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「PlayStation Vita TV」分解レポート。約1万円から買える「据え置き型Vita」は,格好よくスマートなキカイだった
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印刷2013/11/16 00:00

テストレポート

「PlayStation Vita TV」分解レポート。約1万円から買える「据え置き型Vita」は,格好よくスマートなキカイだった

入手したVita TV Value Pack。数量限定の「いいことプラス」キャンペーン対象製品となっていたため,PlayStation Plusの3か月利用権が付いてきた
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 2013年11月14日に「PlayStation Vita TV」(以下,Vita TV)が発売となった。4Gamerではすでにハードウェア分解速報記事インプレッション記事をお届け済みだが,本稿では,先行して掲載した2本の記事ではお伝えできなかったハードウェアの外回りや,分解して判明した構成要素を細かく見ていくことにしよう。

 本体だけなら9954円(税込)で購入でき,白い「DUALSHOCK 3」と容量8GBの専用フラッシュメモリカードが付属した「Value Pack」でも1万4994円(税込)で購入可能と,据え置き型ゲーム機として考えればかなりお手軽だが,本稿では入手したValue Pack版Vita TVで,その正体に迫ってみたい。

※注意
 ゲーム機の分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。


小型でシンプルかつストレート。

ある意味,とてもソニーらしい製品


製品ボックスを開けるといきなりVita TV本体がお目見えする
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 Value Packの製品ボックスを開けると,梱包材にくるまれたVita TVが姿を見せる。そしてその下に,白いDUALSHOCK 3と容量8GBの専用フラッシュメモリカード,DUALSHOCK 3のペアリングおよび充電用USBケーブル,HDMIケーブル,ACアダプター&電源ケーブル,そしてマニュアル類が入っていた。下の写真で示したものが,内容物のすべてだ。

Vita TV Value Packの内容物一覧
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 Value Packに付属する白いDUALSHOCK 3は,Vita TV本体とマッチした色になっている。一般的な黒いDUALSHOCK 3に見慣れていると,かなり新鮮に感じられるのではなかろうか。これといった「汚れが付きにくい表面加工」はされていないようで,使っているとグリップ部がすぐテカテカになってしまいそうなのは気になった。
 ただ,Vita TVというデバイスの立ち位置からすると,ターゲットとなるユーザーは,従来よりもカジュアルな層になるはず。そう考えると,「そういう人達はそんなにがっつりプレイしない」という見込みのもと,本体色に合わせることを優先してきたような気がしないでもない。

お馴染みのDUALSHOCK 3。色が白いのを除くと,手触りなどは一般的な黒色版DUALSHOCK 3と変わらない印象なので,汚れがちょっと心配だ
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PlayStationアイコンがワンポイントになっているVita TV。すっきりした外観だ
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本体底面側には,「SONY」ロゴとVita TVの製品名,技適マークなどが薄くプリントされている。ゴム足などはない
 一方の本体は,すでに4Gamerでも幾度となくお伝えしているように,65(W)×105(D)×13.6(H)mmと,非常にコンパクトなサイズになっている。ポータブルゲーム機である「PlayStation Vita」(以下,PS Vita)からコントローラ部分を切り落としたような大きさになっているので,「据え置き型PS Vita」として,分かりやすいというか,納得できるサイズだといえる。
 ちなみに重量は約110g。数字だけ見るとかなり軽いのだが,実のところ,見た目よりは重量感があり,手のひらに載せてみると,意外にずっしりした重さを感じる。

 感心するのは,小型の筐体であるにも関わらず,ACアダプターをはじめとする外部入出力端子に特殊形状の端子が採用されていない点。HDMIとUSB,有線LAN用の接続端子はいずれも標準サイズ(=フルサイズ)のものとなっている。特殊なケーブルを使わずに済むのは,ユーザーからすると大変ありがたいのと同時に,標準的な接続端子を用いたほうが製造コスト的に有利という,メーカー側の判断もあるのだろう。

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主要な端子やスイッチは,本体側面に2つある長辺の片方にまとまっている。左の写真で左から順に電源ボタン,専用フラッシュメモリカード用スロット,USB標準A(USB 2.0ホスト)端子,HDMI Type A端子,100BASE-TX LAN端子,ACアダプター端子となる。反対側の側面にあるのは,SONYロゴと,電源インジケータとなる白色LEDだけだ(右)
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側面にある2つの短辺,片方にはPS Vitaカードスロットとそのカバーがある。もう片方には何もない
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カードスロットに専用フラッシュメモリ「PlayStation Vita専用メモリーカード」を差すイメージ。いわゆるツライチ状態まで押し込める
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ボックス版で購入した「PlayStation Vitaカード」版ゲームを差すためのスロットには「PS VITA」ロゴ入りカバーがある。カバー紛失防止機構付き

5V2AのACアダプターが付属していた。容量,コネクタとも標準的なものだ
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 全体的なデザインは,PlayStation 3&4,そしてPS Vitaの「ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアらしい」デザインというよりは,ソニーらしいものになっているといえる。
 太めのLANケーブルを差したりすると,110gの本体が負けて,空中に浮かんだ状態になってしまったりする懸念はあるものの,見た目は価格以上の質感があり,購入者の満足度は高いのではなかろうか。


日本企業の矜持を感じる? 内部構造


 というわけで,すでに一部をお伝えしている分解に入っていくが,ここまでの写真を見ても分かるように,Vita TVにはネジ類がまったく見当たらない。それもそのはず,外装パーツは填め込みになっていた。背面が蓋になっていて,周囲のツメを外すと2つに割れる構造だった。
 裏蓋には,シールド用となる金属箔の上に黒いシールが貼られている。また,本体側の基板にもシールドが被せられ,その一部は裏蓋側の金属箔に接触する仕組みになっているなど,かなり厳重な印象である。

 ちなみに,基板の大部分を覆うシールドは,5本のネジで固定されていた。黒いネジ4本が,基板と筐体を共締めするタッピングネジで,残る1本の銀色ネジは,PlayStation Vitaカードスロットと共締めするネジになっている。

5か所のツメを外していくと裏蓋は外せる。シールドはかなり厳重だ。基板側のシールドを固定するネジは1本だけが銀色で,あとは黒塗装されていた
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 5本のネジを外すと,シールドを取り外せる。シリコン製と思われる熱伝導シートが基板の一部とシールド板の間に挟まっていたので,シールド板は放熱板を兼ねているようだ。

基板からシールドを取り外したところ
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こちらがパターン面という理解でいいだろう。熱伝導シートを剥がしたその下に大型のLSIはなかったので,SoC(System-on-a-Chip)用チップ抵抗の熱を逃がすための措置ではないかと思われる
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 この状態で,引っかかっているコネクタ側を筐体からズラすようにすると,基板を引っ張り出せる。それが下の写真だが,筐体の上面にもシールド用の金属箔が貼られ,さらに基板全体を厚めの金属シールドが覆うという,これまた厳重なシールド構造なのが見て取れよう。

基板を筐体正面から取り出したところ
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 基板を覆う金属シールドはざっくり0.3mm厚くらいあるのだが,これも,熱伝導シートでメインのSoC(上のシールド)にくっついているだけなので,軽く引っ張れば簡単に取れてくる。

金属シールドを外したところ。熱伝導シートが貼り付けられている以上,金属板も放熱板を兼ねているという理解でよさそうだ
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 これで,基板全体をようやく拝める。
 メインのSoCは,PCH-2000型番の新型PS Vitaと同じく,上蓋を取り外せるタイプのシールドケースに納められていた。PCH-2000の場合,富士通製のスイッチングコントローラLSIもシールドの下にあったが,Vita TVの場合,筐体と金属板で厳重に基板全体をシールドしているので,不要ということなのではなかろうか。

SoCのシールド上蓋を外してみた。ここにも熱伝導シールが貼られている
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 というわけで,基板とSoCに辿り着けたが,価格設定の割に……と言ったら失礼かもしれないが,丁寧に作られたマシンという印象を受ける。ガチガチに固められたシールドと放熱システムに手抜きはない。
 本体で約1万円という価格設定から,もう少しスカスカな内部構造を想像していたのだが,良い意味で裏切られた。このあたりは先に分解した「Nintendo 2DS」にも通じるものがあると思うのだが,「安価なゲーム機でも,いい加減はものは作らない」という,日本企業の矜持によるものなのかもしれない。


HDMIはSoCからの“直出し”か?


 ここからは,基板上の構成要素を眺めつつ,いろいろと推測を行っていくことにしよう。まずは速報記事でもお伝えしたメインのLSI群からだ。

 「Sony Computer Entertainment」のロゴが刻まれたSoCの型番は「CDX53135GG」,富士通製スイッチングコントローラの型番は「MB44C026A」で,これらは初代PS VitaであるPCH-1000シリーズにおいて採用されているのと同一のものだ。
 10月に発売されたPCH-2000と比較すると,一世代前のLSIということになるが,その理由の推測は速報記事で述べたとおりである。

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Sony Computer Entertainmentロゴ入りSoC,CDX53135GG
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富士通のスイッチングコントローラ,MB44C026A

 そんなVita TVにおける最大の特徴が,PS VitaでサポートされないHDMI出力に対応することだというのは,論を俟(ま)たないだろう。では,どのように実現されているか。

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AD80244BCBZはHDMI出力端子と接続されている
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基板からは,CDX53135GGとAD80244BCBZの間が4組8本の作動信号がつながっているように見える
 HDMI出力端子の近くには,「AD80244BCBZ」と印刷されたLSIが取り付けられていた。
 データシートは残念ながら手に入らなかったが,LSI表面に刻まれたアイコンと型番から,Analog Devices製であることは間違いない。
 メインのSoCたるCDX53135GGの仕様が分からないので,ここからは純粋な推測になるのだが,基板のパターンを見ると,CDX53135GGとAD80244BCBZの間には4組8本の差動信号がつながっているようだ。HDMIはすべて差動で1組のクロック+3組のデータ信号という仕様になっているので,数はぴったり合う。

 付け加えると,Analog Devicesの製品ラインナップには,AD8024シリーズという,割とポピュラーな電流帰還型高速OPAMP(オペアンプ)が存在する。AD8024は4基のアンプを集積したICで,主にビデオ信号のバッファ用に使われるが,「内蔵するアンプの数を増減させて,基になったOPAMPの型番末尾に数字を追加していく」ということはよくある話だ。

 以上の状況証拠から,AD80244BCBZは単なるバッファアンプで,HDMI信号はCDX53135GGから直接出ているのではないか,と筆者は考えている。そういう目でAD80244BCBZ周辺のチップ抵抗&コンデンサの配置を見ると,いかにもアンプっぽい。
 MIPI(Mobile Industry Processor Interface)規格にも対応できる高速差動インタフェースがあれば,MIPI DSI(Digital Serial Interface)仕様の液晶あるいは有機ELパネルやHDMI出力へ柔軟に対応できるので,CDX53135GGはそういう仕様になっているという可能性もありそうだ。PS VitaのSoCは初めからHDMI出力に対応していたものの,何らかの理由でPS Vitaではその対応が見送られ,今回のVita TVでようやく日の目を見たというのは,あり得る話だと思うが,どうだろうか。

右から順に,Realtek Semiconductor製のLANコントローラ,Wolfson Microelectronics製のサウンドCODEC,USB関連ではないかと思われる謎のチップ
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 PS Vitaになく,Vita TVにある代表的な機能としては,有線LANも挙げられるが,有線LANのコントローラは,SoCが載っている面の裏側に実装されていた。
 チップ上には「REALTEK」「8152B」とあるので,USBインタフェース用の100BASE-TX対応コントローラ「RTL8152B」と見て間違いない。かなり昔になるが,PC用のUSBーLANアダプター製品でよく使われていたコントローラだ。

 その隣には,Wolfson Microelectronicsのアイコンが刻まれた小さなチップがある。型番は読めなかったが,PS Vitaシリーズでは同社のサウンドCODECを採用し続けているので,これもサウンドCODECだろう。
 さらにその隣には「GBAF HDDT」と書かれたチップも見えるが,これが何のためのものかは不明だ。パターンを追ってみると,USBに関連にしているようなので,オンボードUSBデバイスの1つかもしれない。

SCEIの文字が刻まれた新型チップ。SBホスト機能に関連している可能性が高そうだ
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 こちらの面には,PS Vitaシリーズで共通して採用されている「SCEI」の文字入りチップも実装されているが,これがなかなか興味深い。というのも,PCH-1000ではその型番が「1141KM482」,PCH-2000では「1329KM408」だったのに対し,Vita TVでは「1334KM416」と,これまでとは異なるものになっているのだ。

 Vita TVがUSBホスト機能を持つことと,LSIの位置とパターンからするに,この1334KM416は,従来のコンパニオンチップにUSBホスト機能を追加すべく,新規に設計された可能性がある。
 実際,1334KM416の周囲には,1141KM482や1329KM408の周囲にはなかった,水晶発振子らしき部品が1つ増えていたりもする。USBホストインタフェースは水晶発振子を必要とするので,このあたりも状況証拠になりそうだ。

eMMC(右)と無線LANモジュール(左)
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 1334KM416の近くには「SAMSUNG」と刻まれた大きなLSIと,見るからに無線LAN用というモジュールも搭載されている。
 前者の型番は「KLM4G1FE3A-F001」なので,これは容量4GBのSamsung Electronics製eMMC。調べてみると,PCH-1000シリーズの一部で採用されていた実績があるようなので,これもSoCやスイッチングコントローラと同様,初代PS Vitaの同等品が使われているということなのかもしれない。
 後者は,シールドに「F82FA863092A」という型番が刻まれているのだが,この型番からはメーカー名が分からなかった。

SoCの裏側部分に,「276 203L 67LG」と書かれたチップが用意されている
画像集#030のサムネイル/「PlayStation Vita TV」分解レポート。約1万円から買える「据え置き型Vita」は,格好よくスマートなキカイだった
 なお,基板上でメインSoCの裏側となるところには小さなLSIが搭載されているのだが,これも正体は分からず。PLLではないかとも思われるものの,「PLLを外付けするSoC」というのはそう多くなかったりもするので,何とも言えない。

 一方,Vita TVの基板からは,Texas Instruments製の電源管理ICが省かれているが,これはリチウムイオン電池の充放電管理が不要になった以上,当然だろう。
 「センサー系は?」と思う人もいるだろうが,そもそもPCH-1000でもPCH-2000でも,センサー系のチップは見当たらなかったので,そのあたりが不明という点では,従来から変わっていない。正体不明のコンパニオンチップがらみという可能性もある。


Vita TVは,格好よく,スマートなキカイだった


画像集#029のサムネイル/「PlayStation Vita TV」分解レポート。約1万円から買える「据え置き型Vita」は,格好よくスマートなキカイだった
 以上,Vita TVの分解によって見えてきたものと,依然として見えてこないものをまとめてみた。
 Vita TVというハードウェアは,筆者が予想していた以上にしっかり作られた製品だといえる。ソニー・コンピュータエンタテインメントグループ全体としても,相当に力が入っていると述べていいのではなかろうか。主要LSIがPCH-1000世代のもので固められていることから,あらぬ憶測も飛んでいるようだが,ここは単に「コストと消費電力の兼ね合いから,実績のあるLSIが採用された」というだけの話だと思われる。

 Vita TVが今後,PlayStationファミリーのなかでどういった展開を見せるのかは,正直なところ,さっぱり予測できない。ただ,Vita TVが格好良く,スマートなキカイであることだけは確かだ。ゲーム業界のためにも,普及してもらいたいところである。

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  • 関連タイトル:

    PS Vita本体

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