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  • Firaxis Games
  • 発売日:2025/02/11
  • 価格:通常版:8800円(税込)
    デラックスエディション:1万2650円(税込)
    創始者エディション:1万6500円(税込)
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アメリカ先史文明の勃興を解き明かす「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」(ゲーマーのためのブックガイド:第30回)
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印刷2025/01/30 12:00

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アメリカ先史文明の勃興を解き明かす「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」(ゲーマーのためのブックガイド:第30回)

画像集 No.001のサムネイル画像 / アメリカ先史文明の勃興を解き明かす「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」(ゲーマーのためのブックガイド:第30回)

 「ゲーマーのためのブックガイド」は,ゲーマーが興味を持ちそうな内容の本や,ゲームのモチーフとなっているものの理解につながるような書籍を,ジャンルを問わず幅広く紹介する隔週連載。気軽に本を手に取ってもらえるような紹介記事から,とことん深く濃厚に掘り下げるものまで,テーマや執筆担当者によって異なるさまざまなスタイルでお届けする予定だ。

 我々は何者なのか? どこから来て,どこへ行くのか?
 なかなか正解を導き出せない,人類にとって永遠の命題である。であるがゆえに,必死にその答えを求めるのもまた,人間の宿命なのだ。

 ひょんなことからそれを30年間,追い続ける羽目になったジャーナリストがいる。経済紙「エコノミスト」の元記者で,この連載の第27回でも,その著書「神の刻印」を紹介したグラハム・ハンコック(Graham Hancock)氏である。
 日本ではこの表記で知られているが,実は英国人(スコットランド人)なので,「第三の男」などで知られる小説家のグレアム・グリーン(Graham Greene)と同様に,グレアムと呼んだほうが現発音に近い。Netflixのドキュメンタリー番組「太古からの啓示」シリーズの自己紹介でもそう発音しているので,興味のある人は自分の耳で確認するといい。

 そんなわけで今回は,2024年に文庫化された,失われた文明をめぐるハンコック氏の最新作「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」を紹介していこう。

画像集 No.005のサムネイル画像 / アメリカ先史文明の勃興を解き明かす「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」(ゲーマーのためのブックガイド:第30回)
「人類前史」上・下

著者:グラハム・ハンコック
訳者:大地瞬,榊原美奈子
版元:双葉文庫
発行:2024年9月14日
定価:1200円(+税)
ISBN:9784575715064 / 9784575715071

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※Amazonアソシエイト

双葉社「人類前史」上 紹介ページ

双葉社「人類前史」下 紹介ページ


 文明の勃興を扱ったストラテジーゲームは,デジタルでもアナログでも人気のゲームジャンルだ。かつてAvalon Hillから発売されたボードゲームの「Civilization」は今でも高い評価を得ているし,シド・マイヤー氏の名を冠した「Sid Meier's Civilization」シリーズも,この2月に最新の第7作がお目見えする予定となっている。
 プレイヤーは悠久なる時の流れを俯瞰し,ときに神のごとき超越者として歴史に干渉しながら,文明を発展させていく。そして生き残った文明の陰には,滅び失われ,いつしか忘れさられる文明もまた,必ず存在することになる。

「シドマイヤーズ シヴィライゼーションVII」
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 もちろんゲームの中の話だが,似たようなことが現実になかったとは言い切れない。実は,昔から筆者はそんなことを考えていたのである。1991年にJICC出版局(現・宝島社)から出版された拙著「神話世界の旅人たち」のコラム「洪水伝説は過去の大災厄であり、未来への予言でもある」を少し抜粋してみよう。

「神話世界の旅人たち ケルト・北欧篇」(リンクはAmazonアソシエイト)
画像集 No.002のサムネイル画像 / アメリカ先史文明の勃興を解き明かす「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」(ゲーマーのためのブックガイド:第30回)
 わたしは、神話や伝説とは、かつて現実に起こったことが、人間の想像力によって脚色されたものであると考えている。とすれば、洪水伝説の元になった事件が何かあるはずだ。(中略)わたしなりに、大胆な説を展開してみることにすると、それはすなわち〈氷河期の終末〉となる。

 最後の氷河期が終わったのは、今から一万二千年ほど前だ。
 この時期、海の水位は低く、水面下二〇〇メートルまでの大陸棚が、ほぼすべて陸地だったのだ。
 古来から、人口密集地は海に近い平地とされているから、当時人間は、現在の大陸棚のあたりに住んでいたはずである。超古代文明論などを展開される方は、大陸棚をあさってみるといいかもしれない。

 ところが一万二千年ほど前、(中略)大陸の氷は水となって、海に流れ込んだ。水位は上がり、かつての居住エリアが、すべて水没してしまった。(中略)かなりの人間が水に呑まれただろう。(中略)これほどの大災厄ならば、神話伝承として残っても不思議ではあるまい。逆に、まったく語り継がれないほど、人類の記憶力がないとは、思いたくない。

 ところがハンコック氏は,その4年後の1995年(日本語版は翌1996年)に刊行されたベストセラー「神々の指紋」で,「人類は過去の偉大なる文明について“記憶喪失”になっている」と宣言する。当時はTBS系のテレビ番組「日立 世界・ふしぎ発見!」でも,疑問符をつけられながらも特集が組まれたほどで,さらには漫画版も刊行され,同書の内容は世間に広く知られることになった。
 その内容とは,世界の神話の共通性と,不思議な遺物や遺跡の事実を積み重ね,氷河期にあったであろう文明を浮かび上がらせるというもの。プラトンが「ティマイオス」や「クリティアス」で語ったアトランティスの伝承を手掛かりに,南極大陸がその候補地としてあげられている。

 むろん,内外を問わず学界からは総スカンであった。この30年間「データを都合よく解釈するエセ考古学者だ」「トンデモ本作者だ」「ペテン師だ」「デニケン(古代宇宙人来訪説)やチャーチワード(ムー大陸)の二番煎じだ」などと袋叩きである。本人は相当堪えているはずだが,それでもめげずに世界中でフィールドワークを重ね,大陸棚の調査に何度もダイビングし,随時何冊もの本で報告しつつ,今に至っている。

画像集 No.003のサムネイル画像 / アメリカ先史文明の勃興を解き明かす「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」(ゲーマーのためのブックガイド:第30回)
「神々の指紋 上」(リンクはAmazonアソシエイト)
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「神々の指紋 下」(リンクはAmazonアソシエイト)

 今回紹介する「人類前史」は,原題が「America Before」すなわち「かつてのアメリカ」であり,ここ最近判明してきた南北アメリカ大陸における驚きの事実を,これでもかこれでもかと畳みかけてくる。
 文庫で1200ページ+カラー口絵32ページという大部だが,筆致は明確かつ読みやすい。全体は30章に分けられ,何章かずつをまとめて8部構成にしてあり,付録として4つの補論がある。モノクロ図版も多い。また各章末には出典などが註として数ページ付随し,その部分はさほど読む必要もないため,各章の実質は平均30ページ以下である。

 そういう意味でも読み進めの負荷は軽減されており,さすがプロの物書きである。訳者の一人である大地 瞬氏は「神々の指紋」の頃からのつきあいなので,訳文も息が合っている。
 とはいえ,だからといって流れるように読めるとは言えない。知らなかった事実が実証データと共に提示されるため,読みながら何度も頭を叩かれる思いを味わい,そのたびに立ち止まる。脳内の常識を揺るがす知的興奮の書なのだ。

 眉唾ものでは? と,内容について疑う方々の顔が目に浮かぶようである。そんな人のために,公式サイトでは序文と第1章あわせて50ページ,第18章40ページが試し読みできるほか,ハンコック氏の妻である写真家サンサ・ファイーア氏の撮影による全カラーページを確認できるので,購入するかどうかの判断はそれを見てからでも遅くはない。

画像集 No.008のサムネイル画像 / アメリカ先史文明の勃興を解き明かす「人類前史 失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった」(ゲーマーのためのブックガイド:第30回)
 まあ事例がどんどん出てくる前半のほうが,比較的に章の長さが短いためサクサク読める。そのいずれにおいても「紀元前1万年頃,モンゴロイドがユーラシアからベーリング海峡を渡って北米大陸にやって来たのが初めてで,それ以前にアメリカに人はいなかった」なる大前提が,ガラガラと崩れ去っていく。それに関連して,新大陸における文明の勃興時期が,どんどん遡っていくのだ。
 後半の第6部あたりからは,それまでの物証に基づく論の展開となるので,それぞれの章も少し長くなる。この解釈部分には,人によっては異論があるだろう。それでも個々の遺跡,遺物などの科学的な分析は客観的なデータであり,一読の価値がある。

 これから読む人の楽しみを奪いたくないので,いちいち詳しく述べるのは避けるが,まるで触れないのでは説得力がないので1つだけ。この本を読むまで筆者も知らなかったのだが,DNAゲノム解析の結果,南アメリカの先住民と,太平洋の人々の間に,古い(紀元前1万年より前の)明確な血縁関係が既に認められている。したがって上記の北回りルート以外での,新旧大陸間に交流があったという事実は,受け容れざるを得ないのだ。

 「人類前史」の原著の出版は2019年。ハンコックがパーソナリティであるNetflixの番組「太古からの啓示」の第1シーズン(30分前後×8話)は2020年11月のスタートなので,後者は前者の内容を踏まえた上での映像化ということになる。
 2024年10月には,「太古からの啓示」のシーズン2「アメリカ大陸」も公開されている。40分前後×6話なので話数は減っているが,全体の時間はシーズン1とほぼ同じ。この5年間で判明した新たな重要な情報が追加され,極めて直接的な「人類前史」の補完となっている。なおゲストの聞き手として,ハワイにオリジナリティがあるキアヌ・リ―ヴスさんが出演している。

 そんなわけで相互に照応し合う内容なため,読んで視聴すること(もしくはその逆)によって,より理解が深まることは間違いない。我々読者/視聴者自身が,あらゆる意味で多面的に情報を取り入れ,アクティブ・リーディングしていくことで,それぞれの智恵に至ることができる。そんな時代になったことに今,純粋に喜びを感じている次第である。
 最後にハンコック氏に。怠惰な筆者の代わりに,身を粉にして34年前の疑問に答えを見つけてくれて,ありがとう。心よりの感謝を捧げます。

■■健部伸明(翻訳家,ライター)■■
 青森県出身の編集者,翻訳家,ライター,作家。日本アイスランド学会,弘前ペンクラブ,特定非営利活動法人harappa会員。弘前文学学校講師。著書に「メイルドメイデン」「氷の下の記憶」,編著に「幻想世界の住人たち」「幻獣大全」,監修に「ファンタジー&異世界用語事典」「ビジュアル図鑑 ドラゴン」「図解 西洋魔術大全」「幻想悪魔大図鑑」「異種最強王図鑑 天界頂上決戦編」など。ボードゲームの翻訳監修に「アンドールの伝説」「テラフォーミング・マーズ」「グルームヘイヴン」などがある。

双葉社「人類前史」上 紹介ページ

双葉社「人類前史」下 紹介ページ

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