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プレイレポート
[プレイレポ]明暗による美しい映像と,多彩なカスタム要素が魅力。JRPGリスペクトとフランス独自の感性が融合した「Clair Obscur: Expedition 33」とは
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Expedition 33は,フランスのインディーデベロッパであるSandfall Interactiveが手掛けるターン制RPGだ。2020年の設立から5年にわたって開発が続けられてきたタイトルで,2024年6月に行われた「Xbox Games Showcase」で発表された際には,インディー作品とは思えないほど美しい映像で視聴者を驚かせた。
ターン制バトルの新作RPG「Clair Obscur: Expedition 33」発表。開発はフランスのSandfall Interactive
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本日,Microsoftのオンラインイベント「Xbox Games Showcase」で,ターン制バトルの新作RPG「Clair Obscur: Expedition 33」が,2025年にリリース予定であることが発表された。
今回のイベントでは,開発チームのGuillaume Broche氏とFrancois Meurisse氏が登壇してゲーム内容を紹介してくれた。テストビルド版による先行プレイも体験できたので,それらの内容を交えて分かった情報をお伝えしていこう。
「Clair Obscur: Expedition 33」公式サイト
JRPGとオリジナルの融合を目指して
独自要素盛りだくさんの熱意あふれる新作
まずは,簡単に本作の基本情報を確認しておこう。Expedition 33はコマンド入力式のRPGで,フィールドを探索して敵と戦い,成長しながら物語を進めていく“古き良きJRPG”のスタイルが採用されている。
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物語の舞台となるのは,現実とは異なる技術的発展を遂げた世界のフランスだ。魔法と機械の双方が並立して存在しており,現実に近い文化とファンタジー的な技術が融合した世界設定が大きな特徴となっている。
あるとき,海の向こうにある大陸に「ペイントレス」と呼ばれる謎の存在が出現した。ペイントレスは年ごとに“数字”を描き出し,それと同じ年齢を持つ者たちを消し去っていった。人間たちはペイントレス討伐に向けた探索隊を結成し,幾度となく大陸に送り込んでいったが,いまだ成果は出ていない。
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そして今年,ペイントレスによって“33”の数字が示された。次の数字が示されるまでに,この連鎖を断ち切らなければならない。主人公ギュスターヴは,第33探索隊(Expedition 33)の一員となり,危険な大陸での冒険に挑むことになる。
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Broche氏は本作の世界を,19世紀フランスのベル・エポック時代と,独自のファンタジー要素を組み合わせたものだと語る。そうしたアートスタイルを,Unreal Engine 5を用いた写実的な映像で表現することで,本作でしかありえない世界を実現しているという。
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映像を見ると「本当にインディー作品なの?」と疑問を挟みたくなるが,Expedition 33はBroche氏の個人的なプロジェクトとして開発が始まったタイトルであり,Sandfall Interactiveは本作を開発するために立ち上げられたスタジオとのこと。
当初は数名で開発を進めていたが,プロジェクトが本格化してからは地元フランスの雰囲気抜群な屋敷を貸し切り(!?),現在は約30名ほどで開発を進めているらしい。その成り立ちからは,確かに“インディーの魂”を感じられる。
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システム面は先述のとおりコマンド入力式のJRPGスタイルが採用されているが,そこに「リアクティブターン」と呼ばれる独自のシステムが取り入れられているのが特徴だ。戦闘ではコマンド入力で自身の行動を選ぶが,敵の攻撃に対しては回避やパリィといった反応(Reaction)で対応できる仕組みになっている。
さらに,攻撃面にも工夫があり,TPSのように敵の弱点を直接撃ち抜く「フリーエイム」や,アクションに合わせてボタンを押すことで効果が高まる「リズム攻撃」など,多彩な独自要素が取り入れられている。
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アクション要素があるというと難しそうな印象を受けるが,そういった点はカスタマイズの幅広さによってカバーされている。装備品の中にはキャラクターにパッシブ能力を与えるものが多数存在し,それを組み合わせることで戦い方を大幅に変えられるというのだ。
Meurisse氏によると,極めれば回避やパリィを必要としないビルドを組み立てることも可能だという。開発段階では,フリーエイムによるダメージ縛りでクリアを達成したメンバーもいたとのこと。これが事実なら,遊びの幅は相当に広そうだ。
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出し惜しみ不要のバトルシステムと
メリハリある演出による爽快感が魅力
ここからは,現地で楽しめたテストビルド版をもとにしたプレイフィールをお伝えしよう。テストビルドは今回のために特別に用意されたバージョンとのことで,製品版とは一部内容が異なるので注意してほしい。
コントローラを手にとってまず感じたのは,なんといっても映像の美しさだ。ギュスターヴたちが挑む“大陸”は危険に満ちており,探索隊は到着してそうそうに絶望的な状況へと叩き落されてしまうのだが,それでも陰鬱すぎる雰囲気にはならない。
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下手に動けば一瞬で死に至るような危険地帯でありながら,多くの場所は美しい自然にあふれ,どこか落ち着いた様子さえ感じさせる。超常的な存在に挑む不安と,魅力的な新世界へ踏み込む意欲を同時に掻き立てられる,不思議な感覚を味わえた。
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各キャラクターは個性的な能力を持ち,バトルシーンではそれらを生かした戦いを楽しめる。フリーエイムによる弱点への攻撃や,弱点属性を突いた攻撃,能力で規定された条件を満たしたスキルなどはかなり高威力で,うまく扱えば序盤は敵をズバズバと倒していける。
スキルやフリーエイムの発動に必要なAP(いわゆるMPにあたるリソース)は戦闘ごとに初期値がリセットされる形式で,スキルの出し惜しみが一切必要ないのも嬉しいところ。弱点やギミックさえ把握してしまえば,そのへんを歩く敵につまづくことはないだろう。演出のテンポのよさも相まって,遊んでいてかなり爽快感のあるゲームだ。
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ただし,消費したAPを回復するためには,通常攻撃をヒットさせたり,パリィを成功させたりする必要がある。体力の多いボス戦では,しっかりと相手の行動を観察し,APを得るタイミングを見極めなければならない。
それに加えて,フィールドには場違いなほど強力な敵も稀に出現し,相手を見ずに挑んでいると一瞬でボコボコにされてしまうこともある。そういった敵に対しても,その時点で可能な工夫をすべてつぎ込めば勝てる程度のバランスになっているのも面白いところだ。
パリィの難度については,個人的にはそこそこ高めに感じられた。猶予がかなり短く,強めのディレイ(タイミングずらし)をかけた攻撃も多いので,雑魚相手でも初見での対処は難しい。攻撃を避ける回避アクションは猶予がやや長いので,まずは回避を使い,タイミングを理解したらパリィに挑戦するのがいいだろう。
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成長要素とキャラクターカスタマイズ要素は,レベルアップごとに行えるステータスの割り振り,ポイントを使ってスキルを解禁していくスキルツリー,装備品による能力調整の3点で成り立っている。
特徴的なのは「ピクトス」と呼ばれる装備品で,これらにはステータスを向上させる機能に加えて,固有のパッシブスキルが付与されている。このパッシブスキルは装備者に与えられるだけでなく,パーティメンバーも恩恵を受けられるのが面白いところだ。
各パッシブスキルにはコストが設定されており,自身以外のメンバーが持つピクトスのパッシブスキルは,キャラクターごとに設定されたコスト上限までしかアクティブにできない。紐付いたピクトスの装備者はノーコストで恩恵を受けられるので,誰にピクトスを装備させ,どのパッシブスキルをアクティブにするかを考える必要がある。
ピクトスから得られるパッシブスキルは強力なものが多く「回避成功でAPを得られる」「通常攻撃の威力が50%アップする」など,効果の幅もかなり大きい。
試遊の範囲ではそれほど多くのピクトスを得られなかったが,それでも組み合わせを考えるのはなかなか楽しかった。製品版で種類が増えれば,相当に幅広いカスタマイズを体験できそうだ。
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最後に,開発者のGuillaume Broche氏とFrancois Meurisse氏へのインタビューをお届けしよう。
4Gamer:
かなり大きな発表イベントで驚きました。ローカライズにも違和感がなく,日本向けのプロモーションに力が入っているように思えます。日本への展開はどのようにして決まったのでしょうか。
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マーケティングについては,数か月ほど前から計画を練っていました。このゲームのルーツは確実にJRPGにあり,日本に対してのリスペクトも強く抱いていたので,そこに向けたアピールはしっかりとやりたかったのです。
パブリッシャ側からこういったイベントの提案をいただいた際には,ふたつ返事でOKさせてもらいました。
4Gamer:
Sandfall InteractiveはExpedition 33を作るために立ち上げられたスタジオとのことですが,どういった経緯でそこに至ったのですか。
Guillaume Broche氏(以下,Broche氏):
6年半ほど前,私はUbisoftで働きながら個人的に勉強をしていました。当時は脚本家やプロデューサーとしての仕事がメインだったのですが,それ以外の仕事についても理解を深めたいと思ったんです。
Unreal Engineの扱い方を覚える中で,Expedition 33のゲームメカニクスを思いついたのが,このプロジェクトの最初の一歩でした。
4Gamer:
すごいバイタリティですね。そこから少しずつ人を集めて,プロジェクトとして独立させていったようなイメージでしょうか。
Broche氏:
そうですね。私のほかに,リードプログラマーのTom Guillermin(現,CTO)や,ビジネス周りのマネジメントを担当するFrancois Meurisse(現,COO)が参入し,6〜7名になった段階で「これは独立したスタジオとしてゲームを作ろう」という決心がつきました。
4Gamer:
スタジオとしてフランスの屋敷を借りた,というのも面白いエピソードですよね。インディーらしさを感じるといいますか。
Broche氏:
当初は小さなオフィスを借りていたのですが,人数が増えてきて新しい場所が必要になりました。そこで新しいオフィスを探していたところ,ゲーム内で作っていた“屋敷”と非常に似た建物があったんです。
新しい世界を作るにあたって,その中で作っていたものが現実に出てきたなら,きっと創意性の刺激にもなるだろうと。結果的に開発現場に良い雰囲気をもたらすことができて,良い決断だったんじゃないかと思っています。
4Gamer:
ほかに類を見ない,とても独特な世界ですよね。日本人が知らないフランスの伝統的な要素を取り入れられているのか,それとも完全にオリジナルの世界なのかが気になります。
Broche氏:
すべてオリジナルです。現実のフランスから要素を引用しつつ,そこに幻想的な要素を取り入れることで,Expedition 33独自の世界を作り上げられたかと思っています。
ネジ曲がったエッフェル塔が強烈なアイコンとして出現しますが,実はそれ以外にも“フランスらしい”要素がそこかしこに取り入れられているので,そういった部分もお楽しみいただけるでしょう。ゲームを遊んだあとにフランス旅行をしたら,そうした要素を感じられるかもしれませんね。
4Gamer:
RPGをベースとして,アクションやTPSといった多彩な要素を併せ持った作品ですよね。こうしたゲームメカニクスは最初から決まっていたのでしょうか。
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ターン制バトルの中にパリィや回避といった“リアクション”を組み込むコンセプトは,開発チームが集まる以前から固まっていました。
フリーエイムなどは後から取り入れたアイデアですが,最初のアイデアとすごく相性がよく,全体で見て完成度の高いシステムに仕上がったと思います。
4Gamer:
発表会ではカスタマイズ要素を強くアピールされていて,確かにピクトスの仕組みからは自由なカスタムの可能性を感じました。ぜひ自分でも考えてみたいのですが,言える範囲で「こんなビルドもあるよ」というのを教えてください。
Broche氏:
これまで見た中で面白かったのは,ひたすら自爆と蘇生を繰り返す“自爆ビルド”です。延々と画面が爆発し続ける絵面は面白かったのですが,これがとんでもなく強くて,製品版ではちょっと弱体化しています(笑)。
Meurisse氏:
そんな具合に,かなり突飛で実用的なビルドがたくさん存在していて,開発チーム内で「こんな戦い方ができたのか」と驚くことすらあります。
製品版では武器,ピクトス,ルミナの組み合わせが本当に膨大になるので,ユーザーさんがどんなビルドを組み立てるのか楽しみです。
Broche氏:
開発が意図している,していないにかかわらず,とんでもないビルドを見つけて実現していく過程は面白いものですよね。それを感じてもらえたら嬉しいです。
4Gamer:
デモの範囲では,周囲の雑魚とは比較にならないほど強い敵も配置されていましたね。冒険感があって楽しかったのですが,見つけた時点でもちゃんと倒せるように調整しているのでしょうか。
Broche氏:
ワールドマップがあるJRPGでは,難度の高いエリアに踏み込んで返り討ちにあってしまうこともありますよね。そこで踏ん張って戦ったり,レベル上げやカスタムの調整で倒せるように努力するのが好きだったんです。そのワクワクを感じられるように,随所にそういった敵が出現します。
そして,このゲームはプレイヤーの腕前次第であらゆる攻撃を無効化(パリィ,回避)が可能です。たとえステータスに差があったとしても,裸一貫で戦って勝利できます。どんな道筋で勝利を目指すかはプレイヤー次第ですが,ぜひ挑戦してみてください!
Meurisse氏:
テストプレイヤーの中にも,強敵への挑戦を楽しんでいる人たちが複数いました。実際にはスルーしてもまったく問題ありませんし,ファストトラベルがあるのでいつでも挑戦できるので,プレイスタイルに合わせて楽しんでいただければと思います。
4Gamer:
本作に期待している日本のファンに向けて,コメントをいただければと思います。
Broche氏:
皆さんには感謝しかありません。日本のゲームがなければ,私達がここに立つことはなかったでしょう。伝統的なJRPGへのリスペクトと,私達の感性を組み合わせた新しい作品の魅力を感じ取っていただけたら,これほど嬉しいことはありません。
4Gamer:
ありがとうございました。
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