事は鵜呑みにしないという人もいるかと思うが,筆者個人の名にかけて,忖度なしで「抜群に面白い」ということは断言しておきたい。すでに体験版も配信されているので,気になった人は是非一度プレイしてみてほしい。
キーワード
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- プレイ人数:1人
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- プレイレポート
- ライター:本地健太郎
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(C)Team Ladybug ・WSS Playground. All rights reserved. Licensed and Published by Active Gaming Media Inc.
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