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“魅力”と“可能性”があるから,我々は「PlayStation 4」を作る――SCE吉田修平氏 特別インタビュー
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印刷2013/04/26 00:00

インタビュー

“魅力”と“可能性”があるから,我々は「PlayStation 4」を作る――SCE吉田修平氏 特別インタビュー

画像集#023のサムネイル/“魅力”と“可能性”があるから,我々は「PlayStation 4」を作る――SCE吉田修平氏 特別インタビュー
 2013年2月21日に開催された「PlayStation Meeting 2013」にて,満を持して発表された「PlayStation 4」(以下,PS4)。x86ベースの8コアCPUに,GDDR5規格の8GBのメインメモリ(帯域幅176GB/s),最新世代のGPGPUなど,現時点で考え得る最高水準のスペックを備え,ユーザー/業界の双方から大きな期待を寄せられる本機だが,発表から一か月以上が経った現在も,その後の情報があまり多くないこともあって,PS4の方向性については見えない部分も多い。

 スマートフォンやタブレットなど,さまざまなデバイスでゲームが遊べてしまう昨今。ゲーム専用機,とくに据え置きゲーム機に求められる機能を,当のソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)はどう考え,現状をどう分析しているのだろうか。
 スマートフォンの急激な普及やゲーム環境の劇的な変化に伴い,コンシューマゲーム市場そのものを疑問視する声も少なくないなかで,「コンシューマゲーム市場,ひいてはゲーム業界はこの先どうなっていくのか?」という不安を抱いているのは,何も筆者だけではないはずだし,PS4の成否は,まさにこの疑問に対する一つの答え(結果)になるだろうことは,改めて指摘するまでもないだろう。

 そんななか,PS4とは,いったい何を目指し,何を考えて作られたのか。4Gamerでは,PS4の開発プロジェクトにも参加し,また同社のファーストパーティの制作部門を束ねる立場でもある吉田修平氏にインタビューを行い,いろいろな質問をぶつけてみることにした。今後のゲーム産業において,PS4(据え置き機)が担うべき役割と可能性とはなにか。吉田氏との対話の中から,ゲームビジネスの未来を探ってみたい。

吉田修平(よしだしゅうへい):1986年にソニー入社。1993年には,SCEの設立メンバーの一人として参加し,久夛良木 健氏の下,「プレイステーション」プラットフォーム向けに発売された数々のソフトウェアタイトルをプロデュースしてきた。2008年からはSCEワールドワイド・スタジオのプレジデントに就任。PlayStation 4やPlayStation Vitaなどのハードウェア開発にも深く携わる
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PS4は何よりもゲームのためのハード


4Gamer:
 よろしくお願いします。
 今日は「PlayStation 4」について,いろいろとお話をうかがえればと思います。

吉田氏:
 はい。こちらこそ,よろしくお願い致します。

4Gamer:
 まず,2月に行われた「PlayStation Meeting 2013」でのPS4の印象を一言でまとめると,想像以上に「ゲーム寄り」だと思いました。PlayStation 3の時は,いわゆる“ホームコンピューター”的といいますか,家電/リビング寄りの方向性が強かったと思いますが,以前と比べて,何か方針に大きな変更があったのでしょうか。

吉田氏:
 えーと,そのように「ゲーム寄りだ」という印象をもって頂けたのであれば,それは,我々の最初の打ち出し方がうまくいったということですね(笑)。

4Gamer:
 どういう意味ですか?

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吉田氏:
 PS4を発表させて頂くにあたって,まず我々は,なによりも「PS4はゲームのためのハードである」というメッセージを強く打ち出したいと考えていました。
 これは先にお話しておきますが,例えば,Blu-rayを見たり,Netflix(※)を見たりという部分が,PS4になってもなくなるわけではありません。実際にアメリカでは,PS3がNetflixを見る端末としてはNo.1のシェアを誇っていますが,そういった部分のニーズは今後もあると思いますし,当然続けていくつもりです。

※Netflix(ネットフリックス):アメリカのオンラインDVDレンタル会社/サービス。2007年より動画のオンデマンドサービスを展開し,圧倒的なシェアを誇るに至る。同様のサービスとして,日本では「Hulu」などが有名。

4Gamer:
 PS4は,いわゆる“リビング争奪戦”からは降りて,コアゲーム路線を志向しているのかなとも思ったのですが,そういうわけではないのですか。個人的には,PS4は,もっとスマートTV寄りの方向に向かうのかな,という予想もあったのですが。

吉田氏:
 リビング争奪戦については,別に降りたつもりはないというか,元から奪いにいっていた感覚もないというか。むしろソニーは,昔からオーディオビジュアル関連でリビング向けの製品を展開していますから,リビング関連市場には自然な流れでアプローチしてきた企業なんですよね。PlayStationもソニーグループとして,そうした流れの一環で,リビング市場にはずっと進出していました。ですから,昨今の動向を客観的に分析すると,どちらかというと,これまでリビングにアプローチできてこなかった企業が,新しい軸で進出を狙っている――という構図だと思うんですよ。

4Gamer:
 AppleやValveといった企業からすると,そういう視点かもしれませんね。

吉田氏:
 最近,いろいろと動きの激しいスマートTV関連の話題もそうですが,ゲームも遊べる多機能デバイスが,今の世の中に溢れてきているわけですよね。そんななか,PS4の最初の発表で「あれもできます,これもできます」と言って,皆さんに“PS4の芯”が伝わらなくなるのは避けたかった。伝えるべきメッセージを絞って,我々がPS4でやりたいこと,実現したいこと,一番大事な部分は何かというところにこそ,フォーカスすべきだろうと考えていました。

4Gamer:
 それが“ゲームのためのハード”ということなんですね?

吉田氏:
 そういうことです。ゲームの遊び方であったり,作り方であったり,とにかく「ゲームのあり方」を変えていきたい,良くしていきたいということですよね。Blu-rayを見られたり,Netflixが見られたりというのは,(リビングに置く端末として)当然あるべき要素の一つですが,それ以上のものではありません。「ゲームを中心にしたハードウェア」で,何をもってお客さんに興味を持って頂けるのか。それは,やっぱり「ゲーム」に尽きるのではないでしょうか。

4Gamer:
 「ゲームのあり方」を変えたいとさらりとおっしゃいましたけど,そこが一番難しい部分でもありますよね。具体的には,何をもって変わっていく,もしくは変えていくんですか。

吉田氏:
 まず一つには,純粋な「使い勝手の良さ」をもっと突き詰めないといけないというところがあります。それは操作感だったり,待ち時間の無さだったり,いろいろな要素が複合的に絡む部分なのですが,PS4では,“ユーザーさんに気持ちよく触れていただく”という点を,とにかく重要視しています。

4Gamer:
 そもそも据え置き機は,起動したり電源を切ったりするのが手間ですよね。

吉田氏:
 そうですよね。遊ぼうと思ってもアップデートがあったり,ダウンロードに時間が掛かったり。今,スマートフォンやタブレットでゲームがはやっているのには,遊ぼうと思ったらすぐに遊べて,やめようと思ったらパっとやめられる部分が大きいと思うんです。ですから,そういった快適性をきちんと据え置き機(PS4)にも取り入れることで,ゲームとの接し方みたいな部分はずいぶんと変わるんじゃないかと思っていて。

4Gamer:
 その辺りの考えが,「第二のカスタムチップ(※)」の搭載へとつながっているんですか?

※PS4では,メインのCPUのほかに「第二のカスタムチップ」と呼ばれる組み込みのCPUを内蔵している。スタンバイ状態でも,ここには常に電力が供給され,システム監視を司るという。これにより,ゲームの事前ダウンロードや,システム本体のサスペンド・レジュームが可能になっている。

吉田氏:
 そうですね。非常に地味な部分かもしれませんけど,PS4を触ったら,絶対に「ハッ」と感じていただけると思っていますよ。本当に快適ですから。
 ハードウェア面だけで差別化を図るんじゃなくて,もっとサービスやソフトを複合的に組み合わせて,製品に磨きをかける方向性ですね。

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4Gamer:
 その意味では,マーク・サーニーやデビット・ペリーといった著名なゲーム開発者が,PS4プロジェクトの代表者として表に出てきているのも大きな特徴ですよね。

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吉田氏:
 PlayStation Meeting 2013では,「Simple」「Immediate」「Social」「Integrated」「Personalized」という5つのキーワードをお伝えしましたが,どれもハード面を指すワードじゃないんですよ。すべてソフトとネットワークサービスで実現するものなんですね。
 ですから,発表会のプランを話し合っているときも,「顔になるべきキーパーソンはソフトウェア側の人間だろう」と,自然とマークやデビットといった人選に決まりました。

4Gamer:
 PS4は,ゲーム開発者へのヒアリングをかなり重視して作っている感じなんですか?

吉田氏:
 ヒアリングしていると言うよりは,ハードのエンジニアとソフト側の人間が一緒に作っている感じですね。マーク・サーニーもそうですし,私もソフトウェア側の1人として参加していました。これは,PS3の開発時ともっとも大きな違いの一つで,あの発表会も,それを象徴する内容だったと感じています。PS4のハード開発は主に日本で行っていましたが,システムソフトやネットワークサービスの開発は,日本とアメリカの混成チームで行っていたんですよ。


新型ゲーム機に“目新しさ”はどこまで求められる?


4Gamer:
 発表会を見ていて思ったのですが,PS4では,ユーザーさんに向けてのアピールと同じくらい,ゲーム開発者に向けてのメッセージを強く打ち出していますよね。

吉田氏:
 はい。開発者の方が作りやすい環境を用意することが,コンテンツの充実,ひいてはユーザー数の増加につながると思っていますので。

4Gamer:
 その意味でいうと,語弊があるかもしれませんが,PS4は,ゲーム機としてはかなり“堅い戦略”を採っているなという印象を受けたんです。

吉田氏:
 おっしゃりたいことは分かります。一見すると順当なスペックなどの進化があるだけで,新機軸の要素――いわゆる“飛び道具”的な要素があまりないようだってお話ですよね。弊社でいえば,「PS Move」であるとか,「EyeToy」に代表される方向性もその一つだとは思いますけれど。

4Gamer:
 ええ。従来の新型ゲーム機というのは,“明らかな特徴”を持っていることが多かったと思うんです。圧倒的な性能差だったり,デバイスとしての目新しさだったり。「これまでとはまったく違うことができます!」というアピールポイントといいますか,そこをウリにすることが多かったじゃないですか。

吉田氏:
 “飛び道具”は分かりやすいウリになりますが,一方で,プラットフォーム側が一生懸命アピールしたところで,「もういいよ」と思われてしまう危険もあるものですよね。その意味では,PS4は,非常にシンプルなハードウェアを志向しているんです。

4Gamer:
 それはなぜですか?

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吉田氏:
 いろんなフィーチャーが用意されていても,どう使っていいか分からないとか,使いたくても大変な労力が必要になってしまうとか,そうなってしまうことを避けたかったんです。そういう要素を無理に盛り込むのは,少なくとも今の市場環境を考えると難しいのではないか――という判断があったんですよ。

4Gamer:
 PS4になって性能が上がり,グラフィックス面などが向上するのは嬉しい一方で,タイトルがちゃんと発売されるのか,という懸念はありますよね。もっと言えば,上がり続ける開発費増にサードパーティが付いてこられるかというのは,多くのプレイヤーにとって気になるポイントだと思うんです。

吉田氏:
 そうですよね。実際,PS3の開発では,我々自身(SCEワールドワイドスタジオ)もとても苦労しました。いや,我々は別にそれでもいいのですが,サードパーティさんにゲームを提供して頂くにあたって,開発や移植で多大な苦労を強いるというのは,「やっぱり違うんじゃないか」という議論があったんです。

4Gamer:
 なるほど。

吉田氏:
 もちろん,PS3がもの凄いポテンシャルを持ったゲーム機だとは,今でも思っているんですよ。実際,今年発売される「The Last of Us」や「BEYOND: Two Souls」などは,PS3初期のタイトルと比べて,とても同じハードの上で動いてるゲームとは思えない。これは,開発者の皆さんが,PS3で素晴らしいゲームを作るために一所懸命に研究してくださった証明です。……でも一方で,ここまで来るのにある程度時間が掛かったなという思いがあるのも確かです。

The Last of Us
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4Gamer:
 どちらもファーストパーティのタイトルですし,サードパーティのメーカーであれば,研究開発に掛けられる予算も厳しくなってしまいますからね。

吉田氏:
 だから,プラットフォーマーとしては,サードパーティさんのことを考えたら,まず開発環境を整える必要があったんですよね。

4Gamer:
 ちなみにPS4の開発にあたって,ゲーム開発者/デベロッパからヒアリングした際,一番大きかった要望はどういったものだったのですか?

吉田氏:
 それは明確で,とにかく「使いやすくしてくれ」「作りやすくしてくれ」ということです。ツールであったり,もっと(PS4で使える)メモリ容量が欲しいということであったり,そういった足回り的な部分の意見が多かった。

4Gamer:
 PS3では,「メモリが足りない」という話をよく開発者さんから聞きましたしね。

吉田氏:
 確かに,そういうご意見もいただきました。コンシューマゲームのデベロッパさんは,PS3のメモリをどうやって使うかを,本当に考えに考え抜いて,ゲームを開発しているような状況だったんですね。ですから,開発環境を整えるということを意識したとき,「大容量のメモリ」の搭載は絶対に必要な要素だと考えていました。

4Gamer:
 発表会では,メモリが8GBだとアナウンスされて,拍手がわき起こったのが印象的でした。

吉田氏:
 ええ,開発者の皆さんからはとても良い反応をいただけました。PS4は,PS3と比べてかなり移植などもしやすくなっているので,その点でも評価を頂いていますね。また,大容量メモリを搭載したことで,開発時に変なところで苦労することも少なくなっているはずです。タイトルによっては,PS3よりも開発費が安く済む可能性はかなり高いと思いますよ。

4Gamer:
 ただ,ゲームパブリッシャさんからすると,「作りやすさ」というのは,何も作業的/技術的なことだけを指すものではありません。

吉田氏:
 そうですね。言ってしまえば,作りやすい=ビジネスをしやすい,ということですから。サードパーティさんがビジネスをしやすいように,エコシステムをいかに構築していくか。そこは,我々も常に腐心している部分です。


何をもってゲーム機として差別化するのか


4Gamer:
 しかし,サードパーティ云々でいうと,PS4が,マルチプラットフォーム展開を前提とした対パブリッシャ戦略を考えているように見えるのも,昨今のゲーム業界の動向を現わす大きなポイントかなって気がするんです。実際,昔のようにパブリッシャさんに対して独占タイトルの交渉をするような空気って,今はかなり薄くなってきていますよね。

吉田氏:
 そうですね。今の時代,サードパーティさんがタイトルを販売するにあたって,特定のプラットフォームに“賭けられるか”といったら,少なくとも一定以上の開発費が掛かったタイトルでは,難しいと言わざるを得ないでしょう。
 とくに,AAAタイトルと言われるもの,パブリッシャさんが大きな投資をして開発するような作品は,とにかく数を売らないと元が取れませんから,PS3の世代からマルチプラットフォーム展開が当たり前になっています。我々としては,これは当然の流れだと思うし,全然構わないと思っているんですよ。

4Gamer:
 そうなると,何をもってゲーム機としての差別化を図るんだ?という話になりませんか。

吉田氏:
 ですから,そこからさらに考えを進める必要があるんです。同じタイトルが複数のハードで展開される環境のなかで,じゃあユーザーさんから見て「PS4のバージョンが一番遊びたい」と思ってもらうにはどうすればいいのかと。我々としては,そういう話なんじゃないかと考えているんです。

4Gamer:
 ああ,なるほど。

吉田氏:
 それには,「こっちの方が綺麗」だったり,コントローラが使いやすいだったり,あるいは,さっき言ったゲーム機としての快適さ――電源のオンオフがないだとか,torneやNetflixだとかを日常的に使うなかで,そのままゲームへ切り替えられる――とか,そういう部分がキーになるというか,かなり大事なポイントになると思うんです。

4Gamer:
 確かにそうかもしれません。

吉田氏:
 もしくは,「友だちがこっちで遊んでるから」とかね(笑)。プレイヤーさんがどのプラットフォームでゲームを遊ぶのかといったら,今は,そういう部分こそが,実は一番のポイントになっていると思うんです。ですから,PS4では,そういうところにもの凄く注力しているんですね。これは,とても地味な部分かもしれませんし,なかなかお伝えしづらいところなんですけど。

4Gamer:
 ああでも,その思想が「SHAREボタン」みたいな機能(※)につながっていくわけですか?

※SHAREボタンを押すと,プレイ動画のLive配信や,ソーシャルネットワークサービスへのアップロードができる機能。2013年4月26日現在では,UstreamおよびFacebookへの対応がアナウンスされている。

吉田氏:
 そうなんです! SHAREボタンは,もともと「PS4では,もっと簡単にビデオをアップロードできるようにしたい」という意見から始まっているんですけど,ある日,社内の制作チームのゲームクリエイターが「SHAREボタンというのはどうだ?」とアイデアを出してきて。もう満場一致で「それだ!」と決まった機能だったりします(笑)。

4Gamer:
 そういえば,吉田さんって,昔からニコニコ動画(ニコニコ生放送)を見ていることを公言されているというか,よくTwitterやFacebookで書かれていますよね(笑)。

画像集#017のサムネイル/“魅力”と“可能性”があるから,我々は「PlayStation 4」を作る――SCE吉田修平氏 特別インタビュー
吉田氏:
 ニコニコ動画さんの大ファンですから(笑)。もう1年半ぐらい前の話になってしまいますけど,私は「DARK SOULS」が大好きだったんです。1日中遊びたくてしょうがない時期があって(苦笑)。

4Gamer:
 分かります。がっつり時間を取って遊びたいタイトルですよね。

吉田氏:
 歳をとってからは,そこまでゲームに入れ込むことも少なくなってしまったんですが,DARK SOULSだけは,もうやりたくてしょうがなかった。でも,仕事が忙しいとなかなかそうもいかないじゃないですか。それで,ちょっとした空き時間を使って,ニコ生で誰かが配信しているのを見てたりしたんですよね。自分と違った戦い方を見て「こんなやり方もできるんだ」と学べたり,皆さんのコメントを見たり,それだけで本当に楽しかったんですね。動画を共有するというのが,ゲームの楽しみ方の1つとして非常に重要なものだと,実感した覚えがあります。

DARK SOULS
画像集#018のサムネイル/“魅力”と“可能性”があるから,我々は「PlayStation 4」を作る――SCE吉田修平氏 特別インタビュー

4Gamer:
 ただ一方で,ゲームのプレイ動画って,著作権/ビジネス的にはいろいろな問題も孕んでいるものじゃないですか。ジャンルによっては,プレイシーンが公開されてしまうと,それが致命的なネタバレになってしまうケースもあります。そのあたりについてはどうお考えなんですか?

吉田氏:
 もちろん,いろいろな問題や課題はあるな,とは思っています。だけど,少なくとも我々としては,「プレイ動画の配信は楽しいものであり,ゲームの遊び方の可能性を広げるものだ」と認識しています。

4Gamer:
 なるほど。

吉田氏:
 ですから,ご指摘の部分を踏まえたうえで,PS4のSHARE機能には,メーカーさんが見せたくないシーンを配信できないようにする設定を組み込んであります。PS Vitaでも,スクリーンショットを撮れるシーンと撮れないシーンを設定できるんですが,それと同じような仕組みですね。作り手からすれば,ラスボスは見せたくないとか,このシーンは見せたくないとか,こだわりもあるでしょうから。

4Gamer:
 プレイ動画の配信自体は“プレイヤーさんにとって楽しいもの”なんだから,ちゃんと向き合っていこうって方向なんですね。

吉田氏:
 はい。あと発表会で少し触れましたが,SHAREボタンには動画を見るだけでなく,視聴者が何かしらのアクションを起こして,プレイしている人に介入できる仕組みも用意しています。クリエイターさんには,面白い使い方を思いついていただけると嬉しいですね。

4Gamer:
 ちなみに発表会では,UstreamとFacebookのみがアナウンスされていましたが,日本国内においては,やはりニコニコ動画の存在は大きいですよね。そちらへの対応予定はありますか?

吉田氏:
 システムのアーキテクチャとしては,後からいくらでも対応サービスを追加できるような仕組みになっています。ですから,SHAREボタンを押した時の配信先をユーザーさんが選べるだとか,そういう形にはしたいなと思っていますよ。その辺りは,お話ができるタイミングが来れば,どんどん発表していきたいですね。

筐体中央部の左上あたりにあるのが,プレイ動画の配信などに使うSHAREボタン
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