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[CEDEC 2021]ゲーム開発者向けに,PS5の特徴的な機能を紹介。セッション「PlayStation 5 Overview」をレポート
このセッションではソニー・インタラクティブエンタテインメント グローバルデベロッパーテクノロジーグループ 担当部長 秋山賢成氏が,PS5の特徴的な機能とともに,ゲーム体験を向上させるための開発上のポイントなどを,ゲーム開発者に向けて紹介した。
Speed & Immediacy
PS5の特徴的な機能として最初に紹介されたカテゴリーは,「Speed & Immediacy」だ。秋山氏によると,これまでPS4向けにゲームを開発してきた人にとって,もっともプラットフォームの進化を体感しやすいポイントで,ハイスピードだからこそできる新しいゲームデザインや,PS4では実現できなかったゲームデザインも可能になるという。
PS5に搭載された超高速SSDは,高度なカスタマイズを施した設計とカスタムデコンプレッサー,統合されたカスタムI/Oなどによって,生データの転送速度で5.5GB/sという,業界最先端の読み込み速度を実現した。
これは「ロード時間を短くすることで,ゲームデベロッパが限りなく速いスピードでゲームデータにアクセスできるようにしたい」という目標のもと開発が進められたとのこと。
秋山氏は「リソースの読み込み時間がなくなるということは,ゲーム開発およびゲームデザインに大きな影響を与える」とし,「ロード時間を挟まないためゲームが止まることがなくなるので,広大な世界を移動するのに一切ストレスがなくなり,ユーザーはますますゲームに没頭するし,プレイの感動が途切れることがなくなる。それによって,さらにユーザーエンゲージメントが高まる」と語った。
加えて,ストリーミングロードでデータを読み込んでいるケースについても,「今までだとロード待ちを回避するためにアセットデータの量と質を落とすことがあったが,PS5はそのような制約がなくなるので,ゲームそのものの品質向上にダイレクトな影響を与える」と説明した。
またPS5の超高速ロードと処理能力に合わせてクオリティを高めていくと,ゲーム自体のサイズも大きくなっていく可能性があるが,ディスクドライブ搭載型のPS5は100GBの容量を持つUltra HD Blu-rayに対応している。
さらにPS5には「選べるインストール」機能が用意されており,ゲームのどの部分を優先してインストールするか選択可能で,ストレージ容量の最適化をプレイヤー自身で行えることが紹介された。
例えばゲームのシングルプレイやマルチプレイの部分を選択して,優先的にインストールすることも可能だという。また対応しているPS5用ゲームでは,プレイしなくなった特定のモードやコンテンツを削除し,そのぶんストレージ容量を確保できるとのこと。
なお,これらの機能がゲームに反映されるかどうかは,デベロッパの判断になる。
PS5ではアップデートやパッチのデータサイズをより効率的に管理しており,そうしたファイルのダウンロードやインストールは全般にPS4より素早く実行できることも紹介された。
またアップデートしたPlayStation Appで,PS5のストレージをモバイルデバイスから遠隔操作できるようになっており,例えば外出先からゲームをダウンロードした場合に,空き容量を調整することもできるという。
Deep Immersion & Controll
PS5のDual Sense ワイヤレスコントローラーは,PS5がもたらすゲーム体験のために新たにデザインされた。人間工学に基づいたデザインや振動,新しいトリガーボタンなど,ゲームプレイのためのさまざまな仕様を盛り込み,開発が進められたという。
設計のコンセプトは「コントローラに消えてもらう」こと。例えばRPGではユーザーにゲーム中のキャラクターになりきってもらうため,本当に武器を持っているかのような没入感を生み出せるよう設計を繰り返したそうだ。
そのコンセプトをもとに,「ハプティックフィードバック」や「アダプティブトリガー」が実装されたとのことで,秋山氏は「ゲームの仕様にもよるが,ぜひ活用して没入感を高めてほしい」とゲーム開発者への期待を示した。
PS5にプリインストールされている「Astro's Playroom」では,ゲーム内の地面の感触がハプティックフィードバックによって表現されていたり,ジャンプするときに力を溜める感覚がアダプティブトリガーによって感じられたりと,それらの新機能を分かりやすく,かつ気持ち良く感じられるよう活用している。
例えばアダプティブトリガーでワイヤーを引っ張る感覚を表現したり,ハプティックフィードバックで氷の上を走っている感覚や砂の粒子が当たる感覚を伝えたりしている。ほかにもさまざまなシーンで演出として新機能が使われているので,秋山氏は「ぜひ一度試してほしい」と話していた。
PS5では,「Tempest 3Dオーディオ」技術を通じて,ゲーム上でより深い没入感を体験できる。秋山氏は「ゲーム体験にとって映像が重要なのは言わずもがなだが,それと並んでゲームオーディオも重要」とし,「目標とするのはハイエンドオーディオユーザーだけでなく,すべてのPS5ユーザーに素晴らしいオーディオ体験を提供すること」と説明した。
その実現のために,パワフルさと効率性を兼ね備え,オーディオレンダリングに最適化した3Dオーディオ用のカスタムエンジンを設計したとのこと。その結果,PS5の3Dオーディオからは,今まで以上の実在感と定位感を得られるという。例として,雨粒がさまざまな材質のオブジェクトに当たる音や,敵がどの方向に潜んでいるかなどを聞き分けることが可能となるそうだ。
「レイトレーシング」は,PS5のGPUパワーを活かした新機能である。この機能は現実世界で光がどのように動き,物体表面でどのように反射するかを再現する手法だ。秋山氏は「この機能を用いることで物体をより正確,かつリアルにレンダリングできるようになり,水,ガラス,光の屈折,キャラクターの髪の毛などを現実と見紛うほどの表現できる」と説明した。
Direct Access
ゲームプレイ中にPSボタンを押すとコントロールセンターに遷移し,ユーザーが現在利用可能な「アクティビティ」が表示される。アクティビティは各ゲームとダイレクトにつながっており,例えばそのゲームの達成率や各エピソードの概要,クリアまでにかかる想定時間などが表示されている。秋山氏によると,この機能を使えばユーザーに「これからゲーム内で何をしたいのか」という選択肢をプレイ前に提供できるとのこと。
アクティビティは,ユーザーがダイレクトにプレイを始められるよう,デベロッパがプレイ単位で設計することになる。秋山氏は「ぜひ,ゲームプレイへのモチベーションをかき立てるようなアクティビティの工夫をしてほしい」と話していた。
アクティビティのプレイ単位を上手に区切れば,毎回スタート画面やセーブポイントに戻らずとも,ユーザーは好みのモードやコンテンツ,エピソードをすぐにプレイできるようになる。秋山氏は「ユーザーが何をしたいのか,何ができるのかを考えるときに,そのユーザーが持つ可処分時間を最大限に活かすことができる重要なヒントになり得る」と,アクティビティの重要性を説いた。
「ゲームベース」は,「ゲームから離れずつながれる」をコンセプトに,多くのユーザーとのチャットやコンテンツの共有,ゲームに参加ができるソーシャル機能である。PS5ではゲームから離れる時間をなるべく少なくし,ゲームに没頭したままさまざまな体験につながれることを目指したという。
「ゲームヘルプ」は,ゲームプレイ中にユーザーが行き詰まったとき,プレイを止めることなくヒントや攻略法を入手できる機能だ。このゲームヘルプをユーザーに見せるためには,開発者がヒントを与えたい,あるいはメッセージを伝えたい部分にアクティビティを作成し,動画やテキストを入れる必要がある。ゲームヘルプ作成用のツールもあり,秋山氏によると実装は非常に簡単とのことだ。
Communications
PS5の各ゲームには,そのゲームの情報をまとめた「ゲームハブ」が用意される。ゲームハブにはアクティビティやパブリッシャからの情報,コンテンツのお知らせなどが表示されている。そのゲームの追加コンテンツも表示されるので,別途PS Storeで検索をかけなくともすぐにダウンロードできるとのこと。
セッションの最後,秋山氏は「紹介したPS5の機能を活用した素晴らしいゲームがこれから続々とリリースされるが,これらの機能を活かしてさらに新しいゲームデザインにチャレンジしたり,今のゲームデザインの魅力やポテンシャルをさらに引き上げたりできる余地がまだまだ残されている」とし,「SIEは,開発者の皆さんがゲームの魅力を引き上げるためのサポートをしていきます」と意気込みを語っていた。
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